「Das Flugzeug wird bald in Japan eintreffen. Bitte bleiben Sie sitzen und warten Sie, bis das Flugzeug zum Stillstand gekommen ist」
────────当機は間もなく日本に到着します。機体が完全に停止するまで、着席したままお待ちください。
窓から、懐かしの故郷が見える。帰ってきたなぁ……
父さんに頼み込み、1週間程度の時間をもらい日本への旅行を行うことにした。もうじき小学校に入学して自由がなくなるわけだし、この程度の我儘は許されるだろう。
家族には「旅行費用は気にしないで楽しめ」と送り出されたので、気分はルンルンである。いいものを食べたり、遊びまくるとしよう。
シエルも一緒に着いてきたがっていたが、父さんと母さんにまだ早いと断られていた。本当なら家族旅行でも行きたいところだけど、父さんも母さんも仕事で忙しいからなぁ……
そんなこんなで父さんが所有していたプライベートジェットに乗ること10時間以上。
俺はドイツから懐かしき、日本に降り立った。
目的はいわゆる聖地巡礼。稲妻町を訪れるつもりだ。
イナズマイレブン 生誕の地。イナズマイレブン シリーズの原点の場所。そんな場所を訪れることができるなんて、ファン冥利に尽きると思わないか?
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空港から出た俺は、凝り固まった体をほぐしながら周りを見る。東京の夜景は、俺が生きていた時代より近代化されていないものの、懐かしい光を放っていた。
あぁ久しぶりに感じるこの密集感、このビル群……。日本って感じするよなぁ……
そうして思い出に浸っていると、視界の端に赤い髪の女性がチラチラと映った。前屈みになりながら、身長の低い俺に目を合わせ、笑顔でこちらを見つめている。
アトリだ。6歳児が1人で旅行をできるはずもなく、伴としてついてきてもらったのだ。
「アインス様どうしてわざわざ日本に来たんですか?」
当然の疑問だろう。いきなりの話だったからな。
[日本文化に関する本を読んで興味を持ったんだ。それになんでも昔、面白いサッカーチームがあったらしいんだ。だから興味があってね]
「へぇー情報収集ってことですか。……でも態々そんなことをしなくても、アインス様の方が強いと思いますけど。私のアインス様は最強なんです!!」
[いや、まだ僕は6歳だよ? 本気を出した大人には敵わないよ。あと、そんな盲信の様な信頼を向けられても緊張するから言わないでくれ]
アトリは困った様に首を傾げる。別に変なことは言ってないだろうに。
[何処か行きたい所とかある……? ────ありそうだね。教えてよ]
彼女は右手で観光雑誌を握っていた。……いつ買ったのだろう? 気が付かなかった。アトリもそんなに楽しむつもり満々だったのか。それはそれで嬉しいけどさ。
「キョウト、オオサカに行きたいです!」
[それは最後ね……此処東京だから……]
まぁ日本には1週間ぐらい滞在する予定だから、ゆっくりと観光するとしよう。懐かしの故郷だしな。
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三日間程、東京をぶらりと観光して楽しんだ俺は、お高い宿泊施設のスイートルームに泊まっていた。
日頃の健康的な生活習慣によって朝早くから起きてしまった俺は、簡単にランニングを済ませ、シャワーを浴びて外出の準備をした。俺だけなら、すぐにでも、ホテルをチェックアウトできる状況になったわけだ。……俺だけなら。
いつものメイド服とは違い、普段着を着込んでいる同行者はベッドに寝転び、魘されていたのだ。
「アインス様……お腹が痛いですぅ……」
昨日色々と食べすぎたんだよ。寿司から始まって天ぷら、蕎麦、うどん……締めのラーメンまで……細い体によくそこまで入るものだと感心した。でもお腹壊すんじゃなぁ。
[俺、見て回りたいところがあるから、おいてくよ? ]
「そんなぁアインス様ったら非情なぁ……こんな美女が苦しんでいるのを放っておくなんて……」
アトリは恨めしそうに、体をわなわなと震わせながらこっちを見つめてくる。そんな目で見られてもこちとら未就学児だぞ?なんの期待をしてるんだ。
[胃腸薬は買ってきてあげたでしょ? 理由が自業自得だし、別に放っておいても大丈夫そうな症状なんだもん……まぁ本当にヤバかったらフロントに電話してね]
それに今日は旅行の目的である稲妻町に、向かうつもりだ。修行時間を割いて態々日本を訪れたのも、聖地巡礼のためなのだから。
俺はホテルの人に宿泊の延長を無理を言ってお願いし、稲妻町へ向かった。アトリも明日までには治ってればいいけど。
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電車を乗り継いで、数時間。なんとか稲妻町にたどり着くことができた。電車に乗ったのは久しぶりだし、スマートフォンみたいな便利なものはないから、電車を乗るのにも苦戦してしまった。俺って文明の力に頼り切っていたんだなぁ……
駅から数分歩き、稲妻町商店街へと辿り着いた。歴史の入ったレトロな街並みが逆に目新しかった。ドイツの街並みも味があって魅力的なのだが、やっぱり俺の魂の故郷は日本のようで、こっちの方が落ち着くなぁ……
ぐぅ〜〜
おっと、お腹が鳴ってしまった……携帯電話の時計を見てみると、もう12時になっている。先ずは腹ごしらえとしよう。
お! 暖簾がかかっているぞ! 10年後しか知らないから不安だったけど、どうやら営業中みたいだ。入ってみよう。
ガラガラと音を立てながら、引き戸を開き、店内に入る。そこにいたのは丸いサングラスをつけた厳つい店主ただ1人だった。
……お昼という書き入れ時にも関わらず、閑古鳥が鳴いてるなぁ。メインの客層が学生達だからいいのだろうか?
「いらっしゃい」
あの渋い声が聞こえる。聞いているだけで、なんだか安心する。
この人が伝説のイナズマイレブンの1人、【響木 正剛】か……なんか感動するなぁ。初めてのイナズマイレブンに登場する人物との邂逅だ。
「こんな店に子供が来るのは珍しいな……ボウズ、1人か?」
[はいそうです。ダメでしたか? ]
「まぁ構わんが……お前はそこらのガキとは違いそうだ」
まだ小学生にもなっていない様な子供が、1人で飲食店に入るって中々ない光景だけど、なんとか受け入れてもらえた様だ。
俺は店内よちょっと高いカウンター椅子に跳躍して座る。まだ身長が低いから、大体の椅子は足がつかないのが不便だ。
「注文は?」
手元にあったメニュー表を手に取り、注文を吟味する。此処は何を頼もうか。うーん……決めた!
[大盛チャーシューメンとチャーハンと餃子お願いします]
「……そんなに食えるのか?」
[問題ありません。そのぐらいの量なら残さず食べますよ]
響木さんに疑問に思われるのも当然だとは思うが、心配はない。沢山運動しているせいで食事を多く取らないと、落ち着かないようになってしまったのだ。これでも腹八分目を目安に割と控えてる方だし。
注文を聞いた響木さんは体を翻し、調理台へと向かう。楽しみだなぁ〜お腹減ったんだよ。
「なんでこの町にきたんだいお客さん。ここらの人じゃないだろう」
響木さんの調理風景や店内を見ながら時間を潰していると、徐に話しかけられた。どう答えようか……ここは一つ、ジャブを打ってみよう。いずれ、響木さんとは関わることになるはずだから顔を覚えておいてもらいたい。
[観光に来たんです。なんでも昔、稲妻町にはイナズマイレブンって人たちが居たそうなので……ご存知ですか? ]
「……どこでそれを聞いた?」
[イナズマイレブンの情報ですか? ……ネットに転がってました。過去の記録をまとめた記事を偶然見て興味を持ったので……]
「……そんな奴らはもう居ない。探すだけ無駄だ」
[そうなんですか……? 会ってお話ししたいと考えていたんですけど……]
今、イナズマイレブン本人と話していることを考えると意地悪な言葉だよな。まぁ俺も嫌な記憶を掘り返してしまっているし、お互い様ということにしてもらいたい。
「はい、お待ち」
ゴトリ、とテーブルの上に提供されたラーメンは、白い湯気を放っている。美味しそうな醤油の香りと、琥珀色のスープが実に食欲をそそる。
たまらず俺は、割り箸を使ってラーメンを口に運んだ。
熱々のチャーシューメンは、どこか昔懐かしい味がした。とんでもなく美味しいというわけではない。しかし、涙が溢れそうになるのだ。チャーハンはパラパラで本格的だし、餃子も口に入れた瞬間、肉汁がジワリと染み出す。
なんでこんなにお店がガラガラなんだろうと疑問に思ってしまう様な美味しさだった。
「うまいか?」
[はい。美味しいです]
「そうか……お前はサッカーをやってるんだよな?」
[そうですね。一応。それがどうかしましたか? ]
「楽しいか?」
[ええ。間違いなく]
「名前は……?」
[アインスです]
立て続けに行われる質問たちに、回答していく。俺が子供だから暇だろうということで、話を繋いでくれているのかもしれない。いや、名前を覚えてくれているのかな?
しかし、それから響木さんは、俺がラーメンを食べ終えるまで一言も喋らなかった。食事の邪魔をしちゃ悪いと気を遣ってくれたのかもしれないな。
[美味しかったです。ご馳走様でした]
「おう。また来い」
[はい! ]
また来い、か。なんだか気難しそうな人だから、気に入られたようで嬉しく思う。俺ってば少しチョロいかもしれないな。
さてと、そんなこと考えてないで、そろそろ店を出ようか。
椅子を飛び降り、雷雷軒の戸を開く。次は商店街でも歩こ…………
「お前は何を目指してそんなに強くなろうとしているんだ?」
背後から投げかけられた言葉に、店を出ようとしていた足が止まる。思いがけない質問だった。あまり考えたことはなかったな努力する理由なんて……だってそんなのサッカーを始めた時から変わっていないし。
[雷鳴を撃ち落とし、宿願を果たすことですよ]
────────────────────────
食事を摂り終えた俺は、商店街から雷門中へと歩きながら、軽く街並みを見学していく。いつか帰ってくるから、そこまでじっくりとみる必要はないかな。
足を動かしているうちに、俺は河川敷に着いていた。川に掛かった橋の下に、サッカーグラウンドが見える。
此処が円堂くん世代の雷門中がメインで使っていた河川敷グラウンドか……10年前にはもう存在していたのか。
確か、中学校のグラウンドは他の部活に占有されていたからここをよく使っていたはずだ。そう考えると、なんだか感慨深いなぁ。
昼過ぎの河川敷に小さな人影が見える……ん? 誰かがサッカーを練習しているみたいだなぁ。いいねぇ、そう来なくっちゃ。
目を凝らして、数百メートル先を見やると、視界にはオレンジ色のバンダナをつけた少年が映った。
────!? そうか……もう、円堂君はサッカーに出会っていたのか!
思わず俺は彼の元に駆け出した。話してみたい。その一心で。
雲で覆われた薄暗い空の下。誰もいない河川敷で、1人の少年の荒い息遣いが微かに聞こえる。
どうやらバンダナを巻いた少年がサッカーボールを使ってシュートの練習をしている様だ。ゴール前に立ち、一つのボールを繰り返し蹴り込んでいる。何度、繰り返していただろうか。少年の集中力も体力もだんだんとすり減っていった。
「あっ! ボールが!!」
少年はどうやらボールを蹴り損じてしまった様だ。サッカーボールが、ゴールとは全く異なる方向に飛んでいってしまった。
転がる先は、水量の多い川。このままでは、ボールは川に流され、少年の手に収まることは二度となくなってしまうだろう。無論、少年が川に入ることなど危険すぎて許されない。
しかしそんな未来は実現しなかった。させなかった。
銀髪の少年が、ボールを足でトラップしたのだ。そのボールを数回リフティングしたのち、持ち主のバンダナの少年の方へ蹴り返した。
「おぉ! ありがとう!! あわわぁ!?」
蹴り返されたボールを両手でキャッチしようとした少年は、GKとしての資質が未だ目覚めていないのか、ボールを取りこぼした。
「ありがとう!」
ボールを拾い直したバンダナの少年は、銀髪の少年に感謝を告げる。銀髪の少年もこちらに近づいてきているようだ。
「構わない。サッカーが好きなのか?」
「うん! サッカー大好きだよ!! じいちゃんのノートを見てビビッと来たんだ! イナズマが落ちたみたいにね!!」
「ハハハッ!! そうか! やっぱりそうなんだね!!」
銀髪の少年は、その言葉を聞いて、その涼しげな相貌を崩した。普段の凝り固まった表情からは考えられないほど嬉しそうに、息を漏らす。
「どうしたの? 変なこと言ったかなぁ?」
銀髪の少年の豹変に対し、バンダナの少年は手を頭の後ろに回しながら、不安げに問いを立てた。髪の毛はツンツンと逆立っている。
「いや。なんだか嬉しくなっただけだ。君、名前は?」
「円堂守! そっちの名前は?」
「アインス・リヒター。アインと呼んでくれ」
「じゃあ僕も、守って呼んでよ!!」
天空を覆い隠していた、雲たちが、少しずつ、少しずつ消え去っていく。薄暗かった世界が、雲の間に生じた間隙から差し込む光によって照らされつつあった。
「アインのボールを受け止めた時、なんだかビビッと来たんだ! サッカー好きなんだろ?」
守はサッカーボールを蹴る様なジェスチャーをしながら、目の前に立つアインに向かって興奮しながら話しかける。
「まぁな。俺はそれなりにサッカーをやってるし」
「やっぱりそうだ!!!」
雲海が稲妻町を避けるかのように、完全に消え去った。燦々と輝く太陽によって、大地が煌めいて見えた。
「だったら……!!!」
大気が震え、肌がヒリつく。何かが起こる。そう思えてならない。
守は手に抱えたサッカーボールをアインの方に突き出しながら、そう前置きした。そして、語りかけたのだ。
「サッカーやろうぜ!」
遥遠き天空で雷鳴が荒々しく、鳴り響き、その余波は大地をも揺るがした。忽ち雲が消え去り、快晴となった空でこの様な現象が起こるのは些か稀なことだろう。しかし、そんなことが起こるのも当然だ。
ここで、今、斯して運命が出逢い、交差し……
伝説の序曲が奏でられたのだから。
イナイレ世界にドイツ語なんて無さそうですが、使いたくて書きました。ドイツ語は翻訳を使ったので全く自信がありません。読み方すら謎です。