イナズマイレブン 雷鳴への挑戦   作:For AP

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7話:約束

 

 

 

 初めて見た守君は、かつての彼より幼かった。しかし、本質は変わらない。サッカーを愛する彼は、俺の眼にさながら太陽のように映ったのだ。

 

 俺は守君の思い出のボールが、川に流れそうになるところを受け止め、彼と話すキッカケを作った。無理なく話しかけられただろうか。変なやつみたいに思われてないかな?? 

 

 

 それからは守君に誘われて、サッカーで1、2時間ぐらい()()()。とても充実した空間で、あっという間に時間は過ぎ去ってしまった。

 

 そうしてサッカーを終えた俺は、現在彼の背中を追いながらある場所へ歩いていた。

 

 

「ただいまー!!」

「おかえりなさい。守……あら? お友達?」

 

 

 この人は円堂君のお母さん……確か温子さんだったかな? 優しそうな顔をした女性が、円堂君の言葉を聞いて部屋から玄関へと出てきて俺たちを迎えてくれた。

 

 

「そうだよ! アインっていうんだ! 河川敷で友達になった!!」

 

[こんにちは。アインと言います]

 

「あら! 随分とカッコいい子を連れてきたのね。この辺りに住んでいるの?」

 

[いえ、ドイツから観光に来たんです]

 

 

 温子さんにはイナズマイレブン のことは言わない方がいいだろうし、適当に濁しておこう。

 

 

「ええっ! 本当!? ドイツから!?!? ──親御さんとか心配してない?」

 

 

 どうやら両親と来ていると思われてしまったみたいだ。それも当然か。……チビだし。本当のことなんて言えるわけないから……

 

 

[大丈夫です。携帯電話を持っているので]

 

 

 懐に手を入れ、しまっておいた携帯電話を取り出した。本当は1人だけど、心配させてしまうから嘘をついてしまった。

 

 

「うーん……なら大丈夫かしらね……あっ! こんなところで話しているのもなんだし、上がってちょうだい」

 

[ありがとうございます。お邪魔します]

 

 

 俺は靴を脱ぎ、守君の後をついて階段を登っていく。年季の入った階段が、ギシギシ音を立てる。日本家屋のこの感じ……こんなことですら思い出深いな。

 

 

[ここが守君の部屋かぁ……すごいサッカー好きなんだろうなって感じがするよ]

 

「でしょ? 落ち着くんだよなーこれが」

 

 

 壁中にサッカー選手たちのポスターが貼り付けられている。選手たちの名前はわからないけれど、おそらく日本の有名選手なのだろう。守君はまだ、海外サッカーに関心がないだろうしな。

 

 守君は、部屋に入ってすぐ、先ほどまでサッカーに使っていたボールを棚に並べた。ポールの周りには、大介さんの写真と共にグローブやノートが共に並べられている。

 

 

[これは……]

 

 

 俺は思わず、あるものを見て声を漏らしてしまった。

 

「おおっ! アインはお目が高いなぁ!! それ、俺のじいちゃんが使ってたグローブなんだ。ついこの前、物置の中に押し込まれてたのを見つけたんだよね」

 

 

 コレが円堂大介さんの……グローブ。見かけだけで言ったら、ただの古ぼけたグローブでしかないが、コレには凄まじい想いが詰まっていることを知っている。守君のサッカー愛の根源とも言える品だ。

 

 

「後、これも見てくれよじいちゃんの凄技特訓ノート!!」

 

 

 守君は年季の入ったノートをペラペラと捲る。

 

 ……きったねぇ字だな!! 書き殴られたという表現ですら甘い線が、ノートの中でぐちゃぐちゃになっていた。

 数年ぶりに日本語を書く俺でも、絶対にコレより綺麗な文字を書ける。確かにこれは、守君以外は読めないのも納得だ。

 

 

[独特な文字? だね]

 

「そうなんだよなぁ……じいちゃんの字が汚すぎて読めないんだよ。何度も読み返してるんだけどさー」

 

 

 まだ守君も読めなかったか。それほど難解な文字だ。まるで、古代文字みたい……いやだから文字には見えないって。

 

 守君は困った顔をして、ノートを上下左右に回しながら解読を試みている。数分、唸りながら向き合った後、こう言った。

 

 

「うーん……やっぱりわかんないや!」

 

 

 そう言って、彼は解読を諦め、ノートを棚に戻した。

 

 窓から夕日が差し込んでいる。そろそろ帰らないと……かな? アトリも心配だし。

 

 

[そろそろ、お暇しようかな]

 

「そっかー。もうそんな時間かぁ」

 

 

 守君は悲しそうに、淡々の髪の毛をしなしなにさせる。俺も多分しなしなになっているに違いない。

 

 

「そうだアイン!! 観光に来たんだろ? だったら見て欲しい場所があるんだ!! 帰る前に一箇所だけついてきてくれないか!?」

 

 

 行きたいところ……あそこかな? 

 幸い俺には心当たりがあった。

 

 

[もちろん。それぐらいなら構わないよ]

 

 

 円堂君に手を引かれ家を飛び出して行った。太陽が落ちてきている。もうすぐで日が暮れるだろう。

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 梯子をひたすら登り続ける。ここまで来ると地面は遠く、かなりの高所だ。俺は必殺技を使って高所に慣れているから問題ないけど、高所恐怖症の壁山なんかは手を滑らせてしまいそうだ。

 

 

「見てくれよアイン! 綺麗な夕日だろ?」

 

[あぁそうだね。すごく綺麗だ……]

 

 

 円堂君に誘われて訪れたのは稲妻町の平和のシンボルである鉄塔だった。作中で何度も利用された、まさに稲妻町を代表するスポットと言えるだろう。

 

 夕日が稲妻町を照らし、幻想的な姿を見せる。綺麗だ。涙が出そうになる。

 

 様々な人々の心を動かした名所の魅力は、確かなものだった。いつまでも見ていたい、いつか終わりが来てしまうのが勿体無い。そう思えるほどに。

 

 

「アイン。今日は本当にありがとな! 俺……スッゲェ楽しかったんだぜ!! こんなにサッカーを楽しいと思ったのは初めてだ!!!」

 

[奇遇だね。僕もだよ! ]

 

 

 円堂君の顔が夕陽によって照らされている。屈託のない笑顔が俺の心に沁みていくのを感じた。俺もこんな風に笑うことはできるんだろうか。

 

 

「なぁアイン。いつかまたサッカーやろうな!!」

 

[当然だよ。僕たちはまた出会うだろう。そしていつか……最高の舞台で戦わないかい? ]

 

「おお! 確かにサッカーで戦うのも楽しいよな! じゃあ指切りで約束しよう!!」

 

 

 守君と小指を繋ぐ。指切りげんまんなんて言葉、久々に聞いたな。

 

 

「絶対にまた会って一緒にサッカーをするんだ!!」

 

[そしていつか、世界の頂上で最高の試合をしよう]

 

「ゆーびきーりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった!!」

 

 

 今まで経験した指切りの約束は全て忘れてしまった。きっと約束は守れていないし、守られてもいないだろう。

 

 だけど……この約束は絶対に忘れないに決まっている。

 

 

[また逢おう。円堂守]

 

「うん! じゃあなぁぁぁ──!!」

 

 

 鉄塔から無事に降りた俺たちは、日が暮れる前に別れることにした。名残惜しい思いもあるが、縋る必要はない。必ず再会するのだから。

 

 守君は大きく手を振っている。俺も珍しく、全力で手を振り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──とある場所──

 

 

 ここがお日さま園か……。

 

「全くぅ〜! 調べるの大変だったんですよ? アインス様ぁ……でもなぜ孤児院に来たんです……?」

 

[少し用事があってね……調べてくれてありがとう]

 

「……畏まりました。詮索はしません。でも何かあったらすぐに言ってくださいね?」

 

[……ありがとう。早速入ろうか]

 

 

 

 

 

 ──大阪──

 

 

「うわぁ!! 高い!! すごいですねぇ!!」

 

 最終日、俺達は大阪のナニワランドを訪れていた。今はアトリが観覧車に乗りたいというので、付き合っている。アトリは若い頃からあまり自由がなかったから、こういう経験は珍しいのだろう。とても楽しそうにしていた。喜んでくれるなら何よりだ。

 

 ナニワランドに来た理由は勿論、ナニワ地下修練場の捜索。当然まだ無かったけどな。

 

 仕方ない。アトリが満足するまで、観光に付き合ってナニワギャルズの溜まり場でメシでも食うか。

 

「アインス様! 早く、タコヤキ! オコノミヤキ! クシカツ!!」

 

 ……彼女は花より団子だったみたいだ。この前お腹を壊したにも関わらず、アトリは相変わらず、食い意地が張っている。

 

 そうして俺は、リカのお母さんが経営していたお好み焼き屋を訪れた。

 

 味は良かった。だけど、食事に集中できなかったんだ。

 食事中すごく視線を感じた。

 嫌な予感がする。

 

 ──────俺は選択をミスったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 ──飛行機の中──

 

 

[どうだった日本は? ]

 

「気に入りました!! 景色は綺麗だし、人は優しいし、何より食べ物は美味しいし!!!」

 

[そのうち日本に引っ越すつもりだから付いて来るなら心の準備をしておいてね]

 

「へっ!?」

 

 

 

 

 

 





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