突っ込んで行ったナツを見送り、俺はジェラール・フェルナンデスを観察する。
憑依転生者だからな、原作と違いがあるだろう。
ナツは塔を壊しながらジェラールと闘っており、ジェラールは塔を破壊しないように気を使いながら戦っており、上手く攻め込めないでいる様だ。
ふむ。どうやらあの転生者も、この楽園の塔は壊されたくは無いらしいな。
理由はどうだか知らないが。
しかし、何だあの転生者?
俺の【解析‐アナリシス‐】で情報を読み取ることが出来ん。
なんかそういう類の能力でも持ってんのか?
ナツは中々頑張っているが、それでもやはりジェラールの方が強いな。
「無限の闇に落ちろォォオ‼ ドラゴンの魔導士ィィィイイイ‼‼」
ジェラールが掲げる両手から、黒い強大な魔力が集まってくる。
アレはヤバいな。
「貴様に私が殺せるか!?」
ナツを庇おうと、ジェラールの前にエルザが立ちふさがる。
仕方ない。
嘆息しつつ、俺はナツを庇うエルザの前に出る。
【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】・・・・いや、ジャック・ザ・リッパーの能力を【完成‐ジ・エンド‐】した今の俺なら、【魔法無効化‐マジックキャンセル‐】で防げるはず!
「天体魔法! 【暗黒の楽園‐アルテアリス‐】‼」
暗黒の巨大な魔力の球体が床を抉りながら直進して来る。
これを右手で薙ぎ払って―――――――
「なっ!?」
バシュッ‼と、球体に触れた右手が弾かれた。
弾いた右手は傷だらけで血が噴き出している。
傷を負った!?
右手で無効化出来ないだと!?
この攻撃は魔法や異能の類じゃない?
いや、そんなはずはない。
この世界でジェラールが使っていた魔法だ。
なら【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】なり【魔法無効化‐マジックキャンセル‐】なりが効くはずだ。
可能性があるとすれば・・・・・・無効化の類の特典か?
さっきも俺の【解析‐アナリシス‐】が出来なかったし、何かしらの無効化能力を持っているとみるべきか。
傷を負った右手がすぐさま瞬間再生し、完治する。
避ける間がねぇ。
覇気と炭素硬化と・・・ああ、もうとにかく頑丈になる能力をありったけ!
コレで防げるか!?
「四の五の言ってらんねぇかっ」
両腕を交差し、衝撃に備える。
だが、攻撃は当たらなかった。
「シモォォォォオオオオオオオオン‼」
俺の更に前に出たシモンが攻撃を受けて、地に倒れた。
「おい!」
「何でお前が‼ 逃げなかったのか!? シモン‼」
ミスった! コイツがいるんだった!
エルザがシモンに駆け寄り、抱き寄せる。
もう瀕死の状態だ。
素人目に視ても助からないのが分かる。
外傷だけでなく内臓もやられている。
火や氷で傷を塞いでも意味が無い。
ベクトル操作で血流を操作するだけでもダメだ。
俺は自己を治す術は持っているが、他人を治す力は無い。
「・・・・・・・・・・いや、待てよ?」
もしかしたら、アレが使えるか?
「くだらん‼ 実にくだらんよ‼ そういうのを無駄死にって言うんだぜシィモォォォォン‼ 大局は変わらん‼ どの道、誰も生きてこの塔は出られんのだからなぁ‼‼」
「黙れぇぇぇ‼‼‼」
エルザが泣き、ジェラールが嘲笑し、ナツが激昂する。
ナツが周辺に散漫しているエーテリオンを食らい、取り込んでいた。
取り込んだエーテリオンを力に変えて、ナツは再びジェラールへと突撃する。
その傍ら、俺は試していた。
俺の特典の1つ、六道仙人の力。
原作でナルトが瀕死のガイを救ったように、シモンも助けられないだろうか?
・・・・・・どの道、このままだと死ぬ。
なら、ダメで元々だ。
俺は右手でシモンの胸部・・・心臓部に手をやり、チャクラを流し込む。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうだ?
―――――――――――ドゴォォォオオオオオオンッ‼‼‼
「うおっ!?」
ナツが上空へ回避したジェラールを殴り飛ばし、この塔へと叩き落とした。
塔が音を立てて崩れていく。
そして、塔が輝き出す。
・・・・・・・・エーテリオンの暴走だ。
これほどの大魔力を一か所に留めておくなど、無理な話。
行き場を失くした魔力の渦が、弾けて大爆発を起こそうとしているのだ。
「とっとと逃げねぇとな」
俺の再生能力も決して無限じゃ無いし、俺は不死身でも無い。
ヘタすりゃ俺でも死ぬ。
崩れる足場、落ちて来る塔の瓦礫。
辺りは荒れに荒れて、みんなとも何時の間にか逸れてしまった。
「って、シモンは?」
崩れた足場から、シモンの肉体が崩壊に巻き込まれて落ちていくのが一瞬見えた。
チッ、やっぱ時間が無かったか。
成功して生きているのか、それとも失敗して死んだのか、確認も出来なかった。
原作だと、エルザがこの暴走を止めて、エルザが死に掛ける処をナツが助けるんだったか。
なら、アイツ等は放って置いてもいいか?
問題は、あの憑依転生したジェラールの方だ。
多少戦闘力は強まっても、結局原作通りの流れになってしまったようだが、コレで終わりなのか?
後にジェラールが生きていることが発覚するから、原作でも一応現時点で生きていることになる。
その辺りに何か違いでもあるのか?
周囲の気配を探ってみるが、転生者の気配は無い。
死んだのか、気絶してんのか、この場にいないのか?
・・・・・・その後、暴発したエーテリオンが天へと流れて、エルザとナツも無事に見つかった。
これで楽園の塔編は終わったが、どうにもすっきりしない。
不気味な気配を感じながらも、俺は仲間と共にアカネビーチのリゾートホテルへ帰って行った。
◆◆◆
「あー・・・・ったく、マジ、ミスったぜ」
それ程大きくない、真っ暗な一室にあるベッドに寝転がっていたその男は、後頭部をガリガリと掻きながら上体を起こす。
「随分簡単に負けたようだな」
その暗い部屋の闇に溶ける様に、その声を発したモノの姿は見えづらい。
だが、男にはそのモノの姿がハッキリと視えているようだ。
「そう言うなよヴァイスさんよぉ、一応相手は主人公なんだからよ」
「フ・・・そういうことにしてやろう」
「次はこうはいかねぇぜ。もっと強いアバターに乗り移ってぶっ殺してやる‼」
「遊ぶのも良いが、目的を忘れるなよ?」
「分かってるって!」
一応の納得はしたのか、ヴァイスと呼ばれたモノは闇に溶けて消えた。
「コレで終わりと思うなよ転生者共ッ! ゲームはまだ始まったばっかなんだからよぉっ‼」
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