イナズマイレブン 雷鳴への挑戦   作:For AP

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17話:青龍の目覚め

 

 

 

 

「次の対戦校を決めてあげたわ。相手は尾刈斗中。試合は1週間後よ」

 

 

 唐突に部室に現れた雷門夏未の手によって、尾刈斗中との試合が決定したのだった。それは帝国学園の脅威を退けてから間もなかった。

 

 そういえばこの試合も負けたら廃部だったな。勝ったらフットボールフロンティアに参加できるという交換条件だ。でも理事長代理とはいえど、学校を私物化しすぎでは? これも彼女なりのサッカー部へのツンデレなのだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 ──河川敷──

 

 

 サッカー部の皆は早速必殺技の練習に励んでいるのだった。尾刈斗中との試合まで時間はない。更に音無からの情報提供により、尾刈斗中への警戒心も高まり、練習にも更に熱が入っていた。

 

 

 

 一方で熱が入りすぎているメンバーもいるわけだが。

 

 もう直、日が暮れる時間だというのに、彼はずっと必殺シュートの練習を繰り返している。ポタポタと汗を垂れ流しながら、土煙に汚れ地面に倒れ込んでいた。かなり消耗しているようだ。

 

 

 

 

 染岡君の練習はここ最近ずっとあんな感じだった。他者の心配をよそに無意味に自分を追い込み、練習も荒っぽい。精神的にも追い込まれているようだし、アレでは必殺技を習得するなど夢のまた夢だろう。

 

 

 [染岡君、焦ってもいいことなんてないよ? ]

 

 

 そんな染岡君の練習を見ながら、俺は求められてはいないとわかりつつ、口を出した。かなり空回りしているのが分かるから、黙って見ているのが辛かったのだ。俺もあんな時期があったなぁ……

 

 

「うるせえ! 俺は雷門のストライカーとして必殺技を覚えなきゃなんねぇんだ! 黙ってろ!!」

 

 

 しかし、俺の言葉は染岡君には届かなかった。彼からしたら俺はただベンチに座っている部員だからね。言葉に信憑性はないのも仕方ない。

 

 だけど……染岡君はただただ体を動かすのみで、俺の目からしたら無意味に疲労しているだけにしか見えなかった。練習の目的と方法、身体能力、精神の調和が取れないと必殺技など覚えられるはずがないからだ。

 

 勿論、放っておいても染岡君は必殺技習得するだろう。だけど……彼にはもっと強くなってもらわなきゃいけないんだ。

 

 

 [……必殺技を使えるようになる状況だったり条件ってのは、人によって全く違う。だけど、君のその心理状況や体力じゃあまず成功しないよ]

 

「──てめぇ! ベンチに座ってるだけの癖に偉そうに言ってるんじゃねぇ!! 俺が必殺技を覚えねぇとサッカー部は廃部になるんだぞ!!」

 

「ダメよ染岡君!!」

 

 

 おっと……染岡君に胸ぐらを掴まれてしまった。それだけ熱くなっているということだ。俺は責めるつもりはないが……集まってきた部員たちは心配そうにこちらを見つめている。

 

 

 [……君はなんのために必殺技を覚えたいのかな? かっこいいから? 豪炎寺君に負けたくないから? 自分が1番になりたいから? ]

 

 

 俺は染岡君に疑問を投げかける。持論ではあるものの、必殺技も化身もデュプリも明確な目的と強靭な意志によって発現するものなのだ。染岡君には必殺技が欲しいと言う意思はあるだろうから……後必要なのは、なんのために力が欲しいのか理由をはっきりさせる。それだけだ。

 

 

「────違ぇよ」

 

 

 染岡君は胸ぐらを掴む力を緩めながら、訥々と語り始めた。

 

 

「俺は……俺はなぁ。試合に勝たなきゃならねぇんだよ。ぜってぇ、練習試合に勝って、サッカー部を残さなきゃならねぇ」

 

 [急にどうしたんだい? あんなにやる気がなかったじゃないか]

 

「……俺だってよぉ……虫のいいことだとはわかってる。だけど、知っちまったんだよ。サッカー部の奴らと一緒に勝つことの気持ちよさをな。だから俺は負けらんねぇんだ」

 

 

 染岡君は俺の瞳を見つめながら、確固たる意志を持って断言する。

 

 偉そうな口を叩いてしまったが流石だ。期待に応えてくれた。彼はこうでなくっちゃ。

 

 

 [だってさ、みんな! ]

 

 

 俺は声を張り上げながら後ろを振り返った。

 

 

「染岡〜!!」

 

「染岡さん!!」

 

「染岡先輩!!」

 

 

 すると、近くの茂みから部員たちがボロボロと溢れ出した。俺は彼らの存在を気配で察していたからこそ、染岡君から本音を引き出そうとしたんだ。染岡君は抱え込んでしまうタチだしね。少々強引ではあったけど、染岡君のこの想いを知れば豪炎寺君、豪炎寺君とうるさく言うことはなくなるだろう。

 

 

 

 [それがわかれば、すぐに必殺技を使えるさ]

 

 

 目的を達成した俺は、染岡君にそう告げた後、カッコつけるために後ろ手を振りながら一度も振り返らずに帰宅したのだった。後は守君達が染岡君を導くだろう。

 

 

 

 夕日をバックに去っていく姿ってカッコよくない? ……ダメ? 

 

 

 

 ──河川敷グラウンド──

 

 

「うおおぉぉぉぉ!!!」

 

 

 染岡君の気迫のこもった声が、晴天の空に響き渡る。

 

 ──青龍が飛翔する。そして、ゴールを喰らい尽くした。

 

 

 ──そう。染岡君は翌日の練習で見事に必殺技を成功させたのだ。

 

 

「すごいです!! あれが必殺シュートなんですね!!」

 

 [ゴッドハンドに次ぐ雷門中の新たな必殺技の完成だね。いいスピードだ]

 

 

 俺の隣でベンチに座って練習を眺めていた音無が、飛び上がりながら喜んだ。

 

 

「染岡君!! やったのね!!」

 

 

 木野さんはパチパチと手を叩きながら、染岡君の進化を褒め称える。

 

 俺はと言うと、ベンチに座りながらマネージャー達と雑談していた。木野さんも音無も、流石は雷門中の精鋭マネージャーだ。目つきの悪い俺にも、臆さず話しかけてくれる。

 

 孤立しがちな俺には珍しく、意外とサッカー部の面々とは馴染んでいた。仲裁をしてくれた守君には感謝してもしきれない。

 

 

 あ、そうそう。ここで音無が新聞部からサッカー部に転部し、正式にマネージャーになったのを忘れていた。帝国との試合以来、かなりの頻度でサッカー部の活動に顔を出していたものだから、勝手にもうマネージャーなのだと思いこんでしまったよ。

 

 彼女は「やかまし」と揶揄されるぐらいにはよく喋る、明るい女の子だった。男所帯のサッカー部にとっては清涼剤のようなもので、明るい雰囲気をもたらしてくれる唯一無二の存在だ。木野さんはサッカー部の母みたいな存在だからね。

 

 

 

 それにしても……鬼道君に似てないよなぁ……でも実の兄弟なんだもんね? 俺とシエルは双子ということもあって相当似てるからさ。……今頃何をしてるのだろうか。電話してみようかな。

 

 そんなことを考えながらも、俺は会話を続けるのだった。

 

 

 [これからはもっとすごい必殺技が増えていくだろうから、驚いてはいられないよ? ]

 

「アイン君……そうよね! 雷門はもっともっと強くなるわ!!」

 

「そうですよ! 目指すは日本最強です!」

 

 

 ノリがいい女の子達だ。俺が話しかけてもいいリアクションを返してくれる。冷たいムクロとは大違……やめておこう。

 

 俺とマネージャーの2人が染岡君の成長で盛り上がっていると、突如誰かに話しかけられた。声の主に視界を向けると……

 

 

「おい」

 

 

 染岡……君? ……なんだろう。彼から話しかけられることなんてなかったはずなのに。彼は俺のことを認めていなかったはずだから、話しかけられたことなんてなかった。

 

 

「どうだ? 俺の必殺シュートは」

 

 

 ────ふふっ…………なるほど。彼も中学生らしいところがあるじゃないか。

 

 

 [凄く君らしい必殺技だ。まさに染岡竜吾だけの力]

 

「へっ! そうかよ! ……たく、少しは褒めろよな!」

 

 [君ならできると知っていただけさ。大したことじゃない]

 

 

 俺の評価を聞いた染岡君は人相の悪い顔を歪めながら、ニコッと笑った。カッコいいじゃないの。

 

 

「染岡さーん!! 必殺技の名前考えましょうよ! ドラゴン染岡とかどうですか!?!?」

 

「おい! 勝手に決めるんじゃねぇ!!」

 

 

 染岡君は、少林に話しかけられ振り向きグラウンドの中心まで歩いていった。俺たちもついていくとしようか。

 

 

 そうして、サッカー部全員でグラウンドの中心に集まり、必殺シュートの技名を考えていると……雷門中の制服を着た男子生徒が現れた。

 

 

 来たな。豪炎寺君だ。守君はいつのまにか豪炎寺君が何故サッカー拒むのかを知り、彼の凍てついた心を溶かしたのだろう。要するに病室に行って夕香ちゃんについて教えてもらったということだ。

 

 

「円堂。俺、やるよ」

 

 

 豪炎寺君は端的にそう語り、サッカー部への入部の決意を露わにした。

 

 

 そこから試合までの数日間といえば、俺はサッカーのアドバイスをしながら、マネージャー達を手伝っていた。

 

 後は……シエルに電話をかけたり、ムクロの練習に付き合ったり、アトリと買い物に行ったりかな? 本当にあっという間だったよ。

 

 

 

 

 

 ──試合当日──

 

 

「ストライカーは俺1人で十分だ」

 

「結構つまらないことにこだわるんだな」

 

 

 染岡君が豪炎寺君の言葉にムカついたのか襟元を掴んで、睨みつける。やっぱり染岡君は豪炎寺君が気に入らないようで、突っかかっていたのだ。染岡君ったら暴力的なんだから。

 

 前話したことを忘れたのか〜? 

 

 

 [染岡君。君が強くなりたい理由はなんだっけ? 豪炎寺君と喧嘩するためだっけ? ]

 

「──ッチ! わぁったよ」

 

 

 染岡君は俺の言葉を聞いて、素直に引き下がった。もう少し怒るかなと思ったけど……なんとかなったな。豪炎寺君も……気にしていないようだし、大丈夫だろう。

 

 

 だったらそろそろ時間だし、グラウンドに行こうじゃないか。俺は気まずい空気を敢えて無視しながら、そう促した。

 

 

 

 

 グラウンドの周りにはギャラリーが押しかけていた。まだ応援団ではないけど、サッカー部に興味を持ってくれる人は増えつつある。────あ、鬼道君と佐久間も見に来てるじゃん。

 

 

 

 そして、試合開始時間を迎え雷門中メンバーと尾刈斗中のメンバーが整列しているわけだが……不気味な奴が多いぜ……キャラが立ちすぎだろ……

 

 それになんだか尾刈斗中の監督と喧嘩しているように見えるけど大丈夫かな? ……大丈夫か。全く、血の気が多いんだから。

 

 そうして、試合は始まるのだった。

 

 

 

 

 ゴーストロックチートだなぁ。一応初出の必殺タクティクスということになるのだろうか? 雷門中用の必殺タクティクスとかも考えておきたいよなぁ。それに催眠術だっけ……? 俺に効くかな? だったら対策法を知っとくだけじゃなくて、耐性もつけておきたいんだけど……

 

 

 俺は尾刈斗中の戦術に興味を惹かれながら、試合を観戦していたわけだが……

 

 

 まぁ結果は大して変わらなかった。

 

 

『ドラゴンクラッシュ』

 

 染岡君の生み出した青龍が空高く羽ばたき、

 

『ファイアートルネード』

 

 豪炎寺君の強烈な蹴りにより、灼熱を纏いながらゴールに襲いかかる。

 

『『ドラゴントルネード』』

 

 

 豪炎寺君と染岡君が和解し、共に連携必殺技を成功させたみたいだ。ぶっつけ本番でよく成功させるよなぁ。

 

 俺は器用じゃないから試合中に成長や進化するのなんて不可能だ。だからこそ、過剰なまでに普段から修行しているんだけどな。

 

 ──どんな力が働いても、絶対的な勝利を得られるように。ただ自分の力を磨く。それが俺のサッカー論だ。

 

 

 

「5対3! 5対3で雷門中が尾刈斗中に大逆転勝利ダァ!!」

 

 角間君が熱の入った実況をする。雷門中の生徒だし、最初の雷門ファンでもある彼だから、勝利が嬉しいのだろう。

 

 最後の染岡君の執念のこもった『ドラゴンクラッシュ』なんかは特に、ゆがむ空間の催眠効果もものともせず、単独で打ち破って見せた。すごい気迫の籠ったいいシュートだったよ。

 

 隣では木野さんと音無が手を繋いで雷門中の勝利を祝っている。微笑ましいな。

 

 あと、将来的にマネージャーになるであろう夏未さんも観戦していたようだが……一緒にいるのはムクロと……誰だ? 見覚えがあような気がするんだけど……わかんない。そんな女の子達が3人で試合を観戦していたようだ。

 

 

 

 観戦してるだけでも、雷門中の試合はワクワクするなぁ。俺今まで試合を楽しいと思ったことがないから、早く楽しみたい。ま、そのためにもそろそろ動き始めないといけないな。

 

 喜びを分かち合っているサッカー部のメンバーの輪から抜け出し、俺は人気のない校舎裏はと向かう。そして、胸ポケットにしまってあるガラケーを取り出した。

 

 

 [あ、アトリ? なんか黒幕っぽくて怪しいフード付きのクロークを作ってくれない? 顔をちゃんと隠せるやつをさ]

 

 [あ、うん。材料は俺が買って帰るよ。──なんでそんなの作るのかって? ]

 

 

 [──面白そうだからさ]

 

 

 

 





一試合一試合、描写していたら一生この作品が終わらないので、原作と同じところはスキップして、お送りします。

 イナズマイレブン初代一期はYouTubeにて公開されていますので、気になる方は久々に見てみると面白いですよ!

 また、アインの発言が地の文と判別しにくいと言うご指摘がありました。私も常々感じていたことでしたので、彼の発言には特殊な[]をつけました。理由としましては、彼の発言は彼が意図しているものと「違う」という勘違い要素の描写ですので、少しずつ今までの話も修正していきたいと思います。


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