〜序章〜
「おーーい!アルルー?アスカー?………おっかしぃなぁ」
俺はアムール、地質調査員だ。今日はこのアスバルト火山の奥地にて珍しい鉱石が見つかったらしいので上官の命により派遣されたのだが、護衛で着いて来た騎士ふたりが偵察に行ったまま帰ってこないのだ。
仕方なく探しに来ているのだが、流石は火山、中は灼熱地獄。クールの呪文が使えなかったら今頃俺は焼肉だった。
「何処まで行ったんだ?あのふたりは。
そういや、何かいきものが居ないなぁ。
何時もなら、この時間帯はマグマリザードが餌を求めて這いずり回ってる筈だが………」
マグマリザードとは、溶岩の近くに巣を構える非常に高い耐熱性を持った甲殻に身を包む大きさ1〜1.5mの小型のドラゴンだ。翼は無いが、溶岩の中を泳ぐかの如く進めるため、溶岩のある場所なら必ず5〜6匹は居る筈なのだが、今日に限って今だ一匹も見つからない。
「むー………もう少し探してみるか。で、探す途中でその鉱石を拾えば良い。それにしても、今日はやけに火山活動が活発だな」
最悪、ふたりを無視して帰るという手段も「アムール!」と噂をすれば。
「何処に行ってたんだ。心配しt………どうしたんだその顔は?真っ青だぞ?それとアルルは?」
「緊急事態だ。急ぎ戻ってアルツハイム支部に報告を」
「一体奥で何が有ったんだ?それとアルルは?」
「アルルは死んだ。突如、溶岩の中から40mをゆうに超える刺々しい赤黒いドラゴンが出て来たんだ!そして、奴が前方に吠えた瞬間、空気の竜巻のようなものがアルルを包んでいて、それが通り過ぎた後にはなにも残ってなかった。」
「なに!?」
「兎に角ここから早く逃げよう。出なければ…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
「な!?なんだ⁈」
「!?奴だ!溶岩に近づくな!」
突然地面が揺れだした。火山の小規模の噴火で揺れているわけじゃない。明らかに何かが近づいて来ている。それも大きな、アスカの言っていたモノが移動して居るかの如くな揺れだ。
そして………
ズシッ………ズシッ………ズシッ…………ズシッ
何かの足音。明らかに、マグマリザードのものとは違う。俺は溶岩から離れつつ、後ろを振り返って………後悔した。
そのモノは溶岩の中から………まるでここは自分の国だと言わんばかりにゆっくりと…そして威風堂々とその姿を現した。
最初に目に着いたのは、下顎から生える豪壮な一対の牙だ。あの牙ならどのような岩盤でも貫くことなど容易いだろう。
次に目に映ったのは、発達した前足。黒く変色し固まった溶岩でも、がっしりと踏みしめることのできるその前足にはこれまた規格外なまでに巨大な爪だった。かのモノが歩くたびに、固まってる筈の溶岩がまるで砂の如く簡単に抉らせる。
そして………その巨体から発せられているのであろう絶望を与えるかの如く圧倒的な覇気。二つ名を付けるなら、
“獄炎の覇王”
この二つ名こそ相応しい。
そこから先は覚えていない。ただ、必死に逃げている自分のことはよく覚えている。
次回、覇王降臨