FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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第53話 崩れた楽園

 

突っ込んで行ったナツを見送り、俺はジェラール・フェルナンデスを観察する。

憑依転生者だからな、原作と違いがあるだろう。

ナツは塔を壊しながらジェラールと闘っており、ジェラールは塔を破壊しないように気を使いながら戦っており、上手く攻め込めないでいる様だ。

ふむ。どうやらあの転生者も、この楽園の塔は壊されたくは無いらしいな。

理由はどうだか知らないが。

しかし、何だあの転生者?

俺の【解析‐アナリシス‐】で情報を読み取ることが出来ん。

なんかそういう類の能力でも持ってんのか?

ナツは中々頑張っているが、それでもやはりジェラールの方が強いな。

 

「無限の闇に落ちろォォオ‼ ドラゴンの魔導士ィィィイイイ‼‼」

 

ジェラールが掲げる両手から、黒い強大な魔力が集まってくる。

アレはヤバいな。

 

「貴様に私が殺せるか!?」

 

ナツを庇おうと、ジェラールの前にエルザが立ちふさがる。

仕方ない。

嘆息しつつ、俺はナツを庇うエルザの前に出る。

【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】・・・・いや、ジャック・ザ・リッパーの能力を【完成‐ジ・エンド‐】した今の俺なら、【魔法無効化‐マジックキャンセル‐】で防げるはず!

 

「天体魔法! 【暗黒の楽園‐アルテアリス‐】‼」

 

暗黒の巨大な魔力の球体が床を抉りながら直進して来る。

これを右手で薙ぎ払って―――――――

 

「なっ!?」

 

バシュッ‼と、球体に触れた右手が弾かれた。

弾いた右手は傷だらけで血が噴き出している。

傷を負った!?

右手で無効化出来ないだと!?

この攻撃は魔法や異能の類じゃない?

いや、そんなはずはない。

この世界でジェラールが使っていた魔法だ。

なら【幻想殺し‐イマジン・ブレイカー‐】なり【魔法無効化‐マジックキャンセル‐】なりが効くはずだ。

可能性があるとすれば・・・・・・無効化の類の特典か?

さっきも俺の【解析‐アナリシス‐】が出来なかったし、何かしらの無効化能力を持っているとみるべきか。

傷を負った右手がすぐさま瞬間再生し、完治する。

避ける間がねぇ。

覇気と炭素硬化と・・・ああ、もうとにかく頑丈になる能力をありったけ!

コレで防げるか!?

 

「四の五の言ってらんねぇかっ」

 

両腕を交差し、衝撃に備える。

だが、攻撃は当たらなかった。

 

「シモォォォォオオオオオオオオン‼」

 

俺の更に前に出たシモンが攻撃を受けて、地に倒れた。

 

「おい!」

「何でお前が‼ 逃げなかったのか!? シモン‼」

 

ミスった! コイツがいるんだった!

エルザがシモンに駆け寄り、抱き寄せる。

もう瀕死の状態だ。

素人目に視ても助からないのが分かる。

外傷だけでなく内臓もやられている。

火や氷で傷を塞いでも意味が無い。

ベクトル操作で血流を操作するだけでもダメだ。

俺は自己を治す術は持っているが、他人を治す力は無い。

 

「・・・・・・・・・・いや、待てよ?」

 

もしかしたら、アレが使えるか?

 

「くだらん‼ 実にくだらんよ‼ そういうのを無駄死にって言うんだぜシィモォォォォン‼ 大局は変わらん‼ どの道、誰も生きてこの塔は出られんのだからなぁ‼‼」

「黙れぇぇぇ‼‼‼」

 

エルザが泣き、ジェラールが嘲笑し、ナツが激昂する。

ナツが周辺に散漫しているエーテリオンを食らい、取り込んでいた。

取り込んだエーテリオンを力に変えて、ナツは再びジェラールへと突撃する。

その傍ら、俺は試していた。

俺の特典の1つ、六道仙人の力。

原作でナルトが瀕死のガイを救ったように、シモンも助けられないだろうか?

・・・・・・どの道、このままだと死ぬ。

なら、ダメで元々だ。

俺は右手でシモンの胸部・・・心臓部に手をやり、チャクラを流し込む。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうだ?

 

―――――――――――ドゴォォォオオオオオオンッ‼‼‼

 

「うおっ!?」

 

ナツが上空へ回避したジェラールを殴り飛ばし、この塔へと叩き落とした。

塔が音を立てて崩れていく。

そして、塔が輝き出す。

・・・・・・・・エーテリオンの暴走だ。

これほどの大魔力を一か所に留めておくなど、無理な話。

行き場を失くした魔力の渦が、弾けて大爆発を起こそうとしているのだ。

 

「とっとと逃げねぇとな」

 

俺の再生能力も決して無限じゃ無いし、俺は不死身でも無い。

ヘタすりゃ俺でも死ぬ。

崩れる足場、落ちて来る塔の瓦礫。

辺りは荒れに荒れて、みんなとも何時の間にか逸れてしまった。

 

「って、シモンは?」

 

崩れた足場から、シモンの肉体が崩壊に巻き込まれて落ちていくのが一瞬見えた。

チッ、やっぱ時間が無かったか。

成功して生きているのか、それとも失敗して死んだのか、確認も出来なかった。

原作だと、エルザがこの暴走を止めて、エルザが死に掛ける処をナツが助けるんだったか。

なら、アイツ等は放って置いてもいいか?

問題は、あの憑依転生したジェラールの方だ。

多少戦闘力は強まっても、結局原作通りの流れになってしまったようだが、コレで終わりなのか?

後にジェラールが生きていることが発覚するから、原作でも一応現時点で生きていることになる。

その辺りに何か違いでもあるのか?

周囲の気配を探ってみるが、転生者の気配は無い。

死んだのか、気絶してんのか、この場にいないのか?

 

・・・・・・その後、暴発したエーテリオンが天へと流れて、エルザとナツも無事に見つかった。

これで楽園の塔編は終わったが、どうにもすっきりしない。

不気味な気配を感じながらも、俺は仲間と共にアカネビーチのリゾートホテルへ帰って行った。

 

 

◆◆◆

 

 

「あー・・・・ったく、マジ、ミスったぜ」

 

それ程大きくない、真っ暗な一室にあるベッドに寝転がっていたその男は、後頭部をガリガリと掻きながら上体を起こす。

 

「随分簡単に負けたようだな」

 

その暗い部屋の闇に溶ける様に、その声を発したモノの姿は見えづらい。

だが、男にはそのモノの姿がハッキリと視えているようだ。

 

「そう言うなよヴァイスさんよぉ、一応相手は主人公なんだからよ」

「フ・・・そういうことにしてやろう」

「次はこうはいかねぇぜ。もっと強いアバターに乗り移ってぶっ殺してやる‼」

「遊ぶのも良いが、目的を忘れるなよ?」

「分かってるって!」

 

一応の納得はしたのか、ヴァイスと呼ばれたモノは闇に溶けて消えた。

 

「コレで終わりと思うなよ転生者共ッ! ゲームはまだ始まったばっかなんだからよぉっ‼」

 

 

 

 

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