「いいわよ、その調子。はい、こっちこっち」
両手両足に力をこめ、うごかす。目の前をとぶ、天使を追いかける。
「ディスちゃんは、ハイハイが上手でちゅね〜」
どんなにいそいでも、天使のラヴに追いつくことはできなかった。
はじめて、愛の神ラヴが天使の姿であらわれてから、しばらくの時間がすぎた。
父は魔物退治を終え、帰ってくるなり我にディスという名をつけて、また魔物の発生の報を聞き、出て行った。
いそがしいことである。魔物とは動物の一種だろうか。魔物の神など天界にいるときは聞いたことがない。
男爵という地位にいるのに、自ら戦場にいくのも人手がたりないのか。
名前が神であったときと同じなのは、どうせラヴや他の神が手をまわしたのだろう。
「あら!ディスさま。かってにベットからでて動いてはあぶないですよ」
メイドがあわてて部屋に入ってきて我をかかえ、ベットに戻す。
メイドもいそがしいのか、つきっきりとはいかず、隙をみてはなにかちがう仕事をしているようだ。
お昼寝をしていたら、ラヴがあらわれて、からかってきたので追いかけたのだが、捕まえることができなかった。
「あうー」
声はだせるようになったが、まだ言葉とはならなかった。
(なんのようなのだ!毎回、意味ありげにきてはからかいおって。ヒマなのか)
「あら。いそがしい中、ハイハイが上手になったというディスちゃんを見るためにわざわざ地上まできたというのに。つれないわね」
いまだ、天使のラヴは我の前を飛んでいるが、メイドは気にしていない。見えても聞こえてもいないのだ。
(ふん。ハイハイはマスターした。じき、歩けるようにもなるであろう。言葉をはなし、元に戻る方法をさがしてみせる!)
「すごいわね〜。でも、あまりいそぎすぎるのはどうかしら?早熟ですめばいいけれど。気味悪がられたり、場合によっては悪魔つきなんて思われてひどいことになっちゃったりして」
(む。たしかに、我は人の子の普通というものがわかっていない。あまり泣かなかったり落ちついていて不思議がられていた)
目立つのはひかえるべきか。どうせ子供のうちはなにもできない。ゆっくりと機会をまつべきだ。
「そうそう。それがいいわよ。ゆっくり歩けるようになりなさいな。最初にしゃべる言葉はラヴでよろしくね」
ラヴはそういって、消えた。
我もハイハイで疲れたので、眠ることにする。
夢のなかでは、ラヴをつかまえていろいろと想いをぶつけることができた。
「にへへ」
赤子の顔に笑みがうかぶ。
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