「ホントにこっちで合ってんのか?」
星が良く見える夜空の下、俺達は海の波に揺られてゴムボートを進めていた。
炎の滅竜魔法をジェット代わりに噴射させて、ボートを進めている。
「大丈夫だっての。俺の力が信じられないのかよ?」
「そういう訳じゃねぇが・・・・・・」
まぁ、疑いたくなるのも判る。
今は何処を見渡しても海しか見えず、エルザを連れ去った奴等の姿も見えないからな。
「大丈夫です祐一さん! ジュビアは信じています‼」
「いい子だなぁジュビアは。みんなも見慣れえよ」
「分かったよ、悪かったよ・・・・・・」
疲れたように溜め息を吐いたグレイ。
「ま、そう心配すんな。匂いも音も気配もちゃんと察知出来てる。後はソレを追うだけだ。ナツも匂いは感じてるだろ?」
「お・・・おふぅ・・・・・・・・」
ゴムボートに揺られて絶賛船酔い中のナツが、力無く答えた。
「本当に大丈夫なの・・・・・・?」
「大丈夫大丈夫、俺が追うわ」
吐くのを堪えているナツを見て、ルーシィは不安と疑問の声を上げた。
まぁ、滅竜魔導士だからな、乗り物酔いを仕方ねぇわ。
「クソッ‼ 俺達がのされている間にエルザとハッピーが連れてかれたなんてよ! まったく、なさけねぇ話だ・・・・・・」
「本当ですね・・・エルザさんほどの魔導士がやられてしまうなんて・・・・・・」
「やられてねぇよ、エルザのこと知りもしねぇくせに・・・・・・‼」
「ご・・・ごめんなさい・・・・・・・・」
「グレイ‼ 落ち着いて‼」
グレイは不機嫌丸出しに舌打ちして、ドカッと腰を落とした。
如何にも険悪だな、雰囲気が。
「アイツ等、エルザの昔の仲間って言ってた。あたし達だってエルザの事、全然分かってないよ・・・・・・」
「・・・・・・ま、何かしらの事情を抱えてるのは、エルザだけじゃねぇ」
ナツもグレイもジュビアもルーシィも、フェアリーテイルの皆だってそうだ。
「下手に触ると、古傷抉るような真似になるかもしれねぇからな。だから皆、仲間の過去にはあまり進んで干渉はしなかった。それが間違ってんのか正しいのかは知らねぇが、1つ決まっている事はある」
それは、フェアリーテイルに身を置いてるなら、当たり前のことだ。
「エルザが・・・家族が困ってんなら、それがどんな理由であれ、どんな相手であれ、俺達は遠慮なんてしねぇで助けるって事だ」
マカオを心配したロメオ。
かつての兄弟子と戦ったグレイ。
ファントムに狙われたルーシィ。
いつだってフェアリーテイルは、家族と、仲間と、助け合って生きて来た。
それは今回だって変わらない。
「エルザの事、全然分かってねぇって? だったら、助けた後にでも聞いてみりゃいいんじゃねぇか?」
「聞いてみればって・・・・・答えてくれなかったら?」
「さぁ?」
「さぁ?って・・・・・・・」
「いや、だってさぁ、言いたくないから古傷だろ?」
「そうだけどさぁっ! じゃあどうすればいいのよ‼」
「答えてくれないんなら吐かせればいいんじゃね? ホラ、自白剤とか」
「そこまでする!?」
「エルザの事知りたいって言ったのルーシィじゃん」
「そうだけどっ‼」
「じゃあアレだ、洗脳系とか読心系の魔法を使うとか」
「もっと悪いわっ‼」
ギャーギャー騒いでいる間に、進行方向に何かが見えて来た。
アレは、塔だ。
楽園の塔
あそこに、エルザがいる。
◆◆◆
「見張りの数が多いな」
グレイの言う通り、見張りの兵士はズラッと並んで立っており、とてもじゃないが気づかれずに抜ける事は出来無さそうだ。
ゴムボートを人目に付かない崖下に止めて陸に上がったまではいいが、さてどうするか。
「気にする事ァねぇ‼ 突破だ‼」
「ダーメ‼」
突撃思考のナツを、ルーシィが抑えてくれる。
ナツはもうちょっと考えて動くことを覚えてくれないだろうか。
「エルザとハッピーが捕まってんだ。下手な事したらエルザ達を人質に取られかねねぇよ」
「しかも塔らしきモノはずっと先の方だ。ここでバレたら分が悪いな」
「てことはやっぱ・・・・・・」
チャポッと、静かな水音が後ろにある海から聴こえて来た。
視ると、海面から顔を出したジュビアがいた。
身体が水に変化するジュビアに、水中を調べて貰っていたのだ。
【完成‐ジ・エンド‐】で同じ魔法を会得してる俺が行っても良かったが、ジュビアの立候補により彼女に任せたのだ。
「祐一さんの仰った通り、水中から塔への地下に入れる抜け道がありました」
「水中ルートで決定だな」
まぁ、原作通りだし。
「水中を10分程進みますが、息は平気でしょうか?」
「10分くれぇなんともねーよ」
「だな」
「余裕~」
「無理に決まってんでしょ‼‼」
ああ、やっぱルーシィは無理なんだ。
「んじゃ、コレ使え」
水と風の魔法で、頭をすっぽり覆う水球を掌に造った。
風の魔法で酸素を内に留めているから、この水球ヘルメットを被れば水中でも呼吸が可能だ。
一応、ナツとグレイにも渡しておく。
「て、祐一はどうするの?」
「俺は大丈夫。ジュビアの魔法を使えるから」
ジュビアの魔法【水流‐ウォーター‐】で身体を水に変化させれるし、水中での呼吸も移動も問題無い。
「ジュビアと同じ魔法です。貴女では無くジュビアと・・・です」
「あー、ハイハイ。てか、何に対抗してんのよ・・・・・・」
身体を水流に変化させて、俺は海に潜った。
さて、侵入するか、楽園の塔へ。
.