巨大ロボットSF世界に量産型クローンとして転生したけど幸せに生きたい!   作:夢泉

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序章:いつかどこかの戦闘宙域(IN SPACE WAR)
『不殺の堕天使』


 

『ぅうわああああああ! (ひる)が! 蛭がぁあああああ!!』

 

 第208小隊の回線から断末魔とでも言うべき悲鳴が聞こえてくる。

 今のはハヤトの声だ。鬱陶しいくらいに絡んでくる奴だが、常に明るくて好ましい青年だった。だが、今の絶叫からは深い恐怖しか伝わってこない。

 

 ――『蛭』。当然、言葉通りの意味ではない。この宇宙空間に蛭なんて居るわけがないのだから。

 それは作戦上のコードネーム。ここ最近、戦闘宙域において目撃される小型のビット。その大群を指す暗号だ。

 基本的な形は、桃色の光るラインが走る漆黒の流線形。そこに、まるで昆虫の羽の如く2つの枝分かれが存在する。その大きさは精々1m程度しかなく、数えられない程の物量が高速で宇宙空間を駆け巡る。

 そして、何より――

 

「機体が動かない!? これが噂の……!」

『警告。フルハート残量急減。残量15%』

 

 『蛭』は枝と本体の三又で巧みに機体の各部に付着する。そして、付着した『蛭』は機体のフルハートエネルギーを奪っていく。まるで、蛭が人間の血を吸うように。

 当たり前だが、エネルギーが無くなれば機体は動かない。一切の抵抗を封じられたまま冷たい宇宙空間に放り出されてしまう。直前まで自らを守る盾であり敵を貫く矛であった相棒(マシン)は、物言わぬ冷たい棺桶に成り下がる。

 

「動け! 動けよ! クソっ、どうして……!」

『警告。フルハート残量9%。即座に母艦へ帰還してください。繰り返す。即座に母艦へ帰還してください』

「じゃあ動かせよ! 動かしてくれよ!」

『…………』

「都合が悪くなったらダンマリかよ、クソAI! そもそも、その帰る母艦は何処にあんだよ!」

『375秒前の通信を最後に連絡が取れません。目視での確認を行ってください』

「じゃあ落とされたんだよ、クソったれ!」

 

 戦艦ナキサメは既に当てにならない。

 今の俺と同じように全フルハートエネルギーを吸収されて行動不能に追い込まれたか。俺たちマインダーパイロットを見捨てて戦線を離脱したか。あるいは、もう既に撃沈されてしまったのかもしれない。

 少なくとも補給が出来る状態でない事は明らかだ。

 

「せめて一発。一発を奴に……ッ!」

 

 撤退すら出来ない今、せめて敵に一矢報いたい。一太刀だけでも浴びせてやりたい。

 しかし――

 

「何が不殺の堕天使だ……! 馬鹿にするんじゃねえ!」

 

 ――戦う事すら奴は許さない。

 たった一機で、一カ所から微塵も動く事すらなく、ただ退屈な作業のように戦場を無力化してしまう。

 命奪わぬ慈悲深い“戦争”を、慈悲なく戦士に叩きつける。

 

「俺様たちは戦士で、ここは戦場だ! 戦場なんだぞッ!」

 

 見つめる遥か1km先。そこには、この宙域で唯一生きている機体……戦場の支配者が佇んでいる。

 これだけ離れていてもハッキリと認識できるのは、ソイツが戦場に似つかわしくない色を……鮮やかな桃色で機体を染め上げているからだ。

 どこまでも戦いを、戦士を、愚弄している。

 

「戦え! 戦えよ! この俺様と! このジャロ・オブセッションと戦えよおおおおおおお!!」

 

 

◇◇◇

 

 

『――作戦宙域の完全制圧を確認。我が娘フェルマータ、速やかに帰還せよ』

「はぁ。ここにも主人公は居ませんでしたか。期待外れでしたね」

『またそれか。お前はいつも意味不明な事を言う』

()()はお父様の最高傑作ですから」

『……まさしく、その通りだ。これからも私の想定を超え続けろ。契約通りにな』

「えぇ、契約通りに」

 

 宙域に展開していた全てのウサギさん達を回収していく。

 桃色の機体に集った黒ウサギさんは、機体の腰部分からフワリと広がるように――スカートの形となって回収される。

 うん、やっぱり可愛い。

 

「任務達成を確認。フェルマータ、ファースト・ラブ帰還します」

 

 

 

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