気分転換にフェアリーテイルの二次も投稿していますので、是非とも作者名から飛んで見ていただからと嬉しいです。
「新監督だぁ!!」
守君は声を張り上げ、隣に立つ人物を部員に紹介する。勿論、丸いサングラスがトレードマークのあの人である。サングラスがなんとなく可愛らしいから誤魔化されてはいるが、よく見ると厳つい顔と怖い服装をしている。
……考えてみれば、サングラスがトレードマークって影山と被ってるんだな。立場も思想も対極的な2人ではあるが、意外と共通点も多いのかもしれない。根っこの部分でサッカーが大好き……みたいな?
「響木正剛だ。よろしく頼む」
守君は上手くやったみたいだ。こうして雷門の監督として響木さんが迎えられることになったのだ。今度からは監督と呼ぶことにしよう。
にしても相変わらず頼り甲斐のあるいい声だなぁ。監督とかキャプテンって実は声も重要なファクターだったりするから羨ましい。指示だったり、声掛けの時は声が通った方が良いからさ……
俺は声変わりも終わってあんまり通らない声になっちゃったし、性格的にも大きな声は出さないから……ゲームメイクとか苦手なんだよね……その辺はヨナスに任せちゃってたし……
「さぁ決勝戦はもう直ぐだ、お前ら全員鍛えてやる。時間は無いから早速練習に移るとしよう……」
考え込む俺を尻目に、早速響木監督から指示が下されるようだ。
部室に勢ぞろいした部員達は目を輝かせながら響木監督に視線を向ける。
雷門のメンバーは小学生時代クラブにも入っていなかっただろうし、本格的な指導者に教えてもらうってのは初めてなのか? そりゃ嬉しいだろうなぁ。響木監督はイナズマイレブンの元キャプテンなわけだしね。
「まず最初に練習の前に外周を10周だ!!」
「「「「「「ええっ!!」」」」」」
響木監督の最初の指示が予想外だったのか、部員達の悲痛な声が部室の中で響き渡った。俺も基礎練は嫌いだが、それ以上に重要性を知っている。蔑ろにしていたら強くなれないぞー。
[ほらほら早く行った行った。 グラウンドの準備はこっちでしておくからとっととウォーミングアップを終わらしてきな]
俺も監督に便乗して部員に声をかける。以前ならばこんなことは口に出さなかったが、流石に入部して数ヶ月経つわけだし、部員それぞれと仲が深まってきているから言うようになった。必殺技を教えたってこともあって、豪炎寺君も土門君も俺にフィードバックを求めてくれるようになったしさ。このぐらいなら大丈夫……だよね?
俺の言葉を聞いた部員達は、嫌々ながらも部室を出ていく。期待していたサッカーの練習ではなく、マラソンを指示されたサッカー部の皆は肩を落としながら気怠そうに歩いていた。
その後を追従するのはマネージャーの3人。
残されたのは俺と監督の2人だけだった。しまった……波に乗り遅れた。監督と2人ってのは……先日のこともあってちょっと気まずいよね。
居心地が悪くなった俺は部室から逃げ出し、グラウンドの準備へと向かう。力仕事はマネージャー陣に任せるわけにもいかないからさ……ゴールを動かして……凹んだところに土を盛ってローラー掛けとくか……
やるべきことを脳内でまとめながら俺は立ち上がった。
「おい、アイン」
引き戸を開き、部室の外に一歩足を踏み出した瞬間、監督に声をかけられた。何を言われるのだろうか? 不安に思いながらも、監督の方に向き直った。サングラスを外しながらこちらに目を向けている。
数秒の沈黙後、監督は口を開いた。
「悪かったな……イナズマイレブンが居ないとか言っちまって」
思いがけない謝罪に俺は口を開けなかった。鋭い視線が此方を見透かすように射抜く。
「俺もあの後色々考えてな……」
監督は立て続けに言葉を紡ぐ。どこか迷いがはれたかのように、清々しい声音で。
雲の隙間から差し込む日差しが、響木監督のサングラスを反射され、怪しく光って見えた。
「──協力してやるよ。最強のイナズマイレブン作りを……な」
そう言い残した響木監督は俺の肩をポンと叩き、部室から出ていった。
俺は監督ー響木正剛をみて燻っていた焔が燃え上がる様子を幻視した。
──フットボールフロンティア地区大会決勝当日──
[ふぅ……もう決勝か……早かったなぁ]
「地区の決勝ね。まだ全然大したことないでしょ」
[まだツンツンしてるのかいな。頑固だなぁ……]
「フフッ……先輩らしいじゃないですか」
俺とムクロと神門さんは帝国学園のグラウンドを見下ろせる席に座って雑談していた。なんだかんだ言ってムクロも雷門の試合に興味はあるようで、神門さんを伴って観戦しにきたようだ。素直じゃない奴め。
今日の対戦は帝国学園で行われるということで、俺たちは目を点にしながら探索をしていたのだ。ゲストが入場できる範囲内ではあるものの、広大な帝国学園の探索は中々に興味深かった。
「それで? なんなのよこの学校……なんでこんな創作物に出てくる脱出不可能な刑務所みたいな作りになってるの……? 」
やけに詳しい例えをムクロがしているが、的を射ているように思う。帝国学園にはこの前来たばっかりだけど、それでも違和感が拭えないもの。全館鉄筋造りで高い渡り廊下とか、ラスボスが最奥で待っていそうで仕方ない。
ま、実際影山ってほぼラスボスみたいなものだから大なものだから間違ってはいないのか。
神門さんが手にした携帯電話を見つめながら口を開いた。
「ええと……帝国学園は学力全国1位にもなったことがある進学校で、体育に射撃の授業があったりするようなお金持ちの学校みたいです」
「金があるからこんな変な学校にするってのも無理があるでしょ」
「まぁ……確かに」
神門さんが帝国について教えてくれたが……金持ちって言っても限度があるだろ? この校舎を建てるためには何億かかるんだろうか……天井なんて遠すぎてあんまり見えないぞ……
あぁ……そういえば、試合開始直後に鉄骨が降ってくるんだった。万が一が起きないように助けることのできる体制を維持しておかなければ。
そろそろ試合も始まるだろうしベンチに向かうとしよう。
「フットボールフロンティア地区大会決勝! 果たして優勝は帝国か? それとも雷門かぁ!?」
ピ──!!
毎度の如く鳴り響く笛の音は、帝国の校内で甲高く反響した。
そして試合開始直後に鉄骨が降ってくる。後5秒後ぐらいに。
神経を空間把握に集中させていたこともあって、把握できたが、知らなかったら流石に気づけないな。コレ。
万が一のことを考えて、今すぐにベンチから飛び出せる体制は整っているが……あの方向だったら大丈夫だろう。聞き耳を立てていたが、鬼道君は雷門メンバーに忠告していたようだし。
壮絶な音を立てながら、鉄骨が降り注ぎグラウンドが揺れる。土埃が晴れ雷門メンバーの無事が確認される。
帝国メンバーと響木監督、守君がグラウンドから離れ、帝国の奥へと走っていった。影山が中学生にガン詰めされていたのだろうが、俺はついていかなかった。どうせ試合の後、顔を合わせることになるわけだし。
結構エグめの事故現場だったはずだが、マネージャーも観戦者もあまり気にしてはいなかったのが幸いだろう。多分超次元な必殺技で慣れてるんだろうなぁ。鉄骨なんかより強い必殺技はいくらでもあることだし。
グラウンドはあっという間に修復され、試合は再び再開されるのだった。
「グラウンドの修復も完了。今度こそ、正真正銘、フットボールフロンティア、地区大会決勝の開始です!!」
雷門のリベンジマッチが始まった。
ピィィィィ──!!!
いつもの笛も、緊張からか違って聞こえる。自分がプレーしている時は一切緊張を感じない俺ではあるが、応援する立場になってみると流石に緊張する。守君達をできる限り鍛えたつもりではあるが、俺の目には帝国と雷門の実力は拮抗しているように見えた。
試合開始早々、豪炎寺君と染岡君は飛ばしていくようだ。最初は不仲だったとは思えない連携でフィールドを駆け上がり、シュート体制に入る。
『ドラゴントルネード』
炎の力を手に入れた東洋の竜がゴールを喰らいつくそうと襲いかかる。
『パワーシールド』
が、流石は帝国学園のキング・オブ・ゴールキーパーを名乗るだけはある。原作よりも成長したであろう2人の連携シュートが弾き返された。
俺はルーズボールが嫌いということもあってパンチング技を信用しないタイプなのだが、今回は運良く帝国学園のDFへとボールが渡った。
帝国学園のカウンターが始まった。
『百烈ショット』
FWの寺門はサッカーボールに目にも止まらぬ蹴りを幾度も叩き込んだ。上空から叩きつけられたその一撃は、上方からゴールを狙う。
『熱血パンチ』
一方の守君は消耗の少ない必殺技で向かいうつ。百烈ショットは出の速さと使い回しを意識した技ってこともあって、大した威力はない。守君のパンチングによってボールが溢れた。
あちゃー……調子良くなさそうだ……守君が弾いたボールがゴールポストに当たるってのは練習でも中々無い光景だった。
鬼道家の事情を聞いてしまったのだろう。いくら守君とは言っても中学生だもんな……そりゃ気にしちまうよ。この試合の結果が、家族関係に繋がってくるってなったらさ。
全く意地悪いぜ影山は……
だがしかし、不安な始まりを見せた試合は雷門中にとって順調な試合運びを見せることになる。
『ドラゴンクラッシュ』
帝国の一瞬の隙をつき抜け出した染岡君が必殺シュートを叩き込んだと思えば……
『ファイアトルネード』
もう1人のフォワード豪炎寺君も負けじとゴールを狙う。
『すいせいシュート』
終いにはボールを奪ったマックスが即座にロングシュートを狙ってからものだから源田としてはたまったものでは無いだろう。
実際に源田は思ったよりも消耗が激しいようで、拳を気にしながら息を切らしていた。俺だって必殺技を連発できるようになるまで、どれだけ苦しんだことか。そりゃ耐えられるわけなどなかった。
必殺技って気力も持っていかれるし、特訓次第ではあるけど体への負担も大きいから連発できるものではないんだよね。
この前マックスに話しておいた、削りのための必殺技の重要性を覚えてくれていたみたいだ。源田は必殺技を使ってシュートを止める選択をしていることもあって最大限に目的を果たすことができていた。
自軍のGKの状況を見てか、帝国学園はゴッドハンド対策として生み出した切り札を切った。
雷門のゴール前で帝国の司令塔。鬼道君にボールが回る。
『皇帝ペンギン2号』
鬼道君が指笛によってペンギンを呼び出すとともに、帝国のFWである佐久間、寺門両名が前線へと駆け出した。そして鬼道君がペンギンを伴って蹴り出したシュートに前線の2人が同時に強烈な蹴りを叩き込む。
『ゴッドハンド』
神の手が帝国の秘策と均衡する。
……が、しかしゴッドハンドの5本の指に突き刺さったペンギン達が其々の指を崩壊させ、ゴッドハンドを破壊した。
「ゴール!!帝国学園先制!!鉄壁を誇るゴッドハンドを打ち破ったのは帝国の新必殺シュートだぁ!!!」
ワンチャン勝てるかと思ったけど……確かに皇帝ペンギンはゴッドハンド対策の技と言って差し支えないな……ゴッドハンドは掌が1番力を伝えられて強いんだが、指先で止める事を強要してくる皇帝ペンギンは相性が悪そうだ。
「ここで前半終了! 終了間際に先制した帝国のリードで折り返しです!」
ハーフタイムに入った雷門ベンチでは守君の調子を憂う言葉が多く聞こえた。明らかに試合に集中できてないもんねぇ。守君にとっては対戦している鬼道君だってサッカー仲間だ。蔑ろになどできないのだろう。
だけど……友達として本気でぶつかった方がいいよなぁ。豪炎寺君に守君のことを任せてもいいが……ここは友人として口を出させてもらうことにしようか。ファイアトルネードをぶつけられるのって痛そうだし。
[守君。ちょっと付いて来て]
「……なんだ?」
不思議そうな顔をしながらも、守君はついて来てくれた。
連れションと言ったところだろうか、2人きりになれる場所で俺の想いは伝えておいた。
……そんな言い方すると一気に怪しくなるな?