イナズマイレブン 雷鳴への挑戦   作:For AP

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一章 ドイツでの日々
1話:プロローグ


 

 

 

 真っ白な病室で俺は1人夢を見た。

 

 身体を気にすることなく全力で、死力を尽くして何かに打ち込める健やかさを。

 

 運命に望まれ、世界に愛された才能を。

 

 人並みに優しく、暖かで知識を育むことができる環境を。

 

 共に喜びを、怒りを、哀しみを、楽しみを分かち合うことのできる友を。

 

 全て今の俺にはなかったものだ。

 

 意味のない願いだと思いつつも、ただひたすら俺の後悔を想起する。

 

 俺の命の灯火はあと数刻で消え去ると自覚しているから……

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 

 

 唐突だが。俺は転生してしまったようだ。

 

 先天的な病気の悪化によって、20歳ちょうどになるというめでたい年に死んでしまった……はずなんだが、俺の意識は暗闇から覚醒し、また現世に戻ることができた。

 

 病室の冷たいベッドの上で意識が消失したと思ったら、人肌の暖かい温もりを感じて目覚めたのだ。しかも……

 

 

 目の前には巨大な女性の人影……抱きかかえられている……コレ転生だなぁ!? 

 

 

 ということで、生まれたての俺は転生したという事実を把握したのだった。前世から転生というコンテンツを消費していた立場だったから、あまり戸惑いはなく現実を受け入れられた。

 

 にしてもとてつもなく驚いたけどな。でもそれ以上に……もう一度人生を謳歌するチャンスが与えられたことを嬉しく思った。

 

 

 それからは、生前の子供時代をなぞるように過ごし、4歳の今に至るというわけだ。最初は両親が何を言っているのかわからなかったが、断片的な知識をかき集め整理することで、情報を整理できた。

 

 それは

 ・前世と同じ地球に生まれ変わったこと

 ・俺が生まれたのはドイツであること

 ・俺が死んだ2023年より過去の世界であること

 ・両親がめちゃくちゃすごい人たちであること

 

 大まかに分けるとこんなところだろう。地球に転生したというのは、少しロマンに欠けるような気もするけど、俺にとっては十分な環境だ。

 

 

 健康的で、思うがままに動く身体。

 

 スポンジのように何もかも吸収する澄み渡った知性。

 

 優しい父と母に恵まれ、可愛い双子の妹までいる暖かい家庭。

 

 俺の願いがほとんど叶えられた楽園がそこにはあった。前世の環境なんかよりもよっぽど素晴らしい世界で、楽しすぎてあっという間に時間が過ぎ去ってしまうほど、恵まれた生活だった。……赤子の頃の恥ずかしい記憶はもう忘れました。

 

 

 

 こうして今までの遍歴を脳内で振り返っている理由だが……それは俺がたった今、とんでもない状況に置かれ、人生の岐路に立たされているからだ。あれは選択しなければならない。

 

 

 

 俺は先程、庭で運動していた時。父さんから一緒にテレビを見ないかという提案を受けた。なんでも父さんは家族だけでなく、家で仕事をしているメイドや執事まで集めてスポーツの観戦をしようじゃないかというのだ。

 

 飲み物から軽食まで、様々な物を我が家で1番大きいテレビの前に用意する。大人数なことも相まってさながらパーティーのようだ。

 

 そこまで準備をして何を観戦するのかというと……サッカーの試合だった。

 

 ドイツ対日本。俺の今生の母国と、前世の母国の直接対決だ。

 とてつもなく大きい会場は満員で、すべての人々が凄まじく熱の入った応援を繰り広げていた。

 俺はそんな様子を眺めながらやけにカラフルな髪色や髪型の人が多いなぁ……と思っていたのを覚えている。今思えばここで疑問に感じるべきだったのだ。俺も妹も地毛が銀髪だから人のことは言えないけどさ……

 

 

 

 

 ピーーーー

 

 

 スタジアム内に試合の開始を告げるホイッスルが鳴り響いた。画面に表示されたタイマーが時を刻み始める。

 

 前世でもサッカーの観戦をすることはあったので、観戦を何だかんだ楽しみに待っていたのだが……試合開始直後から今まで見てきたサッカーの試合とは全く異なる試合展開が待っていたのだった。

 

 

「おおっと! ドイツ代表────試合開始早々、いきなり強烈なドリブルを仕掛けていくぅ!!」

 

 

『ダッシュストーム』

 

 

 ドイツ選手が両手を広げると共に、暴風が吹き荒れ、日本選手が吹き飛んだ。

 

 

「猛烈な一点突破だぁ!! 試合開始直後、ドイツ代表の苛烈な攻めが日本代表を襲う!!」

 

「しかし、日本代表もそれだけで終わるほど弱なチームではなぁい!! 日本が誇る不沈山脈────がゴール前で待ち受けているぅ!! この人を突破しないとシュートは打てないぞドイツ代表! どうする!!」

 

「おおっと! 背後に仲間はついていない!! 無謀にも強行突破を選んだようだ! しかしそれを日本代表が許すわけがない!!!」

 

 

『メガクェイク』

 

 

 日本代表がその巨漢に見合わぬ跳躍力を発揮し、勢いよく飛び上がり、地面を踏みつける。すると大地が大きく隆起し、ドイツ代表は宙に浮いた。

 

 

「ドイツ代表────は吹き飛ばされ、ボールが日本代表の手に渡る!! これは独断専行しすぎたかぁ!? 日本代表は冷静にボールを回し、前線へと繋いでいくぅ!!」

 

「隙を見せないボール運びダァ!! あっという間にボールはドイツのゴール前まで迫っている!!! おおっとぉ!!! 日本代表FW────ドイツ代表の守備陣をするりするりと躱して、既にシュート体勢だ!!」

 

「ドイツ代表残されたのはGK────ただ1人!!! この危機的状況を乗り越えることができるのか!!」

 

 

『ダークトルネード』

 

 

 高く──高く蹴り上げたボールに対し、捻りを加えた跳躍を行うことで漆黒の螺旋を描く。そして力強く蹴り込まれたボールは闇の力を宿し、凄まじい速度でゴールに突き進んでいく。

 

 

「日本代表────の必殺シュートがゴールは迫る!! 対するGK────も真正面から受け止める構えだぁ!!!」

 

 

『セーフティプロテクト』

 

 

 半透明な青色のライオットシールドがゴール前に立ち並び、強烈なシュートに立ち向かう。ジリジリと、力のせめぎ合いが続いている。

 

 空気が重い。画面越しにでも伝わってくる緊張感が、家の中で伝播する。

 日本が攻め切るのか、ドイツが守り切るのか。先制点は決まるのか決まらないのか。

 

 俺はあまりの緊迫感に唾を呑んだ。すると……おもむろにせめぎ合っていた力の均衡が破れる。

 

 ゴールネットがふわりと揺れる。盾が崩れ落ち、闇の力を纏ったボールがゴールに突き刺さったのだ。

 

 

「ゴール!!!! 試合直後の攻防を制し、先制したのは日本代表!!」

 

 

 ……観客の歓声が会場に鳴り響く。それと同時に、ドイツを応援していた父さんの慟哭も家の中に響き渡った。妹は呆れたように……母さんは優しげに父さんを見つめている。メイドや執事も悔しげな言葉を口々に出していた。

 

 

 一方俺はというと……

 

 ピッチ上で繰り広げられていた必殺技の応酬を見て、あることに気づいていた。あれは……かつて……小学生の頃慣れ親しんだ……あの作品の……あの技だ。

 

 

(あぁ〜コレェ〜ちょうじげんだぁ〜)

 

 

 この世界がイナズマイレブンの世界だということに気づき、転生した時以上に動揺し、脳が蕩けてしまっていた。啓蒙が低かったのかもしれない。

 

 

 いや!! 確かに超次元の片鱗はあったよ? 

 例えば俺と妹は銀髪蒼眼の超美形幼児だし、父さんと母さんなんて、俳優と女優みたいな誰もが認める美人夫婦といった非現実的な容姿をしている。それに俺の家は、超がつく程デカいしめちゃくちゃ裕福ってこともリアリティに欠けている。

 

 だからと言って、サッカーをすると超常現象が起こる世界だとは思わないじゃないか! 

 シュートをすれば炎は迸るし、ドリブルをすれば暴風が吹き荒れる。まして、シュートをキャッチしようものなら、背後に魔神が出るんだぞ!? 

 

 そんなの現実にあるとは思わないじゃないか。だから気づかなかった俺は悪くない!! 

 

 いや……誰にも責められてないか……

 

 でも……ここがイナズマイレブンの世界だとしたら俺はすごく嬉しい。なんせ……俺は大がつくほどのイナズマイレブンファンだからだ。無印からGOまでの合計6作を残さずやり込んだ。死ぬ間際にはようやっと新作も出るって話だったけど結局どうだったのかな……

 

 いやいや! 後悔なんてのは後でいいんだ。気を引き締めるためにピシャリと頬を叩く。どうにも気分が高揚して、思考がふわふわしている。状況を整理しなければ。

 

 俺はイナズマイレブンの世界に転生したことは間違いないだろう。家にある設備とイナズマイレブンで描かれた設備を思い出して比較してみると、うちの設備の方が古そうだ……ってことはイナズマイレブンのお話は、未来に位置しているのだろうか?コレは後でよく調べておくべきだな。

 

 あと気になるのは……この世界は無印世界線ってことでいいのだろうか……? うーん……今の所わからないけど、日本の会社とかを調べられればわかるかな? アレスの天秤だったり、オリオンの刻印の内容は正直あまり把握してないから自信はないけどな……

 

 とりあえずこの世界がイナズマイレブン無印世界線で原作の開始前だということを願って俺の目標を考える。いや……それはすでに決まっていたな。イナズマイレブンに関する夢といえばアレだろう。

 

 

【最高のライバルとして円堂君と世界の頂で戦いたい】

 

 

 

 コレは小学生の当時、イナズマイレブンを通じて見ていた夢だ。原作の流れを崩してしまうかもしれないけど、俺は円堂くんと仲良くなって、ライバルになりたいのだ。そして最後には世界最強の座をかけて、フットボールフロンティアインターナショナルで争いたい。

 

 まさか今になっても思い出せるほどの強い思いがあるとは思わなかった。それほどまでにイナズマイレブンというゲームの体験は少年時代の俺にとって鮮烈な記憶だったのだろう。

 

 

 俺はあの熱血で宇宙一のサッカーバカと呼ばれるを彼を尊敬している。優しくて仲間思いな彼を知っている。俺は太陽のように輝く彼に惹きつけられた人々の内の1人なのだ。ならば俺は彼に会わなければならない。

 

 

 彼に出会えたとして、

 

 彼を影から応援するのもいいだろう。

 

 仲間として彼と共に世界一を目指すのもいいだろう。

 

 しかし俺は彼とは違う道を歩もうと思う。

 

 俺には他の人たちにない知識がある。超次元サッカーに関する知識も……未来の想像図ですらもだ。

 

 俺には円堂くん達の強さがわかる。だからこそ、俺は努力を怠らないだろう。

 

 俺には失敗と後悔がある。前世で成し遂げられなった全てを今世にぶつけ、夢を叶える。

 

 円堂くんと戦うことでしか得られない何かがきっとあると思うのだ。

 

 鬼道が、アフロディが、レーゼが、デザームが、ヒロトが、フィディオが、ロココがそうだったように。大切な何かをもたらしてくれるだろう。

 

 

 だから俺は彼と、円堂守君と闘うのだ。世界最高の舞台で凄絶に。壮絶に。守君が戦うであろう他の誰よりも、強く。そしてカッコいい男にならなければいけない。彼の最高のライバルとして相応しい存在になれるように。

 

 

 ならば今すぐトレーニングだ! 鍛えて鍛えて、円堂くんに負けないように必殺技を覚えるぞ!! 

 

 精神年齢は20歳を超えているにも関わらず、俺は未だに子供心を忘れていなかった。いやーやっぱり必殺技は使ってみたいよね〜

 

 

 そう脳内で机上の空論を繰り広げた俺は、絶対に目標を成し遂げるという決意を胸にガッツポーズをした。

 

 

 

 

 

 

 あぁごめんなさい……

 

 ……父さんにドイツを応援しなさいって怒られた……ガッツポーズはそういうつもりじゃないのに……勘違い……

 

 まぁでも将来的に円堂くんとFFIで戦うことを目指すならドイツ代表になることは必要不可欠だ。観戦をして、知識を深めるとしよう。

 

 

 

 うぉ──!!! これから忙しくなるゾォ!! この超次元の世界で俺は生き抜かなければならないんだからね!! 

 

 






息抜きの作品なので、投稿はモチベーション次第です。
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またフェアリーテイルの二次も投稿しておりますので、ご興味ありましたら作者名から飛んで見ていただけると嬉しいです。

主人公、アインのイメージです。ご自身の想像が優先の方やAIイラストが苦手な方はご注意ください。

  
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