ブルアカにTS転生してメス堕ちする話   作:アウロラの魔王

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感想いつもありがとうございます!

5000字くらいで終わる予定が、なぜか3倍に。―――理解できぬ。

Q.プレイヤー視点の掲示板があったら面白そう

A.ガッツリネタバレではあるけど、似たようなのは考えてたんだよね。

他のブルアカSSも結構掲示板ネタ多くて、私もちょっと面白そうだなって思っちゃったよ。とりあえず、その辺は原作入るまで保留していい?




長い夜の話・うしろ

 

 あの後、路地を駆け抜けたオレ達はそのまま近くのレストランへ駆け込んだ。ド深夜だが、まだやってるファミレスがあってよかった。学園都市っていう都合上、学生向けに長く開けてるんだろうか。何はともあれ助かった。

 

「何頼む?」

 

「……そんな呑気にしていていいの?」

 

「またいつ襲撃されるか分からないからこそ、今の内に腹に入れとけってことだよ。あ、金の心配ならすんな。オレが払っておいてやるよ」

 

「……そういうことなら」

 

 オレはクリームソーダを、セイナは大盛ポテトとコーヒーを頼んでいた。いや、腹に入れとけって言ったけど、まだ食うのかよ。

 

 注文を取って待つ間に、SNSに助けを求めてみた。

 

『女の子拾った。たすけて』

 

 お、もうリプついた。こんな時間でも、反応してくれるのはネットの良い所だよな。

 

『草』

 

『草』

 

『草』

 

 誰が、草生やせと言った。解決策を提示しろよ。

 

『警察か、自治組織へどうぞ』

 

 ド正論かよ。こいつら面白がっているな?ネットの悪い所出たな。

 

「そういえば、さっきの戦い方はなんなの?敵のど真ん中に突っ込むなんて、倒してくれって言ってるようなもんじゃない」

 

 スマホから目を離してセイナを見ると、呆れたような目でこちらを見ていた。

 

「別に、そっちの方が有利取れるからな」

 

「どういうこと?」

 

「オレが敵さんのど真ん中に居るから、相手は下手に撃てば味方に当たるからな。オレに向かって撃とうと思うと、オレの足元に向かって撃つしかない。で、オレには何の制限も無いから暴れ放題ってわけ」

 

「……そういうこと。相手の射角を制限して、自分に有利な状況を作って、それを解消しようと近づいてきた相手を、容赦無く殴り倒していたわけね。とんでもない怪物ね」

 

「お褒めの言葉どーも。そう言うお前は頭脳自慢してた割にパッとしないよな」

 

「言ったでしょ。私は戦闘の方はからっきしなの。戦術の話なんてされても困るわよ。……でも、そうね。貴女にバカにされるのも癪だから、そっち方面の勉強もしておくわ」

 

 なんでオレにバカにされるの嫌なんだよ。

 

「ところで、セイナはいつまでフード被ってるんだ?」

 

「そ、それは……」

 

 いつまで経ってもフードを取らないので、指摘すると困ったようにフードを深く被り直す。

 

「こ、これは相手に顔を見られないようにする為の……」

 

「さっき『うちのSP達』って言ってたよな?だったら、もうお前の顔割れてるだろ」

 

「き、聞いてたの」

 

「……まぁ、見せたくない理由があるなら無理にとは言わないが」

 

「……いえ、助けて貰っておいて隠し通そうとするのは、流石に不義理よね……見せるわ」

 

 そう言ってフードを外し、顕わになったセイナの顔を見てオレは目を見開く。

 

「これが私。驚いたでしょ?今の貴女には見せたくなかったのだけど」

 

 ピンクの長い髪を一房にまとめ前に流し、金の目がこちらを射抜く。顔の良い生徒の多いトリニティでもトップクラスの顔の良さだ。だが、それ以上に驚いたのは。

 

「オレと同じ顔……!?」

 

 オレに似てるという事は、ミカにも似てるという事だ。なんなんだ、世の中には同じ顔が三人いると言うが、いくらなんでも世間が狭すぎるだろ。

 

「どういうことだよ、作為的が過ぎるぞ」

 

「まぁ、そうなるでしょうね。私も初めて知った時は驚いたし」

 

「まさか、妹?」

 

「そんなわけないでしょう。私は12月生まれ、貴女は5月生まれでしょう」

 

「年下じゃないのか」

 

「同い年よ」

 

「小さいから年下かと」

 

「鏡見なさい」

 

 ということは、マジで似てるだけなのか?でも、そんな偶然このキヴォトスにあるのだろうか。

 

「まぁ、全くの無関係という訳でもないけれど」

 

「どういう意味だ?」

 

「それは言えない。でも、貴女も知っているはずよ……憶えていればね」

 

 オレが知っている事、でもオレが知らない事。もしかして、オレがこの世界に来る前のオレの記憶ってことか?いや、オレが来る前の記憶なんて無いから知らねー……。ミカからも偶に聞くけど、前のオレ何してたんだよ。

 

「もう一つ聞いて良いか?」

 

「どうぞ?」

 

「オレとお前って昔会ったことあるの?」

 

「いいえ、会ったのは今日が初めて。でも、私は貴女の事を一方的に知っていたわ」

 

 他人に個人情報漏れてんぞ。セキュリティどうなってんだキヴォトス。

 

「こちら、クリームソーダとコーヒーと大盛ポテトになりますー」

 

「あ、どうも」

 

「ごゆっくりどうぞー」

 

 やっと来たクリームソーダにストローを刺して飲む。んまんま。ちらっとセイナを見ると、地獄のような光景が広がっていた。コーヒーに砂糖を何個も投入し、あまつさえそこにミルクをドバっと、こいつは一体何を飲んでるんだ……?

 

「はーっ、糖分が染み渡るわね」

 

「いや、ミルクは百歩譲っていいとして、砂糖入れすぎだろ」

 

「私、甘くないと飲めないの」

 

「なんでコーヒー頼んだんだよ……」

 

「知らないの?コーヒーにはカフェインが含まれているのよ」

 

 だから何だって言うんだ。

 

「仕方ないじゃない。頭を使うと甘いものが欲しくなるのよ」

 

「じゃあ、普通に甘いもの頼めよ。というか、セイナが頭使ってるところ見た事無いが」

 

「まぁ、戦闘と勉強にしか頭を使わないおこちゃまにはそう見えるでしょうね」

 

「むかっ」

 

「私達の一族はね、"知"に優れた一族なの。商売、いいえこの場合、経済と言い換えましょうか。かつて、この地がトリニティと呼ばれる前から深く根ざしてきた。物流によって資源を動かし、得た金を使ってビジネスを提供し、"他国"とも渡り合える国力を身に付かせ、トリニティという"国"を豊かにしてきた」

 

 クリームソーダに口を付けながら、情報を整理する。つまるところ、セイナの一族がトリニティを動かしてきたってことか?

 

「それって、トリニティの実質的な支配者なのでは?」

 

「……どうかしら、結局のところ私達は知識を提供し、それによって発展を促すだけ。……圧倒的なカリスマを持つ、本当の支配者には敵わないわ。だからこそ、血をより強くしようとした私達の先祖は、貴女の家と」

 

「え?」

 

「……っ、なんでもない。話を戻すわ、そんな家だからこそ後継者について問題になってね。要は誰が跡継ぎになるか揉めてるのよ」

 

「最後の説明がアッサリ過ぎないか」

 

「結論って言うのは、簡潔なほど伝わりやすいものよ」

 

 なるほど、それは確かに。つまり、家がデカすぎて跡継ぎ誰にしよって混乱の真っ只中にあるわけね。

 

「ふーん、それでどうしてお前は襲われてたんだ?跡目争いにありがちな、候補者の蹴落とし目的か?」

 

「私は……自由になりたくて、逃げて来たの」

 

「うん、うん?」

 

「でも、それを許さない人たちが私を追って来て」

 

「待て待て待て!自由になりたくて逃げたってことは、継承権を放棄したんだろ?だったらなんで追ってくるんだよ。候補者が減るわけだから、わざわざ連れ戻す意味なんて……」

 

 待てよ、オレ何か勘違いしてないか?オレはセイナが大勢の候補者の一人だと思ってたけど、もしかして……。

 

「セイナ、お前を含めて候補者は何人だ?」

 

「……三人よ」

 

「セイナはどうして候補者に選ばれた?」

 

「……私が、歴代最高の能力を持って生まれたからよ」

 

 つまり、セイナVS他の候補者ではなく、セイナVSセイナを跡継ぎにしたい連中ってことか。それなら、逃げるセイナを追う理由も納得だ。で、セイナを跡継ぎにしたい連中が他の候補者を擁する連中と争ってるって。

 

「派閥争いじゃねえか……」

 

「まさか、説明するまでもなく察するとは思わなかったけど、そういうこと」

 

 くそぅ、今日は厄日過ぎる。ミカに催眠プレイさせられるし、変な後継者争いに巻き込まれるし。しかもこの状況、同じ顔が二人。ダメだー!今別れたらオレも狙われるー!最後まで、面倒見るしかないよなぁ……はぁ。

 

「しかし、デカい家に生まれるとそういうのに巻き込まれて大変だな」

 

「そうね、そういうのとは無縁そうなバカが羨ましいわ」

 

「なんでオレを見ながら言った?」

 

「さぁね?貴女と私、何が違うのかしらね」

 

「何の話だよ……」

 

 ちょくちょく刺してくるけど、ホントに前のオレとは何も無いんだよな?

 

「それで、これからどうするんだ?ずっと逃げ続けるわけにも行かないだろ」

 

「それなんだけど……」

 

 その時だった、店のドアが勢いよく開かれ、店内に丸いものが投げ込まれる。

 

「―――グレネードだッ!!伏せろッッ!!!」

 

 

 

 商業区、繁華街の一角にあるビルの2階のガラスが爆発で連鎖的に吹き飛ぶ。突然の爆発に通行人達はざわめき、足を止めていく。未だ黒煙が立ち上るファミレスから、オレはセイナを抱えて、爆発で吹き飛んだ壁から脱出し、外に着地する。

 

「くそっ、一般人を巻き込むのもお構いなしか!」

 

「相手も、手段を選ばなくなってきてるわね……」

 

「どうする?とりあえずさっさとここから離れた方が良さげだが」

 

「……いえ、遅かったみたい」

 

 こちらが行動に移す前に、既に相手が動いていた。前に戦った襲撃者と同じスーツを纏った者達が、ぞろぞろと姿を現す。さらに戦車がこちらに向かって来ていた。

 

「囲まれた、わね」

 

「戦車まで持ち出してくるとは、本気だな」

 

「どうするの……?」

 

「悪いがオレはバカなんでな―――正面から無理矢理押し通らせて貰うッ!!」

 

 オレは相手が動き出す前に駆け出し、一直線に戦車に向かう。

 

「オラァ!」

 

 そのまま拳を突き出し、戦車の装甲をぶち抜く。穴の開いた装甲に銃弾を叩き込み、爆発させる。止まらず後続の戦車に飛び乗り、砲塔を蹴り飛ばして破壊し、銃弾が貫通するまで撃ち続け爆発させる。

 

「戦車如きで止められると思うなよッ!!」

 

「……滅茶苦茶だわ」

 

 一瞬で戦車を潰されて怯んだのか、動きの鈍った襲撃者達を重機関銃と喧嘩殺法で蹴散らしていく。

 

「オレを止めたいなら、この10倍持ってきやがれッ!」

 

 さっき戦った時とは違い、縦横無尽に戦場を駆け回りながら、障害物の裏に隠れた奴を障害物ごと吹き飛ばし、車の陰に居る奴を車に銃弾を撃ち込み、車を爆発させ吹き飛ばす。

 

「くっ……!」

 

「きゃあ!?」

 

 セイナの悲鳴に後ろ向きに飛びながら、振り向きざまに回し蹴りを放つ。

 

「よっと、あまり離れんな。守り切れなくなる」

 

 蹴られた襲撃者は、弾丸のような速度で吹き飛んで壁にめり込む。

 

「無茶言わないで!貴女の傍に居た方が危ないわよ!?」

 

「バカ言うな、これ以上ない安全な場所だぞ」

 

「一体どこが―――っ!?貴女、前!」

 

 振り向くと、奥に残っていた戦車が砲塔をこちらに向けていた。そして、ドンッ!という空気を震わせるほど大きな音を立て、砲弾がこちらに飛翔してくる。

 

「まずい―――直撃コース!?」

 

 オレは大丈夫でも、セイナが耐えられない!

 

「ちぃっ!」

 

「ちょっと貴女何を!?」

 

 オレはセイナの前に立ち塞がり、こちらに向かってくる砲弾に拳を叩きつける。衝撃で制服の左袖が吹き飛ぶが、なんとか押し留める。

 

「ぐ……ぅ……!」

 

 押し負けるか、そう思ったオレの判断は早かった。オレの神秘から僅かに力を開放し、体が軽くなるのを感じると同時に、一気に砲弾を押し返す。先程の巻き戻しの様に、砲弾が戦車の中に戻っていき、砲弾がオレの神秘の影響を受けたのか、他の戦車より大きな爆発を起こし四散する。

 

「いてて」

 

 少し赤くなった左手をプラプラと振って、熱を冷ましているとセイナが怒鳴り込んでくる。

 

「何考えてるの!一歩間違ったら貴女が危なかったのよ!?」

 

 何言ってんだ。オレが間に入らなかったらケガしてたのは、お前だろ。と言ってやりたいが我慢。

 

「オレもお前も無事だったんだから、結果オーライだろ?」

 

「そういう問題じゃないっ!どうして私なんか庇ったりしたの!」

 

「オレが守りたいって思ったからだよ」

 

「……貴女、特大のバカよ……」

 

「知ってる」

 

 周りを見渡すと、今ので相手もようやく品切れらしい。追加注文多かったからな。正直どこから湧いてくるんだと思った。

 

「向こうの兵力がやっと底を突いたらしいし、とりあえずここから離れようぜ」

 

「……はぁ、そうね」

 

 

 

「ここまで来れば、ひとまず撒けたか?」

 

「そうね、それも少しの間でしょうけど」

 

 オレ達はあの場から急いで離れ、繁華街の中を歩いていた。セイナの家のSPかなりの強さだったな。セイナが言うには、特別な訓練を積んだ特殊部隊なのだそうだ。道理で練度がバカ高いと思った。

 

「しっかし、どうやって短時間でオレ達を捕捉したんだ?」

 

「私達は他の人から見て、トップクラスに美少女だもの。目撃証言なんてあっと言う間でしょうね」

 

「自分で自分の事を美少女って言うのなんか嫌だ」

 

「あらどうして?見た目が良いのは得じゃない」

 

「だって、自分の容姿の良さを鼻に掛けてるみたいだし、なんかナルシストっぽい」

 

「何言ってるの、自分の容姿を客観視出来ない人の方が、よっぽど鼻に掛けてるじゃない。謙虚は美徳だけど、度が過ぎれば嫌味にしか聞こえないわよ」

 

「正論は時として人を傷つけるからやめろ……」

 

 頭では分かっていても、自分の可愛さを肯定するのは恥ずかしいんだよ。

 

「ところで、今どこに向かってるんだ?」

 

「何も知らないで、よく無言で付いてきたわね」

 

「知っていようが、知らなかろうが、取る行動は変わらないからな」

 

「今向かってるのは、おじさんの経営してる会社よ」

 

「え、パパ活?」

 

「違うわよ!どういう思考回路してるのよ!はぁ、親族よ。おじさんっていうのは昔から仲良くして貰っていたから、そう呼んでるってだけ分かった?」

 

「お、おう」

 

 早口でそう捲し立てられ、思わず頷く。てっきり、足長おじさん的なパパ活と思ったが違ったらしい。しかし、親族の経営してる会社か。スケールが違うな……。

 

「それで、おじさんが私の事を匿ってくれるらしいのよ。いつまでになるかは分からないけど、後継者争いが終われば、私は晴れて自由の身ってわけ」

 

「自由、か。自由になったら何かやりたいことあるのか?」

 

「そ、それは……まだないけど。な、なによ!笑いたければ笑いなさいよ!」

 

「笑わねえよ。それはお前が広い世界を知ろうとしてる証なんだから、胸を張ればいいんだ。自由になれば、今より時間が出来るんだろ?なら、ゆっくり探せばいい」

 

「そ、そう」

 

 プイっとセイナは顔を背ける。あれ?また怒らせた?そう思い、しゅんとする。

 

「……私が一族の中でも、歴代最高の能力を持ってるって話をしたわよね?」

 

「え?あぁ」

 

「私の一族の力は、思考能力を強化して思考速度や知覚速度を上げることが出来るの。まぁ、だからさっきの砲弾も見えてたから、避けようと思えば避けれたわけ」

 

「見えても避けられる身体能力無かったら意味無いだろ」

 

「うるさいわよ!」

 

「ごめん」

 

 また怒られた。

 

「だから、その力をフルに使おうと思ったら、貯蔵された知識量に比例するから、私達は小さい頃から書庫に籠もりっきりになって、知識を蓄えさせられるの。その中でも私は別格だと言われたわ。私は完全記憶能力を持っているの」

 

「それって、一度見たものを忘れないって言う?」

 

「えぇ、それによって私は破格の待遇で迎えられ、望む物はなんでも与えられたわ。その代わり、私は外へ出して貰えなくなった。知識を得る度、外の事を知る度に、外への憧れが増していった。そんなときよ、貴女の事を知ったのは」

 

「オレの事?」

 

「えぇ―――着いたわ」

 

 セイナが足を止めたので、オレも足を止め目の前のビルを見上げる。

 

「なんで、偉い奴って高い所に住みたがるんだろうな」

 

「他人の事を見下ろせるからでしょ。それより、ここでお別れね」

 

「何言ってるんだ。最後まで付き合うって言っただろ」

 

「言ってないわよ」

 

 そういえば言ってないな。

 

「そういうわけだから、お前の安全が確認できるまで付いてくからな」

 

「はぁ、好きにしなさい」

 

 好きにさせてもらおー。それにしても、またオレの事聞きそびれた。オレはセイナに付いてビルに入っていった。

 

 

 

「……随分アッサリと案内されたな」

 

 今、オレ達は最上階に向かうエレベーターの中に居た。受付で事情を話すと、すぐに社長に繋いでくれて、社長から最上階の社長室に来るように言われたからだ。

 

「……まぁ、親族だし、社長のおじさんとも良く会ってたから、私が来たらすぐに通すように言ってくれてたのかもね」

 

「……」

 

 妙な胸騒ぎと共にエレベーターが最上階に着く。廊下を少し歩くと、社長室にはすぐに着いた。セイナは数回ドアをノックすると、中から声が聞こえてくる。声が聞こえた後、セイナがドアを開けて中に入ったので、オレは後に続いた。

 

 社長室に居たのは、恰幅の良い男性のロボだった。ロボかよ。

 

「おじさん!」

 

「よく来たね、セイナ。ここまで来たらもう安心だ。他の者に手出しさせないよ……そう、誰にもね」

 

 人の良さそうな笑みを浮かべていた社長の表情が変わったと思うと、周りからロボ兵士が姿を現す。その肩には、見覚えのあるロゴがあった。

 

「カイザー!?」

 

「お、おじさん!どういうこと!?」

 

「ククッ、まだ分からないかね?お前に追手を放っていたのは私だよ、セイナ」

 

 更に、オレ達が入ってきた扉からセイナの家のSPだという、スーツ姿の女の子たちが入って来てオレを拘束し、床に叩きつけられる。迂闊にもカイザーに意識を奪われていたオレは、抵抗できずに縛られてしまった。

 

「な、なんで」

 

「決まっているだろう。お前が継承権を放棄して、自由になりたいなどとほざくからだ。私がお前を目に掛けていたのは、最初からお前の力を利用するためだ。お前を後継者にし、私が後見人として立てば、トリニティは私の思いのままだ!ハーッハッハッハッ!」

 

「ゲスが……!」

 

「ククッ、何とでも言うがいい。しかし、放った追手が全滅したと聞いた時は驚いたものだが、まさかここまで連れて来てくれるとは君には感謝しかないな。報告で聞いてはいたが、本当にセイナにそっくりだ」

 

「くそっ……!」

 

 外へ出ることを禁じられていたセイナの姿が知られていた理由。そして、セイナの容姿を知ることが出来た親しい人物。思えば気付けた要素はちゃんと在ったのに、見逃してこんな後手に回ってしまうなんて……!

 

「そう……最初から……」

 

 セイナの手が強く握り締め過ぎて白くなっていた。それは相手に対する怒りか、あるいは自分に対する怒りか。やがて、ふっと力を抜くとセイナの表情は、全てを諦め切っていたものになっていた。

 

「……分かったわ、そちらに従う。だから、その子には手を出さないで」

 

「セイナ!?」

 

「それと、カイザーをトリニティに招いた罪は重いわよ。現当主が許すとは思わない事ね」

 

「ククッ、そんな罪心配せずともすぐに無くなる。それにカイザーほどの大企業と手を結ぶメリットなぞいくらでもある。言わばこれもビジネスだ。カイザーの持つルートを手に入れられれば、キヴォトスの支配者になることも夢ではない!」

 

「支配者は生まれ持った資質よ。貴方如きではなれないわ―――きゃっ!」

 

 図星を突かれたのか、社長は怒りセイナに手を上げる。

 

「黙れっ!お前のような小娘に支配の何たるかが分かるか!」

 

「セイナ!テメェ、黙って聞いてれば支配だの利用だのふざけたこと言いやがって……!」

 

「チッ!おい!そこの小娘も黙らせておけ!」

 

 社長がそう言うと、SP達はオレが動けない事をいいことに、暴行を加えてくる。

 

「……っ!やめなさい!その子には手を出さないでって言ったわよね!」

 

「ふん、何かと思えばどうして人形の言う事を聞かねばならんのだ?」

 

「……その子はアカツキの関係者よ。まさか、支配者を自称する男が。アカツキの関係者に手を出した者の末路を知らないわけではないでしょう?」

 

「な、なんだと……?」

 

 セイナの言葉で、オレへの暴行がピタリと止む。……アカツキ?何の話だ?見れば、オレに暴行を加えていたSPが酷く怯えていた。

 

「バ、バカな……何故アカツキの関係者がこんな所に」

 

「さぁね、でも私と似ている時点で気付くべきだったわね。貴方、無事に朝を迎えられるかしら?」

 

「……っ!ふ、ふん、奴らとて他家への干渉は容易では無いはずだ。おい、ヘリの用意は!」

 

「す、既に完了しております」

 

「ククッ、本家に向かってしまえばこちらのものだ。セイナ、さっさとついてこい!お前達は、そこの小娘を拘束して部屋に閉じ込めておけ!」

 

 社長に従い、付いて行こうとするセイナ。

 

「待てよ、セイナ……!お前、ホントにそれでいいのかよ……!たとえ、どんな家に生まれたとしても、その通りに生きなきゃいけない道理なんて無いだろうがっ!子供の願いを、大人が踏みにじっていいわけ無いだろっ!」

 

「……私ね、ずっと貴女が羨ましかった。貴女は私と同じだったのに、貴女は自由を手に入れた。それが羨ましくて、妬ましくて、貴女に八つ当たりみたいに憎まれ口を叩いてた。それなのに、貴女はそんなの気にすらしてない態度で私と接して、貴女って本当のバカよ。……いや、バカだったのは私か。だから、私がこんな結末を迎えるのは必然だったのかもね。ありもしない自由を望んで、結局籠の鳥。これが、私の運命。貴女との時間、短い間だったけど楽しかった―――さようなら」

 

「待っ―――」

 

 それだけを言い残すと、セイナは扉の向こうへ消えて行き、扉が閉まり鍵が掛かる音がした。オレをこの部屋に閉じ込めておく気か。

 

「……っざけんな」

 

 床には黒い跡が、残されていた。

 

「ざけんなよ、泣くくらいなら、最初から……!」

 

『貴女と私、何が違うのかしらね』

 

 あの言葉は、そういう意味かよ。あの時、思考能力を強化するとかいう力で会話してたのか。その時に、思考の合間にふと漏れた言葉。

 

「違うだろ、何もかも。当たり前だ、お前とオレは他人なんだから」

 

 皮肉屋で、憎まれ口ばかり叩いて、意外と食いしん坊で、何もかも諦めたような顔で出て行ったくせに、未練タラタラなのが丸わかりで、泣き虫で、弱虫で、虚勢を張って。……あぁ、そうか同じだったのかオレとアイツは。アイツは、オレだった。昔のオレだったんだ。だったら―――。

 

「―――助けに行くしか、ねぇだろ……!!」

 

 オレは、体に力を入れると、押さえつけているSPごと体を持ち上げようとする。

 

「なっ!コイツ、急に力が……!?」

 

「は、早く押さえろ!」

 

「うるせぇ!!邪魔だ!!さっさとどけぇ!!」

 

「―――ひっ」

 

 オレの勢いに圧されたのか、拘束が緩んだ隙にSP達を振り払い立ち上がる。

 

「ぐっぉおおおっ!!」

 

 そのまま、自分を拘束してるロープを引き千切る。

 

「くっ、早く取り押さえろ!」

 

 向かってくる、SP達にオレは拳を構えて応戦する。

 

 

 

 ―――ガチャ、ガチャガチャッ。ガチャガチャガチャガチャ―――ドゴォッ!!

 

「チッ、時間を食った!最初から扉壊した方が早かったな」

 

 屋上に向かうエレベーターは……動かないか。仕方ない、階段で急いで向かおう。

 

 階段を駆け上がり、屋上への扉を蹴破る。

 

「……ッ遅かったか」

 

 しかし、ヘリは既に空高く飛んでしまっていた。―――間に合わなかった。これで、終わり……?

 

「―――まだだッ!!」

 

 オレは絶対に諦めない!まだ、アイツに言ってない事があるんだ。それを言うまでは絶対にッ!!

 

 オレは神秘をフル稼働させ、全身に力を纏う。そのまま、一歩踏み込み―――音速を超える。二歩、足に力を溜め―――空高く跳んだ。その際、衝撃で屋上に巨大なクレーターが出来て、下の階のガラスがバリン!バリン!バリン!と割れる音がしたが、構わないだろう。

 

 急激に変わる景色を横目に、オレは段々と近づくヘリに手を伸ばす。

 

「―――届けぇぇえええッッ!!」

 

 

 

「―――ククッ、ここまで来れば、追ってはこれまい」

 

 外の景色を眺めそうつぶやく社長。セイナは、俯きながらミサの無事を祈っていた。自身の何もかもを捨て、自由になった少女を。

 

(これで、良かったのよね……?)

 

 最初から、全てを捨てきれなかった自分が、ミサと同じになれるはずがなかった。そんな自分がミサに嫉妬なんて、醜いにもほどがあるだろう。彼女は相応の代償を支払ったというのに。

 

(私には、これがお似合いってわけね。これからの一生を、ただ使われるだけの人生が)

 

 人形として、その知識を使われるだけの人生。利用されてることに気付かなかった、自分にはお似合いの結末だろう。思い返せば、人生で一番楽しかった瞬間は、ミサと一緒に居た時間だった。たった、数時間の逃避行。

 

(滅茶苦茶で、こちらの言葉にバカなことを言って返して、体を張って私を守ってくれて―――あぁ、私あの時のお礼も言えてない……)

 

 考えなければいいのに、長年染みついた思考する癖がセイナを責め立てるように、次から次へとミサへの思いが溢れてくる。思考が止まらない。気が付けば、また涙が流れていた。

 

(もう忘れなければ、あれは夢だった。ありもしない夢を見ていた、全ては泡沫の夢だったのよ)

 

 ―――瞬間、ヘリが大きく揺れた。

 

「な、なんだ!?おい、何があった!?」

 

 社長が慌てた様子でヘリを操縦している、カイザーのパイロットに詰め寄るが、パイロットは青褪めた様子でしきりに「バカな、ありえない……」と呟いていた。

 

 その様子に社長も"まさか"の可能性を察して、顔を青褪めさせる。

 

(うそ、ウソ、嘘、嘘よ。そんなことあるわけない。だって、あれは夢で。私は救われなくて。だから、だから―――)

 

 ヘリのドアが、けたたましい音を立て吹き飛び、その先に居たカイザーの兵士を圧し潰す。

 

(―――だったらどうして、貴女はそこに立っているの)

 

 夜が明ける。朝焼けの空が夜を塗り潰していく。明けの光を浴びながら、燐光を纏ったミサがそこに立っている。空には、一番星が輝いていた。

 

「―――諦めるなッ!!」

 

「っ!?」

 

「やりたいことを探すんだろッ!!外の世界を知りたいんだろッ!!だったら―――『それでも』と手を伸ばし続けろッッッ!!!!」

 

―――やめてよ

 

―――やっと諦められると思ったのに

 

―――力を使った貴女にそんなこと言われたら

 

―――私は、私は……!『それでも』……!

 

(思ってはいけないのに、願ってしまう。私がこんな願いを抱いて良いの?)

 

 ミサの目は真っ直ぐに、セイナを射抜いていた。彼女はずっと真っ直ぐに接してくれていた。だったら今回も。そう思ったら、体は勝手に動いていた。きっと、自由になれば今みたいな暮らしは出来ないかもしれない。苦しい事も辛い事もあるだろう。

 

「―――私は、それでも自由になりたいッ!!」

 

 セイナはその手をミサに伸ばした。

 

「はっ、な、何をしている!奴を撃て!!」

 

 社長が我に返り、慌ててカイザーの兵士に命令する。カイザーの兵士は銃を構えミサに向かって撃つが、それより早く、ミサはセイナの手を掴み自身の方へ引き寄せると、その勢いのまま空中へ身を躍らせる。

 

「なぁっ!?」

 

 セイナはミサと共に落ちながら、このまま一緒に死ぬのも悪くないかな。なんてことを考えていた。

 

「ねぇ、すごい勢いで落ちてるけど大丈夫?」

 

「うるさいバカッ!口閉じてろ!舌噛むぞッ!」

 

「バ、バカ!?」

 

 ミサは、羽を大きく広げ飛ぶ。それは飛行というより滑空だったが、速度を落としながら地上に向かうのに都合が良かった。そのまま、近くのビルに向かって飛び、靴でブレーキ掛けながらビルの屋上を滑って着地する。かなりの速度が出ていたからか、滑った後が摩擦で焼けていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「い、生きてる……?」

 

「はぁ、靴もおじゃんになっちまった」

 

 ミサの靴は、摩擦熱でゴムが溶けボロボロになっていた。あんな速度で無理矢理靴でブレーキを掛けたのだから、当然の結果と言えるだろう。

 

「あ、貴女さっきの私の事バカって―――痛い!なんでデコピンするのよ!?」

 

「……なんでだと思う」

 

 ミサの真っ直ぐな銀の目が、セイナを見つめていた。

 

「うっ……さっきは見捨ててごめん」

 

「違う」

 

「違うの!?」

 

「あれは、勝手に諦めた分。で、これは泣くくらい未練ある癖に素直に言わなかった分。これは、すぐ憎まれ口を叩く分。これは―――」

 

「―――痛い!痛い!痛い!分かったから!ごめんなさい!謝るからやめて!」

 

 ミサは溜息を吐くと、立ち上がり周囲を見渡す。どうやらあの会社の近くのビルに下りたみたいだ。

 

「―――オレとお前に、何も違いなんて無かったんだ。ホントは弱虫で泣き虫で、そのくせそれを他人に知られたくなくて、虚勢を張って無茶をして。それでも、オレとお前に違いがあるなら、生まれでも、育った環境でもない。きっと、それは―――」

 

 その時、ミサ達の頭上に影が落ちる。そこには社長のヘリが飛んでいた。

 

『逃がさん、逃がさんぞッ!私の人形になることがお前の運命なのだ!!』

 

「……しつこいな」

 

 ミサはセイナを無理矢理後ろへ下がらせる。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「下がってろ。決着をつけてやるよ。運命なんて―――オレがぶっ飛ばしてやるッ!!」

 

 ミサは重機関銃を構えると、ヘリの前に立ち塞がる。

 

『ククッ、バカめ!身の程知らずが、このヘリは最新式の軍用戦闘ヘリだ。貴様如きが墜とせるものでは無い!』

 

「悪いな、むしろオレの愛銃の本来の使い方なんだ。バカはどっちだったか、直ぐに分かるだろうよ!」

 

 ヘリは飛び回りながら、機銃をミサに向け掃射する。ミサはそれを回避しながら、的確にヘリに銃弾を撃ち込んでいく。

 

『くっ、ちょこまかと!おい、アレを使え!』

 

 ヘリの側面がせり出し、そこからミサイルが放たれる。狭い屋上だ。逃げ場はない。屋上が爆炎に包まれる。

 

「きゃあっ!?」

 

『ハーッハッハッハッ!見たか!これが最新式軍用ヘリの力だ!』

 

 しかし、煙が晴れるとそこには無傷のミサの姿が。

 

『バ、バカな……』

 

 ミサは爆風をシールドで受けたおかげで、ピンピンとしていた。避けるなり、撃ち落とすなり出来たのだが、後ろにセイナが居たので全てシールドで受けることにしたのだ。おかげでシールドはボロボロだが。

 

 ミサは、ミサイルボックスが仕舞われる前にそこに銃を撃ち爆発させる。

 

『バカな、バカな~~~ッ!』

 

「最新式の割に、大して自慢にもならない強さだな」

 

 すでにヘリの至る所から煙を吹いていて、墜ちるのも時間の問題だろう。

 

『お、おのれぇ……!なぜ、なぜだ!?栄光はすぐそこなのに!私が支配者になれるはずだったのに!』

 

「おじさん……」

 

「支配者?栄光?女の子を犠牲にする未来にそんなものあるわけ無いだろうがッ!」

 

『ぐぅぅぅぅぅぅッ……!?』

 

 ミサはヘリに向かって飛び上がり、拳を振り上げる。

 

「これで終わりだ!そんなに栄光が欲しけりゃ、テメェがその礎になりやがれッ!!」

 

『あ……あ……!?』

 

 ミサがヘリに拳を叩きつけた。ヘリはその衝撃で装甲を凹ませながら飛んで行き―――会社の壁へ叩きつけられた。ミサは着地すると、ふんと鼻を鳴らす。

 

「これで、少しはマシな会社に見えるだろうよ」

 

 

 

 ビルから降りると、そこには一台の車が停まっていた。

 

「お嬢様、ご当主様の命により、お迎えに上がりました」

 

 オレが文句言おうと前に出ようとすると、セイナに手で制される。

 

「分かったわ、でもちょっとだけ時間を頂戴」

 

 セイナがそう言うと、SPは頭を下げて後ろに下がる。

 

「……いいのか?」

 

「ええ、色々考えてみて出した答えだから」

 

「そうか……」

 

「でも、これは囚われるために戻るんじゃないわ。自由になるために戻るの」

 

「……そうか」

 

 色々な事があった夜だけど、それがセイナの答えの助けになれたなら、こんなに嬉しいことは無い。

 

「……貴女には、色々とお世話になっちゃったわね。迷惑も沢山掛けちゃったし」

 

「別に、気にしてねえよ。……また会えるのか?」

 

「会えるわよ、きっと。……ありがとう、貴女に会えなかったら私はこの結末に辿り着けなかった」

 

「そう思って貰えたなら、助けた甲斐があるってもんだ、お嬢様?」

 

「ぷっ、お互い似合わない事言ってるわね」

 

「自覚してるよ」

 

 そう言ってオレとセイナは笑い合った。

 

「そろそろ、行かなきゃ」

 

「ああ」

 

「そうだ、さっき屋上で言い掛けた事って何だったの?私と貴女の違いって奴」

 

「あぁ、それは―――いや、それは次に会った時のお楽しみに取っておくか」

 

「そう、それは再会が楽しみね―――またね、ミサ(・・)

 

「―――。ああ、またな、セイナ」

 

 セイナが車に乗り込むと、間も無く発進し、オレは見えなくなるまで見送った。

 

「……オレとセイナの違い、か」

 

 きっと、それは"導く者"の違い。オレはシエルさんやミカといった人達に導かれ、支えられてきた。それは、今オレがこの地に立って居ることがその証明だ。セイナにも、傍に居て、支え、導いてくれる者がいたなら……いや、今のセイナなら大丈夫だろう。

 

「―――んあーっ、と疲れたー。長い夜だったなぁ。朝になっちまったし、この後どうしよ……あ、ミカから連絡だ『今どこ?帰って来て』どこって、商業区のどっかかな……。まぁ、ミカのお許しが出たし、一旦帰るかー」

 

 制服ボロボロになっちゃったなぁ、またミカに怒られちゃう。

 

「―――あー、ミサさん。ちょっといいですか?」

 

 振り返ると、ユイノと委員会の制服を着た生徒が数人、オレを取り囲んでいた。

 

「ユイノ?どうしたんだ?」

 

「昨夜起こった街中の爆発事件について、心当たりありますよね?」

 

「あー……」

 

 そういえば、派手に暴れまわったからな。人にもバッチリ見られてたし。あれ?これミカにバレたらやばいのでは?ど、どうにかユイノに口止めを……。

 

 そんなことを考えながら、オレは《正義実現委員会》に連行されていった。

 

 

 

 

 

 

「―――てなかんじ」

 

 ミカはミサのほっぺを全力で引っ張る。

 

「いひゃい!いひゃい!」

 

「なんで、そんな危ないことしたの!」

 

「ひ、人助けだから!」

 

「もっと周りの人を頼りなさい!」

 

「ぴー!」

 

 ミカにほっぺを伸ばされて暴れるミサの横で、ナギサは項垂れていた。

 

「あ、これ。その街中での銃撃戦を撮影した動画になります。勇気ありますねー」

 

 そう言って、ユイノが差し出した端末には大暴れするミサがバッチリ映っていた。

 

『うわぁ……』

 

『ひぇ……』

 

『これが撲殺天使ちゃんの本気ですか』

 

『これじゃあ、撲殺天使じゃなくて破壊天使だよぉ!』

 

『これが人間のやる事か?』

 

『人間じゃなくて天使だからセーフ』

 

『戦車の砲弾って殴れるものなんです?』

 

 動画内には大量のコメントが流れており、いずれもあまりの暴れっぷりにドン引きしていた。しかし、ミサがもう一人の女の子を守るように立ち回ってるのを見て、称賛する者も多かった。

 

「わぁい、有名人―――いたい!?」

 

「喜んじゃダメでしょ」

 

「また、悪名が轟きそうですね……」

 

 ナギサはその事を思うと既に頭痛がし始めていた。そんなナギサに追い撃ちを掛けるように、連絡が入ってくる。

 

「―――え!?ミサさんの罪を不問に!?」

 

「は、はい。皇グループからの正式な抗議文で、従わないなら学園への支援を打ち切ると」

 

「スメラギ……」

 

 ナギサとしては願ったり叶ったりだが、一体どういう事だろう。まさか、動画に映ってるもう一人の少女と何か関係が?

 

「それと、今回の件に関する調査を全て打ち切れ、とのことです……」

 

「……関わるな、という事ですか。遠回しな警告文ですねこれは」

 

 理由はどうあれ、従うほかないだろう。

 

「ナギちゃん!」

 

「どうしました、ミカさん?」

 

「ちょっと《勉強部屋》借りるね?」

 

「―――え!?」

 

 ミカの言葉に驚いたのはミサだった。ナギサは、頭を抱えながら、しかし力になると言った手前断りづらい。

 

「……えぇ、どうぞ。上には私から報告しておきます」

 

「ありがとう!」

 

 どちらにしろ、一度ミサをこの場から遠ざけておいた方がいいだろう、と思い許可を出した。申請を出せば、あっさり通った。

 

「ミ、ミカ?あのね違うの。ホントにアレは不可抗力で、ああしなかったら逆に危なくて―――ミ、ミカぁぁ~~~!」

 

 そのままズルズルと、ミサは引き摺られていった。それを見届けると、ナギサは事後処理に入った。

 

 

 

 

 

 

「―――どうやら、終わったみたいです」

 

「そう……」

 

 どこかの庭園。盲目の少女は、イスに座るこの庭園の主に微笑みかける。ピンクの髪にドレスを纏った女性。どこか、ミサに似た雰囲気を持つ女性はカップを傾け紅茶を飲む。

 

「だから言ったではありませんか。彼女なら大丈夫だと」

 

「……その言い方だと、まるで私があの子の事を心配してたみたいじゃない」

 

「違うんですか?」

 

「……」

 

 女性は、プイっと顔を背けながら扇で口元を隠す。その様子に、盲目の少女はクスリと笑みを零す。本当にこの親子は分かりやすい。

 

「それと、例の会社についてですけど、皇の方から回答を頂きました。『好きにしても良い』とのことです。いかがなさいますか?」

 

「……カイザーと繋がった会社は要らない。潰しなさい。徹底的に」

 

「仰せのままに」

 

 

 




光園ミサ
メスモードに入ってないと、魅力カンストのただのイケメン女子。この日を境に《トリニティの破壊天使》の異名が他学区にも知られ始める。なんか小説のネルパイセンが音速で動けるらしいから、じゃあミサも出来るかってなった。やった。今回、本気一歩手前まで行った。でもまだレーザーが残ってるの。散々暴れた癖に、まだ上があるってマ?

す…知床セイナ
ミサのそっくりさん。モチーフになった天使はハニエル。セイナを"導く者"になったのはミサ。なお、本人は無自覚の模様。大量の伏線をバラ撒いて、再会の約束をして別れた。あれ?メインヒロインかな。

聖園ミカ
あまりにも出番がないメインヒロイン()。なんだったら、しばらくメインの回はない。


今回の話で、ミサ周りの伏線は殆ど張れたかな?解答編はエデン条約編以降になるだろうけど。

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