異端者が歩む道   作:猫咲己

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見た目はジョニー・デップの方のグリンデルバルドを若くしたイメージです。


第0話

 大勢の人間が広場に溢れかえっている。興奮しているもの、物見遊山で来たもの、懐疑的な思いを抱いているもの。思いは千差万別だ。よく見れば、国籍も人種も何もかもが異なる人間ばかり。まるで統一性が無い。けれど誰もが口にしているのは共通して「狩人」と言う存在。そして思いの強さに大小あれど抱いているのは期待、希望。この二つだ。

約束の刻を知らせる鐘の音が響き渡る。

 

パンッ。

手を叩く音が響き、その場に居た誰もが注目する。

 

 いつの間にか広場の中心に不思議な雰囲気を持つ男が居た。隣に佇むブロンドの美しい女は見覚えがある。自分たちは彼女に集められたのだから。彼女はその男に一礼して端へと寄った。自然と男に目が行き、言葉を待つ。

 

そして完全な静寂が訪れた瞬間、静かに言葉を紡ぎ出した。

 

 

「…兄弟達よ、姉妹たちよ。そして友よ。今日という日によくぞ、集まってくれた。既にわかっているとは思うがみなの語る狩人とはこの私だ。分かりやすくて良い旗印だろう?さて、君達は今という現実に不満を覚えている、これは疑いようのない事実だ。そして今日、何かを求めてここにやってきた。そうだな?」

 

頷きや同意の声を耳に、広場の中心でゆっくりと回りながらこの場にいる全員を見渡し、続ける。

 

「皆がここに希望を抱いて来ている。それは何故か!知っているからだ…。古き体制はもう意味を成さない事を。求めている!今までとは違う何かを。…聞いた事もあるだろう。私は今の世界を憎んでいると。…憎んでなどいない、本当だ。私は期待しても変わらず、改善しようともしない世界に怒り憐んでいる。」

 

男の声に力が哀しさが込められる。

 

「愚かだとは思わないか?個性を手に入れて黎明期以前の人類とは全く異なる次元に立っているのにも関わらず、何一つとして成長していない。社会システムもそうだ。黎明期からおよそ100年、個性を持たない人類は減少の一途を辿り名実共に個性社会となっているのにも関わらずそれに準じた新しい体制を整えることなく、既存のシステムをずっと維持し続けている。過去に一度警察は、組織改革に手を伸ばしたが上層部や権力者の勝手な事情でそれも失敗。もう良い加減溜まりにたまった膿を吐き出すべきだ。腐りきった現在のシステムにもう意味はない。

その点、各政府の裏機関はよくやっている。一部のやり過ぎたヒーローと手に負えないヴィランの秘密裏な殺処分。驚くことはない、みなが今まで見て来たものは整えられた美しいもの、と言うだけだ。そもそもの話、更生の望みがないヴィランですら生捕り前提なのはなぜだ?ヒーローはヴィランを必要以上に傷つけてはいけない?…馬鹿馬鹿しい。そのせいで亡くなった人間のなんと多いことか…今こそ在り方を変えねばならないと、そうは思わないか?」

 

広場にいくつも啜り泣く声が響き渡り、皆一様に顔を顰め許せないと怒りを募らせる。

 

「個性による影響で理不尽に遭ってきた人間、偏見を持たれる個性、異形型個性、そして無個性。これらの”個性”を持つ人間を差別する世界!助けを求めても見てみぬフリをする社会!これが許されていいのか?否、断じて否だ!許されていいはずがない!

我々はこの世に産まれ落ちただけで蔑みの対象になるのか?劣っているのか?自由に愛する事も出来ないのか?…助けを求めてはいけないのか?そうではない。偏見も差別も真に理解していない者共の妄言でしかない。」

 

皆一斉に同意の言葉を投げかけて来ている。最も口々に言うので対して聞き取れていないのだが。両手を広げ注目を集め、静寂を取り戻す。

 

「けれども彼らが我々より優れているとも劣っているとも言わない。故に慢心する事も辱めを与えることもあってはならない。我々はそのような世界を変えんとここに集まっているのだから。そして!…今この場にも普通の個性を持つものは大勢いる。だが彼らは違う、真に理解し共に世界を変えようとする同胞だ。我々ならば素晴らしい世界を秩序を作れる。みな自由を、真実を、正義を、愛を求めろ!」

 

広場の空気が凄まじい熱を孕む。

その場にいる誰もが熱い思いを胸に男を見ている。

 

「今のシステムが!世界が!我々の戦うべき相手。これこそが敵だ!

奴らの傲慢さ!権力への欲!停滞し続ける世界!今こそ声を上げ!勝ち取らなければ!」

 

己あるいは誰かのゴクリ、と生唾を呑む音が聞こえる

 

「……我々が変えるのだ。ここに大義を掲げる!

 

より大きな善のために!

 

行動を開始しろ!同胞を集め、力を蓄えろ!その時は近い!」

 

次の瞬間。

空間全てを貫くような、鬨の声が上がった。

 

この場にいる、誰もが声を上げ、腕を振り上げ、天へ吼えるように喉を震わせている。

胸中にあるのは”待っていた”という歓喜。みなが英雄を幻視した。彼こそが我々の指導者だと。

 

「そして刻むがいい!我が名はゲラート・グリンデルバルド!諸君らと共に世界を変える男だ!」

 

 

 

 

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