ありふれは"いけない"律者達は世界最強 ~最強の錬金術師と最強の戦乙女~   作:siera

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タイトル思いつかなかったんですけど、知り合いの知恵を借りて「迷いの森」「火山を彷徨う」からそれっぽい単語と呼び方合わせてみたらと言われ合わせてみたら中々良くてこうなりました。

……本当にそれだけでタイトルに深い意味はないですよ?


迷森(メイシン)徨山(コウザン)

 ハウリア族を助け帝国兵の馬車を盗……借りて【ハルツィナ樹海】を目指し進んでいた私達。途中襲い掛かる魔物をハジメが一撃で撃ち殺しシアに恐れられたり、シアが何度も何度もハジメに同行を許してほしいと懇願したり、その全てを拒否の二文字で返し幾度もシアが撃沈したり、それでもめげずにハジメにアタックかけたり……なんとも騒がしい草原旅であった。

この騒がしい仲間との行動、まるで学園入学始めごろの芽衣姉様やバカキアナ、姫子先生や学園長、委員長との賑やかで楽しかった生活が頭に浮かび上がってくる。あの柔らかく懐かし思い出……いまやそれは手に入らないモノ、いや、それを再び手にする為に今は戦っているのだ。またあの賑やかでうるさい日常を過ごせる日々を謳歌する為にも、速くこの世界からでなければいけないのだ。そう、出なければ……出な…――

 

「(いや待ってください……キアナは今、全ての律者の権能を宿した"終焉の律者"としてたはずです。もしかしたら……彼女の権能なら、元に戻れるのでは?)」

「(空の律者の力、彼女ならもしかしたら……いや、だとしたらすぐに虚数空間を使って私達と合流することもできたはず……それが出来なかったのは、何か理由があってできないのか)」

「ん、どうした銀狼?」

「あっいえ、この森を抜けた後の行動をどうするか考えてました」

「(……咄嗟に嘘をつきましたが、すぐにでも帰れるのなら故郷に帰りたいと願っているハジメに、変な期待を与えるよりかは、嘘をつき黙っていた方が良いかもしれませんね)」

 

それから数時間、遂にブローニャ達一行は【ハルツィナ樹海】と平原の境界へ到着。

樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。元々そのような性質がある土地なのか、それともそういう植生がある樹々で構成された森なのだろうか。

気になり近くの樹々や大地を調べてみてわかった事は「魔力を持たない只の森でしかない」という大して進展を生みそうにない情報でしかなかった。

 

「このあたりの樹々の影響ではないのですね」

「それではお三方。中に入ったら決して我らから離れないで下さいね」

「ハジメ様と銀狼様を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それで、再度確認させていただきたいのですが、行き先は森の深部…大樹の下で宜しいですな」

「ああ。そこまでいい」

 

カムがハジメに対して樹海での注意と行き先の確認をしている。

カムが言った〝大樹〟というのは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な一本の樹木の事。亜人達には〝大樹ウーア・アルト〟と呼ばれ、神聖な場所として滅多に近づくものはいないと馬車で聞いていた。

峡谷脱出時にカムから聞いたこの話、当初ハジメは【ハルツィナ樹海】そのものが大迷宮かと思っていた。だが、よく考えればそれなら奈落の底の魔物と同レベルの魔物が彷徨いている魔境ということになり、とても亜人達が住める場所ではないハズ。なので、【オルクス大迷宮】のように真の迷宮の入口が何処かにあるのだろうと推測したようだ。そのため、カムから聞いた〝大樹〟が怪しいと踏んだのだろう。

 

そんな事考えていたら、カムがハジメの言葉に頷き、周囲の兎人族に合図を出して私達の周りを固めた。この場合、私達が護衛として守る側なのだから、私達が外に居るべきなのだろうが……霧で迷わないための措置なのだろう。

 

「ハジメ殿、できる限り気配は消してもらえますかな」

「あ?いいけど、なんでだ?」

「大樹は神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりません。ですが特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれないのです」

「我々は、お尋ね者なので見つかると厄介ですので……」

「なるほどな」

「確かにその通りですね、では――」

 

そう言うとハジメとユエは〝気配遮断〟を使う。ユエ達は奈落で培った方法で気配を薄くした様、私にはそのような技能は無く、あると言えば戦場で培った技術や知識で応用するしかないのだが。そんな時は、ネゲントロピー直伝のステルス技術を用いて対応するしかない。ブローニャは腕甲を操作すると、自分の体がブンッと揺らぎ、徐々に体が透過しはじめる。そして、完全に森の空気と一体となり気配が揺らぐ。ネゲントロピーの戦術機甲のステルス技術は律者も騙せるハイスペック技術だ。

 

「ッ!?」

 

"気配遮断"とステルスを起動した3人を見て、ギョッとするカム達ハウリア族。もしや"気配遮断"が上手くいっていないのではと一瞬おもったが、彼らの反応はその逆であった。

 

「これはまた……ハジメ殿、銀狼殿。できればユエ殿くらいの薄さにしてもらえますかな?」

「ん?ユエくらいってなると……こんなもんか?」

「私の場合は……これぐらいですかね」

 

腕甲に付いているデバイスを操作し、自身の透明度を変更する。……彼女は気づいていないが、元々自身の姿を隠すだけのステルス能力であるのに、気配も同時に揺らぎ消えているという事実。

おそらく魔物を仕留めて平然と食べていたブローニャだ、どこかで"気配遮断"に似た能力を得ていた魔物の肉を食べ、自身も覚えていたのだろう。

この時のブローニャは、魔物を食べ技能を覚えられるのを知らなかった。無意識に体がステルスを起動するのと同時に"気配遮断"を発動したのだ。おかげで、ブローニャの気配はそのあたりの空気の様に「その場にいても気づけない」レベルにまで昇華していた。

 

「……はい、それぐらいで結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いやはや全く、流石の一言ですな!」

 

カムは人間族でありながら自分達の唯一の強みである索敵能力を凌駕され、苦笑いだ。だがその苦笑いには不快感はなく、尊敬が込められている。一方隣では、何故か自慢げに胸を張っているユエに、シアはどこか複雑そうな顔。ハジメの言う実力差を改めて示されたせいだろう。

移動中の馬車内で、自分も付いていきたいという意志をめげずに伝えていたシアにとって、自身の力の名さと、ハジメとユエの高い壁に沈んでいるのだ。……そうなるのも、自身のハジメへの恋心ゆえなのだろうが……ブローニャ的にはハジメの良さが全く分からないので白いジト目を見せるしかなかった。

 

「それでは、行きましょうか」

 

カムの号令と共に準備を整えた一行は、カムとシアを先頭に樹海へと踏み込んだ。薄暗い森の奥地、この先に何が待ち受けているのだろうか。深い霧の奥底に、私達が望むものは本当にあるのだろうか。そんな不安を抱えながら、ブローニャ達の足は深緑の奥底へと足を進める。

 

「……キアナ、芽衣姉さんは今、どうしているのでしょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~~~~~つ~~~~~い~~~~~~!」

 

一方……件のおバカさんは、いまだに火山の迷路を数か月も彷徨い続けていた。彼女自身別に方向音痴だったりするわけではないのだが、一ヶ月もマグマ煮えたぎる火口の奥底で過ごしていれば脳処理も上手くいくわけもなく……自分が同じ場所をグルグルしているとも気づかずにいた。

しかも自身が【薪炎の律者】となった際の福音でもあった熱耐性があだとなり、体温が勝手に調整されているのか暑さによる体調不良もおこらず、熱さにもだえながら彷徨っている。最初すぐに脱出できるだろうとたかをくくっていた前の自分を殴りたく思っている。ただ、彼女には律者の力備わっていたから、暑さは氷を出してしのげているし、岩壁を削れば一時しのぎではあるが避暑地を作ることもできる。……空の律者の力も使えるハズなのだが、それをしないのは暑さで脳が働いていないのか、それとも単純におバカ故に頭からすっぽ抜けているのか。ここ最近のキアナはしっかり頭で考え、学園時代のキアナより何倍も大人となったはずなのだが……。

 

「ここ、本当に出口あるのかな……岩削って出ようと思っても溶岩溢れてきて危ないし」

「食料と水は…何とか大丈夫なのは幸いなのかな。凄い不味いけど……はぁ、芽衣先輩のご飯が恋しい……」

 

キアナは自分が出来ることがないか一通り試してみた。"壁の破壊"溶岩があふれてくるので断念、"上への脱出"は似た地形が多すぎて断念……ここに空の律者の力を使うが入らないのが、実にキアナらしいという感じだろう。

そんなこんなで、最終的に決めた決断は「行けるだけ道なりに下に行ってみる」ことにした。上に行こうにも上に行ったと思ったら下に向かう道しかなかったりと出口に向かっているとは到底思えなかった。まるで絵画でたまに見る歪んだ地形を歩いているかのような感覚だった。普通道が蛇の様にうねった形をしていたり、ハムスターが転がす遊具みたいにぐるりと一周し浮いている岩の大地……こんな道で普通に脱出など「ムリゲーにも程がある」と愚痴をこぼしたほどである。

 

なので、キアナは下に向かって進むことに変更した。どういうわけか、下に向かう道だけは見てわかるようなモノが多く、むしろ"こっちですよ"と道順を伝えている様な意図がある気がすると、キアナは何となく感じたから。こういう時は自分の直感を信用するべきだと、長年の経験則から得た判断だ。

 

「それにしてもすごい地形…月の景色もすごかったけど、こっちはなんというか……星が生み出した地獄っていうかんじだね」

「重力に逆らったマグマが木の根みたいに宙に浮いてたりしてるし、ほんと変な場所」

 

この酷い暑ささえなければじっくり観光してみたいほど美しく幻想的な大自然が創り出した(?)絶景。空を流れる溶岩の道、うねる岩石の道、量子の海から落ちた別の世界だという事実を知らなければ、この眼前に映るモノは夢だと思ってしまうだろう。あまり量子の海に関しての知識は持ってはいないが、量子の海に揺蕩う世界とは、何処もこのような感じなのだろうか。

 

「って何度同じ景色を見て同じ事言ってるの私!?今はそれより、この場所から出る事を考えないと!」

 

空を飛び、この煉獄を駆けるキアナ。道中壁から噴き出す溶岩しぶきや宙を流れる溶岩流に気を付けながら下へ下へと向かう。30分ほど飛び続け、通路であっただろう岩石の道が突如消える。周りを見てもどこにもない、あるのは幾つもの溶岩流が合流し、大きな火口へと通じているのであろう巨大な溶岩の川が流れているだけ…もしやここが終点だろうか。

 

「あれ?道がここで終わってる……」

「まさかここが終点?だとしたら出口があるハズだけど……それっぽい通路は無さそうだね」

「もしかして……?」

 

何かに気付き、溶岩の川が流れていく先を覗く。どうやらかなり先まで流れている様で小型の船程度であればぶつかることなく進めそうな程広い。どうやらキアナの予想はアタリのようである。

 

「この川にそって進まなきゃいけないの?空を飛べる力があってよかった……」

 

フワリと宙に浮かび、広大な溶岩流が進む方角へとフワフワ飛んでいく。かなり曲がりくねった道を飛び、さらに30分ほど経った頃、突如前方で流れていた滝が途切れて見えなくなった。前方から聞こえてくる液体が流れ落ちる音、どうやら道が途切れた樹の様に下へ落ちている様だ。滝を下った先は広大な溶岩だまり、所々黒い鍾乳洞の様な岩柱が溶岩から飛び出ている。どうやら此処がこの溶岩地帯の終着点、溶岩だまり、火口の中心点だ。

しかもこの場所、中心に大きな人工物のドームが忽然と存在し、天井はこちらも明らかにこの岸壁とは全く違う鉱石で構成された蓋に似た何かが閉じている。キアナの直感は、どうやら最適解な答えを導き出した様だ。その答えに行きつくまでに数か月掛かってはいるが……。

 

「どうやら此処が終着点の様だね。ゴールは…あの場所かな?」

 

ゆっくりと中心部のドームへ近づいていく。すると、真下の溶岩湖がゴボゴボと音を立て始め、激しさを増す。突如溶岩湖の一部が爆ぜ、溶岩流がキアナ目掛けて噴き出したのだ。

 

「危なっ!?一体何!?」

 

キアナはそれに気づき、すぐに横に避けて変わらずドームを目指そうとしたが、噴き出した溶岩流が向きを変えてキアナを追従し始める。明らかに自然現象ではない、すぐさま銃を取り出し、噴き出した溶岩流を撃ち抜き弾き飛ばす。

 

「このっ‼‼」ダダダッ‼

 

銃撃によって爆ぜた溶岩流は、力を失った王にバシャリと溶岩に戻り、火口の溶岩湖へと戻っていく。が、他の場所からも無数にゴボゴボと煮立ち始め……先ほどと同様、無数の溶岩が噴き出し、ある形を形成し始めた。蛇の様になだらかな流線形、噴き出した溶岩の先端が裂け、牙を伴った恐ろしい口腔を形成する。無数に噴き出した溶岩は、何十匹もの蛇の姿をかたどり、キアナを睨み咆哮を上げた。

 

『―――――――‼』

「こいつがこの場所のボスみたいな存在!?やっぱそういうの居るのね…」

『――――、――――…‼』

「悪いけど、私もやらなきゃいけない事があるの。あんたが守ってるモノ、見させてもらうよ!」

「「「「――――――――‼‼‼‼‼」」」」

 

"終焉を司る者"と"溶岩を纏いし蛇竜の群れ"が衝突する。高温の牙をもって噛み殺そうとする蛇の群れ、それを一体一体頭を吹き飛ばし倒していく。中には口から溶岩弾を飛ばし攻撃してくるものもいる。一体に気を取られ過ぎると、別方向から噛口が飛び掛かってくる。上下左右も気を付けなければならないが、それ以上に、真下の溶岩湖からの奇襲が何より警戒すべき攻撃。数が分からない上に溶岩と一体化し、姿が見えないのがなにより恐ろしい。

 

「―――――‼‼―――――‼‼」

「せいッ!やぁ!」

 

既に10数体も頭を吹き飛ばしているのだが、一行に数が減る気配がない。一体倒したと思ったら2体、3体倒したらその倍の6体出てくる。この敵は倒せば倒すほど分裂しているのではないかとすら思えてくる。まさかこの溶岩湖そのものが敵の本体だったりするのではと嫌な想像が頭によぎってくる。そんな時だった。とある一体を倒した時、はじけ飛んだ溶岩しぶきの中から奇妙なモノが飛び出てきた。キアナはそれに気づき急速に加速、溶岩湖に落ちる前にキャッチした。

 

それは赤いひし形をした砕けた結晶、奇妙にも溶岩の中に入っていた物だというのに全く熱を帯びておらず、素手で握っていても火傷するような感じはしない。これは一体なんだろうか、蛇竜には似たような装飾は無く、これがどこかの鱗の一部とも思ったがそもそも鱗を持っていない蛇の姿をしている。ではこれは一体……。

 

「蛇の内蔵とか?……ん、あれって――」

 

キアナの眼前には溶岩のドームで構成された何か。どうやら戦闘中にいつのまにか中心部分にまで近づいていたようだ。だが、その岸壁に奇妙な宝石が埋め込まれていた。キアナが手に持っているのと同じ形状、同じ色の宝石。岸壁をぐるりと一周するように宝石が並んでいる。

 

ただその幾つかの宝石はひび割れて割れてしまっている。明るい赤色が黒く澱み壊れたいくつかの宝石、そして手元にある同じ様に色がくすみ壊れた宝石……もしやと思い、こちらに飛び込んでくる蛇竜の一匹の首を斬り飛ばし、顔を銃撃で吹き飛ばす。飛び散る溶岩と共に砕けた宝石が現れる。そして、それと同時に壁に埋め込まれた宝石も同じくひび割れ、色がくすんでいく。

 

「やっぱり、この宝石と連動してるんだ!」

 

キアナは岸壁の周りを一周しながら残りの宝石の数を数える。一周した感じ宝石の数は100丁度、その中でひび割れた宝石の数は8つ。これらの情報から考えられる事実は、暑さで頭が回っていないキアナでも到達できた。

 

「なるほど……♪」

「つまり、あんた達を100体倒せばいいわけね!」

「―――――‼‼」「――、――‼」「――、―、―――‼‼‼」

 

キアナが振り向いた背後には、20体以上に増えている溶岩の蛇の群れ。その様相はまるで海にすむチンアナゴかな?なんて呑気に考えてるキアナ。その余裕は自身の力を過信しているゆえか、ただ楽観的か。いや、そのどちらでもないのだろう。彼女の実力は、偽ることなく自然体の状態こそが彼女とトップギア、最高の状態、最強の戦乙女であるのだ。

 

「さぁ、掛かってきなさい!」

『『『―――――‼‼』』』

 

蛇の轟きを合図と受け取り、90vs1の闘いの火ぶたが切って落とされた。四方八方から放たれる溶岩弾と蛇の口、それをまるで泳ぐ魚の様に流れるような動きで飛び避ける。次々と飛ばされる蛇竜の首、それを異に還さず蛇竜の群れはその数を増やし量で応戦する。

 

火山の深層、地下深くの溶岩だまりの中心で行われている激戦は、第三者からみれば怪物vs怪物の頂上決戦の真っ最中に見えているだろうが、現実はというと……

 

「86、87!」ダンッ! ダンッ!

「――――……‼‼」「――、――――――……‼‼」

「8、9、からの90!」ダダダッ‼‼‼

「「「―――‼‼――――――――……」」」

「よしっ♪あと10匹……!」

 

10分ほどの短くも長い戦いは、常にキアナのペースで展開していた。蛇竜は交戦している相手というより、動き抵抗してくる"的"のようになっている。キアナからみれば攻撃は遅く、まるでシューティングゲームやテーマパークのアトラクションをプレイしているかのように錯覚してしまう。

 

最初は敵として本気で戦っていた彼女であったが、今や一体一体倒していく感覚に楽しさとちょっとした快感を感じ始めてしまった。別に戦闘狂ってわけでも残虐性を持ってるわけでもないのだが、倒している敵が溶岩と宝石で構成されているからか生き物を殺している罪悪感が全くなく、ギミックを攻略中と頭が感じている様だ。

 

「98…99‼‼」ダンッ! ダダダッ!

「――――――……‼‼‼」

「―――…―――――――!!!!」

「これで、ラスト!」

 

火口に響く炸裂音――

キアナが撃ち放った銃弾が最後の溶岩の蛇竜を吹き飛ばし、100個目の宝石を砕いた。それと同時に岸壁を飾る最後の宝飾もひび割れ、溶岩のドームが震えだす。溶岩の一部が縦に割れ、その先の黒い石造りの建物に入る為の扉が現れた。

 

「どうやらクリアしたようね。それで、あそこに出口に繋がる鍵があるのかな?」

 

敵の気配は無し。本当に全て倒したのを確認し、ドームの先の建物の中に入る。溶岩に包まれていたとは思えないほど石の扉は冷たい、あの宝石に似たような性質でも持っているのだろうか。ゴゴゴと重く鈍い音を揺れを起こしながら扉を開いた先に待っていたのは……何もない広間だった。

 

「あれ……何もない?」

 

周囲を見渡しても何もない。エレベーターも、階段も、なんなら家具も証明すら見当たらない無機質とも捕らえられそうな只の広間。内部の壁面や床が多少色を持ちなんらかの模様を作っていなければ気が狂いそうな只の広い一室。……いや、部屋の奥は何かくぼみの様な部分が一つだけ置かれており、そこに何か刻まれている。

 

「なんだろう、文字なのはわかるんだけど……こんな字見たことない」

「昔任務でいった事のある遺跡とかでもこんな字見たことはないし……この泡の世界独自の文字かも」

 

歴史や語学はそこまで得意では行けれど、それでも昔見たモノを忘れるような脳はしていない。昔の記憶にも見覚えが無ければこの字がなんて書いてあるのか分かりようがない。だが…目の前の文字とは別にキアナの脳内に情報が刷り込まれた。まるで本棚に無理やり新しい本を入れられている様な感覚……それは、キアナの意志を無視し、その知恵を刻み込んだ。

 

「何…これ…あ、頭が…重い」

「("魔法"魔法って…!そんなモノが存在してるの!しかもこれ、問答無用で覚えさせてるんだ……だから頭が一気に痛くなってる!)」

「(ッ……!ブローニャなら大丈夫だろうけど、私や芽衣先輩とかは中々辛いね、コレ……)」

 

魔法に関する情報の全てを脳に刷り込み終えたのか、あれほど激しかった頭痛がフッと何も無かったかの様に消えていく。最初は気づかなかったが、キアナが頭痛で頭を押さえ下を見ていたので何が原因でこうなったのか理解する。

足元の床が魔法陣になっており、この下に居ると発動する仕組みだったようだ。その件の魔法陣は、自分の役目を終えると光が消えてなくなっていった。なるほど、こういうのが魔法というのか。

 

「「空間魔法」?"空の律者"の虚数空間みたいなモノかな?それとも何か違かったり……」

「……って、どう使うの、コレ?」

 

そもそもこの世界の知識を全く得られていないので、魔法の使い方も何も知らない。空の律者の時は脳で思った通りに展開し操作できたが、魔法の方も同じ様にできるのだろうか?

漫画やアニメ、ゲームとかだと詠唱が必要だったりするけど、いや最近は無詠唱がトレンドな気もしたが……。とりあえずいつもの様に虚数空間を使ってみると、地面に虚空の洞が開き桃色に輝く支柱が飛び出てきた。

 

「これはいつものと変わらないね……。ん?」

「あれ?もしかして、最初からコレを使えば出られたんじゃ……?」

 

この2ヶ月ほどの探索が徒労だったかもしれないという事実にようやく気付き、足から力が抜けていくキアナ。空の律者が行える瞬間移動を試したら、案の定成功した。部屋の端から端までの移動はもちろんの事。ドームの中から外の溶岩だまりの空間に移動する事もできた。

 

「……はぁ~~~~私ったら何してたんだか」

「まあいいや。とりあえずここから出ないと……ってあれ、くぼみの中に何かある」

 

謎の文字が書かれたくぼみの隣に小さい別の穴がポツンと開いていた。その中におそるおそる手を入れて中を探してみると……なにやら円形の物体が中に入っている様で、それを掴み腕を引き抜くと、その手に掴んでいたのは、円形のメダルがぶら下がるペンダントだ。

 

「こんなところに隠されてるって事は、コレが脱出の為の鍵かも!」

「それに、脱出口だと思う場所は既に目星を付けてるんだよねー」

 

黒い建造物から外に出てみると、首に掛けたペンダントが何かに反応し淡く光る。それに呼応し、上の天窓からゆっくりと開き、その奥からは光が小さい輝きがのぞき込んできた。

自身がかなりの深さに居るため光の先にあるであろう景色は目視できないが、あそこへと飛べば外へと出られるだろう。そしてその方法は、このドームで手に入る"報酬"空間魔法の使用が前提な様だ。

 

「まあ私は空飛べるから飛んで脱出できるんだけど、ねッ!」

 

少し足に力を籠めてジャンプし、宙に浮かぶ片翼の羽を羽搏かせそらを駆けるキアナ。天井に空いた穴を通り、地上に繋がる通路を一直線に飛び進む。

ドンドン真上の光が強く大きくなる光景が、自身が出口へと近づいている実感を感じさせ、さらに速度を加速させる。そして、その加速力を維持しつつ、眼前に広がる青白い光の奥へと飛び込んだ。

 

「出た―――――――‼‼」

 

眼前に広がる青い空。そして周辺を囲う巨大な砂嵐の渦、そして背後には天高くそびえる荒々しく火山が

熱気を放っている。その一角、岸壁の一部に穴が開いている。

おそらくあの場所がキアナが飛び出た火口の最奥部への通り道だったようで、キアナが飛び出た後に火山の大穴がノイズの様に揺らぎ、出口を完全に隠してしまった。幻覚によって出口かなり周到に隠している様だ。

 

「ペッペッ…!すごい砂嵐の壁……!あの中に入るのはちょっと嫌だけど、嵐の上を飛んでいけそうだね」

「よーし!待っててねブローニャ、芽衣先輩……。私が必ず探して見せるからね!」

 

勢いよく片翼が羽搏き、砂嵐の真上を飛び越える為にキアナを空へと運ぶ。

彼女はその後、この先にある砂漠の町である出会いを果たし、町の為に再度この火山へと舞い戻ることになるのだが、それはまた別のお話――




(⩌˰⩌)

こんな顔文字があるのを知ったので、今後ブローニャで使ってみようと思います!理由は……崩壊3rdをプレイしてる人ならわかりますよね? XD

作品の投稿日時、いつぐらいに上がってると嬉しいですか?

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