ユウカ「催眠……?」   作:えんどう豆TW

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ブルプロやってたら遅れました。


第4話

 

 

 

「あら、おはようございますユウカちゃん」

「おはよう、ノア」

 

 朝、セミナーの会議室を訪れたユウカと資料の整理中だったノアが顔を合わせる。お互いに挨拶が終われば各々仕事へと戻っていく、そんないつもの光景が今日だけは違った。

 

「…………」

「ユウカちゃん、昨日はどうでしたか?」

「きっ!? ……昨日は特に何も無かったわよっ?」

「声、すごい上擦ってますよ?」

「の、喉の調子がちょっと……」

 

 ぎこちない様子で受け答えをするユウカ。ノアは何かを探るように目を細めてユウカを見つめていた。そんなことには気づかず、ユウカは昨日のことを思い返していた。

 

 

 ────────────────────────―

 

 

 

 まだ、先生からの答えが決まったわけではない。いや、正確には決まっているのだが、今のユウカにはそれを捻じ曲げる手段がある。生徒と恋愛をしないと言った先生でも、命令されればユウカの恋人にすることが出来る。

 

「先生、私と……」

 

 付き合ってください。そう言うだけで成立する。他の娘に取られる心配をせずに済む。先生と恋人になれる。

 

「私と…………」

 

 言ってしまえ。言え。何度も心の中で自分の背中を押そうとしても、ユウカは1歩踏み出せない。だってこんなの、こんなの間違っている。

 

「っ……」

 

(やっぱり、無理っ!)

 

 ふぅ、とユウカは息を吐いた。何をやっているんだと自己嫌悪に陥りながらも、やらなければいけないことは遂行する。

 

「先生、このタブレットを見てから今この瞬間までの記憶を忘れてください」

「……」

 

 先生は相変わらずボーッとしていたが、ユウカは命令が届いていることを信じてアプリケーションを終了した。

 すると、先生の目に光が戻ってきた。

 

 "……はっ。あれ? 私今何してた? "

「…先生は眠そうに体を揺らしながら目を閉じてました。お疲れなんじゃないですか?」

 "言われてみれば、ここ数日はあまり寝れてないかも"

「もう、健康には気を使ってくださいとあれほど言っているじゃないですか」

 

 ごめんごめん、と謝る先生にユウカはため息をついた。どうせ大して改善しないだろうことがわかっているからだ。そもそもシャーレの顧問という立場上、彼に平穏が訪れる日は永遠に来ないと言っても過言では無い。

 

「今日はお仕事を早めに切り上げてお休みになってください。倒れてしまっては元も子もありませんから」

 "うん、そうするよ。じゃあ今日はよろしくね、ユウカ"

「はい、よろしくお願いします」

 

 そんなこんなで、ユウカのいつものシャーレのお手伝いは幕を開けた。危うく崩れてしまいそうだった日常は、なんとかユウカの理性によって守られたのだった。

 

 

 ────────────────────────―

 

 

 

 はぁ、とため息をつくユウカ。少しの後悔がまだ残っているものの、これでよかったのだと彼女は理解している。

 

「そういえば、使ったんですか? あのアプリ」

 

 来た、とユウカは内心で思った。昨日の今日なのだから、それはもう聞かれることを想定していた。そして先生の平和を守るため、ユウカは予め用意していた回答をする。

 

「ちょっと使ってみたところ、あのアプリは弱い睡眠導入効果があるみたい。先生があまりにもお疲れだったから試しに使ってみたら、そのまま寝ちゃったの」

 

 ハレには効果があったらしい睡眠導入。それを元にユウカはこれが眠らせるアプリであるということにした。先程まで様子がおかしかったユウカが流暢に答えるものだから、ノアは驚いて目を見開いていたが、直ぐに元の表情に戻った。そしてメモ帳を開きユウカの発言を記録する。

 

「ノアも使ってみる? 疲れが取れるかもしれないわよ」

 

 そこから更に追加事項を書き込もうとしたノアは手を止めた。

 

「特に睡眠不足は感じませんが…………ああ、そうです。ユウカちゃんが膝枕をしてくれたらぐっすり眠れるかもしれませんね」

 

 それはいつもの揶揄い。ユウカはこういうことを言うと顔を赤くして声を荒らげるものなのだが。

 

「……いいわよ、別に。それで休めるならね」

 

 いつもとは違う反応に再び驚くノア。

 

「ユ、ユウカちゃん? もしかして熱があるんですか? それともなにか体調が……」

「な、なによ。そんなに変だった? じゃあしないけど……」

「い、いえ! そんな事ないです! 大丈夫です!」

 

 慌てて否定するノアに今度はユウカが驚く。彼女が取り乱すことは珍しい。

 

「え、えぇっと……」

「さ、ユウカちゃん。そうと決まればお昼寝しましょう。休んでから仕事をした方が効率がいいですから。あちらのソファで構いませんよね?」

「ちょっと、ノア!?」

 

 背中をグイグイと押すノアに連れられ、ソファに座らされるユウカ。どうにか言及を逃れたのは良かったものの、余計なことを言ったかと激しく後悔する彼女であった。

 ノアの記録には3時間近く空白ができたのだとか。

 

 

 

 

 

 

「ところで、なんで催眠アプリなんて作ったのよ?」

「ゲヘナの生徒会に催眠術使いがいるらしいよ。私達にだって出来るとヒビキが張り切ってしまってね」

「それ、本当なの……?」

 

 後日、睡眠導入アプリとしてより強化された催眠アプリは見事特許を獲得した。尚、ゲヘナ学園とその周りを調べてみても催眠術の存在は確認できなかったようだ。

 

 

 




一応これでおしまいです。ノアのユウカちゃんって呼び方本当に好き。
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