ありふれは"いけない"律者達は世界最強 ~最強の錬金術師と最強の戦乙女~ 作:siera
今回も深夜に投稿する予定でしたが、投稿時間を設定できるとつい最近知ったので、これからはこの仕様を使って投稿しようと思います :^)
……あ、ヒロアカ×崩壊3rdの方も完成次第随時更新していきますので、もう少しお待ちください!
魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感できる。奈落の底の澱んだ空気とは明らかに違う、どこか新鮮さを感じる空気に3人の頬が緩む。
やがて光が収まり目を開けた3人の視界に写ったものは……洞窟だった。
「なんだよ…外かと思ったらまた岩だらけじゃねぇか……」
「隠し扉?」
「でしょうね、元々彼らは反逆者とされていたのです。出口の場所も隠すのは妥当かと」
とある壁がオルクスの指輪が反応し、隠されていた出口が明らかになる。ハジメとユエは、一応トラップを警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光――
ハジメとブローニャはこの数ヶ月、ユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光である。ちなみにブローニャの感動が薄いのは、常に解析しながら行動していたから。暗視ゴーグル身に着けたまま攻略していた様なモノなので、特に暗かった印象が皆無なのである。
だが二人がそれを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせていた。それから互いにニッと笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出していく。
近づくにつれ徐々に大きくなる光、外から風も吹き込んでくる…奈落のような澱んだ空気ではない、ずっと清涼で新鮮な風だ。ハジメ達は〝空気が旨い〟という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。
そして、ハジメとユエは同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。
この時ブローニャは知らなかった――
ここが地上の人間にとって地獄にして処刑場、断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する大地。西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を人々はこう呼び恐れた。
【ライセン大峡谷】と。
3人はそのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口にいた。地の底とはいえ頭上の太陽は燦々と暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐっていく。
たとえ此処がどんな場所だろうと、確かにそこは地上だった。呆然と頭上の太陽を仰ぎ見ていたハジメとユエの表情が次第に笑みを作る。無表情がデフォルトのユエでさえ誰が見てもわかるほど頬がほころんでいる。
同じく感情を表に出さないブローニャも、軽く笑みがこぼれる。バイクに乗りドライブするのが好きなブローニャも、この青い空と煌々と光る太陽の下に居るのがとても落ち着く。
「……戻って来たんだな……」
「……んっ」
「……ですね……」
3人はようやく実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとお互い見つめ合う。そして、ハジメとユエは思いっきり抱きしめ合った。
「よっしゃぁああーー!!戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」
「んっーー!!」
ブローニャも、二人で抱き合ってるのを他所に腕を伸ばし、大地の空気を思いっきり吸い込み堪能する。鼻に届く土と岩から発せられる大地の匂い、普段感じたことの無い感動を、このにおいだけで堪能できた。2ヶ月ほど過ごした洞窟体験は、これほど人の感覚を変化させてしまうとはなんとも恐ろしいモノである。
「土の匂いだというのに…こうも清々しい気分になれるとは、やはり青空の下というのは良いモノです」
後ろを見ると、小柄なユエを抱きしめたままハジメがくるくると廻っており、しばらくの間、人々が地獄と呼ぶ場所には似つかわしくない笑い声が響き渡っていた。途中で地面の出っ張りにつまづき転到したが、そんな事さえ無性に可笑しく、二人して笑い合っていた。
こうみると付き合っているというよりかは、年の離れた兄弟の仲睦まじいふれあいでも見ているかのようである。ブローニャは二人の前に近づき、顔を覗く。少し落ち着いたのか、二人共目を瞑って数か月ぶりの太陽をその身に浴びていた。
「お二人共、キャンプでもしているかのように気が抜けてしまってますよ」
「あぁ、太陽…日の光は良いなぁ」
「ふにゃあ……300年ぶりの日光浴~……」
「吸血鬼なのに日光を喜ぶのですか……ん?」
二人の顔を覗いていたら、いつの間にか魔物に囲まれてしまっていた。
「はぁ~、全く無粋なヤツらだな……」
「やはり地上にも魔物は存在するのですね」
ドンナー・シュラークをハジメが抜くと、何か気になったのか首を傾げる。ブローニャもそれに気づいていたが、特に気にすることも無く再度構えたので、ブローニャも槍を構え、戦闘を開始する。
……と、魔物と戦ったはいいのだが、あまりにも一方的な蹂躙とも等しい戦闘だった。ハジメのドンナー&シュラークの一撃で魔物は一方的に頭を吹き飛ばされ、ブローニャの槍と2台のビットンの銃撃に近寄ることもできず、ものの数分で10数耐程いた魔物は殲滅されていた。
戦闘が終わり銃をホルスターにしまうハジメ、何故か空いた左手を握っては離すを繰り返して何かを確認している。ブローニャに関しては、特に動きに違和感を感じるような事は無いのだが……
「どうかしました、ハジメ」
「いや……ちょっと気になる事があってな。二人共、魔法を使ってみてくれ」
「んっ」「ええ」
魔法……何か使用感でもおかしかったのだろうか。ハジメの銃は魔力を扱い、技能を用いてレールガンを再現し射撃する銃だ。銃の不調、それか魔力に関して何かがおかしいのだろうか。ブローニャは指を上げ、ユエから教えてもらった簡単な魔法「灯火」を発動する。
「灯火」とは小さい炎を指に出し、周囲に明かりを灯す超初級の魔法である。少ない魔力で周囲を照らす魔法なのだが……一瞬小さい炎が出たと思ったら、すぐに掻き消えるように静まってしまった。魔力はもちろん足りていたし、詠唱は…魔物を喰らった影響かハジメやユエと同じく必要無くなっていたはずなのに……。
「これは?」
「魔法が…分解される……?」
「あぁ、俺の"纏雷"も同じだ」
なるほど、魔法が分解される場所等もあるのか。これは魔法使いにとってはとてもじゃないが来たくない場所だ。ハジメが言うには、この魔力を分解する大渓谷…たしかあの屋敷にあった地図に印がつけられてあった例の大迷宮が存在する場所だったはず。
「という事は、後ほどここも探索する事になるのですね」
「そうだな。まぁ魔物は俺と銀狼で対処できるし、ゆっくり探しながら――うおっ!?!?」
ハジメが喋っている途中だったが、突如隣に居たハジメから大きな炎が噴き出す。よく見ると、ユエの手から大きな炎の球が出来ていた。この魔力が分解される警告でどうやって……?あの魔法は「炎球」、解析してみると、以前ブローニャに教えてもらった時に見せてもらった際の魔力の消費量とは違う…約2~3倍の出力で作り上げている。まさか――
「ユエ、どうやって魔法を――」
「――分解される以上の魔力を使っているのですね」
「んっ!流石銀狼、理解が早い」
「なるほど、世界最強の一角って言われたのも納得だな。よし、それじゃあ移動するか」
そういい、ハジメの指に身に着けた指輪が光だす。そるとハジメの横に大き目の魔法陣が広がり、地面からバイクがスルリと大型のバイクが出てきた。これが「宝物庫の指輪」、宝物庫に保管したあらゆるアイテムを取り出し、収納することが出来る。魔石を用いたアーティファクトなのだが、いくつか指輪がオスカーの家に置いてあったので全員身に着けている。
「っとやべ、このバイク二人乗りだったわ。銀狼、お前はどうす――」
「重装ウサギ、Ride on」『Ride on――』
重装ウサギがブローニャの呼びかけに答えると、重装ウサギのボディパーツがみるみると変形していく。その形は上半身のみの人型に近いフォルムから人が2人乗れる大型のバイクに変形した。その瞬間をハジメは少し目をキラキラさせながら少年のような顔で眺め、ユエは見たことの無い現代科学技術に純粋に驚いていた。
「私は私のバイクがありますので大丈夫ですよ」
「お―――!あのロボ変形できるのかよ!」
「こんな事できるなんて……」
「変形ってのはやっぱいいよなぁ……!」
ハジメが興奮している意味を理解できず"?"が頭に浮かぶ少女二人。その瞳は小学生の様な、二次元に取り残された青年のようなキラキラした眼をしていた。
大渓谷を二台のバイクがその尾に大きな土煙を繋げながら大地を駆ける2台バイク。その光景は、この世界の者が目撃してしまえば魔物に騎乗した魔人族と見間違えてしまうだろう。この世界に馬車は存在しているが、それを超えるスピードで走り去るその姿は、狼や犬の魔物にしか見えない。
そんな他者からの疑念なんて考えることも無く、大渓谷を疾走しその身に風を感じながらドライブを楽しむ3人。
ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖、脇道などがほとんど無く道なりに進めば迷うことない。3人とも迷う心配が無いので、迷宮への入口らしき場所がないか注意しつつ、軽快にバイクを走らせていく。ハジメの魔導駆動二輪は車体底部の錬成機構が谷底の悪路を整地しながら進むので実に快適。
ブローニャのバイクも重装ウサギのホイールが悪路に合わせたダートタイヤに変更しているので悪路や小石を気にすることもなくドライブを満喫していた。元々バイクに乗ってドライビングが趣味であったブローニャは、2ヶ月ほど堪能することが出来なかった。溜まりに溜まっていたフラストレーションが一気に発散され、ドライブ中のブローニャの顔はこの世界にきて一番の笑顔だろう。バイザーで目元が隠れているので表情は実際に見えてないが。
「あぁ!やっぱりドライブは最高ですね!」
「銀狼、イキイキしてる……?」
「ドライブが趣味って屋敷でも言ってたからな~」
「(にしても、いいデザインだよなアレ!どういう仕組みか、もっと見せてもらいたいな……!)」
すると、私達の土煙とは違う土煙が反対側からさらに大きな土煙がこちらにやってくる。かなりの量舞い上がってるのを見ると、相当大きな何かがスピードを出してこちらに向かってきている様だ。
「対向車かなにかでしょうか?」
「いや、この世界馬車はあるが車は無い。ありゃ十中八九魔物だな」
「んっ、それも結構大きいかも」
土煙はどんどん近づいていき、その元凶の姿も見えてきた。深緑色の体表をもった二足獣の大型の魔物。でもあの姿、どっからどう見てもティラノサウルスにしか見えないのだが。……と思っていたが、岩陰から完全に出てきた際の全体像は恐竜とは違い、なにせ頭が二つ付いていたのだから。
何かを追いかけているようで、魔物の足元には全速力で魔物から逃げている涙と汗でびちゃびちゃなウサ耳の女性が逃げていた。
「……何だアレ」
「やっと゛み゛つ゛け゛まじた゛ぁぁあぁあぁっぁあ‼‼‼た゛す゛げて゛くださ゛ぁあぁぁい‼‼‼‼」
「……「
「銀狼の知り合い?」
「まさか。お二人のお知り合いでも無いのですね」
「じゃあ関わったら面倒なタイプだな」
「んっ、面倒」
ハジメとユエが乗ったバイクは見事に前方のウサ耳少女を華麗にスルー。まさか駆け抜けていくと思っていなかった少女は、驚きで逃げていたことを忘れ急に立ち止まり、ハジメの方へ振り返る。二人の姿はまあまあ離れており、あと数分もあれば見えなくなっているだろう。
「うぇええぇぇぇえ!?!?!?おねがい゛てず゛~みす゛て゛ないて゛く゛た゛さ゛いぃぃぃいぃぃ!?!?」
「……ちっ面倒だなぁ」
「(なっ、急に止まるから魔物が道を塞いで……!)あなた、どいてください!」
「ふぇ?」
少女が急に止まったせいで魔物も急ぎ急ブレーキ、完全に餌が諦めたと勘違いしたようで道を塞ぐように大型の魔物が壁となって立ちふさがった。そのせいで後方のブローニャのバイクが通り抜けられなくなった。脚の間をすり抜ければ行けるだろうが、その間もウサ耳の少女が立ち止まったせいで無理になってしまった。
「ぎゃぁあぁぁぁぁ⁉ぶづがるぅうぅぅぅ!?!?」
「(ぬぅ、やむおえないですね。面倒事は避けたかったのですが…!)しゃがみなさい!」
「ひゃ、はいぃぃい‼‼」
咄嗟にウサ耳を押さえしゃがむ少女。ブローニャは足元にエネルギーで構築すたレーンを生成し強引に頭の上を走り過ぎる。その先に待っているのは大きな口を開けて丸ごと飲み込もうとする双頭の恐竜。ただ食われに行くわけでもない。重装ウサギの右端から、元々装備していたレールガンを展開した。
レールガンの展開が完了すると、すぐにハンドルに取り付けられたトリガーを押し、射撃する。電磁加速された一発の弾丸は、双頭の裂け目部分を的確に撃ちぬいた。
力を失った片方の頭がちぎれ吹き飛び地面に激突、慣性の法則に従いもう片方の首と肉体が地を滑る。双頭のティラノサウルスはバランスを崩し、地響きを立てながらその場にひっくり返った。
ブローニャはバランスを崩し、こちらに向かって倒れてくる肉体。それをバイクをスライディングさせて強引真下を通り抜けて回避する。さすがバイクに乗り慣れたブローニャにしかできない芸当だろう。
「嘘……」
「銀狼、大丈夫か」
ブローニャが仲間強引に巻き込まれたのに気づき、引き返してきたハジメ達。片手にドンナーを握っている所を見ると、向こうもしかたなく相手しようとしていたようだ。まあハジメの事だから、あの魔物を邪魔な障害、敵認定したから殺すことにしたとかそんなところだろうが。
「問題ないです。さて、それでは早く先に――」
「お助けいただきありがとうございまずぅぅうぅう~~~~‼‼‼」
例のウサギがこちらに向かって飛び掛かろうとしていきた。それをすぐに見切り飛んでくる頭を鷲掴みにして止めた。むぎゅ!?なんて声出してたが、こちらは関わろうとしなかった面倒事に強引に片足突っ込まれたのもあった少し苛立っている。
「誰が、助けたのですか?」「誰が助けたって?」
「アダダダダ‼‼‼‼痛い痛いですぅぅうぅぅ‼‼」
「私は目の前に出てきた敵を倒しただけです。助けたわけではありません」
過去の自分が見れば驚くような言動である。カカリアに出会う前の自分にそっくりな言動と行動、思考論理になってしまった。この世界を出るまでに元に戻れるのだろうか?
「私達は見知らぬ貴方にかかわる時間は無いのです」
「そうだ、よくわからんウサギを相手してる暇はないからな、さっさと去らせてもらうぜ」
「貴方もまた襲われる前に、速くこの場所から出ていった方がいいですよ」
ハジメとブローニャの鬼畜ともとれる言動をウサ耳に突きつけ、さっさとこの場を離れようとバイクの元へ向かおうとする。が、ウサ耳女性は二人の言葉を受けてなお、私達にすがろうとしてくる。
「に、逃がしませんよぉ……!ここで引き下がったら、未来が……!」
「……。」
ハジメは後ろからついてくるウサ耳を見ると、どういう訳か頭に手を当てた。その行動にユエとブローニャも驚きの表情を見せた。「あのハジメが人を助けるのか!?」という驚きである。だが、そこから先に起こった事は……なんともハジメらしかった。
「?…ニヘヘ」
「"纏雷"」
「へ?」「アバババババ!!!!」
頭に触れた手が突如ウサ耳をガシリと掴み、何もためらう事も無く"纏雷"をウサギ少女へ喰らわせた。赤い稲妻がウサ耳少女の身体全身を襲い、黒く焦げていく。
「おぉ!銀狼の言う通り、確かに数倍の威力でやればできるな」
……表現だけでいえばなかなか非道な行為だが、第三者から見ているブローニャ的には、黒く煙が出て影絵のように真っ黒な状態で帯電しているのを見るとギャグマンガの光景にしか見えなかった。それにしても見知らぬ少女の頭を掴んで、確認を含めた理由で何も言わず電撃を浴びせるとは……さすがの今のブローニャでも少し引いた。
「まぁなんだ…死ぬ気で生きようとすれば何とかなるさ。精々頑張れよ」
「う、うぐぐ……。うぅ~…"こんな場面"
「(?…こんな場面?見えてなかった?)」
「さっきから何ですか‼私の様な美少女によくこんな事が出来ますね‼‼」
「自分で言うか?」「…自分で言う?」「…自分で言います?」
3人共声を揃えて同じ事を口に出していた。なんというか…ぱっと見の見た目は良いのだが、とことん中身が残念というかなんというか。獣人というのはどの人種もこんな風に残念なのだろうか。すると――
「ハジメ、少し話を聞かない?」
「ユエ?」
ユエが以外な提案をする。なるべく余計な面倒を避け行動しようとと思っていたはずのユエからの以外な言動にこの場から去ろうとするハジメの動きがピタリ止まりユエの方に振り返った。私もすぐにキアナや芽衣姉さま達を探したいと思っていたので少しムッとしている。とりあえず理由を聞いて、ブローニャも同行するか考えることにした。
「ユエ、何か気になる事でもありましたか?」
「ん、少しぐらい話を聞いてあげても良いと思っただけ。それに、《見えてなかった》って言葉も気になるし」
「(確かに先ほどの言動は気になるところがありました……)」
「……そうですね。話だけでも聞いてから判断しても、いいかもしれません」
「おいおい、二人してさっき言ってた事と真逆じゃねぇか。まぁ、ユエがそういうなら……」
ユエの言葉に対してはとことん甘いハジメ、仕方なくではあるが彼女の話を聞くことにした。
シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】と呼ばれる場所にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。兎人族は、聴覚や隠密行動に優れているものの、他の亜人族に比べればスペックは低いらしく、突出したものがないので亜人族の中でも格下と見られている。
性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だそうだ。また、総じて容姿に優れており、エルフのような美しさとは異なった可愛らしさがあるので、帝国などに捕まり奴隷にされたときは愛玩用として人気の商品となっていしまうという悲しき種族だそうだ。
……だとしても、自分で可愛いと言ってしまうのはどうなのだろうか?
…そ、そんな兎人族の一つである"ハウリア族"にある日異常な女児が生まれ落ちた。その兎人族は、基本的に濃紺の髪をしているの他兎人族のそれとは違い、青みがかった白髪を持ち、亜人族には無いはずの魔力まで有していた。直接魔力を操る術と、とある固有魔法を生まれ持っていた――
それこそが彼女「シア・ハウリア」である。
彼女が持つ固有魔法は〝未来視〟――
仮定した未来が見えるといったとんでもない魔法。もしこれを選択したら場合「その先どうなるか」といったザックリとした光景が見えるらしい。
それに危険が迫っている時なんかは勝手に発動し、その先の未来が見えたりする様だ。なるほど、彼女が逃げ切れたのも、私達が来る事も知っていたのはこの固有魔法によるモノだったのかと手を叩き納得するユエとブローニャ。
「(成程、先ほどの"見えてなかった"というのはそういう事ですか。あくまで大雑把な未来の自称観測であって、例外も起こりうる……便利な部分が強いですが、弱点もそれなりにある様ですね)」
だが、一族は大いに困惑した。それもそうだろう、兎人族として…いや、亜人族として有り得ない子、有り得てはいけない子が生まれてきたのだ。
魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となる。しかし、彼女が生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族。百数十人全員を一つの家族と称する種族、当然ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持つ事は無かった。
しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】にシアの存在がばれれば間違いなく処刑は免れない…魔物はそれだけ忌み嫌われており、不倶戴天の敵なのだそうだ。
国の規律にも魔物を見つけ次第、できる限り殲滅しなければならないと有るらしく、過去にわざと魔物を逃がした人物が追放処分を受けたという記録もある程だそうだ。また、被差別種族ということもあり、魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っておらず、樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっているほどである。
亜人が迫害されるこの世界、あまりにもハードが過ぎる。ブローニャ達も自身達もある意味異端であるとされ、冷たい目で見られる時期もあったが、それが種族間で何百年も続いている等…想像したくはないモノだ。
それ故にハウリア族は彼女を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきたそうだ。
だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。なのでハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。
行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだろう。未開の地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだと思いいたった行動だったそうだ。
しかし、彼等の試みはその帝国により潰えてしまった。樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったのだ。巡回中だったのか訓練だったのかは分からないそうだが、一個中隊規模と出くわしたハウリア族は南に逃げるしかなかった。
女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。
彼らは基本戦闘技術を持たない…それはつまり只の"未熟なこども"対"訓練された兵"という構図。おそらく、ほとんど抵抗することもできず捕まったのだろう。
彼女達は全滅を避けるために必死に逃げ続け、このライセン大峡谷にたどり着いた。彼等敵には苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだそう。「流石に魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろう、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とう」…こう考察したのである。魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。
たしかにその考え自体は悪くない者だった。だが、帝国兵はその先を読んでいた。
帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。
そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来。もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い……気がつけば60人はいた家族も、今は四十人程しかい無くなってしまった。このままでは全滅、どうか助けて欲しい…といった感じだそうだ。
「……長い、つまりは異端児匿ってばれたたから逃げたら、その先で帝国に見つかって又逃げて。その先が渓谷で逃げた先で魔物と帝国で挟まれて…逃げて逃げて今に至る、という事ですか」
「成程、流石銀狼分かりやすい」
「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」
最初の残念な感じとは打って変わって悲痛な表情で懇願するシア。どうやらシアは、ユエやハジメと同じ、この世界の例外というヤツらしい。特にユエと同じ、先祖返りと言うやつなのかもしれない。話を聞き終ったハジメは特に表情を変えることもなく端的に答えた。
「断る」と――
ハジメの端的な言葉が静寂をもたらす。何を言われたのか分からない、といった表情のシアは、ポカンと口を開けた間抜けな姿でハジメをマジマジと見つめた。正直ユエとブローニャは心の中でこう思っていた。
「「(知ってた/ました)」」
そして、ハジメが話は終わったと魔力駆動二輪に跨ろうとしてようやく我を取り戻し、物凄い勢いで抗議の声を張り上げた。
「ちょ、ちょ、ちょっと! 何故です! 今の流れはどう考えても『何て可哀想なんだ!安心しろ!!俺が何とかしてやる!』とか言って爽やかに微笑むところですよ!」
「流石の私もコロっといっちゃうところですよ!何、いきなり美少女との出会いをフイにしているのですか!って、あっ、無視して行こうとしないで下さい!逃しませんよぉ!」
シアの抗議の声をさらりと無視して出発しようとするハジメの脚に再びシアが飛びつく。さっきまでの真面目で静謐な感じは微塵もなく、形振り構わない残念ウサギが戻ってきていた。足を振っても微塵も離れる気配がないシアに、ハジメは溜息を吐きながらジロリと睨む。
「あのなぁ、お前等助けて俺に何のメリットがあるんだよ」
「メ、メリット?」
「帝国から追われているわ、樹海から追放されているわ、お前さんは厄介のタネだわ、デメリットしかねぇじゃねぇか」
「仮に峡谷から脱出出来たとして、その後どうすんだよ?また帝国に捕まるのが関の山だろうが。で?それ避けたきゃ、また俺を頼るんだろ?今度は、帝国兵から守りながら北の山脈地帯まで連れて行けってな」
「うっ、そ、それは……で、でも!」
ハジメからの正論パンチに流石の残念ウサギも口がどもってしまう。だが、それでも折れることは無く、その表情は硬い意志を貫いていた。ブローニャにはそう見えたが、ハジメにはそんな意志を感じられてはいないのだろう。というか、感じていても、面倒事だからさっさと離れたいが勝っていてそんな部分を見ようとしてないというのが、正しい。…ハジメは人間として、だいぶ底辺に落ちかけているのでは?と若干心配になったブローニャであった。
「大体俺達にだって旅の目的はあるんだ。そんな厄介なもん抱えていられないんだよ」
「そんな……でも、守ってくれるって見えましたのに!」
「そんなすごい固有魔法持ってて、何でバレたんだよ。危険を察知できるならフェアベルゲンの連中にもバレなかったんじゃないか?」
ハジメの指摘に「うっ」と唸った後、シアは目を泳がせてポツリと零した。
「じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて……」
「バレた時、既に使った後だったと……何に使ったんだよ?」
「ちょ~とですね、あの魔物の攻撃を避ける為に使い続けてまして……」
「(うぅ、友人の恋路が気になって、使ってたらこうなったなんて言ったらまた殴られます~。てか、むしろまた雷でやられますぅ~……!)」
ハジメはさっさと離れたくて、話の途中で抜け出そうと何度も逃げようと動くが、それでも諦めようとしないシアはハジメの脚にしがみつく。片足上げてブンブンと振りほどこうとするが、がっしりホールドして離そうとしない。
正直、残念な部分も多いし、明らかに厄介事に首を突っ込む事になる事案であるが…ここまで滅茶苦茶にされても、一つの希望の綱を話そうとせず、諦めるという心を捨て必死に動いている彼女の精神、心にブローニャは少し、ほんの少しであるが揺さぶられた。
その姿を彼女が知っているとあ"るおバカ"に重ねた故か、はたまた……すると。
「…ハジメ、連れていこう」
「ユエ?」
ユエの言葉にハジメとブローニャは訝しそうな顔をする。先ほどもそうだが、シアの事にかんして何か思う事でもあるのかと感じるほどに、優しさが出ている気がする。
「……樹海の案内に丁度いい」
「あ~」
確かに。オスカーの書斎で書かれていたが、樹海は亜人族以外では必ず迷うと言われている様で、兎人族の案内があれば心強い。だが――
「私が森の地形を解析すれば、常に正しい道が分かりますと思いますが」
「…確かにその手もある。けど、オスカーの屋敷で、魔法の阻害があった場所、見れなかったでしょ?森もそんな力、あったら大変」
「確かに、それもそうですね……」
解析が上手く行えず迷う可能性はもちろん想定内。その為、樹海を迷わず進むための対策も一応考えていたが……乱暴なやり方であるし確実といえるモノではない。最悪、現地で亜人族をとっ捕まえて道を聞き出そうとハジメとブローニャは考えていたので、自ら進んで案内してくれる亜人がいるのは正直言って有り難い。ただ…シア達はあまりに多くの厄介事を抱えている。
ユエの提案は良いモノではあったが……逡巡するハジメとブローニャ。そんな二人に、ユエは真っ直ぐな瞳を向けて逡巡を断ち切るように告げた。
「……大丈夫、私達は最強」
それは、奈落を出た時のハジメの言葉であった。「この世界に対して遠慮しない、互いに守り合えば最強である」と、ハジメは自分の言った言葉を返されて苦笑いするしかなく。私の事をそれほど信頼し、頼れる仲間と捉えてくれたユエに、少し頬が赤くなるブローニャ。
兎人族の協力があれば断然、樹海の探索は楽になる。それを帝国兵や亜人達と揉めるかもしれないから避けるべき等と〝舌の根も乾かぬうちに〟であった。
もちろん、好き好んで厄介事に首を突っ込むつもり等さらさらないが、ベストな道が目の前にあるのに敵の存在を理由に避けるなど有り得ない。道を阻む敵は〝殺してでも〟とハジメは決めたのだ。
「そうだな。おい、喜べ残念ウサギ。お前達を樹海の案内に雇わせてもらう。報酬はお前等の命だ」
「確かに言っていることは間違いではないですが、セリフが完全にヤクザですよ」
しかし、峡谷において強力な魔物を片手間に屠れる強者が生存を約束したことに変わりはなく、シアは飛び上がらんばかりに喜びを顕にした。というか、この世界にヤクザのようなアレが無いので、おそらく意味が伝わってなかった可能性がある。この真意は……シアには黙っておこう。
「あ、ありがとうございます! うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」
ぐしぐしと嬉し泣きするシア。しかし、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる。やはり心が強い、彼女のその心だけは、見習いたいものだ。…そう、心"だけ"である。
「あ、あの、宜しくお願いします! そ、それでお三方のことは何と呼べば……」
「ん?あぁ、そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」
「……ユエ」
「私は、銀狼と名乗っています」
「ハジメさんとギンロウさん、そしてユエちゃんですね!よろしくお願いします!」
三人の名前を何度か反芻し覚えるシア。しかし、ユエが不満顔で抗議する。
「……さんを付けろ。残念ウサギ」
「ふぇ!?」
ユエらしからぬ命令口調に戸惑うシアは、ユエの外見から年下と思っているらしく、ユエが吸血鬼族で遥に年上と知ると土下座する勢いで謝罪した。どうもユエは、シアが気に食わないらしい。何故かは分からないが……。
「ほれ、取り敢えず残念ウサギも後ろに乗れ……って、三人乗りは流石にキツイか?」
「なら、重装ウサギの方へ乗ってください」
そういうブローニャにシアは少し戸惑っているようだ。それも無理はない、なにせこの世界にバイク等と言う乗り物は存在しないのだ。しかし、取り敢えず何らかの乗り物である事はわかっている様なので、シアは恐る恐る近づいた。
チョンチョンと指でつついてはびくつくシア。獣人というよりかは怖がりな子供、いや、むしろ臆病なウサギその者にしか見えなかった。そんなシアを他所に、ブローニャが重装ウサギに指示を出す。
「重装ウサギ、サイド展開」『Copy. Side deployment.』
重装ウサギが呼応し、バイクの横にサイドカーを構築する。その一瞬の光景に、耳をビクゥ!と伸ばし、勢いよく後ろに下がり逃げるシア。そこまで驚くモノだったろうか?
何度も「コレ大丈夫ですか?本当に乗って大丈夫ですか?」とオロオロしていたシアだったが、それにイラついていたハジメが後ろから「さっさと乗れ!」とシアの尻を容赦なく蹴り飛ばし、サイドカーの座席へとシュートした。
顔面から座席にぶつかったシアは文句の一言でも言おうかとしていたが、座席の柔らかさと、適度な狭さ故の謎の安心感によって、文句は吹き飛んでいた。それでいいのか、ハウリア族よ……。そんなブローニャの内心には微塵も気づかずに、シアはブローニャに疑問をぶつける。
「あ、あの。助けてもらうのに必死でつい流してしまったのですが……この乗り物?は一体何なのでしょう?それに、ハジメさんにユエさん、ギンロウさんも魔法を使いましたよね?ここでは使えないはずなのに……」
「あぁ、それは道中でお話ししましょう」
「よし、行くぞ」
そう言いながら、ハジメは魔力駆動二輪を一気に加速させ出発した。それを追いかけるように、ブローニャも重装ウサギのエンジンを吹かし、一気に加速し出立。悪路をものともせず爆走する乗り物に、シアがサイドから「きゃぁああ~!」と悲鳴を上げていた。
谷底では有り得ない速度に目を瞑ってギュッと体を押さえながら怖がっていたシアも、しばらくして慣れてきたのか、次第に興奮して来たよう。カーブを曲がったり、大きめの岩を避けたりする度きゃっきゃっと騒いでいた。
ブローニャは道中、魔力駆動二輪の事やユエが魔法を使える理由、ハジメの武器がアーティファクトみたいなものだと簡潔に説明した。すると、シアは目を見開いて驚愕を表にしていた。
「え、それじゃあ、お三方も魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」
「ああ、そうなるな」
「……ん」
「そういう事になりますね」
しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様に膝を曲げて、手を組みそこに顔をうずめ泣きべそをかき始めた。
「どうしましたか?」
「いきなり何だ?騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」
「……手遅れ?」
「手遅れって何ですか、手遅れって!私は至って正常です!……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」
「「「……」」」
どうやら魔物と同じ性質や能力を有するという事、この世界で自分があまりに特異な存在である事に孤独を感じていたようだ。
家族だと言って十六年もの間危険を背負ってくれた一族、シアのために故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族、きっと多くの愛情を感じていたはずだ。それでも、いや、だからこそ…〝他とは異なる自分〟に余計孤独を感じていたのかもしれない。その感覚は、ブローニャも体験したことがあった。己…孤児院での…彼女と過ごしたあの場所での出来事を。
シアの言葉に、ユエとブローニャは思うところがあるのか考え込むように押し黙ってしまった。二人共、いつもの無表情がより色を失っている様に見える。ハジメには何となく、今二人が感じているものがなんとなく分かっていた。
おそらく、二人は自分とシアの境遇を重ねているのではないだろう。ユエは、魔力の直接操作や固有魔法という異質な力を持ち、その時代において〝同胞〟というべき存在は居なかった。
ブローニャは殺し屋として育てられ、その後において戦乙女として様々な力を身に着け、あげく人間とは到底離れた異端な能力をもった。その異能は、彼女の時代では…恐怖の象徴だった。それが二人に、複雑な心情を抱かせているのだろう。
そんなユエの頭をハジメはブローニャのバイクに横づけし、ポンポンとシアの頭を撫でた。日本という豊かな国で何の苦労もなく親の愛情をしっかり受けて育ったハジメには創造することはできない。
〝同胞〟がいないばかりか、特異な存在として女王という孤高の存在に祭り上げられたユエの孤独も――
世界の為に敵と戦い、人類から恐ろしき存在と力を持ち、数多の苦痛を学んだであろう銀狼の苦痛も――
…本当の意味では理解できない。それ故、かけるべき言葉も持ち合わせなかった。出来る事は…〝今は〟一人でないことを示す事だけだ。
すっかり変わってしまったハジメだが、身内にかける優しさはまだある様だ。
あるいは、ユエと出会っていなければそれすら失っていたかもしれないが。ユエはハジメが外道に落ちるか否かの最後の防波堤と言える。ユエがいるからこそ、ハジメは人間性を保っていられるのだろう。
その証拠に、ハジメはシアとの約束も守る気だ。樹海を案内させたらハウリア族を狙う帝国兵への対策もする気である。
そんなハジメの気持ちが伝わったのか、ユエは、無意識に入っていた体の力を抜いて、より一層ハジメに背を預けた。まるで甘えるように。
「あの~、私のこと忘れてませんか? ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは?」
「そう言ってくれれば私、コロっと堕ちゃいますよ?チョロインですよ?なのに、せっかくのチャンスをスルーして…てか、何でいきなり二人の世界を作っているんですか!寂しいです!私も仲間に入れて下さい!大体、お二人は……」
「「黙れ残念ウサギ」」
「……はい……ぐすっ……」
「貴方本当に色々残念ですね……」
泣きべそかいていたシアがいきなり騒ぎ始めたので、思わず怒鳴り返すハジメとユエ。しかし、泣いている女の子を放置して二人の世界を作っているのも十分ひどい話である。その上、逆ギレされて怒鳴られてと、何とも不憫なシアであった。
ただ、シアの売りはその打たれ強さ。内心では既に「まずは名前を呼ばせますよぉ~せっかく見つけたお仲間です。逃しませんからねぇ~!」と新たな目標に向けて闘志を燃やしていた。
その野心に火が付き瞳に炎が見えるシアに対して、ハジメのどこに惹かれる要素があるのか、と頭に疑問符しか浮かばないブローニャであった。
……しばらく、シアが騒いでハジメかユエに怒鳴られるという事を繰り返していると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。どうやら相当な数の魔物が騒いでいるようである。
「っ!ハジメさん!もう直ぐ皆がいる場所です!あの魔物の声……ち、近いです!父様達がいる場所に近いです!」
「だぁ~、いちいち大声で怒鳴るな!聞こえてるわ!銀狼、先行できるか?」
「余裕です。飛ばしますから、からしっかり掴まってくださいね!」
ブローニャは、魔力を更に注ぎ、二輪を一気に加速させた。壁や地面が物凄い勢いで後ろへ流れていく。
そうして走ること二分。ドリフトしながら最後の大岩を迂回した先には、今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達がいた。
「見つけました!」
「お父様!?」
「シア……⁉シアなのか…⁉」
「これより救出任務、開始です――」
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