遅くなってすみません。
完成していないものを投稿してしまいました。一度削除し、あげなおしております。失礼しました。
──試合当日・出発前──
試合までの数日はあっという間に過ぎ去り、試合当日を迎えることになった。今頃皆はそれぞれの荷物を試合会場へと向かうキャラバンに詰め込んでいる頃だろう。
御影専農戦を経て成長した雷門メンバーの成長は著しく、ほとんどのメンバーが新たな必殺技を習得することになった。今日の試合でお披露目って形になるだろう。
一方の俺はというと皆の練習を見守り、アドバイスを送ると共に、雷門のメンバーが習得できるちょうど良い必殺技の開発に着手していた。帝国戦が終わるぐらいには完成すると思う。
結局のところこの世界のサッカーって強い必殺技さえあれば、どれだけ不利な状態でも覆せるパワーバランスなんだよね。だからこそ、彼らが強くなるためには強い必殺技が必要というわけだ。
原作の技より弱い技を教えるつもりはない。相応の必殺技を開発中だ。
とは言っても順調に開発が進んでいるというわけでもないんだよね。
開発する技の難易度と威力を抑えることが難しいんだよね。俺の必殺技やドイツ代表の必殺技なんて難しすぎるし、俺の能力を前提に必殺技なんて考えても使えるわけがないし、今の日本ではオーバーパワーだ。
なんだったら技を習得してもらうメンバーだってエイリア編、世界編で活躍するメンバーに限らないと意味が無くなってしまうし……色々必殺技開発には障害が多いんだよね。
今後のことを考えると、雷門もさらに強くなる必要がある。じゃないとこれからの対戦相手に勝つなんて不可能に等しいからね。俺も色々手を回しているわけだし、もっと頑張らないと。
それに時間を見つけてリアにも会いに行かないといけないし、忙しいなぁ。お願いした仕事の成果をこの目で確認したいからさ。
でも時間ねぇな。エイリア編に入るより前に行かねば。
そうして出発前の空き時間を思索に費やしていると、実は意外と仲の良い彼にトントンと背中を叩かれた。
「少し良いですかね、アインス君」
[ん? あぁどうしたのメガネくん]
将来の日本代表の参謀役? いや必殺技の命名役か? そんなよくわからないポジションに定着する彼だけど、部員の少ない雷門にとって貴重な部員の1人だった。
マネージャーの3人と、俺とメガネ君で暇な時間はよく話しているから割と仲が良い。彼……練習したがらないし。
ま、よくムクロにゲームで勝つために助言とかもらったりしているから別に文句は言わないけどね。
「その……首にかけているカメラを少し見せてもらっても良いですか?」
[あぁコレ? はい]
頼みを聞いた俺は、首にかけていたカメラを外しメガネ君へと手渡す。するとカメラをまじまじと見つめた彼は、興奮したかのように声を荒げるのだった。
「これは!! カノンの最新型ハイエンドモデルの一眼レフじゃないですか!! これをどこで!?!?」
彼の変貌は余りに唐突だった。これがオタクというやつなのか。──わかるよぉ……俺もサッカーの話をする時は、体感1.2倍速で1.3倍の声量になってる気がするから。自覚あるだけマシだよね?
そう思いつつも、俺は思わず彼の熱意に戸惑ってしまうのだった。
[う、うん? そんないいやつなの? 適当に買ってきたからわかんないや]
「何をおっしゃるんです!! これは愛好家の間で数百万単位で取引されることもある超レアものですよ!! どこで手に入れたんですか?」
俺は頭に指を当てながら、数ヶ月前の記憶を呼び起こした。
[ええっと……秋葉原の観光をしていた時に路地裏の店で適当に買ったんだけど]
あの時は初めての秋葉原ということもあり、迷いに迷い見知らぬ場所へ辿り着いてしまったんだ。この時代の日本にはスマートフォンは当然ないし、ナビアプリも発達していない。だから何も見ずにぶらぶらと散歩したんだけど、結構楽しかったなぁ。
「それは人類の宝ですよ! 大切に扱ってください!!」
[あ、あぁわかったよ、大事にします]
俺の肩を掴みそう告げたメガネ君の眼は、思ったよりもガチだった。壊したら怒られそうだ、大切に扱うことにしよう。
「試合風景でも撮影するんですか?」
[──多分面白いものが見れると思うんだよね。すぐにわかるよ]
──秋葉名戸スタジアム──
「誰がそんな決まりを作ったのよ!!」
夏未さんは赤面しながら、秋葉名戸のマネージャーに文句を言った。
なぜ、彼女がそこまで語気を荒くしているのか。──その理由は……
【秋葉名戸で行われる試合では、マネージャーはメイド服を着用しなければならない】
というルールを秋葉名戸の監督が定めているからである。
時代が違えばセクハラだのなんだの言われていそうだし、どうして監督にそんな権利があるんだよとかツッコミどころが多いルールだが、俺からしたら面白いのでOKである。……俺だったら監督にシュートをぶつけるぐらいのことはすると思うけど。
ムクロなんて指を指しながら友人であるはずの夏未さんを嘲笑っていた。何も言わずについてきたと思ったら全く酷いやつだ。
自分はマネージャーじゃないから助かったと思っているのは間違いない。──ま、俺も夏美さんをイジるためにカメラを持ってきたから人のことは言えないんだけどな。
俺は持ってきた、すごく価値のあるらしい一眼レフをムクロに渡し、その場をクールに去った。木野さんと音無はノリノリみたいだし、うまく活用してくれるだろう。
俺は良いことをしたヨネ?
「さぁ、フットボールフロンティア準決勝。いよいよ試合開始です!!」
そうして、近年稀に見る酷い試合が始まるのだった。
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……まさか何も起きずに前半が終了するとは思いもしなかった。秋葉名戸学園の謎のノリに雷門中は翻弄されきっていて、本来の力が全く出せていないようだ。ベンチに戻ってきた雷門メンバーは訝しげな眼差しで対戦校である秋葉名戸のメンバーを見据える。
一方の彼らはというと……重要なハーフタイムだってのに監督はずっとスイカを齧っているし、部員の視線は昔懐かしのDSに釘付けだ。勝つ気あります? 貴方達の方が格下ですよ?
それに純粋な疑問だけどサッカーの大会に出ているのにゲームをやるような人間が、なぜサッカー部に入部したんだ? 優勝したら海外に行けるとかだったかな? だからってその手段を選ぶか……?
──まぁそんな相手チームのことはどうでもいいんだ。
重要なのは彼らの行動に怪しい様子はなかったということだ。つまり下剤を仕込まれたり、ハッキングによるデータの改竄といった不正行為の可能性が消えた。
そうなったらいよいよ彼らなんて今の雷門の敵じゃあない。豪炎寺君がいないとは言え……ね? だから本来ならば圧倒して欲しいところなのだが……どうも雷門メンバーは秋葉名戸の独特な雰囲気に翻弄されているようだ。
この程度の奴らボコボコにしてくれないとダメだよねぇ?
俺は弛緩しつつある空気を引き締めるために、メンバーに声をかける。
[彼らは弱いが、油断していい相手ではないよ? 実力を発揮できなかったなんて、負け犬の言い草だ]
────おぅ!!
思ったよりもいい返事が返ってきた。これは後半に期待だなぁ。
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『フェイクボール』
後半開始早々、秋葉名戸は動きを見せる。前半温存していた体力をフルで活用し、小狡い必殺技を使ってゴール前にボールを運んだのだ。
『ど根性バット』
サッカーとは思えないトンデモプレイに俺も思わずため息が漏れる。超次元サッカーとはいえ……あれ普通にシュートした方が強いぞ? だって人間を振り回してボールを野球のように打つなんて非効率極まりない。
──やめやめ! こんなの考えてたらキリが無い。俺の必殺技だって大概おかしなものばかりだしな。人のことは言えないわ。
『ゴッドハンド』
おっと、試合から目を離していたが守君はシュートを止めたようだ。今の守君にとってあのシュートは大した威力もないし、如何様にでも対処できるスピードだ。全く脅威ではなかったか。
『ドラゴンクラッシュ』
シュートを止め勢いづいた雷門の反撃が秋葉名戸のゴールを襲う。能力的に見れば、染岡君のシュートを止める能力をあのGKが止められるわけはないが……
秋葉名戸の選手達はゴール前に横一列に並び、地面にスパイクを擦り付け土埃をたてる。
シュートが土煙の中に消えていく。
そして、数秒経ち煙が薄くなっていくとボールが露わになった。
ゴールの外で。
シュートは明らかに外れるコースではなかったし、あのGKが止められるわけがない。それに目隠しとなった土煙。
皆不思議そうにしているが、そこまでわかれば導かれる答えはただ一つだろう。まぁあんなズル想像がつかないよなぁ。仕方ないか。
でも、どうやらメガネ君は気付いたようだ。メガネの位置をクイクイと弄ることで、太陽の光の反射が起こり、メガネが白く輝いて見えた。
やっぱり彼目がいいね。視力的な意味ではなく、観察眼的な意味で。
[次こそ決めてやるぜ!!」
闘志のこもった声が快晴の空にこだまする。染岡君の調子は万全だ。豪炎寺君がいなければ彼がエースストライカーであったことは疑いがないだろう。それほどの成長を彼は見せていた。
『ドラゴンクラッシュ』
その証拠に、染岡君は秋葉名戸のディフェンスを単身で突破し、再度シュート体制に入ったのだから。FWの仕事をちゃんとこなしてていいね!
『ごりむちゅう』
しかし、先程と同じように秋葉名戸のDF陣は小細工を弄する。数人の連携によって土煙が舞い、青竜の姿が隠された。
風が吹き──土煙が晴れていく。
露わになったのは土煙に紛れ、ゴールを本来の位置からずらすGKの姿だった。メガネ君にズボンを引っ張られ、半ケツを観客に披露していた。
あんなプレイですらカード出ないんだから、この世界のサッカーは無法だ。それが好きなんだけどさ。
メガネ君は俺と同じく、思うところがあったのか秋葉名戸の面々に声をかけるのだった。
「オタクとは、一つの世界を真摯に真っ直ぐに極めたもの。ゲームのルールを破ってまで勝とうとする貴方達に、オタクを名乗る資格はありません!!」
──カッコいい……かも。この言葉が刺さるチームめちゃくちゃ多いし。ズルしてるチームなんてごまんといるからなぁ。俺もサッカーオタクとして、彼の精神は忘れないようにしたい。
再び染岡君にボールが渡った。雷門は失点していないということもあり、精神的に優位に立ち終始ボールを支配していた。加えて、秋葉名戸のメンバーは先程のメガネ君の魂の叫びを聞いたことで、動きに精彩を欠いている。実力で勝る染岡君にとって彼らは絶好のカモだった。
この試合何度目のシュートだろうか。染岡君は再度眠れる竜を呼び起こす。
ゲームだったらTP切れしてそうだけど、現実だと気力次第で必殺技の回数は幾らでも増やせる。──時代遅れな精神論だとは思うけど、気力は体力を凌駕するのだ。それを何度も経験し、殻を破ってきたからこそ今の俺がある。染岡君も続いてくれると嬉しいなぁ。
『ドラゴンクラッシュ』
秋葉名戸のDF陣はメガネ君の言葉を聞き、良心の呵責からか呆然と立ち尽くしたままだった。ごりむちゅうは発動しない。このままならば間違いなく染岡君渾身のシュートは得点をもぎ取るだろう。
しかし、これらの最後の砦であるGKは諦めが悪かった。
『ゴールずらし』
ゴールをずらすという誰もが思いつく最強で最悪な禁じ手を彼は恥ずかしげも無く使ったのだ。
これは決まらない。観戦している誰もがそう思ったことだろう。
しかし、ゴールの前で光が反射し煌めいた。
彼だ。彼がゴール前に走り込んでいる
『メガネクラッシュ』
秋葉名戸の動きを読み切ったメガネ君が染岡君のシュートにヘディングで飛びつき、ずらされたゴールにドラゴンクラッシュの弾道を補正したのだ。
「ゴォ──ル!! メガネがドラゴンクラッシュの軌道を変え、ゴールに押し込んだぁ!!! 雷門中、先制です!!!」
硬直した試合はメガネ君の献身によって動かされた。メガネがバキバキに割れ、怪我を負ったメガネ君は担架によって担ぎ出されていく。
後で彼を労ってあげるとしよう。
それに……どうやら秋葉名戸の目も覚めたようだな。どうせなら審判の目も覚めさせてくれればいいのに。
そこから始まったのはクリーンで真っ直ぐなサッカー。サッカーの楽しさ、オタクとしてのあるべき姿に気付いた秋葉名戸の生徒達は心を入れ替え、真っ当な試合が始まったのだ。
勿論今まで真面目にサッカーに向き合ってこなかった秋葉名戸のメンバーには厳しいものがある。
それでも彼らは楽しそうにサッカーをプレイしていた。俺にとってもそれは好ましい変化だった。
懐かしいねぇ俺にもあんな頃があった……あったか?
強くなることに必死だったから覚えてねぇや。あのくらいの初心者だったのも、もう10年前ぐらいの話だからな。
それからの試合は想像通り、雷門の圧倒的な力を見せつける結果となった。
『ドラゴンクラッシュ』
『すいせいシュート』
『グレネードショット』
『ローリングキック』
メガネが五里霧中とゴールずらしのトリックに気づくのも早かったから、時間もかなりあったし想像以上にゴールを決めることができた。
振り返ってみると秋葉名戸はズルがなければ、大会最弱。実力差がモロに出る超次元サッカーにおいて負けはあり得なかった。
「5対0、なんと雷門中快勝です!!」
メガネ君に加え、染岡君にマックスに宍戸、半田くんが得点を決めた。本当に余裕だなぁ。守君もずっと無失点だし、素晴らしい。
──でもなんか強すぎて主人公チームの試合運びじゃなくね?
秋葉名戸戦の練習描写ってほとんど無いんですよね。
サッカー中毒のアインはサッカーに向き合っていない秋葉名戸のメンバーに辛辣です。