第63話 運命の出会いの日
収穫祭が終わって1週間。
街にもやっと、いつも通りの落ち着きが戻って来た。
ラクサスが破門になった事は、やはりみんなそれなりにショックを受けたようで、ナツは昨日まで駄々をこねてた。
そこでラクサスが滅竜魔法のラクリマが埋められている事を知ったり、ジジイがマスターの座を降りるとか言い出したり、フリードが頭を丸めたり、エバやビッグスローも他の皆と馴染んできたりと、まぁ色々あった。
そんなこんなで1週間が経過した訳だが、俺にはまだ大きな問題が残っていた。
「おーい、コッチも頼む」
「ほーい」
「兄ちゃん、コッチもだ」
「あいよー」
「おーい、木も石も足りねーぞ」
「ハイハイ」
・・・・・・・カルディア大聖堂の修理である。
現在業者の人と一緒にカルディア大聖堂を修繕中。
俺がぶっ壊して、評議院が修理を命じてきたからだ。
超メンドクセェんだけど、てか俺だけじゃねぇだろ壊したの。
ナツ達だって壊したじゃん、俺が来た時には結構壊れてたぞ。
まぁ、最終的には俺が全部消し飛ばしたんだけどさ。
そんな訳で、俺はこの1週間聖堂の修理に当たっている。
・・・・・・修理ってか、もう1からの建て直しに等しいが。
【木の造形魔法‐ウッドメイク‐】とかで木を生成し、石を切り裂いたり組み立てたりして聖堂を形作っていく。
この辺はギルドを再建した時に経験があるから、結構テンポよく建て直せそうだ。
まぁ、規模がギルドよりもデカいし、建築物の紋様も精巧だ。
細かいところに時間が掛かり過ぎる。
だが、まぁ、それももう少しで終わりだ。
今日中には完成しそうだしな。
「はー・・・・・・ダリ」
「自業自得だぞ」
昼休憩中。
差し入れを持ってきてくれたレッドが呆れた顔をしてくるが、俺は悪くないんじゃないだろうか?
だってナツ達ぶっ飛ばしてカルディア大聖堂消し飛ばしただけだぜ?
・・・・・・ああ、俺が悪いのか。
「ギルドの方はどうなってんだ? 確か今日、週間ソーサラーでまた取材が来てただろ」
「いつも通りだぞ。ジェイソンが喧嘩してるナツとガジルに突っ込んで吹っ飛んだ」
「確かにいつも通りだな」
記者をぶっ飛ばすのはどうかとも思うが、フェアリーテイルではいつもの事だ。
ジェイソンも何度吹っ飛ばされてもめげないしなぁ、プロだなアレは。
ウザいけど。
「あ、アレ、ルーシィじゃねーか?」
「あん?」
そろそろ作業再開しようかと思った頃、レッドの向けた視線の方へ俺も目をやる。
ここから50メートル程離れた所にルーシィがいた。
何やら男と一緒にいる。
眼鏡をかけた、なんとも平凡な青年だ。
眼鏡意外に特徴らしい特徴が無い。
「誰だ、アレ?」
「見ない顔だな」
建築中のカルディア大聖堂の手をやって何やら喋っているようだ。
何だ、カルディア大聖堂の紹介でもしてんのか?
「あ、行っちゃった」
「道案内でもしてんのかね」
まぁ、何にせよ、別に事件って訳でもなさそうだったし、気にせず作業再開しようかね。
◆◆◆
そして夜。
なんとかカルディア大聖堂の修理が終わり、俺はギルドのカウンターで酒を飲んでいた。
「カーッ、仕事の後の1杯が美味ぇっ‼」
「おっさんみたいだぞ」
「うるせーよ」
この1杯の為に生きてるとか言って何が悪いか!?
「おう、ユウイチ」
そして俺がグビグビと酒を飲んでると、マスターが隣の席に座った。
「何だ、ジジイも飲むか? 注ぐぞ」
「そりゃありがたいが、今は酒を飲んどる場合じゃ無いかもしれんぞ」
「あ?」
「今依頼書が届いた。評議院からお前当てじゃ」
「またかよ!?」
この1週間、カルディア大聖堂の修理に加えて評議院からの仕事の依頼をこなす日々。
もういい加減にだろ、終わっても。
「夜間に出る魔物の討伐じゃ。今から夜行列車に乗らねば間に合わんぞ」
「マジかよ、クソッ」
折角いい気分で飲んでたのによぉ・・・・・・。
気を落とす俺に、レッドがポンと肩を叩いた。
「レッド・・・・・・」
「頑張って来いよー」
「あ、手伝ってくれたりはしないんかい」
◆◆◆
「はぁー、ダリ・・・・・」
やる気なしで俺は列車に乗り込んで適当に空いた席に座る。
ホント仕事終わって飲んでんのに仕事が入るとかやってられるかっての。
こういう時は飲むしかねぇな。
俺は売店で売ってた缶ビールを片手に窓の外をボケーっと眺める事にした。
「あれ、ユウイチ?」
「何やってんだお前?」
「あ?」
声を掛けられて車内の通路に顔を向けると、ナツとハッピーの姿が。
「おう、お前らか。どうしたんだ?」
「お前こそどうしたんだよ」
「俺は仕事だ」
「オイラ達もだよ」
どうやら偶然同じ車両に乗ったようだな。
そして当たり前の様に俺の対面側の席に座り相席する。
ま、別に良いんだけどよ。
「ユウイチはどんな仕事なんだ?」
「評議院からの依頼でな。夜間のみに出る魔物の討伐だ」
「ユウイチに仕事が回って来たって事はS級の仕事なのかな?」
「どうだろうな」
その辺は確認してなかったな。
まぁ、どうでもいいが。
「お前らは?」
「オイラ達、明日の朝に依頼主さんのとこに行かなきゃだからこの列車に乗ってるんだ」
「安いけど、ルーシィにピッタリの仕事見つけてな」
「・・・・・・て、そのルーシィはどうしたよ?」
聞けば、2人はどんよりと目に視えて落ち込んだ。
どうしたよ?
「誘ったんだけどね・・・・・・」
「なんか約束があるとかよ・・・・・・」
「そうか」
昼間の男と関係があるのか?
ま、言わないけど。
言ったら絶対こいつ等そいつの所に突撃仕掛けそうだし。
「ルーシィ、ホントに来ないのかなぁ」
「うーん・・・・・・」
窓の外を眺める2人。
余程行きたかったんだろーなぁ・・・・・。
「そろそろ発射の時間だな」
もう夜の9時だ。
「あーあー、やっぱり来なかったね」
「・・・・・・・・」
「ナツ、あんまブスッとしてんなよ。用事があんなら仕方ねぇだろ」
「・・・・・・・・・・・・・」
やれやれだぜ。
「あたしなら此処に居るけど?」
「「「!」」」
聞こえる筈の無い声が聴こえて来て目を向けると、
「お待たせ!」
キラン!と、待ち人が来た。
「ルーシィ!」
「お前、約束があるって・・・・・・」
「・・・・・それより、安いけどあたしにピッタリの仕事って何?」
「報酬がピッタリ7万ジュエルなんだ‼」
どの辺がピッタリなんだ?
「お前ンとこの家賃7万だろ?」
ああ、そういうこと。
「コレで3カ月はなんとかなるな」
「ナツ、1ヶ月分だよ。ピッタリの意味分かってる?」
どっから3か月の発想が出てきたんだよ。
「でも、それじゃあ、ナツ達の分は・・・・・・」
「あの家が無くなったら、俺達筋トレする場所無くなるしな!」
「あい!」
「それ、どーいう意味?」
「言葉通りの意味だろうよ」
「ユウイチも手伝ってくれるの?」
「いや、俺は違う仕事だ。偶々コイツ等と一緒になったんだよ」
「なんだ」
そして列車が走り出す。
「・・・・・・うぷ・・・・・・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・・・・死ぬ・・・・・・・・・・」
「大丈夫かよ?」
「ナツ、まだ発車して10分も経ってないよ」
「アンタホントに乗り物に弱いのね」
どんな仕事かは知らないが、依頼開始前にナツは既に瀕死だ。
「しゃあねぇな。ちょっと外に連れ出すか」
確か車両の間は外に出る筈だ。
俺は席を立って、ナツを抱えようとする。
「きゃっ!?」
「お?」
席を立って通路に立つと、誰かとぶつかった。
ぶつかった者が持っていた幾つも積み重なる荷物が、崩れそうになる。
とっさに積み重ねられた荷物を上から押さえて、崩れないようにする。
「すまん、大丈夫だったか?」
「は、はい、すいません。前が見えてなくて・・・・・」
歳は少女と言っても良い年齢の様だ。
顔は荷物で視えないが、積み重ねた荷物で前が見えておらず、背も小さい。
子供か?
「歩けるか?」
「はい。ありがとうございます」
道を譲り、少女は視界を塞ぐほど積み重ねた荷物を抱え得ながら、隣の車両へと移動しにいった。
「・・・・・・・・・?」
今の子、どっかで聞いた声だったような?
「もう・・・・・吐く・・・・・・・」
「ちょっとぉぉぉぉ!?」
「ナツ、後ちょっとだよ頑張って!」
「言ってる場合じゃねぇな・・・・・・・」
このままだと車内が大変な事になる。
溜め息を吐きながら、俺はナツを抱えて外の空気を吸わせに行った。
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