後藤、もうひとり。   作:最条真

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1時間で書けちゃった♡


猫背の虎への幸福祈願

姉が虹夏先輩と良く分からない邂逅を果たしてる件。

 

そして姉がそこまで怖がってない件。

これはとても珍しい事例で、めちゃくちゃすげーことなのである。

 

扉をこじ開け、外に姉を連れ出し、十分な睡眠をとらせた後の出来事。

 

後藤ひとりを速攻で病院に連れて行った。

ギターを弾きまくっているこのアホは、健康診断なんて当然受けてないし、髪の色は何かくすんでいるし、クマはやべーし声は小さいし瞳は濁ってるし、なんだかもう、素人目からみてヤバいと分かった。

何らかの精神疾患を患っている可能性まである。

 

以前から病院に行こうと再三言っているのだが、相手は嫌の一点張りで、どうしようもなかった。

しかしこの度の要請は私が付き添う条件なら、とあっけなく頷き、全力で病院まで連れていき、結果は、精神疾患のオンパレード。

 

予想はしていたのだが、まぁ案の定ヤバかった。

もう少し放置してたらもっとヤバいことになっていたらしい。

やはりあの日連れ出して正解だった。

 

どうやら後藤ひとりは私とギターで精神の安定を図っている節があるらしい。

私が近くにいる状態なら、まぁヤバいくらいのコミュ障でギリギリ押し通せる。

私から離れた状態で、尚且つギターが手元にない場合、姉は人ですらなくなって会話自体が困難になる。

 

言葉に詰まり、吐き気を催し、瞼を閉じることもできず、頭をつんざく頭痛がして、恐ろしい幻覚を見る。

 

これは少しずつ、本当に少しずつ直していくしかないとのことだ。

 

あといろんな薬も貰った。

抗うつ剤とか、睡眠薬、精神安定剤、鎮痛剤など、もろもろである。

 

とにかく私が居れば症状はかなり緩和されるので、最近では寝食やお風呂を共にすることが常で、私が学校を早退することも多くなった。

 

とにかく私は、妹として生まれてしまった責任を果たすために、姉を支え続けなくてはいけないのである。

 

あまり苦には思わない。そもそも私はシスコンだった。

 

姉の最近の一日の始まりは、おくすりを呑むことから始まる。

昔から薬を飲んだりするのは苦手な姉だが、よく頑張っていると思う。

 

そう、姉は頑張っている。

薬は飲むし、頑張って外は歩いたし、コンビニの店員にレジ袋を頼むことだってできた。

 

少しずつ、少しずつ。

暗中を模索するかたつむりのような、死ぬほど遅い歩みながら、姉は頑張っている。

 

私は、この人に幸せになってほしいと、心の底から思う。

 

あなたが幸せになるためだったら、私は何だってしてあげたい。

 

家族だから? 姉妹だから? 双子だから?

 

どんな理由もなんだか違って、私はこの感情に名前を付けれずにいる。

良く分からないけれど、姉は私にとって、死ぬほど幸せになるべき人間なのだ。

 

私の寿命がもしも永遠なら、彼女が死ぬまで傍にいるけど、現実とはままならない。

結局人間だから、いつ、どんな理由で死んでもおかしくないのだ。

 

私が死んだとき、姉はどうなるのだろうか。

そんな想像が、酷く恐ろしい。

 

考えたくもないから、考えないようにしている。

 

例え、いつ私が死んだとしても、姉には幸せに生きてほしい。

そのために、私は姉に苦痛を強いて、無理やり太陽を見せる。

 

私は姉のためなら悪魔になれる。

あなたが幸せになるためなら、私は死んでも構わない、なんて。

 

生きる理由が分からないから、死ぬ理由を探して。

私は結局、贅沢な自殺の方法に飛びついたに過ぎない。

 

まぁ、ここまで長々語ったが、姉に幸せになってほしいのは本心だ。

 

私がお手洗いに行っている最中に起きた虹夏先輩と姉の邂逅。

 

これはチャンスかもしれない、と私は思った。

『後藤ひとり社会適合計画』の長い長い第一歩目に、なるかもしれない。

 

私は後藤ひとりを社会復帰させることを諦めていない。

私だけは、絶対にあきらめてはいけない。

 

ありとあらゆる手段を講じ、姉がどんな苦境に立とうとも支える気概はある。

社会復帰という言葉を借りたが、姉が幸せになる手段の一環だ。

 

とりあえず、一人でコンビニに行けるようになって、友達をつくるのが理想形。

ハードルが低いって? 後藤ひとりだぞ。

 

あわよくば虹夏先輩と仲良くなってくれないかなー、と思う。

ほんっっとに珍しいことに、姉がそこまで怖がってないので、この出会いをきっかけにして、どーにか少しでも、姉がいい方向に進むことを祈る。

 

「もとりちゃんから話は聞いてるよ。……ひとりちゃん、だよね?」

「あふぃッ!? そうですッ!?」

 

ははっ(乾いた笑み)知ってた。

公園のベンチに座って二人の睦まじい会話が始まるのかと言えば、まぁそうではない。

 

コンビニの店員の他に家族以外で喋る人なんていないもんね。

それはこうなる。コミュ障の更に上をいくリアクション過剰なもうヤバい奴ができる。

 

姉の情報は事前に伝えてあるので、虹夏先輩は横目でちらっと私を見た後に頷いて、コミュニケーションを再開してくれる気満々である。

 

「あ、ひとりちゃんって呼んでよかった? それより自己紹介が先か。私、伊地知虹夏! もとりちゃんの先輩やってます!」

「アッ!? ごっ、ご親切にありがとうございますっ!?」

 

姉はテンパっているが、これでもよく喋れている方だ。

店員にレジ袋を頼むときなんか作画が崩壊していたからな。

今はしっかり、人間としての体を保っている。

 

「ひとりちゃん下北によく来たねー。ここに来た理由はーー、ギターの新調とか?」

「あっ、よくご存じで……」

「ピンときちゃった。もとりちゃんよくひとりちゃんの話するからなー」

「へ、へぇ……」

 

よし、少し興味ありげにしてる。

ちょっと立ち去りたい感もあるけど、話聞きたさもある感じの奴だこれ。

 

虹夏先輩はチラッとこっちを見た。

私は作戦続行のジェスチャーをした。

 

ああ、ちなみにここまで大体私の仕込みである。

 

ある条件を餌に虹夏先輩に協力を要請したのだ。

条件がなくても協力してくれたと思うけど、後日になって、バンドの失敗話を聞かされたからね。

 

虹夏先輩はむしろふっきれたようで、笑い飛ばしていたけれど。

 

少し思うところはあるし、先輩たちのバンドの成功のために、私にできることがあるというのだから協力してあげたいし、あわよくば姉の社会復帰に協力して欲しい。

 

そんな思惑あって、まぁ虹夏先輩はトライアンドエラーを繰り返してくれるわけだ。

本当にありがたい。

 

この後の話の流れで無理やりにでもお店までついてきてもらうからな。

強引かもしれないけど、許してほしい。

 

 

あなたが陽の光に当たって笑えるようになるまで、私はきっとこんなことをするから。

 

 

いつか絶対、幸せになってね、お姉ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




姉の幸せのためなら死ぬことも辞さない。
もとりちゃん、ちょっと病んでるね?????
条件って何だろーね。私、気になります。

ひとりがぼっちになるかは未定。
ひとりちゃんのままかも。作者もそこまで考えてない。

次回、ギターヒーロー、演奏披露。
ちなみにこの世界線の後藤ひとり、一定の条件下なら歌も歌えます。

喜多ちゃん、このままだとマズいぜ……。
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