イナズマイレブン 雷鳴への挑戦   作:For AP

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8話:サッカー仲間

 

 

 

 楽しかった日本旅行から帰国し、俺はドイツの小学校に入学した。母さんに少し離れた私立の小学校を勧められたけど、通学に時間が取られるのは嫌だったから、地元にある近くのところだけどな。父さんが賛成してくれたから助かったよ。

 

 入学当初は中学校以来、病院に篭りきりだったという前世もあって、少し緊張するなぁ……とか思っていたけど、クラスメイトには話しかけられないし、学校も大したことないしで、気にしすぎだった。

 

 

 

 そんなこんなで時間はあっという間に過ぎ、俺は既に3年生。後少しで、小学校生活も折り返しというところまで来ていた。

 

 3年の経験を経て、小学校生活に慣れた俺は……授業が眠すぎて、窓から空を眺めているのだった。曇天が気分を重くする。

 

 暇だなぁ……やることないからずっと景色を見てるだけなんだよなぁ……早くサッカーしてぇ……小卒認定とかねぇのかな? 

 

 前世も割と勉強は頑張っていたし、今世に至っては、サッカーの修業に集中するために、すでに高卒程度まで勉強は済ませておいた。どうにもこの体は勉強ができる様で、殆ど見ただけの知識でも記憶することができている。

 

 学校で無駄な時間を過ごすなら、家でサッカーの練習をしていたい……俺も十分にサッカーバカになっているなぁ。練習しているだけでも楽しくて仕方ない。努力した成果が如実に現れるから、やり甲斐も無限大なのだ。

 

 

 小学校低学年の子どもたちと話が合うわけなんてないし、コミュニケーションも取りづらいんだよなぁ。

 

 俺の最愛の妹であるシエルも、別のお嬢様学校に通っているし……

 

 

 

 でも友達がいないってわけじゃないぞ。ちゃんとこんな俺とも話してくれる優しい人間はいるのだ。

 

 授業の終わりを告げる。チャイムが校内で鳴り響く。

 

 

「おい、アイン。放課後になったわけだし、サッカーしようぜ」

 

[わかったよアレク]

 

 

 ほら、話しかけてくれた男の子がいる。緑髪を首元まで伸ばしているイケメンな彼はアレクサンダー・ハウゼン。クラスメイトであると共に、【ヒンメルクラウン】のチームメイトだ。彼の陽気さには日頃から助けられている。話しかけてくれるだけで最高の友人だ。

 

 ……なんだか、俺クラスメイトから避けられてるんだよね。友達と言えるのは大体サッカー関連で、学校の友達なんて1人しかいない。不細工だったり、臭いなんてことは万が一にもありえないから……性格だろうな……

 

 小学一年生に避けられる性格って一体……? 

 

 ……まずい、このままだと、自己肯定感が低下してしまう。早くサッカーをキメよう。と思ったのだが……

 

 

「そういやアイツも来んのか? わからないんだったらお前が誘ってこいよ? アイツ俺が誘っても無視しやがるからな」

 

 

 アイツ? 彼女のことかな? この学校で知り合ったという意味では、俺唯一の友だち。 サッカークラブには所属していないものの、サッカーが好きな様で、俺だけに話しかけてくれるのだ。

 

 

[任せて! 先に学校のグラウンドで待っていてよ! ]

 

 

 そう応えるとアレク君やサッカー仲間はボールを小脇に抱え、和気藹々と教室から出ていった。

 

 俺の探し人は……と……

 

 教室の中に彼女は見当たらない。もう出ていってしまったのか……? 放課後だけど、多分帰っていない筈……だとしたら、あそこにいる筈だ。

 

 俺は教室を出て、心当たりのある場所に歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 案の定、校舎の裏側にある廃材置き場に彼女は居た。廃材の上に座りながら、ぼーっと空を眺めている。

 

 

[探したよ。何してるんだ? ]

 

「別に……どうだっていいでしょ? 学校なんかぶっ壊れちゃえって思ってただけ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その子は拗ねたようにこちらを睨みながら、足元にあった小石を蹴飛ばす。不機嫌そうな彼女は【遊馬(あすま) 鵐玄(むくろ)】。去年ドイツに引っ越してきた日本人の少女だ。俺の友達である。俺の友達である。大事なことだから2か…………

 

 いつもクールな性格だけど、今日はどこか悲しそうな表情をしている。何かあったのだろうか? 

 

 

[物騒だな……確かに学校は退屈だし、つまらないかもしれないけど、学べることはあるんじゃないか? ]

 

「そんな優等生ぶっちゃ……いやアンタは天才だったか……ほっといてよ、アンタに私の気持ちなんかわからないんだから」

 

 

 俺は思ってもいない綺麗事を並べたわけだが──随分と擦れてるなぁ。まだ小学生3年生のはずなんだけど……でも俺は彼女の言っていることがわかる。なんてったって前世は真っ暗闇の中を生きてきた人生だからな。

 

 

[クラスメイトと何かあったのか? ]

 

「…………悪口言われてたの。男の子とばっかり仲良くしてる変なやつって。アインに擦り寄ってるとも言われてた」

 

[……そうかぁ。だったらそんな子たちとは関わらなくていいと思うよ? 無理して嫌な人たちの話を聞く必要なんかない。好きな人と付き合えるのは子供の特権だからさ。それに俺はムクロと話したり、遊んだりするの楽しいから意味のない指摘だね]

 

 

 そんな慰めも大した意味はないようで、ムクロは顔を曇らせたままだった。彼女の悲しげな顔は見たくないなぁ。

 

 

「……いいよね。みんなは一緒で。私はいっつも1人。無愛想で怖いアンタだって避けられてるけど、友達はいる。だけど……私はあんなバカ達にも仲間はずれにされる」

 

 ムクロは立ち上がり、拳を握り込んだ。そして声を震わせながら俺の肩を掴んだ。爪が俺の肌に食い込んでいる。かなりの力が込められていた。

 

 

[ムクロが1人だって? 俺とムクロは友達だから1人ってことはないだろ? それに俺以外にもムクロのことが気になってる奴も多いしな。アレクやヨナスだってお前とサッカーしたがってる。そんなに自分を卑下するもんじゃない]

 

 

 ムクロは俯きながら、ポタポタと涙を溢した。俺がもっと凄いやつなら、この子を泣かせてしまうことはなかっただろう。不甲斐なくて俺も泣きそうになった。

 

 

「…………アンタは苦しくないの? みんなから避けられてるのに期待されてるっていう矛盾。私なら怖すぎて逃げ出すよ?」

 

[────怖いよ? ……でもそれ以上に……後悔することの方が恐ろしい。ムクロだって後悔はしたくないだろ? 本当はみんなと仲良くしたいんだよな? ]

 

「それは……」

 

[後悔は苦しいよ? 死んでも……死んで生き返ってからもずっと忘れられない。俺はムクロに後悔してほしくないんだ。だから俺と一緒に来なよ]

 

 どれぐらい俺の言葉が、彼女のためになっているかはわからない。だけど、本心からムクロには俺の二の舞にはなってほしくない。後悔をさせたくない。人と話せるのに。人と遊べるのに。人と愛し合うことができるのに。その機会を喪うなんてことあってはいけないんだ。

 

 

「────ー狡い……そうやって私を引きずり上げようとするの」

 

 

 言葉を紡ぐと共にムクロに抱きつかれた。俺は動揺を隠しながらも、彼女を両手で抱いた。少しでも……彼女の救いになれるように。

 

 

[狡くて結構。コレでもよく怪物扱いされるんだ]

 

「……わかったよ。私も……みんなと仲良くできるように頑張る。だからアンタも私のことをよく見ててね?」

 

[あぁ見てるよ。ずっとね。なんてったってムクロは俺の友達だからさ。]

 

 

 ムクロは顔を持ち上げ、赤く染まった目元を拭う。そしてクスッと笑った。

 

 

「しょうもない話を聞いてくれてありがと。じゃあ行こうか……アンタどうせサッカーのメンツ集めに来たんでしょ?」

 

[……バレた? ]

 

 彼女の笑顔は俺を幸せにしてくれる。青空も祝福するかのように晴れやかに澄み渡った。

 

 

 笑顔の方が絶対ムクロには似合っているよ。

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 放課後の校庭で、数人の子ども達が駆け回っていた。ボールを追いながら、楽しそうに騒いでいる。俺はその一員として、校庭を駆け回っていた。

 

 

[アレク! パス! 決めろ! ]

 

「ナイス!! 行くぞ、オラッ!!」

 

 

 緑髪の少年が、サッカーボールを力強く蹴り込んだ。その大人顔負けのパワーによって蹴り出されたボールは、鋭くゴールの隅に向かっていった。

 

 GKは反応こそするものの、コースの良さに対応できず、ボールに指先を掠らせる程度のことしかできなかった。

 

 サッカーボールがゴールを揺らす。

 

 

「ナイスシュートだ」

 

「当然だろ?」

 

 

 自慢げに胸を張るアレクに特徴的な眼帯を付けた少年が話しかける。

 

 彼は【ヨナス・ポラック】。アレクと同じく、チームの仲間でありつつ同級生だ。陽気なアレクと違ってマジメだから、とても頼りになる。

 

 

「これなら俺たちもそろそろスタメンを取れるかもしないな」

 

「どうなんだ? ウチのエースさんよぉ!!」

 

[そうだね……基礎的な技術は足りていると思う。あとは……体力と必殺技かな……? ]

 

 

 彼らは俺と同じく小学生1年生の時にヒンメルクラウンに入団したのだが、それ以来精力的に練習をこなしていた。努力を重ねた結果、2人の実力は今のスタメンである上級生と比較しても遜色ない。もう少し力を付ければうちは実力主義だし、3年生にしてスタメンということもあり得るだろう。

 

 

「必殺技ってそんなに簡単に覚えられるモンなの?」

 

 

 先程俺が呼んできたムクロが会話に入ってくる。いつもならサッカー中も黙ってそっぽを向いているのだけれど珍しい。さっき頑張ってみんなと仲良くなると言ったのは嘘じゃないみたいだ。

 

 

「珍しいな。ムクロが話に加わってくるなんて」

 

「……そういう日もあるってこと。ほらアイン教えてよ」

 

 

 

 ムクロはヨナスの疑問に答えた。恥ずかしいようで、顔を俺たちから背けていた。頑張ってはいるけどまだまだだなぁ……気持ちわかるぞぉ。

 

 

 ええっと、必殺技を覚えるためには、どういう技をどういった形で扱いたいのか想像しておくことと、それに見合った技術、能力が必要なんだ。まぁみんな実力はあるしイメージさえ掴めればいけると思うよ? 

 

「じゃあ教えてよ。マジメにサッカーがしたくなった」

 

「おお! ムクロがやる気になった!!」

 

「いつも適当にやっていた筈なのに変なこともあるもんだ」

 

 

 2人に止めを刺されたムクロは顔を赤くし、反論する。ムキになってかわいいねぇ。子供らしくていいもんだ。

 

 

「うっさい!! 私が強くなるのはアンタたちにとってもいいことなんだから手伝いなさいよ!」

 

 

 いいこと? ……練習相手として助けてくれるということかな? 俺もサッカーを教えるのは結構好きだし、何より人とサッカーができるのがうれしい。喜んで力になろう。

 

 

「アイン。俺たちも忘れるなよ」

 

「そぉだぞー!!」

 

 

 忘れてないって……

 

 

 

 

 ──数日後──

 

 

 今日はチームの練習日だ。いつものように家での自主練を切り上げ、チームの練習場所である共同グラウンドまで走って行く。

 

 そういえば今になって思い出したけど、前回の練習で、監督がニヤニヤ笑いながら「お前もやるなぁ」なんて肩を叩いてきたけど、なんだったのだろうか? 

 なんだかウザかったので、やさしいシュートを流れ弾に見せかけてを尻に蹴り込んだのだが、監督は頑なに吐かなかったので未だに意味はわかっていない。

 

 

 

 おっと、時間ギリギリだったみたいだ。グラウンドには子ども達が大勢集まっていた。

 

 いつものように挨拶をして、その輪に加わる。監督が歩いてきた。早速練習が始まるようだ。

 

 

「よーし………………今日も全員参加だな! 集まりが良くて俺は嬉しいぞぅ!! 早速練習と行きたいところなんだが、今日は発表がある」

 

 きてくれ──!! 

 

 監督は振り返って、大声で誰かを呼んだ。

 

 

「ウチのチームに新たなメンバーが増えたぞー! 仲良くしてやってくれな!」

 

 

 監督の言葉によって、監督の後ろから人影が近づいてくる。

 

 誰だろうという疑問を挟む間もなく、顔が見えた。

 

 

 

 

 ムクロじゃねえか。

 

 

 アレクは驚いたように、大口を開き、ヨナスは隠していない右目を見開いていた。俺は多分……なんにも反応していない。

 

 キョロキョロと俺たちを見まわしたムクロは俺を見つけた瞬間、ウィンクをしてきた。イタズラが成功したかのように、くすくす笑っている。

 

 

 なるほど……そういうことだったのか……

 

 

 

 






アレクサンダーとヨナスは原作キャラです。気になる方は検索をお願いします。話し方なんですが、調べてもわからないのでなんとなくで書いてます。
 
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