ありふれは"いけない"律者達は世界最強 ~最強の錬金術師と最強の戦乙女~ 作:siera
『オルクス大迷宮』
この洞窟を探索してから2週間たって分かった唯一の情報だ。この洞窟を解析を絶やさず行い、ようやく鉱石の解析を進めた結果、「オルクス」という名前が多く出てくる事から導き出した結果だ。
全てを紐解き、世界を変える力である「真理の律者」であってもこれ以上の情報が得られない…というよりかは、情報に差異があり過ぎて、私が知りえた情報体の辞典に記載されていないのだろう。
分かりやすく言えば、アメリカの辞典に乗ってない、別の国の知識をアメリカの辞典から頑張って擦り合わせている感じといった所か。言語も文化もわかっていないからこそ、少しずつ地道に情報を精査している状況だ。
「…大迷宮とは一体何でしょうか?」
私達の世界に迷宮という言葉があるとすれば、創作物の世界だけ。神話に出てくる場所か、ゲームなんかで出てくるものぐらいなモノ。そんなものが存在するとなると……本当に私達とは違う世界な様だ。
「ここまで世界が違うというのは、少しワクワクしますね。ゲーム等の作品でよくみられる異世界体験を実際に体験しているからでしょうか」
「(だとしても、あまり長居はしていられません。私達にも使命があるのですから)」
「(でも焦ってはいけない…焦った所ですぐに解決はしません。少しづつ、確実に)」
少女は探索を続けながらもこれからの方針を思考する。この暗闇と岩肌しかない世界ですることと言えばこれぐらいしかない。とにかくこの場所を出られる道を探すか、思考するかの二つしかやることの無い。それゆえこの世界についてあらかたわかる事が増えてきた。
・似ているようで違う世界だという事
・バリエーション豊かな鉱石が存在しており、それらで構成された迷宮だという事
そしてもう一つ――
「キュイィィィィ!」
「ハァ―――‼」
この世界には「魔物」と分類される獣に似た存在がいるらしい。少しずつ解析を進めていくことで何とか分かった情報だ。
ウサギや熊、魚など実在する生き物達に似た姿をしているが、基礎の部分から生態や構造が違う。内蔵の構造等は似ている個所があるが、それに加えてみたことの無い内蔵や器官、未知のエネルギーも見つかった。
未知といっても、何処か「崩壊エネルギー」が含まれている所を見ると、完全に新発見の物質という訳ではなく、しっかり私達にも身近な物質も含まれている様だ。
今相対しているウサギも魔物。魔物というからには魔力だったり、悪魔の様な異種族の特徴を持っている。このウサギ、空中を足場とし、変幻自在に襲い掛かってくるのだ。そのせいでブローニャの持つ槍が殆ど当たらない。少し掠る程度で致命傷を与えられる攻撃は、ウサギが空中を足場にする能力で急激に反転して回避したりと、決定打を受けないよう立ち回っている。
「空中を足場として驚異的な速度で攻撃する…想像以上に厄介ですね。なら……その"空間すべて"が危険だとしたらどうです?」
「キュイ!?」
空中を足場として飛びかかろうとしたウサギの周辺に、砲台が囲う様に展開されていた。すぐさま踏み込み逃れようとするが、砲台から発射されるのは実弾ではなくレーザー。その速度は銃弾の比ではない、その発射速度に踏み込んで逃げられると思っていたウサギの表情が苦悶に変わる。肉体を周囲から交差する様にレーザーが放たれ体を貫く。細く発射速度を特化させた光線は小さいウサギの肉体を的確にとらえ、撃ち抜いた肉を焼きながら、獲物を仕留めた。
「ギュ……‼ウゥ……――」
「……ふぅ。崩壊エネルギーを含んだ未知のエネルギーを扱い空気を固着させられるのでしょうか…?その技術、是非扱ってみたいですね」
仕留めたウサギを手に取り、創り出したナイフで毛皮を剥ぎ捌いていく。律者とはいえ食事しなければ弱まるし餓死する可能性だってある。その為見つけた生物はなるべく仕留め、食料にしたり、解析用の素材にしている。
狩りを続けていて分かったことがあるとすれば、魔物と呼ばれる存在には必ず未知のエネルギーが体内に存在しているという事だけだ。魔物以外の生物…例えばこの洞窟に居たムカデを解析してみたが、未知のエネルギーは持っておらず、別の別種のムカデを調べてみたら例のエネルギーを持っていた。
おそらく「例のエネルギーの有無」が生物を魔物か動物かで選別できるのだろう。
「崩壊エネルギーと言っても少量……私達のようなヴァルキリーには影響はないでしょうが、一般人からしたら毒ですね」
「まあ私達のような律者にとって、むしろエネルギー補給になりますかね。と言っても取りすぎも危ないですが……この程度の濃度でしたら、よほどの大食いでもない限り影響はなさそうですね」
人体をゾンビに変質させる「崩壊エネルギー」、とはいえ律者でありヴァルキリーである私達であれば肉体への影響は皆無に等しい量だ。
この世界の人間――居るのかわからないが――は魔物を食べても大丈夫なのだろうか。このような魔物ばっかり生息する世界だったら、それはそれで肉体解析してみたいものだ。もしかしたら、私達の世界での崩壊エネルギー対策に使えるかもしれない。
「ですが……上に行く通路は見当たらず、あるのは下に向かう通路のみ……。一体出口は何処に――」
「出口は必ずどこか上に繋がる道の先にある」そう考えていたブローニャだが、少し疑問に思った。「そもそも出口が本当に上にあるのか」と――
「ゲームではこういった迷宮系のダンジョンには出口は上ではなく下……ボスを倒した先のポータルや魔法陣が出口というのが鉄則…もしこの迷宮が同じ様に"下に"出口があるとするなら?」
こういったダンジョン系は、道中にレベルを上げてボス攻略が大前提に創られている……試練やミッションのようなモノも一緒についてきたりはするが、それは艦が得ないものとするとして。
ここも"大迷宮"という名があるのならば、下に行けば何かわかるかもしれない。そもそも、明らかにダンジョン系の場所なのに攻略しないというのも、ゲーマーでもあるブローニャは少しモヤッとする。
…それが「仲間とはぐれ、未開の地に一人」という焦るべき状況だとしても。
「よし、そうと決まれば下に向かって進んでみましょう。いつまでも同じ階層でウロウロしていても仕方ないです」
幸い下に向かう通路はすでに見つけている。迷宮の解析の結果、かなり下に続いているのは分かる。10…20…いや100の段々の様になっている。
これは100階層あるとても大きいダンジョンという事だろう。1階層事に形や複雑さが違う、だが人工的な通路というよりかは、洞窟が複雑に絡み合っているような感じ、例えるならアリの巣といった所か。
上の方を解析してみるが、一つ階層がありその上にはかなり高い竪穴があるだけ。距離もかなりあり、すべて解析することはできない。
正直私達は飛べる力を持ってはいるが、この世界に来る前に飛べなかった異変の件もあり、うまく飛べるか不安が残る。もし途中で飛べなくなり落下したとすれば……想像はしたくないものだ。
「……高度飛行による脱出は最後の手段にしましょう。幸い低空飛行した感じでは異変はありませんので、なるべく高く飛ばず戦闘を行うのを意識しておかないと」
ブローニャは下に向かい歩き始める。進む先が自分の置かれた状況を直すと信じて――
〈オルクス大迷宮・深部 3階層〉
迷宮の広さはまちまちな様。似たような岩肌ど鉱石などで構成されているようだが……その形や構造はがらりと変わる。まるで木の根の様にそびえる紫水晶、乳白色の鍾乳石の森…まさにダンジョンといった風貌だ。
「一つ降りただけで大分変りましたね。これはたしかにダンジョンというより迷宮、ですね」
周囲を解析しながらあるくブローニャ、すると後方から鋭い視線を感じるのに気づき、すぐさま振り返る。そこにいるのはトカゲの様な魔獣。赤く縦に裂けた瞳孔がこちらを睨みつけている。
ブローニャはその眼光に、並々ならぬ恐怖を感じすぐさま距離を取る。トカゲの眼光が光りだす、その眼光はブローニャの腕を捕らえる。すると、腕の装備がみるみる石の様に変色し、重みが増していく。
「これは石化ですか‼」
ブローニャはすぐさま装備を持っていた槍で壊し、岩陰に隠れトカゲの視線から逃れる。幸い腕まで石化が届いてはいなかったが、腕に身に着けていた鎧甲は完全に石になり、ボロボロと崩れていく。
「石化の眼、バジリスクといった所ですか…!」
すぐさま壊れた装備を創造し直し、さらに肌が見えないようにその上に重装ウサギの装甲を重ねる。後ろからはドスドスとなる足音、こちらに向かってくるトカゲだろう。足音の大きさと振動的に、背にしている岩壁の真後ろだろう。
ブローニャの頭上に影が落ちる。頭上から顔を見せるトカゲの下顎、どうやら視界が狭いのだろう、真下にしゃがんでいる私には気づいておらず、呑気に喉を鳴らしながら周辺を見渡している。こも隙を見逃すほどブローニャは甘くない、下顎目掛け槍を突き刺す。
グサリと深々刺さった槍に、口内に溢れる橙色に澱んだ魔物の血がごぼごぼと音を立てながら暴れだす。だがその暴れた影響でさらに深々と槍が突き刺さり、傷口を広げる。そして、槍が脳に達したのか、突如ビクリと体が跳ね体の力が抜けていく、どうやら力尽きたようだ。
「……返り血、汚い」
泥にでも転んだかのように外装にべったりと澱んだ魔物の血が付いている。幸い近くに水が上から流れてきているので、洗い流すのには苦労しないが……流石にこれほど返り血を浴びるとなると、戦闘方法を切り替えた方がいいか?
「ここは遠距離主体での立ち回りに切り替えましょうか。砲座を小さくし、片手で扱えるように構造を変えて……いや、それなら周囲に展開する方が征圧力は上ですね」
「とはいえ"あの"レールガンは銃身が大きく長い、やはり拳銃ぐらいは持っておくべきでしょうか」
「(思えば銃を扱うのはいつ以来でしょうか……「ウラルの銀狼」なんて呼ばれていた時以来でしょうか。あの時は狙撃銃と拳銃一丁が主体でしたっけ)」
そういい、周囲の地形からよさそうな鉱石をかき集め装備を創り出す。銃はなるべく小型の拳銃。弾丸は創造で何とかできるが…使いすぎで武装の展開に支障が出ないように、周囲の鉱石を使って製作する。
火薬は「燃焼石」を代用する。少しの摩擦で引火し、調合や分量を変えることで自在に弾薬や爆弾を製造できる様だ。ありがたい事にこのあたり一帯…というより「オルクス大迷宮」にはどこにでも存在している鉱石の様だ。
銃身の構成する鉱石は「タウル鉱石」を使うことにした。黒い硬度がかなり存在する鉱石で、普通なら加工に苦労しそうだがそこは律者、問題なく力をフル活用し、なんのことも無く加工していく。なんなら素手で生えている鉱石もぎ取って鼻歌混じりに作れてしまう、流石律者。
そうしてできたのが拳銃「USP・改」の異世界バージョン。私達の世界では汎用的でよく使われている銃。元々名前が「USP・改」と名付けられていたが、少し性能は違う。銃の弾―拳銃の口径―は同じだが、威力は少し劣化している。その代わり、弾速と残段数を増やした。
名前を付けるとするならば、「USP・改」のさらに改良したバージョンなので、「USP-3rd」とでもしておこう。2代目を改良した3代目だからサード、安直ではあるが、こんなもんでいいだろう。
とりあえず試射してみて実践での感覚を取り戻してみる。少し遠くの壁に歩いているバジリスク(仮)の頭に狙いを定めトリガーを引く。
ダンッと洞窟内に響く炸裂音。放たれた弾丸はバジリスクの頭に直撃し壁から落下し身もだえる。そしてしばらくして動かなくなった。どうやら現状の火力でも頭を撃ち抜く貫通力と威力はあるようだ。基は崩壊獣対抗用の銃なので、普通の拳銃と火力を比べるのは意味ないだろうが。
「威力は申し分なし。弾数は12発、射程は30m~35mくらいなら弾道に変化はないと想定していましたが、あのバジリスクとの距離は……32m。うん、良さそうですね」
そういい腰のホルスターにしまう。もちろんこのホルスターも自作。魔獣の皮を剥ぎ、創造したナイフで皮を丁寧に裁断し、糸の代わりは蜘蛛の魔獣の糸を使うことにした。
この糸、体内から摘出した意図は粘性はないが強度が高く裁縫にもってこいだった。それを重装ウサギが上手く扱い、ベルトとホルスターを制作した。皮は熊のモノを扱っている、正直この熊はこれまで出会った中の魔獣で一番強いと思う。
爪は謎のエネルギーで伸びるし、斬撃飛ばすし、それに3mは超える巨体とは想像も付かない速度で動き回り、それなりのタフさも持ち合わせている。故にどんな状況でも壊れにくいこの毛皮は衣服や装備にもってこいだった。
「あの熊の皮、以外にも滑らかで肌触りも良いですね。持ってきておいて良かったです」
「さて、装備も整えましたし。先へ進みましょうか」
ブローニャはさらに奥へ進んでいく。その道は、本来険しく、地獄を具現化したような場所なのに余裕があるのは単に実践経験の差か、律者ゆえなのか。その真相は分かりはしない。
この大迷宮に転移させられてから何週間たったのだろうか、重装ウサギに内蔵されている時計ではすでに3週間以上は経過している。この世界の時間が私のしる24時間で1日なのかはわからないが……あと3日も経てば一か月以上この場所に滞在していることになる。
別の世界では時間の流れが違かったりもするので何とも言えない。私達の世界での1日がこの世界で1年だったりするのだから、考えた所で余計な時間が過ぎるだけだろう。そんなことで時間を割くより、この世界の脱出に使うのが良い時間の使い方だ。
等と考えてはいるが、この迷宮「大」と名の付いている通り、とんでもなく長い。途中から歩くの疲れてホバー移動で階層を移動するのが楽だと思う程。この広さならバイクで移動しても大丈夫そうな長さと広さ何だが、音が反響するので断念した。少しこの広いダンジョンを爆走したかったのは、内緒である。
それにしてもこの迷宮のバリエーションには驚かされるばかりである。水晶の柱が乱雑する水晶柱の森とも呼べるエリア、他階層に流れていた水の代わりに、黒い可燃性の油が流れる階層。植物が生え、樹々の様に成長した鉱物が荒野の様に広いフロアに並んでいる階層等々……。
「ダンジョンというからにはバリエーションが豊富だと思っていましたが、やはり色々な変化があるのですね。少しワクワクしますね」
どの階層もかなり危険だった。黒い油の階層では火器が使えないので槍を極限まで縮めて戦闘を行っていた。黒い水を泳ぐ魚はぬめりで刃が届かないので大変だった。(下の層に降りる前に油燃やしてついでに火の海にしてきた)
鉱石の森フロアはとにかくすばしっこい蝙蝠が鬱陶しかった。岩を砕く音波を飛ばしてくるのだが、それが当たれば大怪我、外れても煩いので鼓膜にダメージと、人をイラつかせる為に生まれたのかと思う程嫌いな魔獣だった。音に関しては洞窟の性質上反響するせいでよけい五月蠅いのもストレスだった。
他の階は苦戦することは無かったが、とにかく魔獣のバリエーションは多かった。先ほど出た「油泳魚」に「音波蝙蝠」、それとは別に雷を操る「二尾狼」、炎を纏って突撃してくる「火炎猿」。分身が見えるほどの速度で動く「神速百足」……階層が変わるほど魔獣が変わっていくるのには驚かされるばかりだ。
それだけの生態系がこの迷宮には形成されているという事になるのだから。
……ちなみに命名はとりあえず分かればいい程度の名づけなので超適当である。
そんな珍道中を進み、さらに2週間かけて現在50階層。
なにやら大きな扉と倒れた二体の巨人の石像が目立つ他の階層とは雰囲気ががらりと変わったエリア。銅像は動きそうな気配は無し、扉に関しては少し空いている。誰かがすでに来た後の様、そう思った要因は扉だけではない、周囲の地形に小さく穴が開いており、その周辺が黒く焦げている。その周りに飛び散っている鉱石の破片――
明らかに人工的な爆発が起こりできた痕跡だ。なんなら近くに金属の破片も落ちている、手榴弾でも使ったのだろうか?
「この世界にも手榴弾があるのですかね?量子の海に存在する世界には時代に統一性が無いというのは知ってるのですが……という事は現代に近い文化がある?」
「量子の海」というのは私達がここに来る前にいた場所。無機質な四角いポリゴンの様なモノが揺蕩う空間の事。そこがどういう場所なのか大雑把に表現するなら「異世界がいっぱい流れている空間」……程度の認識でいいだろう。
漫画やアニメ、ラノベが好きな人なら察せるだろうが、作品ごとに世界の文明の違いがあったり、文化が違かったりするだろう。自身が今まで読んだ作品の一つ一つが同じ世界観ではないだろう?
必ず中世風の舞台もあれば現代似の舞台、未来の世界もあれば宇宙が舞台の作品もある筈だ。「量子の海に統一性が無い」という言葉はこういう感じ……わかるだろうか?
…まあ、わからなければ「ジャンルや世界観バラバラな本(世界)が入っている本棚(量子の海)」ぐらいに捉えてあれば、大丈夫だろう。
「中に入れば少しは分かるでしょうか?」
半開きの扉を開く。中は舗装された空間、というより中央に台座があるので神殿と言った方が的を得ている。中央に続く通路の先に数段の階段と何もない台座。その周辺に琥珀の様な黄色がかった半透明の宝石のかけらの様なモノが散らばっている。
「こんな場所に祭壇ですか?もしかして、古代文明の遺跡が迷宮の中にあったのでしょうか?」
通路を表すように色が違うタイルを歩いていく。この空間もかなりボロボロで爆発が起こった痕跡や、ボコボコと一部分床が隆起したような痕跡、針の様なモノが突き刺さっている個所に強烈な酸だろうか岩石が溶けて歪んだ部分など……激しい痕跡が生々しく残っている。大きく崩れた支柱や壁の崩壊具合からみて、壮絶な戦いがこの場所で起こっていたのは明白だろう。
「この場で何が……宝探しでもしてたんでしょうか。その末に仲間割れ?……だとしてもここまで荒れているのなると相当な人数で戦っていたか、強者が数名いて暴れまわったからか」
「酸や突き刺さった針の感じは人が戦った感じはしないのですが…む?」
歩いている最中何か足で蹴とばした。軽くカランカランと音のなる金属音、拾ってみると…薬莢だった。それもかなり広範囲にバラバラと散らばっている、移動しながら撃ったのだろうか。拾い上げて解析を始める。
「……口径は「.44 Magnum」……だけど薬莢を構成しているのはこの世界の鉱物ですね。ということは、この世界にも「銃」を知る人間がいるのですね。まさか…キアナ?」
「いや、キアナの扱う銃はマグナムモデルでもなければ、実弾でもなかったはず。という事は別の第三者ですか」
周辺を解析して分かったのは、薬莢以外は周囲に痕跡はなく、血が多く流れ出た感じではない事。所々血痕があるが…総量を計測しても致死量にはなりえないと結論がでる。つまりこれは……一人分の血?
「だとしたら誰と戦っていた?魔獣の血痕の検索……該当箇所あり。大型の魔獣の体液分、一階層にいた斬撃を飛ばす熊一体分の血液はありますね」
中心部分にぶちまけられた大量の魔獣の血痕。これがこの激しい戦闘の相手だろうか、歩きながら解析していた為に、気づかぬうちに台座に到着し、近くに座り込む。
周辺に存在するのは……砕けた宝石の様なモノのみ。コレは何だろうかと手に取ったその瞬間だった。
バチィイッ‼‼
強烈な電撃を浴び、すぐに飛びのく。手の方は無事だが、手甲の方が少し焦げている。何かのトラップかと警戒するが、すでにそれは起動していた。上から降り注ぐ赤い光、天井に目をやると……巨大な魔法陣が赤く明滅し回っている。その魔法陣からは悍ましいほどの殺気を感じ、生唾が口に溢れてくる。
「(これは……‼‼まずい!)」
魔法陣から黒い何かが現れてくる。黒曜石に似た光沢をもつ外殻に赤い狂気に満ちたかのような二つの瞳。それらを身に携えた巨大な化け物は、ブローニャを視界に捕らえると、勢いよく落下してきた。
複数の足、巨大な一対の巨大な鋏と鋭く長い針を宿した尾。まるでヴィシュヌと相対した時のような巨体との差に、この世界にきて初めて…冷や汗を流す。
「化け物……貴方がこの階層のボスですか‼‼」
「――――――――――――――‼‼‼」
例えることも不可能な不快な叫び声をあげ、ブローニャを見下ろす巨大蠍が、そこにいた。
作品の投稿日時、いつぐらいに上がってると嬉しいですか?
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朝方
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正午・昼休み時
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午後
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夜間・深夜帯
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とくに気にしてない!