イナズマイレブン 雷鳴への挑戦   作:For AP

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閑話:監督たちの畏れ

 

 

 

 ──ドイツ──

 

 

 私は小学生のサッカークラブチーム、【ヒンメルクラウン】を監督しているジニウスというものだ。小・中・高・大とサッカーをプレイし続け、成り行きで今は今は監督という大任を任されている。本業はスポーツショップの経営だ。

 

 我ながら、サッカー漬けの人生だなと笑ってしまう。ここまでサッカーを愛するとは、過去の私には想像もつかなかっただろうな。

 

 紆余曲折あって、先代の監督から【ヒンメルクラウン】を引き継いで、早5年。様々な苦悩がありつつも、チームをうまく運営し、成長させているという自負があった。子供達をより良い方向に、サッカーという世界を楽しめる様に、導くことができていると誇りすら持っていた。

 

 実際に子供たちの努力によって、年々大会実績も良くなっていったから、裏付けは為されていると信じたい。

 

 しかし、そんな私の監督としての自負や自信は、ただの自惚れだった。彼をどう導くべきか、私には全くわからない。

 ……彼は入団した齢6歳にして、あまりに選手として完成していたのだ。心・技・体。スポーツに必要な要素全てが、子供とは思えないほど磨き上げられていた。

 

 まさに天に愛された存在。ギフテッドというやつなのだろう。彼のような才能を、私は未だかつて見たことがない。監督として、大人として私はどうあるべきなのだろうか……

 

 そう私を悩ませる人物は、子供の頃から共にサッカーをプレイしてきた親友の子供だというのだから、尚更救われない。

 

 もし彼が在野の原石だとしたら、私より優れている指導者に快く送り出せるのだが、私は親友に子供を預けられた信頼を裏切るわけにはいかないのだ。チンケなプライドだと人は言うだろう。それでも私は期待を裏切れない。

 

 だからこそ、私も指導者として成長しなければいけない。彼を導くに値する人間へと。

 

 そう決意を胸に秘め、熱い想いを燃やしていると、練習時間になり子供達が集まってきた。彼を紹介しよう。

 

「今日からこのチームに入ることになったアインス君です。6歳だけど、サッカーの実力は目を見張るものがあるから、みんな仲良くしてあげてくれ」

 

 はーい!!! 

 

 子供達から返事が返ってきた。優しい子達だ。じゃあアインス君からも一言もらおうか。そう考えた私は、彼の肩を優しく叩く。

 

 

「アインス・リヒターだ。馴れ合うつもりはない。早くスタメンをよこせ」

 

 無表情に、彼は豪語する。子供達は目を点にして硬直した。

 

 ……一方の私はあまりの事態に額に手を当て、天を仰いだ。どうやら教えることがあったらしい。そういえば、親友のアイツも子供の頃はこんな感じだったような……

 

 

 

 

 

 ──数日後──

 

 

 衝撃の自己紹介から数日後。アインス君にも無事、友人ができたようだ。────いや友人というより取り巻きに近いのか? まぁ仲良くなっている子もいるから大丈夫だろう。

 

 アインス君の初めての挨拶から、結構な問題児なのかと思っていたけれど、アインス君は案外協調性もあるようで、指示に従ってチームプレイをこなしてくれていた。

 

 とはいっても他とは孤絶した才能は陰ることはなく、小学校高学年も顔負けの実力を誇っている。やはり私の目に狂いはなかったな。高学年の子供達からも認められるカリスマも持っているようだし、チーム内で軋轢が生まれないなら、次回の大会に出場させてもいいかもしれない。

 

 ────────フフフフフフフッッッ!! 

 

 思わず悪い笑みがこぼれる。

 

 こんな才能のある子が、後6年も在籍するということを考えると、未来が明るく照らされているようだ。念願のドイツ制覇も叶うかもしれない。

 

 6歳の子供を恐れて、指導者としての姿を見失っていた自分がアホらしい。アインス君のことを少しでも恐れてしまった自分が情けない。

 

 彼の才能は凄いが、まだ子供なのだ。私でも導くことはできるに違いない。

 

 

 

 

 

 ──数ヶ月後──

 

 

 私にとっても、子供たちにとっても待ちに待った大会だった。

 

 ドイツの小学生サッカークラブチーム最強を決める時。

 

 ヒンメルクラウンが1年間の成果を示す場所。

 

 その大舞台の準決勝まで、私たちは順調に駒を進めていた。

 

 次の相手は前回優勝チーム。

 

 まさしく優勝への天王山だ。

 

 勝つしかない。

 

 そうチームで団結し、試合へと臨んだのだ。

 

 しかし、相手は強かった。

 

 自慢のシュートは受け止められ、磨いたディフェンスは悉く打ち砕かれる。

 

 前半が終了する頃までには、1ー4と3点差をつけられてしまった。

 

 逆転はかなり難しい。ならばこそ次回に繋げよう。

 

 私はそう思って、彼を、【アインス・リヒター】をグラウンドに送りだしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 …………以前、私は彼を導けると言った。

 

 あれは、()()()()

 

 光が迸り、宇宙(そら)が落ちる。闇が唸り、大地が軋む。

 

 彼は本物の怪物だ。

 

 導くとはなんという傲慢か。

 

 彼を御せるのは、彼だけだ。

 

 もはや私には彼が人に見えなかった。

 

 顔の無い天使。所謂、怪物。

 

 彼を人に戻すためには、彼を打倒するしかない。

 

 

 

 

 

 誰が……? 

 

 どうやって……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──稲妻町──

 

 

 いらっしゃい。

 

 

 ガラガラと戸が開く音で、俺は振り返った。

 

 珍しい客が来たな。豪奢で質の高そうな服を着込んだ異国の少年がウチに来たことなんて一度もねぇ。

 

 なぜウチを選んだのかはわからんが……まぁ金を払ってもらえるなら客だ。拒む必要はない。

 

 

 こんな店に子供が来るのは珍しいな……ボウズ、1人か? 

 

「そう。ダメか?」

 

 

 随分と態度のでかい子供だなと思った。しかし、あまりにも、容姿や雰囲気に合った言動だったので、不思議と不快感はない。

 

 

 まぁ構わんが……お前はそこらのガキとは違いそうだ。

 

 

 それに、近所の悪ガキ達と違って、その少年は酷く落ち着いている。ともすれば、実は大人であると言われても疑問は覚えないほどに。

 

 

 注文は? 

 

 

 俺はルーティーンのように、言葉を紡いだ。人が入店したら、注文を聞くのは飲食店として当然だ。少々無愛想かもしれないが、コレがウチのスタイルだ。

 

 

「大盛チャーシューメンとチャーハンと餃子」

 

 

 チラリとメニュー表を一瞥した少年は淡々と注文を熟す。しかし、小学生になるかならないか程度の子供にしか見えない。とても食べ切れるとは思えないが……

 

 

 ……そんなに食えるのか? 

 

「問題ない。そのぐらいなら余裕だ」

 

 

 少年はそう断言する。その言葉には恐らく大丈夫だろうと思わせる説得力があった。なら構わんか……? 

 

 厨房に向き合い、麺を大鍋に入れる。後は慣れ親しんだ手順に沿って、料理を作るだけだ。チャーハンと餃子のために中華鍋に火をつけた。

 

 作業を始めて2、3分と言ったところだろうか。注文したお客である少年は、何か珍しいものを見るように、調理中の俺や店の中を見つめている。やはり日本人ではなさそうだ。

 

 

 なんでこの町にきたんだいお客さん。ここらの人じゃないだろう

 

 

 普段なら無言で仕事をするばかりだが、今回は興が乗った。珍しい客に疑問を投げかける。

 

 

「観光だ。なんでもこの町にはイナズマイレブン って奴らがいたってのを聞きつけてな」

 

 

【イナズマイレブン】

 

 あまりに予想外の理由に、気が動揺した。なぜ、あんな昔のことを、少年が知っているのだ? あの事件は奴が闇に葬ったはずだ……

 

 

 ……どこでそれを聞いた? 

 

「イナズマイレブンの情報の出どころか? インターネットに転がってたぞ。そこで好奇心を抱いただけだ。深い理由なんてない」

 

 

 少年はイナズマイレブンの実在を自信を持って断言する。本当にそんな目的で此処にきたのだとしたら、なんとも複雑で、運命的だ。それにしても、本当にインターネットに情報が転がっていたのだろうか? 詳しくないが、とてもそうは思えなかった。

 

 

 ……そんな奴らはもう居ない。探すだけ無駄だ

 

 

 この話は深掘りしたくない。俺は早々に話を断ち切ろうとする。

 

 

「なぜアンタが断言する? 何か情報でも持ってるのか?」

 

 

 俺はその質問に対する解答を持たなかった。誤魔化すように、逃げるように少年に出来上がったアツアツのラーメンを提供する。

 

 はい、お待ち

 

 少年からそれ以上の詮索はなかった。……なんとも情けないことだ。昔のことをウジウジ引きずって、こんな子供に気を使わせるとは。

 

 少年は慣れた手つきで、箸を扱いラーメンを啜る。外国人のように見えるのに、作法は日本人じみていてなんともチグハグな印象を受けた。

 

 

 うまいか? 

 

 

 ……俺は思わず、少年にもう一度話しかける。気分が良くない。嫌なことを思い出したことに加え、考えたことを自由に話せない自分の狭量さがもどかしかった。

 

 

「あぁ。悪くない」

 

 ならばよかった。麺を啜る少年は、あまりに無表情だったから不安だったのだ。少しばかり、気をよくした俺は、立て続けに少年に語りかけた。

 

 

 そうか……お前はサッカーをやってるんだよな? 

 

 

 少年にサッカーの話題を出した瞬間、空気が、世界が塗り変わった。少年から放たれる雰囲気が、刺々しくも落ち着いたものから、威圧感のあるものに変化する。

 

 冷や汗が垂れるのを感じる。なぜ俺は気づかなかったんだ? クソっ!! ここまで耄碌していたか。冷や汗が、滲み出る。

 

 コイツはとんでもない化け物だ。

 

 

「一応。それがどうかしたか?」

 

 

 レベルが違う。イナズマイレブンと呼ばれていた当時の力ですら、コイツに届くことはないだろう。どうやって此処までの力を手に入れたのか、興味が泉のように湧き出てきた。

 

 

 楽しいか? 

 

 

 これほどの力を持つ人間はサッカーを楽しいと思うのだろうか? 敵などそうそういないだろう。最早勝負すら成立しない。しかし、そんな俺の想像とは裏腹に、少年の回答は酷く前向きなものだった。

 

 

「考えるまでもない。俺はわざわざやりたくないことはやらない」

 

 

 そうか。サッカーの喜びに力の多寡は関係ないか。……おれは何処か少年に諭されているように感じた。尚更、彼に興味が湧いた。我が事ながら珍しい。

 

 名前は……? 

 

「アインス」

 

 アインス……か。

 

 時代が動く音が聞こえる。世界が変わる兆しが見える。……あれ以来、サッカーというスポーツを遠ざけてきた人生だったが、今一度。関心を持ってもいいのではないかと思えた。

 

 アインスのプレイを未来を見てみたい。そう純粋に願いを持てた。

 

 俺の料理を残さず平らげた少年は、テーブルに代金を置き、立ち上がる。

 

 

「悪くない味だ。世話になった」

 

 おう。また来い

 

 

 なぜだか、不思議と少年と再会する予感がした。

 

 少年は後ろ手を振り、店から出て行こうとする。

 

 俺はアインスに最後の質問を投げかけた。

 

 

 お前は何を目指してそんなに強くなろうとしているんだ? 

 

「伝説を地に叩き落とす。そして、世界を獲る」

 

 

 

 俺は彼のことを忘れないだろう。彼の姿に、彼の力に、彼の気高さに魅入ってしまったのだから。

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 あの子は? 此処らで見ないような子供だが。

 

 わからん。世界にはとんでもないやつがいる様だ。

 

 おっ? サッカーに興味でも戻ったか? 

 

 違う。サッカーじゃない。彼自体だ。

 

 ほほぅ……珍しいな。笑っているぞ。

 

 アンタもよく見ればわかるさ。歳をとると若い奴の才能に嬉しくなるもんだからな。

 

 ほほぅ。もう少し早くきておけばよかったなぁ。

 

 

 

 

 





主人公は終始こんな感じで喋ってます。でも言動が容姿と合致しすぎていて怒られない最強ポジにいます。
日間ランキングに載ることができました。皆様のご支援感謝致します。
これからも応援よろしくお願いします。
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