勇者一行の料理人-外伝-   作:ドゥナシオン

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大魔王様に祝福を:前編

夢を見た

古い古い・・・・・己の過去を・・

 

 

 

 

「おんぎゃ~!!おんぎゃ!!!」

「貴方・・・見て、あなたの肌と同じ白い銀の髪の子よ・・」

「あぁ・・瞳は君と同じ金色・・・それにわが祖先に一人だけ現れたという-第三の瞳・鬼瞳-を備えて生まれてきた子だ。きっと強い子に育つ。」

「えぇ・・・・丈夫で大きな子に育ってね-バーン-。」

「いずれ私の領地を引き継ぐのだから今からしっかりと・・」

「貴方、気が早すぎますよ?」

「おや・・・そうかな~。」

 

魔族の中には生まれた時から膨大な魔力を持つ者は比較的物心つくのが早く早熟なものが多い。

そのせいか生まれた時から自分には記憶がある、両親の声も生まれた自分への祝福と喜んでくれたあの笑顔を。

今から思えば父が領地と呼んでいたのは今の魔界からすれば-村-にも届くか届かないかくらいの小さな土地に少数の領民が住んでいた場所であったか。

それでもその地は比較的・・魔界的に言えば土地が肥沃であり農産物もとれた良き場所であり、そこを治めていた父は屋敷にに仕えている者達の話から察するに領民に慕われる名君であり、母は自分にとても優しかった・・・・たった数年しか共にいられなかったが・・

 

「バーン!!お前はもう走れるほど丈夫な子だ、この通路を通って逃げなさい!!」

「アーケロン!早くこの子を連れて逃げるのです!!」

「嫌です!父様と母様を置いて行くなんてできません!!」

「・・バーン・・・・奴らの狙いは私達二人だ。お前は逃げなさい。」

「・・・父様・・・・・母様・・」

「若君ごめん!!!」

「父様!!母様!!!!」

「バーン生きろ・・・・」

「生きて・・・幸せになるのですよバーン・・」

「あ・・・ああああ!!!」

 

たった数年しか共にいられなかった・・・肥沃な土地は狙われる、父と母は殺され領地は乗っ取られた。

自分は父達に仕えていた上級魔族の執事長に抱えられて隠し通路を通って難を逃れた。

自分には生きろと言った父と母の願い通りを叶えるべく、離れたくないと言って駄々をこねた自分を抱きかかえて逃げたアーケロンも、周りを包囲していた敵を道連れにして死んでしまった。

 

一人で荒野を彷徨い幾度も死にかけ・・・

 

「・・・よくぞ生き延びたものだ・・・・」

 

久方ぶり・・・・いや、もう数千年は見ていなかった己の過去夢を見たバーンは一人心地ながら目を開ける。

 

あれから七千年、当時は生き延びるために眠りについても荒野で死なない為に浅く寝てはすぐに跳ね起き、力をつけ成長してからは勢力拡大から様々な事柄に追われ片手で数えるほどしか見ていない。

それでも両親と己を庇って死んでしまったアーケロンの容姿と声を不思議と忘れる事はないのだが、夢に見たのは本当に珍しかった・・・・・これはきっと、過去を振り返られるほど余裕が自分にできたのだろうか・・・しかし・・・見るのであれば、ただただ自分と両親が幸せであった数年間だけであってほし方と思うのは贅沢であろうか?

 

父と母と名前は知らぬ・・・父と母は互いを貴方とお前と呼んで仲睦まじく、側仕え達も領主様・奥様と呼んでいて、父と母の名を知れなかった。

父は背が高く・・・若い時の余は父にとても似ていたのだと、鏡を見るたびに父に会えたようで嬉しかったものだ。

声は・・・余よりも低いバリトンで、母は反対に小鳥のように可憐で・・・

 

コンコン

 

「バーン様、お目覚めでしょうか?」

「ミストか・・・入るがよい。」

 

夢を少しばかり気にしすぎたか・・・

 

いつの間にか起きる時間となってミストが起こしに来た。

珍しい夢を見たが、その後はいつも通りの日常、即ち頑張って仕事を終えてティファを夕食に招待して・・・・楽しい事に思いをはせたがその願いは叶わなかった・・・

 

 

            「やめよっ!!!!!」

 

 

それはバーン自身が壊してしまった

 

大戦が終結して二年の月日が流れる中で、魔界の長にして神たるバーンが声を荒げることは一度として無かった。

それは天界との和平の交渉の場においても無く、どころかバーンは滅多に声を荒げることはほぼなかった。

それは魔界において敵対したものを前にしても。

バーンは感情を己の内側にしまい込む癖がある。強大な力を持つ大魔王が荒ぶれば敵にだけではなく味方にもよくない影響を及ぼすのを嫌っての事であり、地上・天界との最終決戦の場で声を荒げさせたティファが例外であり、それはともかく家臣や自分に属する者達にした事は本当に一度もなく、バーンに声を荒げられた相手よりも聞いていたミストの方が驚きが強かった。

荒げられた当の本人は、魔界の神の不興を買ってしまい処刑だろうかと怯えていたので急いで主に下がらせてもいいか伺いを立てれば

 

「好きにせよ。」

 

そっけない一言で玉座から立ち上がり謁見の間を一人で出て行ってしまった。

主を追わねばならないが、叱責を受けた者を残しておけば、自害でもしかねない程怯えてしまっているのでフォローしない訳にもいかず、シャドーを呼び出し適当にフォローするように命じて急いで主の後を追った。

 

その道すがら、何が主をあそこまで激高させたのかに頭を悩ませながら。

大戦が終わるまでは地上と天界を憎んでいた時でさえあのような事はなかったのに・・・

 

それでもミストはどこか楽観視していた。

己の仕える主はとても聡明であり慈愛に溢れている。そうでなければ死にゆくとはいえ己の身命を賭して魔界を救おうなどと思う筈も無く、きっとすぐにいつもの優しい主に戻る。

数日後にはティファと夕餉を、チウも呼んでお茶会でもするのだろうと・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミャ~ミャ

 

 

「ダイ!そっちに行ったぞ!!」

「任せてヒュンケル!今度こそ・・」

「ダイ様ご免!!!」

「いいぞラーハルト!そのままゴールに蹴っちまえ!!」

「なんの!!」

「ダイ君頑張って!!」

「ラーハルトも負けないで!!」

「ポップさん頑張ってください!!」

 

南海に位置するデルムリン島、そこは平和で普段はもう少し静かで、今は島を出てパプニカに暮らしているダイが帰省しており、それなら皆も呼ぼうと勇者一行フルメンバーが集った。

 

皆己の家庭や将来の勉学に励んでいるが偶には羽を伸ばしてもいいだろうと島に集まり、海岸で一頻り泳いだ後に、毬を使った球技をしていた。

 

遊びの考案者はティファで、それぞれ同人数になるチーム分けをして陣地とゴールを作り・・・・ぶっちゃけて言えばルールを単純化したサッカーである。

この世界にはまだない競技であり、名前も適当に付けられたがやってみるとなかなか面白くダイ達は白熱し、女性陣は応援している。

 

内訳はダイはヒュンケルとチウとボラホーンと、相手方は、ポップ、ラーハルトとガルダンディとクロコダイン。

アタッカーはダイとチウ、ヒュンケルでキーパーはボラホーン、向こうはポップ、ラーハルトとガルダンディが攻めでクロコダインが守っている。

審判役はレオナ、マァム、メルルの三人が応援しながであり、どちらかに得点が入ればゴメちゃんが旗を振りながら甲高い声を精一杯出してその小さな翼で起用に得点票をめくっていく。

これも言わずと知れたティファお手製

 

「得点が入ったらそのチームの方の布をめくってね。先に五点入った方の勝ちだよ。」

 

ゴールデンスライムのゴメも、ダイとティファの傍らにいたおかげか簡単な読みが出来て数字も十までは理解している。

五くらいなら簡単とばかりに張り切って得点係をしながら飛び回って双方を応援している。

キラキラとしたボディがお日様を弾いて満面の笑みを一層煌めかせている。

 

全員実に球技を楽しんでいる。

鍛錬は一日足りとて怠ったことはないが、こんなに思いっきり体を動かしたのは久びりであり、それも仲間内で楽しんで遊んで動かすなど初めてに近く、皆が夢中で球技をしていると-いつものあの声-が遠くから響き渡った。

 

「みんな!!美味しいもの持ってきたよ!!!」

 

よく冷えたスイカを二つ持ち、式神・フラメルにも三つ持たせて姿を現したのは勇者一行の料理人のティファ。

そろそろ全員が喉も乾いて小腹も空く頃だろうとスイカの差し入れに、男達も球技をうっちゃり、審判達もスイカを切り分け配るのを手伝い夢中でスイカにかぶりついた。

 

普段王宮でそれなりにお淑やかで通しているレオナを筆頭に、可憐なメルルも冷えたスイカを無心に食べ、ゴメも必死にかぶりつき、男達もスイカもっと持ってくればよかったかなと思うほどすぐさま食べつくすのをティファは優しい目で見守る。

 

原作ではゴメちゃんは神のアイテムとしての使命を全うして消えてしまい、もしかしたら-ダイ-はこの時期はまだ行方不明であったかもしれない。

それが目の前の親友と兄達は、ラーハルト・ボラホーン・ガルダンディとも一緒になってスイカを夢中で食べている。

その光景が何よりも嬉しい。この後は海釣りに出る予定で、家でのんびりとしている父とじいちゃんと一緒に浜辺で鍋パーティーする予定だった・・・・筈なのだが・・

 

 

「ティファ!!!!」

 

 

・・・・・・いきなりミストがリリルーラで現れたってどういういう事?

 

南国のバカンスに絶対向いていなさそうなミストの出現に、ティファはおろかその場にいた全員の目が点になり、少しばかり怖がりなところがあるゴメはもこもことダイの懐に逃げ込んで、あの礼儀正しいチウすらも挨拶を忘れるほどに驚いた。

 

 

ミストはものすごく焦っていた。五日も経つというのに主の機嫌が直ることはなく、政務において支障はなくともパレス全体がピリピリとしてしまい、これでは城下にまで主の機嫌の悪さが伝わってしまうのは時間の問題でありそれは非常にまずい!!

主の機嫌を損ねたのがなんであるかなどと探られて、百万が一でも突き止められたら非常にまずいではないか!!!・・・・ここはひとつ!主の機嫌を絶対に直してくれる唯一を頼って来た。

ティファならば、真剣に話を聞いてともに解決するために自分と共に今回の事をたいしょしてくれようと・・・・・

 

 

 

だがしかし、今回の事はとことんミストの予想を裏切ってくる。

大参謀にして魔界の大国の宰相の予想は

 

 

「あぁはっはっはっは!!!!」

 

ティファの大笑いで消し飛んだ。

 

「何がおかしいティファ!!」

「そうだよティファ、バーンがそこまで怒るだなんて周り大変だよきっと!」

「あ~~・・でも駄目だ!だっておかしいんだもん!!!」

 

ミストの説明を聞いたティファ以外の全員は、ティファの珍妙で礼儀知らずを笑って諭す、温厚篤実が服着て歩いているような魔界の神様がお怒りになったことに青褪めているのに、頼った本人が笑っているとはどういうことだとミストが怒り心頭に発した。

ここ二日ほどは部下達も落ち着きがなくなり不味いとなってとりあえずキルに主のチェスの相手をさせて時間を稼いでもらっている間にこっそりと島まで来たというのにだ!!

 

だがしかし、ミストが真剣であればあるほどにティファはおかしくなり、とうとうお腹を抱えてしまった。

 

「嫌だってこれどう考えてもおかしいでしょう。」

 

ミストの言いたいことも分かるが、ティファにだとて言い分はある。怒りの深さや規模がどうであれ

 

「歌を聞いて不機嫌になった大魔王を何とかしてくれってなんですかそれは。」




今宵ここまで
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