勇者一行の料理人-外伝-   作:ドゥナシオン

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大魔王様に祝福を:後編

じきに夕刻になる・・・・・早く日が傾いてくれぬであろうか?

 

あの太陽を欲して必死になって手を伸ばし、長い年月を戦い抜いてきたというに、これでは地上に初めて出てきた時に太陽の穏健を知らぬと地上人に憤った自分が見れば何を言っているのだと、自分にこそ激高しそうな体たらくだと、バーンは自分の思考に苦笑が浮かぶ。

 

だが仕方がないではないか・・・今日はティファたちが自分をもてなそうとしてくれる日なのだから

 

トントン

 

己の思考に対して心の内で言い訳をしているところに扉が叩かれ、入る許可を出せばキルとミストが入って来た。

 

「バーン様、今日の業務は全て終了、これよりはバカンスのお時間となりましたよ。」

 

キルがいつものようにおどけてウィンクもしながら楽しそうに告げるのを、ミストは溜息をつきながらも小言は言わず、主にデルムリン島に赴く時間であることを告げれば、キルは優美に一礼をしながら空間を開く様は芝居がかっていた。

 

「さぁお早く、お嬢ちゃん達がお待ちですよ。」

 

どこまでもおどけながらも自分を優しい瞳で見てくるキルに、バーンは微笑みながら空間を通る。ミストとキルを従え通ったその先に待っていたのは

 

「いらっしゃいませ大魔王!!」

「バーン待ってたよ!」

「旨いもんみんなで集めまくったんだぜ!今日はたくさん食べてってくれや!!」

「ちょっとポップ!食材お集めたの手伝っても、調理したのはほぼブラスさん達なんだからね。バーンいらっしゃい。」

「バーンさん、キルバーンさん、ミストバーンさんこんばんは。」

 

ティファを筆頭としたダイ達の挨拶に、着いて早々顔を緩めてたバーンの下にブラスが来た。

 

「お久しぶりですじゃバーン様。今宵は孫娘ティファの我儘を聞き入れてくださり有難く。」

「なんの、息災であったかブラス。今宵の事は余も楽しみにして仕事の励みになったほどじゃ。今宵一晩世話になる。」

「もったいないお言葉を。」

「そなたは変わらず律儀よな。」

 

慣れたとはいえやはり神様と敬いそうになるブラスにバーンは困ったような、くすぐったいような笑みを浮かべる。

ブラスのように、多かれ少なかれ尊敬の念を向けられるのは矢張り面映ゆく感じる。

誰かに敬って欲しかったわけでは無い・・・ただ救いたかったのだ。

生まれ育ち、愛しい者達が生きる魔界を、ただただ其の為のみに歩いてきた道のはてに得た知己達。

 

「大魔王!浜辺でみんなが待ってます、早く行きましょう。」

「そうような、あないを頼もう。」

 

キルはティファたちとの打ち合わせですぐには目当ての浜辺には出ずに、家の入口あたりに出た。

 

バーン様にサプライズをするべく。

 

夕暮れが夜空に変わろうとするその景色に、バーンは目を細めて眺める為に足を止めた。

今は秋口、寒くはないが日暮れと共に秋の虫が鳴き始め、空に満天の星が露わになるさまが美しく

 

「ここは・・・生命が横溢しているのだな・・・」

 

目の前に広がる大海原、視界を遮るもののない満天の星空の下、自分の頬を撫でる緩やかな風に、吸い込む空気に、聞こえてくる音、其の全てに生命の息吹を感じとったバーンはひっそりと呟く。

 

それは太陽を初めてみた時のあの心地よさを思い出し、それと同時に後悔と安堵の気持ちがせめぎあった。

地上を攻めた事で消してしまった生命に対する罪の意識と、六芒星の作戦は潰えこの地上を消し飛ばさずに済んだ事への安堵が胸中を駆け巡らんとした時、両の手がそっと掴まれた。

見れば右手にはティファが、左手にはダイがそれぞれそっと握ってくれている。

 

バーンが何を思ったのかは知れないが、景色に感動していたのが物悲しい気配に変わったのを察知した兄妹は大好きな大魔王の手を握って浜辺に再度誘い始める。

 

「早く行こうよバーン!-みんな-待ってるんだよ?」

「お鍋が待ってますよ大魔王!早くこっちです。」

 

大きくなったとは言え、まだ自分の胸元に届くか届かないかのダイと、あまり成長していないティファに手を引かれ歩く様はまさしく孫達とお爺ちゃんであり、ミストをして微笑まし気に眺めながらついた浜辺で待っていたのは

 

「やっときましたか~。お鍋が煮詰まるところでしたよ?」

「お待ちしておりましたバーン様。」

「・・・・おぬしら何故?」

 

浜辺にいたのはヒュンケルとクロコダイン、そして竜騎衆達とバラン、調整がついたと言っていたアバンとハドラーがいるのは予想済みであったが

 

「ったくお嬢ちゃんに手なんぞひかせて・・・」

「嬢ちゃん、連れてくるんならもっとサッサと大魔王様歩かせろってんだよ。」

「まぁまぁマトリフ様、ロン・ベルクさん。こんばんは大魔王バーン。僕もお邪魔させていただきますね。」

 

魔界の名工ロン・ベルクに、初代大魔導士マトリフに、かつての殲滅の騎士団長ノヴァもいて

 

「・・・・・なぜお主までがいるのだ!!」

「ふん!!お前の為に来てやったわけでは無いは小僧!!!ちび助の頼みがなければ誰がお前の事なんぞ・・」

「ヴェール・・・」

「うっく!!・・・」

 

なんと冥竜王ヴェルザーまでもが、あの忌々しい小型の姿をしているではないか!しかもティファがヴェルザーの事をヴェールとか愛称で呼んでいた気がするのは絶対に気のせいであってほしいともかく!!どうしてこやつがここに・・・・

 

「・・・ティファよ、もしやして先日の魔界での余の仕出かしてしまった騒動を聞いたのか?」

 

今回のこの集まりは、余の引き起こした騒動でまだ余が怒りを治めていないと思い、それを宥める為に・・

 

「あぁ、まったくもって違いますよ大魔王。」

「違うと?」

「はい、私その話聞いた時、悪いと思いますが大爆笑させていただきました。」

 

にっこりと珍妙な答えでバーンの勘違いを否定したティファに、それこそチウを淹れた周りが溜息をついてしまう。

確かにバーンの今思ったことは勘違いではあるが、もっと言い方あるだろうと。

その溜息の間を縫うように、ティファはサクサクと話を進めていく・・・いつも通りに。

 

「実はですね大魔王・・・・もっとこっち来てください!こっちです。」

「む!ティファ・・・一体・・」

「今ですおじさん!ポップ兄!!お願いします!!!」

 

「「応!!!」」

 

訝しむバーンを無理やり浜辺の真ん中に引っ張って来たティファは、マトリフとポップに何かをお願いし、応えた二人は練り上げた魔力を満天の星空に放った時、それは起こった。

 

       バーン七千歳のお誕生日おめでとうございます

 

美しい星々の下に、金色の軌跡が魔界の神・大魔王バーンを寿いだ文字が空間いっぱいに踊った。

 

その様に呆気に取られたバーンを囲んでダイ達は喜色満面の笑みを浮かべてバーンを寿いでいく。

 

「バーンおめでとう!これからもよろしくね!!」

「これデルムリン島で育てているハーブなの。バーンがハーブティー好きだってティファから聞いて作ってみたの。今度試し見てね。」

「僕はライリンバー大陸でお守りになるって言われている木で彫刻を作ってみました。」

 

次々に寿がれ、そして贈り物をされるバーンは何事か分からず頭が真っ白にな経ってしまったのをティファが助け船を出した。

 

「大魔王、実はですね、ミストは貴方に出会った月日をきちんと記録して保管していたんです。そしてその記録から、貴方のお歳がちょうど七千歳だと分かったのです。」

「・・・・なんと・・」

「それでですね、貴方の事が大好きな私達としてはこれはお祝いしたいと全員集合したのです!!」

「応さ!このポップ様が、たかだかご機嫌取りの為なんてことの為に光の精霊王様から文字書いてくれた精霊達を借り受けてこんな盛大なことするもんかよ。」

「私達あなたの誕生日をお祝いしたいのよ。」

「うむ、今日の為に皆が集まり」

「お祝いをするために準備したのだ。」

「・・・・お主達・・」

 

自分の勘違いを思いっきり上回る予想外の出来事と、まさかミストがそんな記録をしてくれていたのかとバーンは呆然としながらミストを見やれば、ミストは筈かがる気配を隠せずにいるのをバーンは嬉しくなった。

無論ダイ達の思いも嬉しい。しかし長年の忠臣が、ここまで自分を慕ってくれていたのだと思うと堪らなくなるのを、ミニ竜と化して頭に乗ったヴェルザーが偉そう言って来た。

 

「俺様も手伝ってやったんだ!サッサと祝われろ小僧!!」

「・・・・其方よほど竜の剝製になりたいらしいなヴェルザーよ・・・」

「ふん!鍋がこげるぞ?」

「っつ!・・・・ティファよ、まずは馳走になってもよいであろうか?」

 

折角心尽くしで作ってくれた鍋を台無しにするわけにいかないバーンは、ティファに鍋を所望する。

ヴェルザーがティファの頭に乗っているのがどれほど許せなくともだ。

 

「はい、贈り物はまた後程渡させていただきますね大魔王。」

 

バーンを倒木を横たわらせた天然の椅子に座らせた後、ティファも鍋を食べる支度を手伝う。

ダイ達が食器を並べる中、あのロン・ベルクさえもが酒瓶を並べ支度を手伝っているのには目が点になった。

そんな主の心情を察しながらもミストも鍋に最後の仕上げの味付けを施し、鍋の味はティファ・アバン・ミストがそれぞれの味付けをして三種類となった。

用意されたのは鍋だけの筈も無く、新鮮なレタスとトマト・パプリカの彩り豊かなサラダ、酒のつまみにもなる各種のチーズ、ほんわかと柔らかそな焼き立てのパン、多種類の野菜のピクルスたちが、早く食べてほしいと主張している。

 

それらが全て並べ終わったとき、ハドラーがバーンに用意された金色の杯に酒を注ぎ、それぞれの杯にも大人達は酒を、子供達はジュースを注いでティファが立ち上がる。

 

「改めまして大魔王!!七千歳おめでとうございます!!

これからもいっぱいいっぱい長生きしてください!乾杯!!!!」

 

天真爛漫の笑顔で寿ぐ言葉を合図に、全員がバーンに向かって杯を向け乾杯をした時、バーンの胸は一杯の喜びで満たされた。

今日は無礼講という事で、ミストも、そして-キル-も腰を下ろして杯をもって献杯をしてくれた。

ミストは言うに及ばないが、どうやらキルは-本物の生命-へとなったようで、よく見れば常の仮面よりも唇の部分が大きく開かれており、その口から祝いの言葉を述べられた。

 

「バーン様・・・・貴方様に七千年近くを仕えられた事嬉しく思います・・」

「たくさん長生きしてくださいね。お嬢ちゃん達と一緒に楽しいこと沢山するためにも。」

「あぁ・・・あぁ・・・・・」

 

その言葉に、バーンは胸が詰まって何を言ってこの寿ぎの言葉に応えればいいのか分からず、流れる歓喜の涙を拭う事をせずに杯に注がれた酒を一思いにあおり、それを以て返答とした。

己を祝ってくれることすべてを喜んで受けさせてもらうとばかりに。

 

それを合図にダイ達は三種類の鍋をよそってバーンの前に置かれた小卓の上に置いた。自分達だけならば敷物の上なのだからいいだろうと直置きするのだが、まさかバーンにそれするわけにはいかないとティファが人数分を式で作って揃えたのだ。

 

「おっほん、その鍋についてご説明しましょう。」

 

料理の紹介はティファではなく、何とアバンであった。

この鍋の味付け担当はアバンであり、カール王国の国王陛下が何しているんだと突っ込んではいけない。

アバンの瞳が真剣なのだから。

 

鍋は三種類とも味が違い、ティファのはジンジャーを薄くスライスして鍋の底に引いて隠し味にしたさっぱりとした塩味。

ミストのはコンソメの味付けで、ジャガイモ・玉ねぎ・人参・レンコン等滋養に溢れた根菜類をふんだんに使った鍋であり、自分のも昆布で出汁を取って栄養満点のパテギアを入れてある。

 

「美味しく健康になろうというのがこの鍋なのです。」

 

材料は野菜はなんとこのデルムリン島でブラスとティファ、マァムと意外なことにガルダンディとボラホーンが畑で作ったものであった。

カニにイカ、出汁となった海藻はラーハルトとヒュンケルが潜って取って来たものであり、魚の方はクロコダインとマトリフの釣果とこの場にはいないが海のたくましき船長・ウォーリアと野郎どもが獲ったもの。

 

塩もコンソメもパテギア入りもそれぞれ美味しく、食べる程に胸の中がじんわりと温かくなる。

 

「あ!!ハドラー!!そのカニは中身無くてお出汁に・・・・美味しいの・・分かった。」

「この貝美味しいですよクロコダインさん。」

「それは確か・・・ルードが鼻で浜を掘って見つけた貝だったな。」

「じいちゃんどうしよう・・・お料理が消えてく・・・足りるかな・・・」

「心配せんでも食材はもう擁しているから気にせる食べなさいティファ。」

「ダイ君達いっつもこんなにおいしいもの食べてるの?羨ましい・・」

「レオナ、カニは捕まえるのに潜らないといけないから今日のは特別だよ。」

「あのカニたち素早かったな。」

 

顔を上げればダイ達は楽しそうに食べ、横を向けばミストとキルがゆっくりと同じものを食べている光景に、バーンはまた泣きたくなる。

 

自分はこれほど幸せでいていいのだろうかと

 

その葛藤を見越したように、明るい声が楽しい事を告げてくれた。

 

「バーンさん!僕たちからのプレゼントを受け取ってくれますか?」

 

チウの言葉を合図に、それぞれが用意していたものを取り出してバーンの周りに再び集まった。

 

「私からね。これはパプニカさんの布地の中でも特別に作られた法布で、耐魔法や衝撃も兼ね備えている上に、持ち主の幸運が上がる布なの。新しいローブを作るときはぜひ使ってね。」

 

レオナは自国の特産品の中でも、王侯貴族であっても滅多に手にできない極上の布を贈った。父に今度の事で。誕生日プレゼントは男の人は何がいいのか相談した結果、彼の方を思い、レオール王が持たせてくれたのだ。

続いてはチウでノヴァとの共同であり、先ほど言った幸運が訪れると言われている木で作った鳥の木彫り。

バーンが技として好んで使っているカイザーフェニックスを模しあり、羽ばたく姿は今にも飛び立ちそうであった。

 

「木はノヴァさんと一緒に探しました。幸運がバーンさんの下に舞い降りるといいですね。」

「図案は僕ですが、チウ君はたった四日で仕上げていましよ。メラゾーマの鳥は、悪しきものを燃やして幸運を運んでくれるでしょう。」

 

優しい言葉で贈られ、最後はロン・ベルクが小箱を取り出す。

開けてみれば、それも鳥をモチーフにした銀色のブローチであった。

 

どうも自分が何を好きか考えるとき、大半はよくない付き合いであったが長い時間を共に渡って来たヴェルザーに相談をしたらしい。

ミストでない理由は、その当時のミストは主の好き嫌いよりも悲願達成を優先していたので分からないと落ち込んでしまったのだがそれはともかく、長年バーンを見てきたヴェルザーの一言

 

「あいつは鳥好きだ。」

 

技と地上で作ったパレスの仕様、そして時折・・・・百年に一度ほど自分を説得してくる手紙の封蝋のデザインが鳥であった。

一度それをたわむれに揶揄えば

 

「鳥はどこまでも飛んでいく自由なものでよいではないか。」

 

茶化すことなく真面目に言って来たのが印象的であった。

天井しかない空のどこを羽ばたくつもりだと揶揄おうとしたが、バーンは地上と天界を滅ぼし、魔界を浮上させた時に、自由に羽ばたくのを夢見ているのかと何故か分かってしまい、以降馬鹿馬鹿しと思いつつ忘れる事がなかったバーンの思いは、きっと好きなものだと言っても間違いでは無かろうと。

 

「この銀は・・・・・ヒムが-供出-してくれたオリハルコンだ。永遠に朽ちることなくお前さんを守ってくれるお守りだ。」

 

だからハドラーと共同だと、ぶっきらぼうにロン・ベルクに手渡された。

 

美しい祝いの文字、温かい数々の料理に優しい言葉に贈り物

それら全てに、バーンは受け取った贈り物を胸に抱き込んだ時、最後の贈り物だとティファが笑っている。

 

「私のは-歌-の贈り物。みんな座って聞いてほしいんだ。」

 

いつの間にか取り出した二胡を持ったティファに促され、バーンはティファの目の前に陣取って全員が座った時ぬくもり溢れた音色が夜空に向かってするすると上り、あたりを満たしたときティファの声が響き渡った。

 

~ありがとうって伝えたくて~

 

それは、ティファがかつて一度だけ歌ったノヴァと共に作り上げた歌であった。

あの時は死の大地の決戦前に味方を鼓舞するために歌ったが今回は

 

~真っ青な空を、見上げながら~僕らは願う~

まだ来ない未来は~ 今日と同じく暖かい日が来ないかと~

 

悲しみ辛い事で~ 俯く事もあるだろう

転んで躓き立ち上がれなくとも 大丈夫 その手を引ぎあげて 共にまた 立ち上って行こう

 

ありがとうって伝えながら~ 貴方と~歩いて行こう~

繋ぎあったこの手を~ 握りしめ合い~ ゆうっくりと歩いて行こう~

 

いつまでも~いつの日までも~ -みんな-と~笑いあっていたいから~

繋がったこの道を~ゆうくりと歩いて~ 今~伝えに行くよ~ ありがとうって

 

数奇な縁でつなぎ合った手を、バーンも入れた-みんな-で話すことなく一緒に温かい道を歩いて生きたという優しい願いを込められた歌を聞いたバーンは、今度こそ声なく涙を流し、その場にいた全員にそっと頭を下げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

あれは本当に良き日であった・・・・

 

自分の誕生日会から数日後の執務室で、バーンはその時生じた温もりを噛みしめながら今日も大量の書類仕事に精を出す。

あの後夜更けまで大人達と共に飲み明かし、翌朝朝食も馳走になった後パレスに帰るのが残念であった・・・・いっそのこと自分もヴェルザー同様にデルムリン島に隠居所作ろうかと本気で検討したほどに・・・・・せめて後継者決めて体制を移行させるまでは無理か・・・

 

贈られた素晴らしい品々は、法布はさっそくローブに仕立てさせており近日中にお披露目できるだろう、その際鳥のブローチをつけるつもりであり、鳥の木彫りは今目の前においてある。

仕事の時は執務室、お茶と食事の時も持ち歩き、寝るときは寝台近くにおいてあるサイドテーブルの上においてある。

これを貰った日から良い夢を見られている。

それとマァムとメルルが共同で作ってくれたハーブティーも美味しくいただき、バーンは充実した日々を送っている。

誕生会の次の日には、歌ってくれた歌姫には改めて怒鳴ったことを詫び、いつかまた歌って欲しいと約束をした。

 

だが・・・・当面は聞く気はないのだが・・・

 

別に歌姫が悪いのではなく、当面ティファの歌を心の内で堪能したのだ。

 

今回なぜ自分が歌姫に激高してしまったのかあの後合点がいった。

自分は父と母と過ごした時間を覚えている中に、母が歌ってくれた子守唄も当然覚えている。

それはどこまでも優しく、ただただ自分を慈しむ慈愛に満ちた優しい声音であった。

それを思い出した直後に、それとは正反対の歌声を聞いてしまったのが互いの不幸であった。

いつもであれば、相手も生きるのに必死なのだと気持ちを汲み取れたものを・・・ざわついていたものも、あの優しい歌ですっかりと消え果て、いつもの自分に戻ることができた。

 

歌だけではなく、真心を贈ってくれた素晴らしい者達・・・

 

「父上、母上・・・-私-はそちらにはまだ行けませぬ・・・」

 

自分が大事に思い、また大事に思ってくれる愛しい-家族-と共に過ごすためにも長生きするのだとそっと呟いた時、木彫りの鳥の瞳に優し色を帯びたと思ったのは錯覚であたのだろうか

 

 

一つ確かなことは、バーンの顔には優しい笑みだけが浮かんでいる




今宵ここまで
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