イナズマイレブン 雷鳴への挑戦   作:For AP

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10話:ドイツ最強(小学生)

 

 

 

 青く澄み渡る空の下、グレイブランドスタジアムに押し寄せた観客が大歓声を上げている。最大収容人数60000人を誇るその観客席は、人々によって埋め尽くされ、大勢の人々が人の波のように見えた。

 

 そんな観客たちの目的はもちろんサッカー。この世界1番の人口をもつスポーツであり、この世界1番の人気を誇るスポーツの観戦である。

 

 今日行われる大会は、ドイツの小学生最強クラブチームを決めるためのもの。小学生たちの努力の結晶を示す発表の場だ。

 

 本来ならばサッカーの技術が本格化し始める中学校サッカーと異なり、小学校サッカーにはここまでの人気はないのだが、何らかの要因が観客たちをドイツ各地から呼び寄せていた。

 

 

「みなさんこんにちは! 待ちに待った日がやってまいりました!! ドイツ小学生サッカークラブチーム選手権大会決勝がここ、グレイブランドスタジアムにて間も無く行なわれようとしています!!!」

 

 

 ドイツ国内ではお馴染みの解説が、高らかにアナウンスを始めた。彼は軽快なノリと、的確な実況によって人気を博しており、小学生から大人まで、重要な試合の解説を任されることが多かった。

 

 

「本日は終日、晴れの予報となっております。これなら何の懸念もすることなく、大会に没頭することができそうですね! 本日は実況の──―と解説の────さんでお送りします。よろしくお願いいたします」

 

「よろしくお願いします」

 

 

 解説は現役時代、ヨーロッパの強豪クラブに所属し、ドイツ代表にも選出されたことのある有名選手だ。本来ならば小学生大会の解説を務めることはないほどの大物であるが、その人が解説を務めている。それだけで、この大会の世間からの注目度が計り知れるだろう。

 

 

「────さん本日のマッチアップはドイツ南部から決勝まで進出した【ヒンメルクラウン】と、北部から進出した【アルプトラオム】の試合となります。────さんズバリ、この試合の注目箇所はどこになるとお思いでしょうか?」

 

 

 実況は隣の解説に話題を振り、司会開始までの間を繋いでいく。

 

 

「そうですね────やはり、圧倒的王者ヒンメルクラウンにアルプトラオムがどこまで食いつけるか……といった展開になると予想されます」

 

 

 解説は、手元に用意した書類を確認しながら語り始めた。

 

 

「ヒンメルクラウンは、

 

 FWに【赤月の刃】ムクロ・アスマ。

 

 MFに【ガンスリンガー】ヨナス・ポラック。

 

 DFに【忠誠の闘士】アレクサンダー・ハウゼン。

 

 GKに【フィールドの天帝】アインス・リヒター

 

 をはじめとして、全ポジション隙のないチーム力を誇っています。優勝予想には誰もがヒンメルクラウンを上げるといっても過言ではありません。アルプトラオムの選手も粒揃いではありますが、今一歩及ばないのではないか。そう考えられます」

 

 

「成程! ありがとうございます。確かにヒンメルクラウンは重要な記録もかかっていますし、負けられませんよね〜。おっと選手たちが各々のポジションへ歩いていきます。そろそろ試合が始まるようです」

 

 

 2つのチームはフィールドの両陣営にそれぞれ分かれてポジションにつく。張り詰めた空気がグラウンドの中に満ちていく。

 

 

「会場のボルテージも上がってきましたね!! 私も試合が楽しみです。将来の国代表となる可能性を秘めた逸材たちが揃っていますから、目を離せませんよ!!!」

 

 

 緊張感の高まりと同時に、観客の歓声も徐々に増していく。あまりの音圧に、衝撃すら感じてしまうほどだった。

 

 

 ピ──────ッッッ!!! 

 

 

 

 解説の言葉と共に、会場に笛の音が鳴り響く。タイマーが動き出し、試合の時を刻みはじめた。

 

 そうして、ヒンメルクラウン対アルプトラオムの決勝戦はスタジアムを人で埋め尽くしながら、大歓声の元、開戦したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────そして……何も起こらずに終わったのだ……

 

 

『ガンショット』

 

『忌み月』

 

『ペンギンパンツァー壱式』

 

 

 一方のゴールは何度も揺れ、一方のゴールにはボールが近づく事すらなかった。この試合はただただ、幾度も必殺シュートが打ち込まれるだけの作業でしかなかったのだ。

 

 

 

 ピッ! ピッ! ピ──────!!! 

 

 

 

 無慈悲にも試合終了を告げるホイッスルがフィールド上に響き渡る。いや、違う。アルプトラオムの選手たちにとっては、悪夢を終わらせてくれる救いなのかもしれない。

 

 

「ドイツ最強小学生の決定だぁ!!! 優勝はチーム【ヒンメルクラウン】!!! 前人未到の6連覇を達成!!」

 

 

 実況が勝利を告げる。しかし、その声も観客の喧騒によってかき消されてしまい、微かにしか聞こえない。

 

 その試合はあまりに圧倒的だった。思わず……私も応援の声を漏らしてしまうほどに。観客が、ヒンメルクラウンの力を称え、敗北者たちの幼い心を追い立てる。あまりの熱狂が、人々の思慮を浅くしていた。

 

 

「得点はなんと10対0!」

 

 

 アルプトラオムにとってはまさに悪夢だろう。なんせ、攻撃は完封され、相手の攻めを一度も止めることができなかったのだから。

 

 心が折れたのだろうか……アルプトラオムに所属している少年少女が膝を突き、悲嘆に暮れている。

 

 しかし、そんな光景も観客の目には全く入っていないようだ。私は自分が熱狂に酔い、リスペクトを失う人間でなかったことに心底安心した。

 

 

「試合をどうみますか解説の────さん」

 

「……そうですね。圧倒的だと言っていいでしょう。序盤、中盤、終盤隙のない試合運びでした。ボールの支配率、試合の流れ、共にヒンメルクラウンのものでした。シュート、ドリブル、ディフェンス、連携……いくらでもヒンメルクラウンの選手を褒めることができますよ」

 

 解説は、「でも」と前置きし、自らの経験から得た心理を語る。

 

「私はアルプトラオムの選手達が心配です。今回のことは忘れて今後もサッカーを頑張って欲しいです。私も小学生サッカークラブチームがここまでとは……思っていませんでしたから。……今回の事は事故とでも思うべきでしょう」

 

 

 観客たちの熱狂に釘を刺すように、解説が訥々と苦言を呈す。

 

 確かにヒンメルクラウンの勝利に酔った観客たちの熱狂は、敗北を喫したアルプトラオムの選手たちにとって毒であろう。少年少女が涙を溢す光景に、私も感情移入し、胸が苦しくなった。

 

 しかし、そんな言葉すら聞こえていないかのように、観客は無慈悲に歓喜の声を上げ続ける。それも仕方ないだろう。ヒンメルクラウンの人気はそれほど圧倒的だったのだ。

 

 

「そうですねぇ……アルプトラオムの子供達にとってはかなり苦い思い出になってしまったでしょう。コレを糧に更なる躍進を遂げて欲しいものです」

 

 

 実況は解説に同感の意を示す。しかし、立場上そのような暗い雰囲気を放っていることなど許されないのか、気を取り直して実況を始めた。

 

 

「…………いえ、違いますね。今はヒンメルクラウンの勝利を祝いましょう。ヒンメルクラウンは過去類を見ない、本大会6連覇を果たしました!! ドイツのサッカー界に新たな歴史を残したと言えるでしょう!!!」

 

「本当にすごい事ですよ。メンバーは移り変わり、成長も著しいはずの小学生サッカーにおいて、コレほどの結果を継続的に残し続ける事はとても難しい。確かに、これほどのファンがついている理由があるというものです」

 

 

 人はスポーツ観戦をする際、様々な要因によって応援するチームを決める。いわゆるファンと呼ばれるチームの後援者になる理由が必ず存在しているのだ。

 

 1人は地元のチームであるから。

 

 1人は自分の好きな選手がいるから。

 

 1人は魅力的なチーム方針であるから。

 

 1人は応援する事で得があるから……

 

 本当に理由は人それぞれだろう。

 

 しかし根本的な要因はそこではないのだ。

 

 人がスポーツチームを応援する理由……それはそのチームを応援することによって、

 

【勝利という名の一体感を手にすることができるかどうか】

 

 そこに尽きるのではないだろうか。

 

 

 

 その点、ヒンメルクラウンは過去5年間にわたって観客たちの期待に応え続けた。常勝無敗、完全無欠、史上最強……彼らのことを示す言葉は数多く存在しているが、そのどれもが彼らの力を褒め称えている。

 

 それに感性に由来する個人的意見を言ってしまえば、彼らの容姿は非常に優れて見えるし、カリスマ性も兼ね備えているように思える。要するに、応援したい!! 思わせるような子供たちが揃っているのだ。

 

 そうして観客を取り込み続けたヒンメルクラウンの人気は、もはやドイツ国内のプロチームとも遜色なかった。これほどまでに、将来を期待されている子供たちは世界的に見ても極小数だろう。

 

 ドイツ国内に数百万、数千万というファンが存在する、サッカーという競技の未来を担うのが、ヒンメルクラウンのメンバーだ。この子供達ならば、世界を獲れる。私もそう信じてならない。

 

 

 

 

 ここから先はこの試合の話ではないが、見ていただきたいと思う。

 

 

【ヒンメルクラウン】

 

 

 5年前まで、有名でもなかった中堅チームが突如ドイツ最強チームとなったことは記憶に新しい。あの時は、この大会の準決勝まで進出しただけで、素晴らしい成果だと言われていた筈だ。良くも悪くも、向けられていたのはその程度の期待だった。

 

 それが現在、ここまで唯一抜きん出たチームになるとは……誰も予想しなかっただろう。

 

 

 私、以外は。

 

 

 ────当時の数少ない観客しか知らないであろう事実がある。

 

 先ほど述べた、5年前の準決勝には怪物が現れたのだ。

 

 1人でフィールドを駆け回り、1人で守り、1人で点を決める。その化け物の姿は小柄な6歳の少年だったのだ。あまりの光景に、現実味がなかった。数々のサッカープレイヤーを見てきた私でさえ、例に漏れない。

 

 皆、嘘だと思うだろう。だが私は知っている。彼のポジションは、本来あそこではないことを。私はわかっている。彼の真価は未だに誰も見たことがないと。

 

 しかもこれが5年前の話だというのが恐ろしい。

 

 5年の月日を経て、あの怪物はどこまで上り詰めているのか、そんな怖いもの見たさな好奇心が、私を突き動かしている。

 

 これからも、ヒンメルクラウンのメンバーの取材や記事は、私が担当させてもらえるように直談判するとしよう。

 

 

 

 

 余談だが、ヒンメルクラウンというチームに対する過度な期待に、胃を痛める監督がいたという噂も聞こえてきた……確か、若手の監督だった覚えがある。あまりの人気と才能を背負う立場であるため、その重圧も計り知れないだろう。私はこっそりと監督も応援している。皆さんも応援してみたらどうだろうか? 

 

 

 

 

 

 ────────こんなところでこの大会のコラムはいいかな? デスクに提出しよう。  (とある記者)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ……とりあえず6年間ドイツ最強をキープすることができたか。円堂のライバルを目指すんだったらこのぐらいのことはこなして見せないとな。

 

 ……でも……毎度のことだけど、対戦相手が泣いているのを見ると、心が苦しくなる。うちのチーム手加減を知らないんだよなぁ……俺以外。

 

 俺、ボールの飛んでこないゴールに突っ立っているだけだし、フィールドプレイヤーの暴走はどうしようもない。

 

 まだ10歳ぐらいの子供たちが相手なんだから、もう少し手心を加えてやる事はできないのだろうか………………無理だな。帝国も、世宇子も容赦なく相手を叩き潰していたし、子供とは残酷なものなのだろう。

 

 

 それにしても監督ぅ、早くGK育成してくれぇ。流石に何もできないのは飽きてきたよぉ……

 

 ──まぁもうこのチームも卒業だから関係ないけどさ。

 

 俺はともかく、仲間は全力を出しているし……このぐらいは差がついてしまうよな。客観的にみて、俺のチームは圧倒的に強いからさ。みんな頑張ってるし。

 

 まぁ10番貰ってるのにGKやってるのは結構謎だね。監督からGKをやるように頼み込まれたからやっているのだけど……俺は本来FW……。別にGKも嫌いじゃないけどさぁ〜。

 

 6年間負け無しということで、代表に選出されるだけの結果を残すことができたと思う。────だが足りないな。成長──いや進化し続ける円堂君たち、イナズマジャパンに勝つにはこんなものじゃ足りない。

 

 ホイッスルの音と共に、チームメイトが駆け寄ってくる。ベンチから監督もきたようだ。

 

 俺の方じゃなくて監督の方に集まるべきでは……? 

 

 

「お前たち!! よくやったぞぉ──!!!」

 

 

 1番舞い上がって、ゴール前に駆け込んできたのは監督。嬉しそうに、声を震わせていた。

 

 毎年勝っているのに、こうやって毎度喜んでくれる監督は出来た人だ。子供達の自主性を重んじた采配をとってくれるので、とてもやりやすいしね。

 

 

「よう、アイン。俺たちのプレーどうだった?」

 

「こいつに聞くだけ無駄よ。どうせ『まだまだ』としか言わないわ」

 

「ふっ……流石にここまでの付き合いになってくると、よくアインのことをわかっているじゃないかムクロ」

 

 

 監督の投げかけは、右から左へと聞き流される。哀れ監督。こういう癖の強い子供たちばかりだから、いつも胃薬を飲んでいるんだな。

 

 ムクロは仲間たちに暖かく笑われたことで赤面する。そして、ヨナスの尻を蹴飛ばした。

 

 

 俺の友人たちも、4年生からの3年間、しっかりスタメンに収まり続けた。ここはその努力を労うべきだろう。

 

 

[いや〜君たちは凄く頑張ったよ。正直ここまで技術や体力を練り上げるとは思わなかった]

 

 

 …………ん? なんで誰も反応してくれないんだ? 変なことでも言ったかな? 

 

 周りを見渡すと、皆目を点にしてこちらを見つめている。監督ですら、アングリと口を開いていた。まるで顎が外れてしまったかのように。

 

 

「アインが俺たちのことを褒めた……?」

 

「マジ?」

 

「驚いたな……」

 

[そんなことで驚く……? 俺、結構みんなのこと褒めてたつもりなんだけど。でもまだまだお前たちなら成長できると思ってる。まだまだサッカー人生は長いよ? なんてったって俺たちはようやっと中学生になるんだから]

 

 

 俺は誤魔化すように、喋りを続けた。実際やっと中学生になるところなのだ。サッカー人生という物語でいえば、まだまだ序章が終わったばかりだろう。

 

 

「…………ったく、ハードルたけぇよなぁ……まぁ見てろよ。中学に上がったらもっと強くなるからな」

 

「アンタは勉強しなきゃでしょ。バカなんだから……同じ中学に上がれるのかしら」

 

「義務教育だから上がれるっての……地元のとこならさ」

 

 

 アレクは勉強嫌いで常に赤点ギリギリを取り続けていた。最低限のラインを超えないあたり、実は合理的というか、地頭の良さが見え隠れしているが、やっぱり他と比べてバカだ。

 

 

「あらアイン、ヨナス。このバカは放っておいて、もっと頭のいいところに進学しましょ」

 

「……それもアリだな」

 

「オイーーーー!!!」

 

 

 ムクロとヨナスは冗談めかしながら、アレクを煽る。ムクロも成長したなぁ……昔はあれだけ人嫌いだったのに…………おじさん嬉しいよ………………

 

 まぁみんな近くの中学校に進学するって決めているからこその冗談だけどな。

 

 

「アインス……ちょっと話いいか?」

 

[はい?なんでしょうか]

 

 

 チームメイトたちがあれやこれやと騒いでいる中、先程無視されていた監督がコソコソと話しかけてきた。

 

 ふむふむ……なるほど、ナルホド。

 

 監督の相談は、ヒンメルクラウンを卒業してからも、後輩の練習に付き合ってとのことだった。

 

 きっと6連覇しちゃったから負けられないんだろうなぁ……デュプリをたまに送って、手伝わせますので頑張ってください監督ぅ……

 

 

 その後は祝勝会兼送別会ということでパーティを行った。監督の財布は擦り切れ、空っぽになってしまったらしいが、調子に乗って全部奢りだぁ!! とか言ってしまったのが悪いと思う。

 

 自業自得だ。

 

 でも今まで、お世話になりました。

 

 

 

 





ドイツ代表が試合をするのはイナイレ2後半になってからとなります。

二つ名はアレスやオリオンのキャッチコピーを参考に決定しました。

【ご連絡】
活動報告にて、今まで行ってきた作中登場キャラの募集に加えて、ドイツ代表として選ばれて欲しいキャラの募集を行います。総勢10名程度と大勢のキャラが選ばれることになりますので、それぞれのキャラの深掘りは難しいかと思いますが、お力を貸してください。
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