イナズマイレブン 雷鳴への挑戦   作:For AP

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【デュプリ一覧】
 デュプリは皆アインと同じく髪が銀、瞳が青です。年齢はアインより高く、14歳ぐらいとします。また必殺技はほとんど全てをアインと共有しています。

 FW 気だるげな表情をした少女    ヴァイ
 MF メガネをしている男       トライ
   ポニーテールの少女       フィア
   小柄な少年           フィン
   筋骨隆々の肉体を持った男    ゼクス
 DF 額に傷が入っている男      ズィート
   怒った様な表情をしている男   アハト
   目を常に閉じている少女     ノイン
   お姉さんっぽい女性       ツェーン
 GK 小柄で幼い女の子        エルフ
   →アインと交代してミッドフィールダーに入る




12話:天獄

 

 

 

 「じゃあ実況の方、よろしくです〜」

 

 

 ベータはサッカーボール型の高機能デバイスを操作し、時空の彼方から人間を拉致した。

 

 呼び出されたのは当然、いつも仕事中に呼び出されてしまう不憫な彼であった。正気に戻った暁には意味もわからず、ただただ妻に怒られてしまうだろう。

 

 彼は焼きそばを焼いていたはずなのに、全く違う景色が現れたことに戸惑いを見せるも、即座にマイクによって洗脳され、意気揚々と実況を始めるのだった。

 

 

「アインス・リヒターとデュプリの11人【チームアインス】に対するは、時空の歪みを矯正するために現れた、【プロトコルオメガ2.0】だぁ〜!!」

 

 

 実況は拳を振り上げ、会場のボルテージをあげようとする。それは熟練の技術でこそあったものの、周りには誰もいないため、意味はない……が。

 

 

「かたや自らの選手生命、かたや自らの信ずる未来を賭けたこの一戦。どちらにとっても負けられない戦いだぁーー!!!」

 

 

 それでも、マイクに仕込まれた洗脳プログラムは実況をやめようとはしない。ただただ試合を盛り上げようと作用するのみだった。

 

 

「あれ? アインスさんってGKなんですね。渡されたデータベースにはFWだと思われる……って書いてあったんですけど……間違えちゃったんでしょうか?」

 

「多分そうじゃない? 情報収集もうまくいってないって話だったし。そのぐらいの間違いなら許してあげましょ」

 

 

 ベータとオルカは、アインたちの陣形を見ながら、そう話し合う。アインスはFWの位置につかず、ゴールの前まで歩いていったのだ。

 

 

「うーん。なんだか引っかかりますけどGKなら遊びやすいですし、まぁいいですかね?」

 

 

 少々違和感はあったようだが、2人は特に気にせず、ポジションにつき、試合の開始を待ち始めた。

 

 

 

 

ピーーーー!!!

 

 

 全員がポジションについたことが確認された数秒後、サッカーボール型デバイスに組み込まれたオートアンパイアプログラムが発動し、笛の音がフィールドに鳴り響いた。そして……試合が始まったのだ。

 

 

「ベータ、キックオフ!! ボールを軽快に回していきます! 流石は未来からの使者といったところでしょうか!! 技術も間違いなく最新鋭です!!」

 

 

 速攻を仕掛けるプロトコルオメガ2.0は、アインのデュプリたちのディフェンスを軽やかに避けながら、短いパス回しで戦線を上げていく。そんな軽やかな動きに翻弄されているのか、デュプリたちは目立ったディフェンスを見せなかった。

 

 

「デュプリを出した時は何事かと思いましたけど、大したことないですねアインスさぁん? 守る気ないんですかぁ?」

 

「――フッ…………得点を決めてからほざいたらどうだ?」

 

 

 ベータはアインを煽ろうとするものの、意味はなく鼻で笑われるのだった。しかし、ベータの位置は既にゴール前。アインは絶体絶命のピンチであると言って間違いない。

 

 

「チームアインス!! ボールを運ばれ、ベータは既に一対一で、シュート体制だぁ!! この状況を凌ぎ切れるのかぁ!?!?」

 

「じゃあ早速、一点決めてやるよぉ!!」

 

 

 ベータは力を込めて、渾身のシュートを蹴り出した。あくまでも小手調べなのか、ノーマルシュートであるのが救いであろうが、実力のないキーパーなど歯牙にかけず、吹き飛ばす威力を誇っている。

 

 

 

 しかし、アインには通用しなかった。

 

 

「アインス! ベータのシュートを見事にキャーーッチ!! DFの助けなしで、プロトコルオメガの攻撃を凌いで見せましたぁ!!!」

 

 

 アインはベータのシュートを右手一本で掴み取り、表情を全く変えることなく、正面を見据えた。

 

 

「どうした? お前の力はそんなものか?」

 

「ーーーーテメェ!!舐めてんじゃねぇぞ!?!?」

 

 

 アインは先ほどの意趣返しと言わんばかりにベータを挑発する。そしていきりたつベータを尻目に、アインは前線に向かってボールを投げるのだった。

 

 

「ゼクス。突破してヴァイへ繋げ」

 

 

 アインの命令を聞き。巨大で筋骨隆々の体を持ったデュプリ、ゼクスはボールを器用にトラップしながら駆け出した。

 

 

「おーっと! チームアインス、反撃の狼煙を上げることはできるのかぁー!? 正面にはプロトコルオメガの2人が迫っているぞー!!」

 

 

 実況の言う通り、ゼクスの目前にオルカとダーナが迫っていた。しかし、ゼクスはパスを回す素振りは見せない。自分単独で突破を試みるようだ。

 

 

『ラウンドスパーク』

 

 

 ゼクスはボールを蹴り上げ、雷の力を宿らせることによって、ボールを擬似的に分裂させる。そんな予想外の動きにより、オルカとダーナは翻弄され、突破を許してしまうのだった。

 

 

「ゼクスの必殺技が炸裂ぅ!! そして、ボールはFWのヴァイに渡ったぁ!! 大チャンス到来ダァ!!!」

 

 

 針の穴を通すように送られたパスは、ワントップFWであるヴァイをフリーにした。ダルそうにヴァイは肩を落としながらも、役目を果たすべく、優雅にボールの前でくるりと回った。

 

 

『フローラルデスペアー』

 

 

 ヴァイは、突如現れた黒赤の薔薇に包まれる。そして、開花と同時に、その力を宿した種子にバイシクルシュートを叩き込んだのだ。

 

 薔薇の花弁を散らしながら、ボールはゴールへと直進する。だが、プロトコルオメガのキーパーも黙ってやられるわけにはいかない。

 

 

『キーパーコマンド07 ジャイロセービング』

 

 

 GKルジクは凄まじい回転力を持って、球状の障壁を生み出し、必殺シュートを迎え撃った。

 

 

 ――――だがダメだ……その程度の守りではヴァイのシュートは止められない。徐々に障壁は綻びを見せ始め、やがて砕け散ったのだ。ゴールを守るものはもういないと思われる。

 

 静かなグラウンドに実況の声が鳴り響いた。

 

 

「ヴァイのシュートが決まっ!? っていなぁーい!!なんと、FWのベータがここまで走り込んで、守り切ったぁ!!」

 

 

 ボールはゴールラインまで、後数センチと言うところで止められていた。他ならぬ、プロトコルオメガ2.0のキャプテン、ベータの手によって。

 

 

「随分と頑張るじゃないか。見直したよ」

 

 

 遠くから、アインの声が聞こえる。言葉だけを見ると、褒めているようだが、ベータはそうは思わなかったようだ。

 

 

「…………調子に乗りやがって! いいぜぇ!!本気でやってやるよぉ!!!」

 

 

 ベータはそう啖呵を切り、ゴール前から駆け出していく。GKのルジクは吹き飛ばされたまま、呆然とその様子を見守るのであった。

 

 

 

 ベータは鬼気迫る猛攻を見せる。…………しかし、両者予想外の実力伯仲により、その後しばらく試合は膠着状態を迎えることになってしまった。片方は攻めきれずに、片方は守り切る。そのような構図が、数度立場を入れ替えながら、行われたのだ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「前半終了3分前となりましたぁ!!! しかし、両者無得点、このまま折り返しを迎えるのでしょうかぁ!!」

 

 

 実況が思いがけない時間の経過を告げる。そして攻めきれない現状に焦りを持ち、フラストレーションを溜めたベータは声を荒げるのだった。

 

 

「なわけねぇだろ!! このベータ様がそんなこと許すかよ!!」

 

 

 ベータは強引なドリブルを持って、アインスチームのDFであるノインを吹き飛ばした。本来ならばファウルであろう荒さではあったものの、審判機能はプロトコルオメガに偏っているため、中立ではない。

 

「ベータの強行突破が決まったぁぁぁ!! 残された得点への試練はGKのアインスただ1人、決め切ることができるのでしょうかぁ!!!」

 

「はぁぁぁーーー!!!!」

 

 実況の声を聞き流しながら、久々に到来したチャンスにベータは声を上げ、集中力と闘志を高める。

 

 

「こいっ!! 『虚空の女神アテナ』!!!」

 

 

 そして、妖艶な女神を呼び出したのだ。ベータの二面性を表したかのような美しくも恐ろしい女神は、2丁拳銃を携えゴールを撃ち抜かんとする。

 

 

『シュートコマンドK02 アテナアサルト』

 

 

 飛び上がったベータは2丁拳銃から放たれた2つの光弾を伴いながら、ボールを蹴り込んだ。ボールは紫と赤、黒の混じったビームのような軌跡を残しながら、ゴールを穿つ。

 

 対するアインはゴール前の大地に腕を突き立てた。必殺技を発動し、正面から受け止める算段のようだ。

 

 

『イクリプス・ヴェルト』

 

 

 必殺技が成立した瞬間。グラウンドに突如、巨大な門が現れた。ゴールを塞ぐように現れたその門は、漆黒に染まり、豪奢な装飾が為されている。その造りは精緻で、壮麗だ。知識さえあれば、無限に鑑賞することができるだろう。

 

 

 ――しかし、その門はどこか……直視したくない。そう思わせるナニカがあった。瘴気のような陰鬱とした、空気が漂っているのだ。門は黒いモヤによって、囲まれており、現世のものではない。

 

 ギギギギギ……

 

 耳障りな音を立てながら少しずつ、謎の門が開いていく。

 

 

 

 

 その先にあったのは名状し難き巨大なナニカの瞳、コチラを見つめるナニカはベータのシュートに反応して扉から大木のように太く、宇宙のような漆黒に染まった右手を突き出し、シュートを受け止めた。

 

 

 その存在はベータの化身シュートの威力を歯牙にもかけなかったのだ。ボールをあっさりと掴み取り、門の中に右腕を仕舞い込む。……役目を果たしたナニカは姿を消し、門は閉まり始めた。

 

 

 

 一方の選手たちはと言うと皆、あまりの驚きで世界が止まったかのように硬直していた。誰しもが、今見たものを現実であると思えなかったのだ。精神力がガリガリと削られていく音を幻視した。

 

 

 キィーーーーバタン

 

 不快な音を奏でながら門は閉鎖され、夢幻のように消え去った。

 

 サッカーボールはナニカの召喚主であるアインの手元に収まっている。

 

 誰も身じろぎすらしない。ほんの数秒であるにもかかわらず、数時間の沈黙に感じられた。

 

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

 

 

 沈黙を破ったのは、必殺技を発動したアインだった。

 

「ベータ。お前のサッカーは悪くない。化身も上手く熟しているし、暴力的で刺激的だ。だが物足りないな」

 

 偉そうに泰然とした態度でアインはベータをそう批評する。

 

「だから……」

 

 そう前置きしたアインは、ボールを足元に置き、力を昂める。間違いない。シュート体制に入っている。

 

 

「そろそろコチラも攻めさせてもらうとしよう。お前たちもご苦労。退避しておけ」

 

 

 アインはデュプリたちに労いの言葉をかけ、グラウンドの端に整列させた。まるで、何かの射線から遠ざけるように……

 

 アインは「こい……」と呟き、顔の前に構えた手を振り払った。影が蠢き、形を成していく。間違いない。ベータと同じく化身を発動するつもりだ。

 

 

『星海の覇神 ルシフェル』

 

 

 6対12枚の羽が羽ばたき、旋風が生じた。白い羽が舞い散る。現れたのは天使のような化身。表情を隠す黒い仮面がなんとも不気味に映った。

 

 起こった変化は化身召喚だけではない。アインの頭上に光輪が現れる。フィールドが神気で満たされ、選手たちに思わず跪きたくなるような重圧がのしかかった。

 

 

「ッッッ!! バカな!! デュプリと化身の同時使用だと!?!?」

 

 

 先ほどまでの悍ましさとの温度感に、沈黙していたはずの誰がが思わず驚きの声を漏らした。

 

 しかし、プロトコルオメガ2.0とて、未来の最精鋭を集めたチーム。ただただ押しつぶされるものなど1人も存在しなかった。凝り固まった体を強引に動かし、予想されるシュートに備えた。

 

 化身を召喚したアインは右足でボールを蹴り、回転数を付与した後、踵でボールを蹴り上げ上空に飛び立った。

 

 腕を組んで不敵に佇んでいた化身――天使は胸の前で手を合わせ、飛び上がったアインに対し(こうべ)を垂れる。――――祈りが捧げられた。

 

 

 『パラダイスロスト』

 

 

 天使は背後より幾重もの光条を放ち、一方のアインはボールを刹那の瞬きの間に数十回蹴り込んだ。

 

 力の余波で閃光が迸り、大地が裂ける。

 

 最後の手向けとして、ボールに踵落としを叩き込んだ。太陽のように光り輝く光玉が、稲妻を迸らせながら大地を削り取りプロトコルオメガを襲った。

 

 

 

 

 

 そうして、サッカーグラウンドの広さ約100メートルに対し、最大射程10キロの超ロングシュートが放たれたのだ。

 

 距離減衰が存在しないシュートは、流星のように敵陣ゴールへ突き進んでいく。

 

 サッカーボールに付き従う、虹色の光条がグラウンドを駆け巡り、プロトコルオメガの選手たちを吹き飛ばす。

 

「うわぁ!!」

 

「きゃぁぁぁあ!!!」

 

「なんだこれはぁ!?!?」

 

 シュートの進路上にいた選手たちは軒並み吹き飛ばされて、シュートブロックは愚か近づくことすらできない。残すはGKただ1人、数瞬前まで、攻撃を行っていたはずのベータは茫然自失としながらアインのシュートを見送った。

 

 

『キーパーコマンド07 ジャイロセー……

 

 

 

「うわぁぁ!!!!」

 

 ルジクは果敢にも必殺技を繰り出し、シュートを止めようと試みるも、刹那の膠着すら存在せず吹き飛ばされる。

 

 ゴールにシュートが突き刺さる。

 

 だがそれでは止まらない。

 

 ゴールを吹き飛ばし、壁を突き破り、木々をへし折り薙ぎ倒した後、行き先を変えたボールは夜空へと消えていった。

 

 空が明るい。光が瞬いたからだ。

 

 空気が冷たい。世界が撹拌され、暴風が吹き荒れたからだ。

 

 視界が濁る。破壊の残滓が空気中に漂っているからだ。

 

 空へ消え去ったボールの軌跡から、十字架を模した赫い光を放つ光柱が創造された。

 

 

 

 ……まるで原罪を浄化するかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 遠くから笛の音が聞こえる。

 

 

「ぜ、前半終了ー!!! アインスチームの先制点が決まり、1対0のまま試合を折り返すことになりましたぁ!!!」

 

 

 先ほどの実況から3分が経過したようだ。先ほどまでの試合運びとは異なりあまりにも濃密な時間だったため、時間感覚が狂ってしまう。

 

 呆然としていたベータの通信端末が通知を告げる。

 

 

〈ベータ。撤退だ。今すぐその場から退避しろ〉

 

「――――――あぁ? 撤退だと? 俺のことを舐めてんじゃねぇぞ!!!」

 

 

 撤退の指示を受け、調子を取り戻したようだ。上役に対しても反骨精神を見せる。

 

 

〈お前はまだ動けるかもしれん。だが周囲を見てみろ。視野狭窄に陥っているぞ〉

 

 

 指摘を受けたベータが周りを見渡すと、凄絶な破壊の後に寝そべるプロトコルオメガのメンバーたちの姿があった。誰が見ても、試合の続行は不可能だろう。

 

 

「チッ!! ――――Yesマスター」

 

 

  舌打ちをしながらも、「撤退だ」と告げたベータはタイムトランスポーターを起動する。そしてアインを睨みつけながら、宣言した。

 

 

「お前、アインスとか言ったな。覚えておけ、次はこうはいかない」

 

 

 悔しげな表情でアインを見つめるベータはそう言い残し、倒れていた選手たちも残さず回収した後、消え去った。残されたのはアインのチームのみ。アイン以外がデュプリであることを考えるとアインは孤独だった。

 

 

「…………不戦勝でいいのか?」

 

 

 アインは1人、チカチカと明滅する灯に照らされながらポツリと寂しげな声を漏らすのだった。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 …………にしても、過激というか体のラインがモロに出てしまう衣装だよなぁ。中学生みたいな思春期真っ只中の子供達にとっては少々目に毒だ。ーーいやそんなことはどうでもいいんだよ。

 

 エルドラドにベータか……これ完全に目をつけられたかも知れないなぁ。久々に必殺技を試合で使ってたら楽しくなっちゃって、思わず封印していた化身を解放してしまった。完全にやりすぎだよなぁ。父さんはともかく、アトリには怒られるだろう。

 

 

 それにエルドラドの目的を知ってると微妙な気持ちになってしまう。手段は終わってるかもしれないけど、人類の繁栄のための選択であることは間違い無いからな。全くもって正義ではないけど、悪でもないだろう。

 

 だからこそ、正当な方法を持って協力を乞われたならば、力を貸すこともやぶさかではない。変な目的じゃなければ……だけどな。

 

 

 





 現存する技の描写が少なめなのは仕様です。皆さんもゲームやYouTubeなどで調べながら読んでいただけると、楽しめると思います。

 土日はお休みをいただき、クオリティの低い箇所の修正を行います。違和感などありましたらご指摘いただければと思います。また、お気に入り登録などを用いてお待ちいただければ幸いです。
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