君の唇に恋してる…   作:とあるP

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4月
4月…君と出会えた奇跡①


とある病院に設けられた病室。ピッ、ピッ、ピッと規則正しくなっていた、生命維持装置が突然ピーと音がけたたましく鳴り響く。それに伴ってナースさんや白衣を着た人達が右往左往していた。

 

「心拍数60を切りました!」

「なに!AEDの準備を!」

「体温低下!現在34℃…更に低下して行きます!」

「いかん!AEDはまだか!」

 

薄れゆく意識の中で、ベットの上の少年は最後の言葉を医師に伝えるのであった。

 

「…先生……最後の……お願い……聞いてくれますか……」

「!……ああ、いいぞ」

「…テレビを……付けて…欲しいんです」

「…わかった」

 

そう言って、医師は手術室に設置されているテレビを付けた。そこに映っていたのは、黒を基調とし、何処か大人っぽい衣装【ミスティック・ドーン】を着た女の子が、画面いっぱいに映っていた。どうやらアイドルのライブ映像らしい。

 

「…ああ……奏ちゃん。……綺麗だね……」

「!おい!しっかりしろ!」

 

それが少年の最後の言葉だった。そして、生命維持装置が0になり、少年は天国へと旅立ったのだ。

すぐさま結果が両親に知らせた。泣き崩れる母親。涙を堪える父親。しかし、少年の顔は安心しきった笑顔であったと伝えると、両親は我が子が苦しまずに逝けたのだと悟った。

 

 

 

 

遅れて数時間後。そこに現れたのは、先程テレビに映っていた少女が息を切らして現れた。

 

ステージ衣装だろうか、頭にはティアラを付け真っ白なドレスに右側には、時計の飾りで大きなシュシュを抑えている衣装【スターリースカイ・ブライト】だった。

 

「彼は何処ですか!?」

「…彼はもう……」

「ッ!」

「おい、奏!」

 

後ろから来た男性の静止しを振り切り、少女は手術室へと向かう。そして、手術室から出てきたベットを見て驚愕した。

 

そこには、今まで隣で笑っていた時や、寂しい時傍に居てくれた時、くじけそうになった時に励ましてくれた彼だったが、その顔に暖かみは無く、只々冷たくなっていた。

 

「!…噓…嘘よね…ねぇ」

「……」

「どうして……ねぇ、何か言ってよ!」

「……」

「ねぇ!……う、うぁぁぁ~ん」

 

少女の目から大粒の涙が流れ出す。この少女速水奏(はやみかなで)と少年長門聡(ながとさとし)の出会いは1年前に遡る…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月。都内の高校に通う聡は他の人達と違う部分があった。それは生まれつき心臓が弱く、激しい運動が出来ないのだ。

 

そんな聡であったが、日々の勉強は好きだった。成績も常に上位をキープしており、クラスメイト達からは『先生』のあだ名まで付けられてしまう始末である。

 

「おはよう」

「おはよう先生!」

「だから、僕は先生じゃないよ」

「え~だって聡君の教え方って、本物の先生より上手いんだもん」

「うん、うん。ちゃんとポイントを抑えているから分かりやすくて、助かるんだよね」

「そうかなぁ…ケホ…ケホ」

「あら?大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。ちょっとむせただけだからね」

 

そんな話しをしながらも教室へ入っていく。既に何人かは席に座っており、聡も席に着いて授業の準備をするのであった。

 

そんな中クラスメイト達の一部が騒ぎ始めた。主に男子。

 

「なぁなぁ!このクラスに転校生が来るらしいぜ!しかも女子だ!」

「うぉぉぉ!マジか!美人系か?可愛い系か?」

「職員室でチラッと見て来たけど………めっちゃ美人!」

「よっしゃー!」

 

男子生徒達が盛り上がるなか女子生徒達が注意する。注意するが寝耳に水のようだった。

「ちょっと男子うるさい」

「まだ、ウチのクラスに転入するって決まった訳じゃないんでしょう」

「大丈夫だ!担任の山内と話していたのを見ていたから、ウチのクラスで間違いないぜ!」

 

そんな事を言っていると、担任の山内先生が入ってきた。みんなはすぐさま席に着いてSHRをするのであった。

 

「おーい席に着け~!え~今日は突然だけど転校生を紹介する。入っておいで」

「はい」

 

透き通った声で返事をして入ってきたのは、肩まであるショートヘアに金色の瞳。背はそんなに高くなく、むしろ平均的な高さ。そして、高校生と言うには相応しくないその美貌。OLや女子大学生と言っても、引けを取らない美しさにあった。

 

そんな彼女を目の前にして、男子生徒達も女子生徒達も只々呆然とするしかなかった。そんな中でおこなれた自己紹介。

 

「では、自己紹介を頼むよ」

「はい。速水奏と言います。元々都内の学校に通っていましたが、仕事の都合でこちらの学校に通うことになりました。どうぞよろしくお願いします」

「速水君はアイドル活動をしているからね」

「え!?アイドルなの!?」

「はい。けどごめんなさいね。サインとかNGなの」

 

アイドル活動と聞いて色めき立つクラスメイト達。そんな彼らを先生は宥めつつ、奏の席を案内するのであった。

 

「はいはい。質問は後にしてくれ。とりあえず速水君の席は、長門の隣が空いているので、そこに座ってくれ」

「はい」

 

そう言って、生徒の間を縫うように進み聡の隣に立った。そして、軽い挨拶を交わすのであった。

 

「初めまして、速水奏です」

「初めまして、長門聡と言います。よろしく」

 

これが、聡と奏の初対面であった。

 

 

 

朝のSHRを終えて数分後、クラスメイト達からの質問攻めが始まった。それに対して奏は、嫌な顔をせずに丁寧に対応していった。

 

「速水さん誕生日はいつなの?」

「7月1日よ」

「好きな食べ物とかあるの?」

「そうね…辛い物以外であれば、大抵の食べ物は好きよ」

「趣味は?」

「映画鑑賞よ」

「運動は得意な方なの?」

「ええ、レッスンとかで身体を動かすから、それなりに出来るわよ」

 

そんなのを横目に聡は次の授業の準備をするのであった。そして、禁断の質問が飛んできた。

 

「ねぇねぇ速水さん好きタイプとかあるの?」

「そうね……キスが上手い人かしら」

『おお~!』

 

一同が色めき立つが、聡は興味がなさそうに授業の準備をするのであった。

 

「速水さん。次の授業はこの学校で一番怖い坂本先生の授業ですよ。早めに準備した方がいいですよ」

「そうなの?けど、昨日の今日でまだこの学校の教科書とか持って来てないのよ」

「そうですか……なら仕方ないですね。僕の教科書を見せるので、次からは準備して来てくださいね」

「わかったわ」

 

そう言って、聡は奏と机をくっつけた。そして、英語の担任である坂本先生が入って来て授業が進んで行った。

 

 

 

 

 

お昼休み。何人かでグループを作っており奏はどうしようか迷っていたら、朝に質問して来た女子生徒達がやって来た。そして、一緒に食べようと誘って来たのだ。

 

「…」

「速水さん!良かったら一緒に食べない?」

「いいかしら?」

「もちろん!」

「ありがとう。あら?」

 

そこで気が付いた事があった。隣に座っていた彼が居なくなっていたのだ。理由を誘ってくれた女子生徒達に聞いてみると、意外な答えが帰ってきた。

 

「ねぇ、彼が何処に行ったのか知らないかしら?英語の授業のお礼がしたいんだけど…」

「ああ、先生ね。多分屋上だと思うよ」

「先生?」

「うん。長門君って、勉強の教え方が上手いから皆に『先生』って呼ばれているんだ」

「だから、テスト前とかに『対策会』とか開いてくれるんだよ~」

「へぇ…そうなのね」

 

 

 

一方の聡は弁当を食べる前に、病院から処方された薬を飲んでいた。そして、母が作ってくれた弁当を食べるのであった。

 

もちろん空いている手には英語の単語帳を忘れない。それを見つつ弁当を食べ進める。そして、食べ終わってお茶を飲んでいた時だった。

 

不意に屋上のドアが開いて誰かが来たのだ。しかし、聡は単語帳を見ていた為誰が来たか分らなかったのだ。そして、聡の耳に息が当たりびっくりし、我に返った。

 

「……」

「…ふぅ~」

「うひゃ!!」

「ふふ、うひゃ!ですって、あはは」

「び、びっくりした~。速水さんでしたか…どうしてここに来たんですか?」

「クラスメイト達が言っていたわ。『先生』ならここに居るって。それは…英語の単語帳?」

「…ええそうですよ。先程の授業で出たところを復習していたんですよ」

「ふぅ~ん。本当に先生みたいに真面目ね」

「まぁ好きでやっている様なものなので…」

 

そう言っていると、奏は聡の隣に座った。そして、先程の英語の授業で教科書を見せた事についてお礼を言うのであった。

 

「さっきはありがとうね」

「え?」

「英語の授業で教科書を見せてくれたこと。助かったわ」

「ああ、気にしないでください。隣に忘れた人がいたから見せただけです」

「けど、それでも私は嬉しかったわ。ありがとう♪」

「どういたしまして?」

 

転校生からお礼を言われた事が無かった聡は少しだけ嬉しかった。そんな風に思っていると、予鈴を知らせる鐘がなり始めた。

 

「行きましょう」

「そうですね」

「あと私の事は奏でいいわよ。同級生なんだし、敬語とかもいらないから」

「けど…「いい事!」…わかったよ」

「うん。それじゃあいきましょうね。聡!」

 

こうして出会って初日で名前呼びになった聡と奏。そして、2人して屋上から出てくる所をクラスメイト達に見られて、数日間からかわれたのは別の話…

 

 

 

 

 

放課後になり、部活がある者は部活動に勤しんでいる。聡は帰宅部なので鞄を持って、帰路に付くところだった。

 

校門前に着くと、ちょうど奏が出て行くところだった。奏はこれからレッスンに行くところだった。

 

「あら?今帰りかしら?」

「まぁそんなところ。奏さんは?」

「私?私はこれからレッスンの為に事務所に行くところよ」

「そうなんだ。ここから遠いの?」

「そんな事ないわ。歩いて5分くらいところにあるわよ」

「そんなに近いんだ」

「ええ……」

 

そう言って、奏は考えるそぶりを見せる。そして…

「聡はこの後どうするの?」

「えっと…家に帰って勉強するくらいかな?」

「そうなのね…ねぇ、今から付き合ってくれない」

「……はい?」

 

 

数分後。奏と聡は大きなビルの手前にいた。看板には「346プロダクション」と書かれていた。まるでシンデレラ城を模様するような佇まいのビルに奏は入っていく。

 

聡はビルの前に呆然としていると、奏に引っ張られる形でビルの中に入っていく。

 

「ほぇ~」

「ほら、行くわよ」

「え?」

「早くしなさい」

「ちょっと待って!」

 

そう言って、受付に向かう途中黄緑色の服を着ている人に出会った。ネームプレートらしきものには「千川」と書かれていた。

 

「あら?奏ちゃん。今来たんですか?」

「ちひろさんお疲れ様。プロデューサーは何処にいるかしら?」

「プロデューサーさんなら、部屋にいると思いますよ。そちらの方は?」

「ああ、この人はクラスメイトの聡よ」

 

状況が良く飲み込めない中で聡は自己紹介をするしかなかった。

 

「えっと…初めまして、速水さんとは今日知り合った長門聡と言います」

「初めまして、私はここでアシスタントをしています千川(せんかわ)ちひろと言います。よろしくお願いしますね」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

互いの自己紹介が終わって、奏は聡の腕を掴んで自身のプロデューサーの元へと向かうのであった。

 

「それじゃあ行くわよ」

「行くってどこへ?」

私達(・・)のプロデューサーのところよ」

「え?」

「プロデューサーさんの所に行くのであれば、長門さんはこのプラカードを掲げてくださいね」

 

そう言って、ちひろは『ゲスト』と書かれたプレートを貰って首から下げた。そして、エレベーターを使って、奏のプロデューサーの元へと行くのであった。

 

 

 

 

 

途中でプロダクションの関係者とすれ違い、「プロジェクト・クローネ室」と書かれた部屋の前にたどり着いた。

 

そして、ドアをコンコンとノックして奏は部屋の中へと入って行った。

 

「プロデューサー居るかしら?」

「どうした奏?」

「私の今日のレッスン内容は?」

「えっと…ボイストレーニングにヴィジュアルレッスンだな。その後は特にないな」

 

黒縁メガネをかけた男性と奏は、今日のレッスン内容を確認していた。どうやらこの人が奏が言っていたプロデューサーらしい。

 

その人と目が合った聡は軽く会釈していた。そして、この人とも自己紹介をするのであった。

 

「奏、その人は?」

「えっと、クラスメイトの聡よ」

「初めまして、速水さんのクラスメイトで長門聡と言います」

「ご丁寧にどうも。奏達『プロジェクト・クローネ』のプロデューサーです。今日はどういったご用件で?」

「えっと…速水さんに連れてこられたというか…」

 

それを聞いた瞬間プロデューサーは頭を抱えてしまった。奏はキョトンと小首を傾げる。

 

「はぁ~どうして奏はこんな事をするんだ」

「別にいいじゃない。聡はこの後暇だって言っていたし」

「でもなぁ…「大丈夫ですよ」うん?」

「暇だったのは事実ですし」

「まぁ…君がそういうのであればいいが…」

「それよりも、レッスンなんでしょう」

「ああ、そうだった。それじゃあ、レッスン着に着替えて行ってくれ。あとで、美嘉と志希も合流すると思うから」

「わかったわ。聡はどうするの?」

「えっと…迷惑じゃなければ、ここで課題とかしていてもいいですか?」

「ああ、それは大丈夫だよ。向こうのテーブルを使ってくれても構わないから」

 

そう言って、プロデューサーは自分のデスクに戻っていった。奏はレッスン着を持って部屋を出ていった。

 

残された聡はテーブルに課題を広げて、勉強をしようとした時、ドアが開いて人が入って来た。

 

「あ~疲れたよ。ねぇ、プロデューサー。フライドポテトない?」

「こら、加蓮!いつも言っているだろ。ここはマ〇クじゃいんだって」

「え~…それじゃあ奈緒が用意してくれるの?」

「うぇ!?アタシはそんなに料理は得意じゃないぞ!」

「加蓮、奈緒。それよりも先ずはプロデューサーに報告でしょう」

 

どうやら入ってきた3人はここのアイドルらしい。先程プロデューサーにポテトをねだってきた子は茶髪に肩まである髪を結んでいる。疲れているのだろうか、部屋に入って来てすぐにソファーにダイブしていった。それにしてもこの子は綺麗系というよりは、ギャルっぽい感じがする。

 

そんな子を止めに入った子はくせっ毛が強く、もじゃもじゃしていた。だが、どことなく親近感を湧く感じだった。その子は、ソファーにダイブしていった子を注意しようとしたら逆に煽られる形になってしまった。

 

最期に入って来た子は、艶やかな黒髪と制服姿が印象的な、クールでいかにも今風の女子高生だった。その子はレッスン内容の報告をプロデューサーに伝えているところだった。

 

「…ってな感じだったね」

「そうか、わかった。今日はもう帰ってもいいぞ。車で送って行こうか?」

「あ、それなら私マ〇クに寄りたい!」

「いいぞ。長門君はどうする?」

『え?』

「あ、僕の事はお気になさらずに…」

 

そう言って、プロデューサーが聡に確認するのと同時に、3人のアイドル達は聡を見て固まってしまった。

 

「お、お、お、お、男!どうしてここに男がいるんだよ!」

「奈緒~そんな事言っているとびっくりするでしょう」

「プロデューサー…この人誰?」

「この子は長門聡君。奏のクラスメイトらしい」

「あの…プロデューサーさん。この人達は?」

「ああ、この子達は『プロジェクト・クローネ』のメンバーだよ。北条加蓮、神谷奈緒、渋谷凛。3人でユニット『Triad Primus』を組んでいるんだ」

 

そう言って、3人は聡に今日何回目かの自己紹介をするのであった。

 

「初めまして、北条加蓮だよ~よろしくね」

「アタシは神谷奈緒。よろしくな!」

「私は渋谷凛。よろしくね」

 

「えっと…長門聡と言います。速水さんは同じクラスメイトなんです。よろしくお願いしますね」

 

聡が奏のクラスメイトだと言う事について、いち早く気が付いた凛は聡に聞いてみる事にした。

 

「奏のクラスメイトと言うことは…もしかして、長門さんって先輩?」

「あ、そうだよね!どうしよう…私タメ口使っちゃった」

「それなら、気にしないでください。僕は大丈夫ですから」

 

聡からOKが出たが、いまいち踏ん切りがつかない2人。そこに、レッスン終わりの奏が現れてきた。

 

「プロデューサー、レッスン終わったわよ…あら?どうしたのかしら?」

「お疲れ。どうだった?」

「特に問題なかったわ。ちゃんと終わった後にケアをしているからね」

「そうか。ところで奏はこの後どうする?奈緒たちはマ〇クに寄ってから帰ると言っているが」

「そうね…」

 

奏は少し考えるそぶりを見せると、聡をチラッと見た。そして、ここに残り聡と一緒に課題を済ませると言い出したのだ。

「魅力的なお誘いだけど、ここに残るわ。聡と一緒に勉強しているから」

「えっと…それって大丈夫何ですか?」

「本来であれば、関係者以外の人がここに残るのはいけないんだけどね…まぁ奏が居るから大丈夫だろう。何かあったらちひろさんを呼ぶんだぞ」

「ええ、わかったわ」

「それじゃあまたね長門セ・ン・パ・イ♪」

「それじゃあまたね」

「じゃあなぁ~」

 

加蓮は意味ありげな言葉を出して部屋を後にする。残された2人は大人しく課題を済ませる為に準備をするのであった。

 

「それじゃあ勉強でもしましょうか」

「そうですね、速水さん」

「……」

「速水さん?」

「奏」

「え?」

「私の事は名前で呼んでと言ったでしょ?」

「そうだっけ?」

 

どうやら、名前で呼んでくれなかった事に少々お冠のようだった。聡は気を取り直して勉強をするのであった。奏もそれを見て、自身も勉強をするのであった。

 

「……」カリカリ

「……」カリカリ

 

ペンを進めて数時間後。辺りも暗くなって来た。キリが良い所まで進めた聡は奏に帰る様に言うのであった。

 

「そろそろ帰ろうかなぁ?」

「ええ、そうね。時間もいい頃合いだしね」

「送っていくよ」

「そう?けど、そうなると聡は大丈夫なの?」

「僕は大丈夫だよ。それに夜道を女の子1人で歩かせる何て男のプライドが許さないからね」

「プッ…ハハハ!男のプライドね」

「…まぁこんな僕が言うのはおかしな話だけどね」

 

確かにこれが、イケメンで運動神経抜群の男が言えば様になっているだろう。だが、聡はフツメンだし、運動音痴だし、ケンカだって弱い。けど奏は馬鹿にするわけではなかった。

 

「違うわよ。聡の事は今日知り合った人だけど、馬鹿にしていないわ。むしろ頼りにしているからね」

「速水さん…」

「それに、今は2人っきりよ」

「そうで…そうだったね。奏さん」

「それでいいわ。それじゃあ帰りましょう♪」

「うん」

 

そう言って、プロデューサー室を後にして、『ゲスト』のプラカードをちひろに返して346プロダクションを後にするのであった。そして、帰り道は他愛ない話をして奏の家の前に着いた。

 

都内でも有数の高級住宅街に1軒家となると、相当な価格になる。にもかかわらず、新築同様のある家には『速水』と書かれた表札があった。

 

「ここが私の家よ」

「へぇ~結構立派な家に住んでいるんだね」

「まぁね。それじゃあまた明日ね♪」

「うん。おやすみなさい」

 

聡は奏が無事に、家の中に入っていくのを確認すると自身の家に帰って行くのであった。ここから相当掛かると思っていたが、そんな事はなかった。何故なら…

 

「てか、隣が速水さんの家だったのか…」

 

そう。歩いて数歩先が聡の家になって居るのであった。先日引っ越し業者の出入りがあったから、まさかと思っていたが…

 

「けど、速水さん…面白い子だったなぁ」

 

その面白い子と一年間を共にするとは、この時露程も思っていなかったのであった…

 

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