「じいちゃんのバカ!!分からずや!!!」
「これティファ!!!」
「知らない!ブラスじいちゃんが-強い者差別-するなんてもう知らない!!知らないもん!!」
「あ!!こりゃ・・・・・どうしたものかの・・・・」
ここは南国に位置するモンスターアイランド・デルムリン島。
一年常夏であり、温暖であるためにそこに住まうモンスター達は普段はのんびり過ごしているのだが、今日は島の中心部からの怒鳴り声に同じく住まう精霊達と共に何事が起きたかと駆け付ける。
怒鳴声を発した一人は少女で名をティファ。この島のみならず全世界で有名な者の一人で、勇者ダイの妹であり、かつて一行で料理人なるなんとも珍妙なる職業を自らでっち上げ最期まで大戦を戦い抜いた今年十四歳になる可愛い盛りの少女である。
そんな少女に怒鳴られ、現在ダイとティファの育ての親であるブラスは、この世の終わりも各やなほどの落ち込んでいるのを、大戦後から島に住み始めたダイとティファの父親であり竜の騎士のバランと、彼に付き従う竜騎衆ラーハルトとボラホーンガルダンディと、このほど島に住むことになったマァムによって必死に慰められている。
「ブラス殿、ティファがその・・・・誠に申し訳ない・・」
「あれはどう考えてもティファ様のほうにこそ問題が・・・問題とまではいかずともブラス様のお考えに間違いはないかと。」
「いやラーハルト、はっきり言っちまえよガキ・・ティファ様の方が問題だってよ。」
「左様・・・・いかに優しきお考えをお持ちだとしてもその・・」
「えぇ、ティファも少しだけ自重・・・・したほうがいいのかしら?」
慰めている全員としても、孫とも思い愛している者の一人と大喧嘩になった発端を知っているだけに-アレ-はないだろうとブラスの意見に賛成派である。
確かにこの世界はティファの優しさが発端でこの世界は救われたかもしれないが、それと今回の事を一緒にしていい気が全くしない。
そろそろティファにも-大人になる準備-が必要な気しかしないのだが、そこはやはり孫が可愛いブラスがついつい庇ってしまう。
「みんなの気持ちは有難い。しかし・・・あの子の言葉にも理がないわけでは無いのじゃろう・・・」
初めて、ブラスとティファは喧嘩をした。ダイとは魔法使いに育てたいブラスと、勇者になりたいダイとは何度かやりあったがその度にティファが甘いお菓子とおいしい紅茶を以て間に入り、まぁまぁと笑って治めてくれいただけに、この後どうティファに接してよいのだろうかとバラン達も共に途方に暮れた最中、玄関の扉が叩かれた。
この島に住まうモンスターや精霊達は基本はブラスたちが住んでいるロモスのロッジ風の家には近づかず、定期的に島にやってくる頼れる船長ウォーリア率いる船団が来るのは後数日後であり、誰が家の扉をたたいているのだとラーハルトが警戒しながら扉を開けたところそこに立っていたのは
「やぁこんにちは槍使い君、ブラスさんやバラン君は御在宅かな?」
「・・・・キルバーン・・・貴様何しに来た?」
ティファを絶対死守する隊の筆頭格の一人、ラーハルトが常日頃からぶっ壊したいと思ってやまない、大魔王バーンの最高幹部・死神キルバーンが立っていた。
「これはキルバーン殿!!・・・申し訳ない、あの子は今・・・」
大戦時より-変態・疫病神・死神キルバーン-を知っている者達と、その側面を知らない者達とではキルに対する接し方が全く違う。
前者はラーハルトの如くとなり、後者はちょっと風変わりだが紳士的で優しいキルとなり、当然島にずっといたブラスは後者であり、慌てて応対し目当てのティファが今は会える状態ではないという事を申し訳なさそう話すのを、キルが苦笑して応える。
「こんにちはブラスさん。実はそのことでお話がありまして・・」
「・・・話とは?」
「お嬢ちゃんとブラスさんが喧嘩した事を、僕知っているんです。」
「なんと!」
「何だと!!・・・キルバーン!!貴様まさかティファ様を四六時中監視でもしているのではあるまいな!!」
「ちがうよ槍使い君。本当に違うから落ち着いてね皆も。」
遠くにいるはずのキルが、デルムリン島で起きたつい先ほどの事を知っている発言にブラスたちは驚き、あまつラーハルトはティファを監視しているのかと怒髪天したのを、こいつならあり得るとバランとマァムも瞬時に登記を練り上げこいつぶっ壊す!になりかけたのをキルは即座に否定し、矢張りどこか困った風に笑っている。
キルは相変わらずの道化の衣装と仮面のままだがその気配がなんとも多彩であり、瞳の形と相まってそういうやり取りが可能になるほど・・・・まぁいわば腐れ縁と化してきているのがまた気に食わない要因の一つとなっているのだがそれはさておき
「あの子は今、バーン様の居城にいるんです。」
落とされた爆弾発言にキル以外の全員が目を丸くした。
「あの子は・・・クローゼットを通ったか。」
ティファが外に出た気配はなく、居間にいた全員に気づかれる事なく出られたとしても空飛ぶ靴で行くには遠いので、バーンの居城に行くにはキメラの翼か神獣ガルーダに乗っていくしかなく方法はなく、どちらも気配と音がして逃すはずはない。
それらをすべて解決する方法は一つだけあり、思い至ったバランは二階にあるティファの寝室に入り、案の定開けっ放しになっているクローゼットの前で頭を痛めながら、事情を知らないブラス達にクローゼットの秘密を話す。
即ちこのクローゼットの贈り主がバーンであることは皆知っている事だが、クローゼットは一定の開け方をすればバーンの居城にあるティファ専用の寝室に繋がっている事を。
バーンは世界と魔界の民達同様に、こよなくティファを愛している。
そんなティファをバーンは常々-余の可愛い幼な子-と呼んではばからず、いつ何時幼な子がパレスに来て遊んで泊まってもいいように、大戦の頃からティファが捕虜として捕まった時に使っていた部屋が、なんとそのままティファの部屋になっている。
・・・・それでいいのかと真っ当な者達からすれば突っ込みどころ満載になるだろうが、それで全く問題ないところが・・・・問題かもしれない。
ティファの部屋は大戦の頃からバーンの部屋右隣、つまりバーンパレスの内宮の最奥がバーンの寝室でありその隣に位置している。
セキュリティーなんて言うに及ばず、夜食が欲しいと思えば四六時中ティファちゃんに美味しい物をを標榜している双子の料理長がスタンバっており、そもそも誰も大魔王の私的な場所に入ろうだなんて自殺願望者もいないのである。
世界のどこよりも一番安全であり、百万が一デルムリン島に攻勢を仕掛けてきた者達がいたらすぐにパレスに逃げて来いと贈られたのがこのクローゼットなのだとバランから話された一同はものすごく納得をした。
ただ一人、ブラスを除いて
「あの子は・・・・魔界の神様たる大魔王様にそこまで目をかけていただいて・・」
ただの鬼面導師たるブラスからすれば、その話は呆然とするだけの話だった。
無理からぬことで、時折島に訪れるハドラーにも魔王様と恐縮しっぱなしであり、それが神話の中にしかいないとされていた大魔王ともなればさらにとなるのが自然な話しであろう。
俯いてしまったブラスの目線に合わせるべく、キルはそっと片膝をつくのをブラスが察して慌てて顔を上げた。
「キルバーン殿!こんな儂に膝なぞ・・」
「・・・・やはりそこですか。」
「・・そことは・・」
「僕には随分と慣れてくださったようですが、バーン様はいまだに雲の上のお人ですか?」
「!・・・それは・・・」
「あぁ、ブラスさんをなじっている訳では無いのをご理解ください。向こうについたお嬢ちゃんから話を聞いた僕としても、アレは無いだろうというのが僕の見解でして。」
「・・・・お前にしては珍しくティファに同意しなといのか?」
今度の騒動を知り、ティファを支持しないというキルに、バランは疑問を持った。
ティファが関われば全面的に支持をすると思っていたのだが
「いやだってバラン君、あんまり面識のないブラスさんがいるこの島で、お嬢ちゃんのお仲間一同と魔王ハドラー君どころか、魔界の神・大魔王バーン様をいきなり招待してみんなで-浜辺で鍋囲みましょう-はないと思うよ。」
思いっきり苦笑しながらそれはないと、さしものキルまでがティファの言動にこそ問題があると言い切って見せた。
「う~・・・じいちゃんの分からずや~・・・・なんで分かってくれないの・・」
誰も彼もから否定されている当の本人ティファは、話に上がっているもう一人の当事者大魔王バーンの膝の上で泣いてぐしぐしとしている。
ティファとしては別にブラスを困らせることを言っているつもりは毛頭なく、いつもバーンの居城で御馳走を頂いているので、偶には自分の家たるデルムリン島にご招待して、ついでに全員の都合を聞いて浜辺で鍋パーティーをしたかっただけなのだ。
だというのに、そのブラスが・・・・
「ティファよ、あまり祖父を困らせるな。」
「・・・大魔王・・」
「余とそなたの祖父とはそもそもが面識すらなかろう。」
「でも、だからって・・・」
「身分や出自で相手を見ないのはそなたの美徳の一つではあろうが、今回ばかりはティファ、そなたが良くないと余も思うぞ。」
「う~・・大魔王まで・・・」
ブラスト初の喧嘩をして落ち込んでいる上に、-当人-たる大魔王にまで今回の騒動は自分にあると指摘されたティファはどん底まで気分が落ち込みバーンの膝に撃沈したのを、バーンは俯いたまま寝転がっているティファの神を優しく梳いて宥める。
ティファがデルムリン島にあるクローゼットを使えば、バーンはすぐに察知する細工が施されており、折よく仕事の合間で会ったのでいそいそとティファの居室へと向かい、その様子で察したキルもルンルン気分でバーンのお供も兼ねてティファを歓迎しに行ったらとんでもない光景が目に飛び込んできて、危うくバーンは力を放出してうっかりとパレス全館を鳴動させて壊す寸前までいったのを慌てて駆け付けたミスとに声を掛けられパレス全壊は免れた。
少し、ほんの少しだけ冷静になったバーンはゆっくりとティファに近づきながら様々な思考を巡らしながら。
ティファがベットに取りすがって大泣きしているのは何故かを。
-誰-の仕業か、その者は滅するのは確定だが、親類縁者や共謀者は族滅させるか罪一等は減じてやるか、ともかく-大魔王-に相応しい事を考え、ティファの泣くベットに腰を掛け、ティファの体を持ち上げ横たわらせ膝に頭を乗せてやり、ゆっくりと何があったと聞きだし、ミストはティファの話す内容にあきれ果て、バーンとキルは苦笑し、すぐさまキルをデルムリン島に向かわせたのだ。
きっとティファは誰にも言わずに来ただろう事は容易に察せられ、ティファの居場所と無事であることを知らせに行かせたのだ。
そして少し落ち着いたティファに教え聞かせる。
「ティファ、確かにそなたにとっては身分はあまり関係なく感じるやもしれんが、世の中の全ての者達がそうとは限らん。むしろ少数であることをもっと自覚せよ。」
「でも!だからって・・・・じいちゃんどうして・・・」
ティファは今回の事は本当にショックだったのだ。
あの懐深く、優しく、人族との交流もすることを良しとし大勢の者達と交流するするブラスが言ったことが
「じいちゃん!!あのね!私やりたいことがあるんだ!!」
「ほう!なんじゃティファ、言ってみなさい。」
「うん!-みんな-をデルムリン島に招待して浜辺で鍋パーティーしたいの!!」
「そうか・・・ダイやポップ君達とも久びりに会えるのじゃな。」
「うん!そうだよ!!」
最初は自分の話に、ブラスも確かに喜んでくれていた。
時折兄たちが帰ってくるが短時間であり、泊まっていく事は少ない。
忙しい彼らを呼び、呼ぶのは勇者一行だけではなく
「ノヴァやおじさんやね、じいちゃん初めて会うロン・ベルクさんも声かけようと思うの。」
「そうか・・・・それはたくさんの食材がいるのう。買い付けに行ってもらわんと。」
「そうだね、ハドラーもたくさん食べるだろうし。」
「ん?・・・ティファや?」
「そうそう!あのね今回の事の大魔王も招待しようと思うの。大魔王七千歳なのに沢山・・」
「ティファ!」
「へ?」
「今どなたを呼ぶといった?ハドラー様に・・」
「うん!!あそっか、じいちゃんキルには会うけど大魔王は初めてだった。ちゃんとハドラーと大魔王達の都合も聞いて、-みんな-が合う日を調節するからすぐの話じゃないから安心して。
バーンはものすごく優しい人で、ティファの倍以上食べる・・」
「・・・・ティファやそれは無理じゃ・・・」
「じいちゃん?」
「尊い方を、このような島にお呼びするのは失礼というものじゃ。」
「・・・じいちゃん?」
「神様たるお方を気軽にこのような場所にお呼びしてよい事ではないのじゃ。」
「でも!みんなで楽しい・・」
「それにハドラー様もお忙しい身じゃ。ティファ、あの方たちがいかに優しくとも儂等とは住む世界が全く違うのじゃ。」
「・・・・なに・・言ってるの?」
「-お友達-感覚であの方たちを気軽に扱おうとするのは不敬に・・・」
「・・・バカ・・・」
「ティファ?」
「じいちゃんのバカ!!二人の身分が高いからって-仲間-外れにしろっていうの!?楽しいことを一緒にしたらいけない事なの!!??」
「ティファ・・・あの方たちは儂等とは・・・」
「・・・もういい・・・しらない・・」
「これティファ!!」
「しらないもん!!!」
祖父ブラスが、身分が違うから楽しい事だとて一緒にしてはいけないという言葉にティファは本当に衝撃的だったのだ。
じいちゃんなら快く承諾してデルムリン島に皆を呼んでくれる、それを疑いもしなかったから。
今宵ここまで
この話はヴェルザーが隠居宣言する前の時間軸となります。