ブルアカにTS転生してメス堕ちする話   作:アウロラの魔王

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感想いつもありがとうございます!
みんなミサの友達発言に引っ掛かり覚えすぎてて草。

ホントは早めに投稿したかったけど、右手薬指が痛かったのと右手全体がしびれる感覚があったので、ちょっとお休み取ってました。

ところでみんなはえっちっちSPは見た!?トリニティの情報盛り盛りでめっちゃうれしかった!ショートアニメすっごい楽しみだね!やっぱミカコハはあるんだ!

あ、ミカの歩数計とアクリルスタンドポチりました。き、気が付いたら手が勝手に。


剣先ツルギの話

 

「ふんふんふーん♪」

 

 ある休みの日、お昼ご飯にパスタを茹でながら鼻歌を歌ってる時の事。

 

「あれ?着信?ユイノからだ」

 

 オレは通話ボタンを押し、スピーカーをオンにして通話を繋げる。

 

『あ、もしもしミサさん。ユイノです』

 

「どうしたの、こんな休みの昼間から」

 

『あはは、せっかくのお休みの日に申し訳ないですけど、相談したいことがあるので、お昼から学園にある委員会の校舎まで来れませんか?』

 

 いきなり電話してきたと思ったら、かなり不躾な内容だった。ミカが気にするようにこちらを見ている。

 

「……その相談内容は、今ここで話せない事?」

 

『あーその……』

 

「とりあえずさ、話せることは話しちゃってよ。その相談の如何によっては、頼みの方も引き受けてあげる」

 

『……!?え、私頼みがあるって言いましたっけ?』

 

 電話越しに息を呑む音と震えた声が伝わってくる。

 

「ただの相談だけなら、わざわざ会う必要無いでしょ。つまり、相談にかこつけて私に頼みたいことがあったんじゃない?」

 

『誰かに聞かれると困る相談だとは?』

 

「それこそ、今話してよ。今周りに誰もいないんでしょ?それとも、何?次期委員長様は内緒話を衆人環視の中でやるの?」

 

『……はぁ、ミサさんには敵いませんね。分かりました、今ある程度話しますので、どうするかはミサさんに任せます』

 

 オレはミカに向かって、口元に人差し指を置いて"静かに"というジェスチャーを送る。ミカはそれを見ると、仕方ないと肩を竦めて見せた。

 

『先月にあった事件覚えてますか?』

 

「それって、爆弾の奴?」

 

『そうです、不良から押収した爆弾が違法改造品であることも、話しましたよね。尋問の末、不良がようやく口を割りましてね。どうやら、ブラックマーケットから来たブローカーから買い付けたそうです』

 

「なるほど、ブラックマーケット製か。あそこは表に出ない禁制品の宝庫だからな」

 

『えぇ、あそこは治外法権ですからね。通常なら摘発するのは難しいんですが、先程話したブローカー、差し詰め闇ブローカーと呼びましょうか。以前からトリニティに出回ってる違法改造品も、その闇ブローカーが関わってることが判明しました』

 

「ふーん、わざわざ闇って付けてるってことは何かあるの?」

 

 茹で上がったパスタの湯切りをしながら聞いた。

 

『流石の慧眼ですね。実はその闇ブローカー、ブラックマーケットに内緒で商品を横流しして売り捌いてたらしく』

 

「……ブラックマーケットの法に触れたのか、バカな奴」

 

 ブラックマーケットは治外法権ではあるが、無法地帯という訳では無く、当然ちゃんとしたルールは敷かれている。それが、他の学区に比べたら断然緩いってだけの話だ。

 

「つまり、何をトチ狂ったのか違法に違法を重ねて商品を売ってるのか」

 

『マーケットガードも敵に回してるみたいで……』

 

「今も逃げ回っていると」

 

『いえ、もう捕まえました』

 

「捕まえたんかい」

 

 てっきり、捕まえて欲しいって話かと。いや、オレ捕まえるのは苦手だけど。

 

『こちらで早期に捕まえて、マーケットガードを追い出さないと、私の首が物理的にやばかったんですよ』

 

 いや、なんでだよ。おっとっと、パスタ焦がしちゃう。

 

『それで、闇ブローカーが使っていた倉庫が判明しましたので、ミサさんにはそこへ行って保管されてる品とお金を回収して欲しいんです』

 

「商品は分かるけど、お金も?」

 

『えぇ、元を辿ればトリニティのお金ですからね』

 

 なるほどね。

 

「でも、それだったら私に頼むほどではないと思うんだけど?」

 

『はい、とても簡単な任務です。なので、ミサさんにはある生徒と行って貰いたくて』

 

「……?どういうこと?」

 

『実は、ちょっと問題のある生徒と言いますか、その子の事を怖がって誰も彼女と組みたがらなくて……。今までは、私が訓練やパトロールを一緒に行えていたんですが、委員長になるとそうもいかなくなってしまうので、その前に解決を図りたいと思いまして』

 

「なるほど、同じ怖い生徒の私に頼もうと」

 

『は……いやいやいや!そういうことじゃなくてですね!?』

 

「あはは!冗談だって!」

 

『もう……心臓に悪い冗談はやめてくださいよ。まぁ、その子も色々と悩んでいまして、ミサさんなら相談に乗ってあげられるんじゃないかな、と』

 

「随分、高く買われたね。私、ユイノに何かしたかな」

 

 正直、何かをした覚えは無いんだけど。ナポリタンと、カルボナーラできたー。あとはっと。

 

『あはは!いっぱいして貰ってますよ。正直、貰い過ぎて何もお返しできてないくらいですよ。それで、どうでしょうか?』

 

「うーん……」

 

『……何か心配事でしょうか?』

 

「私は別に引き受けてもいいと思うけど、ミカがなんて言うか」

 

『ミカさんが?』

 

「ほら、最近私暴れ過ぎたから、ミカも心配しちゃってるんだよね」

 

 出来上がったスパゲティをテーブルに並べながら、ミカを見る。ミカはうんうんと頷いてる。

 

『私からもミカさんを説得するので、何とかならないでしょうか!』

 

「ふーん、だってさミカ」

 

『―――え!?』

 

「はぁ、ミサちゃんを悪い道に誘うなんて、ユイノちゃんがそんな悪い子だったなんて思わなかったなー」

 

『え、いや、その』

 

 心の準備が出来ていなかったのか、ユイノはミカを前にして口ごもっていた。

 

『ちょ、ちょっとミサさん!?ミカさんがいるなんて聞いて―――はっ、まさかさっきの会話も!?』

 

「そりゃ、聞いて貰ってたよ。もう一度いちから説明するの面倒だし、この方が手っ取り早い」

 

『あ、あのー……一応内緒の話だったんですけど……』

 

「ミカが聞いても問題ないと思ったから、聞いて貰ったの。《ティーパーティー》だし問題無いでしょ」

 

『それは……そうなんですが……』

 

「もう、二人で話進めないでくれる?ユイノちゃんもさー、ミサちゃんがグレたらどうしてくれるの?」

 

 なんか急に母親みたいなこと言いだした。というか今更、もう散々非行に走った後だわ。

 

『す、すみません!ですが、今回だけでいいのでミサさんをお貸し頂けないでしょうか!』

 

「うん、いいよ」

 

『そこをなんとか!……って、え?』

 

「え?ミカ?」

 

 てっきり、断られるものだと思っていたユイノもそうだし、オレもいいと言われると思ってなかったので、素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「だから、いいよって言ってるじゃん」

 

 無理だろうなと思ってたので、普通に今日ミカと遊びに行く場所考えてたのに。

 

『ええと、良いんですか?その、こちらとしては助かるんですが』

 

「正直な話、良くはないよ。でも、今断ったところでミサちゃん別の日にこっそり手伝う気でしょ?」

 

「うっ」

 

 なんでバレてるの?

 

「ミカ、自慢じゃないけど、私のトラブル体質を舐めてるよ。今回の話、私のトラブル体質を考えると、絶対に回収だけで終わらないよ?」

 

「ホントに自慢じゃないね。私が知らない所で問題起きるより、問題が起きた時私が把握してたら対処もしやすいから。だから、全面的にミサちゃんの考えに賛同はしないけど、ちゃんと相手との関係を考慮して許可ぐらいは出すよ」

 

「み、ミカぁ~……ミカは私のこと考えてくれてたのにごめぇん……」

 

 オレは感極まってミカに泣きながら抱き着く。

 

「まぁ、ユイノちゃんには普段ミサちゃんが疑われた時とか、問題起きた時に庇って貰ってるからね。委員会の手伝い位の協力ならいいよ。ただし!ちゃんと、私に一言言ってね」

 

『あ、ありがとうございます。その、ごめんなさい。私もミカさんの事、厳しくて頑固な人だと思ってたので簡単に許して貰えないと思ってました』

 

「……みんな私の事なんだと思ってるの?ひどくない?」

 

 ミカごめん、オレもユイノと同じようなこと考えてた。

 

「はぁ、とりあえずこの話はここまでにしてお昼ご飯食べちゃおうよ。せっかくミサちゃんが作ってくれたのに冷めちゃう」

 

『あぁ、お昼時なのにすみません。ところで、通話中も料理の音が聞こえてましたが、何を作っていたんですか?』

 

「えっと、ミートソーススパゲティとたらこスパゲティとナポリタンとカルボナーラ」

 

 オレはテーブルに並べたスパゲティを見ながら言った。

 

『……多すぎませんか!?』

 

「だって、ミカにどれ食べたいか聞いたら全部って言われたから。パスタ茹でた後、フライパンで炒める時に一口か二口ぐらいに分けて、種類増やした」

 

 地味に手間が掛かった。ソースとかの分量もその分計算して考えないといけないし。

 

「ふふん、ミサちゃんの料理はホントに美味しいからね」

 

 なんでミカが自慢気なんだろう。

 

『あはは、お二人共ホントに仲が良いですね。とりあえず、私は委員会で使ってる校舎に居ますので、食べ終わったらこちらまで訪ねて貰えると助かります。例の子にも予め話を通しておきますので』

 

「そういえば、例の子って名前は?」

 

『剣先ツルギって子です』

 

「へー、ん?なんか聞き覚えがあるような……」

 

「同じクラスだよ……」

 

 そうだったのか、納得。ってミネといい同じクラスの奴多いな。

 

「ん、りょーかい。じゃあ、詳しい話はまた後で」

 

『はい、お待ちしてます』

 

 通話が終了し、ツーツーと音が鳴る。オレはスマホの画面を消すと、テーブルに置いた。

 

「もう、ミサちゃん。ちゃんとクラスの子の名前と顔位は覚えておこうよ」

 

「あ、あはは……どうも関わりが薄いと覚えにくくて」

 

 その後、料理に舌鼓を打ちながら、ミカに同級生の顔と名前をちゃんと覚えなさいと怒られたのであった。

 

 

 

「ユイノー?来たぞー」

 

 お昼ご飯を食べた後、ミカに見送られ学園まで来たオレは早速ユイノがいる委員会の校舎を訪ねた。校舎内には当たり前だが、委員会所属の黒いセーラーを着た生徒が多く、オレが気になるのかチラチラと視線を送られていた。そのことに居心地の悪さを感じていると、奥からユイノがやってくる。

 

「ミサさん、お待たせしてすみません」

 

「別にいいけど、どこで話す?流石にここだと見られすぎて落ち着かないというか」

 

「それじゃあ、奥まで来てもらっていいですか?ツルギもそこで待たせてありますので」

 

 ユイノに連れられて奥の部屋に向かった。部屋の中には、まるでホラー映画にでも出てきそうなおどろおどろしい雰囲気を持った女の子が、ソファに座って待っていた。

 

 同じ委員会の子に怖がられていると言ってたけど、そういうこと?

 

「ツルギ、お待たせしました。この人が、ミサさんです」

 

「……あ、同じクラスの」

 

「えっと、こんにちは」

 

「……どうも」

 

 オレはツルギを見ながら挨拶するが、ツルギはオレを見ずにそっけなく挨拶を返す。

 

「あ、あはは!すみませんミサさん、こういう子なのであまり気にしないでください」

 

「いやいいよ、恥ずかしがり屋なだけだろ?」

 

 よく見ると、ツルギの目が忙しなく動いていて、手をモジモジさせていた。恐らくだけど、対人経験が少なくて人見知りしてるだけだと思う。

 

「……一目見ただけで、よく分かりましたね」

 

 ユイノは驚いているが、陰キャ特有の雰囲気を纏ってるから、とは言い辛いな。

 

「ツルギ、先程話した通り今日一日、ミサさんについてもらって仕事をしてもらいます」

 

 ツルギは無言でコクコクと頷いている。別に嫌がられてるとかは無さそうで、ちょっと安心。

 

「ユイノ、今日の仕事ってのはここに来る前に聞いた通りで良いのか?」

 

「えぇ、闇ブローカーが隠し持ってた倉庫へ行って、そこにあるものを回収するだけです」

 

 ユイノからオレの端末に、倉庫の座標が送られてくる。……トリニティ郊外にある廃工場か。物を隠すにはうってつけだな。

 

「ツルギはオレと組むことになるけど、ツルギの方はいいのか?」

 

「……あ、べ、別に構わない。ユイノさんが個人的に頼むほど信頼してるなら……」

 

 キョドり気味ではあるが、受け答えはハッキリしてるな。見た目は確かに怖いが、少し話しただけでも、ちゃんと会話が成立するって分かる。ということは、問題はそこじゃないってことだ。

 

「なぁ、ユイノ。ツルギが怖がられてるのって、見た目だけじゃないんだろ」

 

「……なんで、一言二言話しただけで分かるんですか?」

 

「そりゃ、オレが見た目で怖がられてるわけじゃないからな」

 

 ミカが言うには、街を歩いていれば普通にナンパされるくらいには、オレの見た目は可愛いらしいし。

 

「あー、そういえばそうですね。まぁ、ミサさんに簡単に伝えておくと―――」

 

 ユイノが説明しようとしたところで、ツルギが慌てたように体を乗り出してきて、声を発した。

 

「き、きぇぇえぇえぇっ!!」

 

「!?」

 

「―――ということです」

 

 ツルギが急な奇声を発したことで驚いて固まっていると、何事も無かったようにユイノがツルギを見てそう言った。当のツルギは恥ずかしそうに俯いている。

 

「どういうことだよ……」

 

 

 

 あの後、ユイノに追い出されるように校舎を出たオレ達は、その足で街まで出ていた。

 

 隣を見ると、ツルギは体を丸めてのそのそと動いている。見た目と相まって、恐ろしい様相を呈している、今が昼間じゃなかったら四方八方から撃たれていたかもしれない。

 

「そういえば、ツルギってオレと同じクラスだったんだな」

 

「……ああ」

 

「ツルギってどうして《正義実現委員会》に入ったんだ?」

 

「……それは……学園に馴染めなくて……そんなときにユイノさんが委員会に入らないかって……」

 

「ユイノが?」

 

 なるほどな、だからユイノの奴ツルギの事を気にしてたんだな。学園に馴染めない奴を自分で誘っておいて、その子が委員会にも馴染めなかったら、誘った張本人としては申し訳なさが勝つわけだ。

 

「……ミサは……よく学園に馴染めているな……」

 

 そう言うツルギからは、羨ましそうに話された。

 

「別に馴染んでるわけじゃねえよ。オレが周りを気にしてないだけだ」

 

「……そうなのか……?」

 

「当たり前だろ。第一、なんでわざわざ周りの評価を気にして生活しなきゃならないんだよ」

 

 まぁ、気にしなさ過ぎて悪評立ちまくるし、噂に尾ひれ付きまくってるけど。

 

「……」

 

「どうした?」

 

「……いや、お前が学園で悪く言われてる理由がなんとなく見えた気がしただけだ……」

 

「なんだそりゃ」

 

 ツルギと色々話をしながら、街を歩く。ふと、視界に入ったものを見て「あ!」と声を上げ、オレはそこに近づいていく。

 

「これ、前から気になってたブランドの新作バッグだ~っ!実物見るとやっぱりかわいい!ど、どうしよっかな……今月まだ余裕あるし、自分用とミカへのプレゼントに買っちゃおっかなー」

 

 店頭のショーケースに飾られたバッグを見て、オレはテンションが振り切れてしまった。今月の予算から計算して、問題が無いことを確認すると、オレはそのまま店内に入り目的のバッグを買った。

 

「えへへ、これをミカにプレゼントしたら喜んでくれるかな?一緒に遊びに行こうねって言ったのに行けなかったから、これでお詫びになるといいなぁ」

 

「…………」

 

 ツルギを見ると、何故か違う生き物を見る目で見られた。

 

「な、なんだよ」

 

「……お前、二重人格だったのか……?」

 

「はぁ?んなわけないだろ。どこをどう見たらそうなるんだよ」

 

 何言ってんだコイツ。あ、落とさないようにしっかり持っておかないと。いそいそと、買ったものをバッグにしまう。

 

「……私がおかしいのか?」

 

 ツルギに変な目で見られながらも、目的地に向かって移動した。

 

 

 

 目的地である廃工場近辺に到着した。したのだが……。

 

「……最近、誰か出入りしたな?」

 

「……わかるのか」

 

「闇ブローカーを逮捕したのは、1週間以上前。それから、誰も出入りしてないにしては妙な荒れ方をしているな。最初は、どっかのチンピラが入り込んだと思ったけど、これは……」

 

 地面を見ると、複数人の足跡を確認できた。この付き方、靴じゃないな。もしかすると。

 

「……このまま廃工場に入るのは危険だな。ちょっと周辺を探索するぞ。予想が正しければ、面白いものが見つかる」

 

「……了解だ」

 

 ツルギを伴い、廃工場の周りをぐるりと確認した。すると……。

 

「―――見つけた」

 

「……車?」

 

「指揮車両だな。ツルギ、このまま突入して制圧するぞ」

 

「……分かった」

 

 オレとツルギは銃を構えると、指揮車両のドアをぶち破って入った。

 

「な、なんだお前達!?」

 

 そこにいたのは、肩にカイザーのロゴを持ったロボット兵士達だった。先手を取るために、一息で距離を詰めると、そのまま殴り倒す。

 

「ツルギ!あまり機械に向かって撃つなよ!」

 

「きひひっ!きえええええええええっ!!」

 

 聞こえてるか不安だったが、ちゃんと機械は外して撃っていたので、大丈夫なようだ。そのまま20秒ほどで制圧し終わると、オレは指揮車両に備え付けてある端末にアクセスした。

 

「ツルギ、ユイノに連絡取ってくれ。スピーカーオンにしてな」

 

『はい、ツルギどうしました?』

 

 数コールの後、ユイノに繋がったので、簡潔に状況を伝える。

 

「ユイノ、緊急事態だ。廃工場にカイザーがいる」

 

『ミサさん?いや、それよりカイザーですって?』

 

「おそらく、マーケットガードの連中だろう。さっき指揮車両を制圧して端末を確保したが、既に工場内に数部隊入り込んでる。今、オレのスマホから情報を送る」

 

『そんなバカな……。確かにトリニティから出て行くのを確認したはず……』

 

「たぶんだけど、元から闇ブローカーを追う部隊と闇ブローカーのブツを回収する部隊で分けてたんだろ」

 

『……帰ったのは、闇ブローカーの部隊だけですか。すみません、少々時間をください。相手に確認を取りますので』

 

「出来るだけ早くな。指揮車両と連絡が取れなくなった時点で、工場内の部隊にオレたちの存在はバレてる」

 

 それから、数分もしない内にユイノから通話が来た。

 

「もしもし?」

 

『ミサさん、こちらからマーケットガードに連絡しましたが、そんな部隊は知らないという事です』

 

 尻尾切り……いや、計画時点で最初からいないものだったのか。本命は最初からこっちで、闇ブローカーを追っていた方は、トリニティの目をこちらから逸らすためのブラフか。道理であっさりと帰ったわけだ。

 

「言質は?」

 

『取ってあります』

 

「なら、オレ達がどうにかする分には何も問題ないな」

 

 前にセイナの件で会った時もそうだけど、カイザーという名に強い忌避感の様なモノを覚えていた。もしかしたら、奴らは前世で余程の怒りを買うようなことを、しでかしていたのかもしれない。

 

『すみません、私の失態です。最初の時点で気付いていれば……』

 

「気にするな。それを言うなら、オレなんてイレギュラーがある予感しかしてなかったぞ」

 

 やっぱり、オレのトラブル体質は伊達じゃなかったようだ。

 

「さて、カイザーの連中にはさっさとトリニティから出て行って貰おうか―――トリニティにカイザーはいらない、一人残らず叩き潰す」

 

『こちらからも応援を送ります、どうかご武運を』

 

「到着までには全部終わらせておいてやるよ」

 

 ユイノの呆れた声を最後に、通話を終了する。オレはツルギの方に向き直ると、どうするか聞いた。

 

「というわけなんで、工場の制圧はオレ一人でも出来るが、どうする?応援が来るまで、ここに残っていてもいいが」

 

「……いや、私も行く。……お前を一人にするのは危なっかしい気がする」

 

「お前に言われたくないが?」

 

「……それに」

 

「?」

 

「今日は、私とお前はパートナーなんだろう?」

 

「……言うじゃん。指示はこちらから出す。ちゃんと従えよ」

 

「……問題ない」

 

 オレとツルギは指揮車両から出る。と、誰かに見られてる気配がして、勢いよく振り返る。

 

「どうした……?」

 

「……今、誰かに見られてた」

 

「……気のせいじゃないのか?」

 

「いや、気のせいじゃない。見られることが多い分、そういう視線には敏感なんだ」

 

 特に、悪意や敵意にはな。でも、この感覚まるで値踏みしてるみたいな。

 

「……気配が離れた」

 

「……追うか?」

 

「いや、相手がどういう理由で見ていたか分からない以上、正体不明の相手を追うのはリスクがデカい。それよりも、工場の制圧を急ごう」

 

「……分かった」

 

 そうしてオレは先程の視線に後ろ髪を引かれながら、廃工場へ侵入した。

 

 

 

 

 

 

「―――クククッ、危ない危ない。ここから先はもう彼女の感知範囲でしたか、まさかここまで広いとは」

 

 そこは廃工場から離れた小高い丘の上。そこから廃工場全体が見渡せた。

 

 そこにいたのは、黒いスーツを着た全身、肌に至るまで真っ黒な異形だった。その黒い異形はポケットに手を入れながら、工場全体を俯瞰し、工場へ侵入しようとするピンク髪の少女を見て、黒い顔からひび割れた様な口を三日月の形に歪ませ笑う。

 

「クククッ、ようやく見つけましたよ。まさか、普通の生徒に紛れて生活しているとは"トリニティの青い血"」

 

「さぁ見せて貰いましょうか?"叛逆者"の力を、神々に対する"最終兵器"足る力をね。クククッ……」

 

 

 

 

 

 

「……前方5。一気に制圧する」

 

「……ああ」

 

 廃工場に入ってすぐ、兵士たちを見つけこちらに気付く前に一気に接近した。

 

「―――し、侵入者、がっ!?」

 

 声を上げようとした奴に肘鉄を叩き込み、右足軸にすぐ近くの奴に左ひざ蹴りを入れた後、そのまま左足を振り上げもう一人にかかと落としする。鈍い音を響かせ、3人を無力化。ツルギを見ると、2人が倒れてるのが見えた。

 

『おい、なんだ今の音』

 

『確認するぞ』

 

「……どうする?」

 

「こちらから仕掛ける。上を取るぞ」

 

「分かった……」

 

 オレ達は工場内の物を伝って速やかに上へと移動すると、下に見える部隊へ急降下する。

 

「なっ、一体どこから!?」

 

「きひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」

 

「な、なんだコイツ!?うわぁ!?」

 

「ふんっ!」

 

「ぐはっ!?」

 

 オレが殴り倒していく横で、ツルギは両手に持った二丁のショットガンで次々に兵士を倒していく。

 

「なるほど、これだけ暴れられたらそりゃ怖がられるか」

 

 オレは出来るだけ被弾を抑えるために、避けれる弾は避けているが、ツルギはお構いなしに銃弾に向かって突っ込んでいた。あの見た目の上、奇声と相まって、相手からすればとんだ恐怖映像だ。しかし、ツルギが暴れてくれるおかげで、オレが楽を出来て助かる。

 

「……ん?おっと、ツルギ危ない!」

 

 オレは近くに居た兵士の腕を掴むと、ツルギの方に向かって投げつける。すると、ツルギの後ろからツルギを抑えつけようとした兵士が、飛んできた兵士に圧し潰される。気付いたツルギが、倒れた兵士に追いショットガンを浴びせて、気絶させていた。

 

「……助かった」

 

「別にいいよ、仲間なんだから」

 

「仲間……」

 

「それより、このまま地下に進んで残りも制圧しつつ、最深部にある保管庫に向かおう」

 

「ああ……わかった」

 

 工場の奥にある階段からオレ達は地下へ降りていった。地下は薄暗く、通路幅が結構狭い。並んで二人歩けたらいいくらいか。道中、出会う兵士を薙ぎ倒しながら進んで行くと、ふと話し声が聞こえ立ち止まる。

 

「……どうした?」

 

「しっ」

 

 耳を澄ませると、話し声は壁の向こうからだった。

 

「この向こうか」

 

「……どうする気だ?」

 

「もちろん、壁をぶち破って奇襲する」

 

「……は?」

 

「いいかツルギ。壁を抜いての奇襲は、何度でも使える手だから覚えておくといい。来ると分かっていても、咄嗟の対処がしづらい有効な手だ」

 

「……なるほど……そうか」

 

「よし、行くぞ!」

 

 ツルギが納得したのを見て、オレは壁を素手で破壊すると、向こうも話し声が聞こえて不審に思っていたのだろう、兵士たちがこちらを見て呆然としていた。チャンスだ。

 

「ツルギ!!」

 

「きぇええええええええ!!」

 

「う、うわぁ!?」

 

 瞬く間に制圧すると、オレ達はそのまま奥へと突き進む。時には壁を破壊して、時には壁を破壊したりした。指揮車両から入手した内部の地図によると、もうすぐ保管庫だ。

 

「……ッ!ツルギ!カバー!」

 

 オレとツルギが同時に物陰に入ると、奥から大量の銃弾が飛んでくる。

 

「この音、ミニガンか」

 

 物陰の隙間から見ると、ミニガンを構えた大型兵士が通路中央を陣取っていた。面倒だな、と思っているとツルギが何か言いたげにこちらを見ていた。

 

「どうしたんだ?」

 

「……私が突っ込んで相手の気を引く。その間にミサがアイツを撃て」

 

「かなり危険だぞ。それでもいいのか?」

 

「……問題ない。私は普通の生徒より頑丈だからな」

 

 ツルギの目を見ると、止めても聞かなそうだった。オレは溜息を吐くと、銃を構える。

 

「分かった、オレが合図したら頼む」

 

「任せろ……」

 

 物陰から覗くと、兵士はしびれを切らしたのかこちらへ歩いて来ようとしていた。

 

「今だッ!」

 

「きひっ!」

 

 急に飛び出してきたツルギに、慌ててミニガンを構えて撃つが、碌に構えもせず撃ったせいでツルギに掠りもしていない。オレはその隙を狙って、物陰から出て兵士に向かって引き金を引いた。放たれた銃弾が、無防備な大型の兵士に数発当たり数メートル吹き飛ばしたあと、気絶させた。

 

「……ひどい威力だな」

 

「オレもそう思うよ」

 

 毎分600発撃てる銃だが、50口径の重機関銃で人に向かってそんなに撃ち続けたらヘイローが壊れかねない。なので人に向かって撃つときは、大体一秒未満だ。

 

「さて、この奥が保管庫だな。中の物を回収すれば、任務完了だ」

 

「ようやくか……」

 

 どこか疲れたようなツルギの声に苦笑しながら、大きな金属扉を端末を操作して開く。

 

 中へ入ったオレとツルギは驚きに目を見開いた。

 

 ―――ガシャンッ、ガシャンッ

 

「―――ユイノのやろー……回収品が動いてるなんて聞いてねえぞ」

 

 目の前には、多脚型の大型自立兵器がこちらに照準を定めていた。

 

「チィッ!広がれッ!」

 

 オレとツルギが左右に散ると、オレ達が居た場所に爆発が起きる。

 

「大型のランチャー二門、それに機関銃六門装備か。どうみてもお掃除ロボットには見えねえよな」

 

「……私達を掃除する気だろうがな」

 

「はっ、笑えねえ話だ」

 

 多脚型兵器は、脚を忙しなく動かしこちらに大量の弾を吐き出してくる。

 

「ツルギ!まずは脚を破壊して動きを止めるぞ!」

 

「任せろ、壊すのは得意だ―――きぇえええええっ!!」

 

 壊すのはオレも得意なんだがな。ツルギに指示出ししなきゃならないし、ある程度は任せるか。

 

 オレが多脚型兵器の気を引きながら、重機関銃を足に撃ち込み、ツルギは兵器の下に潜り込み奇声を発しながら足を破壊していく。

 

「よし、このまま―――ツルギッ!」

 

 多脚型兵器は脚を折り曲げたかと思うと、高く跳躍した。まずいっ、ツルギを圧し潰す気か。

 

「き、きぇええええええっ!!」

 

 ツルギは奇声を上げながら下から兵器に向かって撃ち続けるが、兵器は無視してツルギに向かって落ちてくる。オレも撃ち続けるが、本体部分は相当硬いのか中々ダメージが通らない。このままじゃ……いや、まだだッ!

 

 世界がスローになるのを感じながら、オレは全身に力を巡らせる。地面を陥没させながら飛び上がると、多脚型兵器を蹴り飛ばし壁に叩きつける。オレは飛び上がった勢いそのままに、壁に埋まる兵器に向かってさらに拳を叩きつけた。衝撃で陥没した壁がさらに陥没する。

 

 オレは地面に着地すると、まだ動こうとしている兵器に向かって神秘を込めた銃弾を撃ち込む。銃弾はあれほど硬かった装甲を数秒で焼き切り破壊していった。一分を過ぎる頃には、兵器はただの鉄くずに成り果てていた。

 

「はぁ……はぁ……やっと壊れたか」

 

「……今まで、手加減してたのか?」

 

 ツルギは驚いた顔でオレを見ていた。

 

「……逆だ、手加減できないんだ。まだ力のコントロールが上手く出来なくて、1か100でしか出力できないんだ。それもあって、あまり人前で使わないようにしてる。危ないから」

 

「……そういうことか」

 

「あ、さっきのこと誰にも言うなよ?特に、ミカの耳に入ったらどれだけ怒られるか……」

 

 力を制御できなかった時に、止められる人が居ない場合、使うなって言われてるからな。うぅ、バレたら酷いお仕置きが……。

 

「分かってる、誰にも言わない。……強い力を見られて怯えられるのは、私にも経験があるから……」

 

「ツルギ……」

 

 少しした後に、武装した《正義実現委員会》のメンバーが保管庫までやってきた。

 

「ミサさん!ツルギ!無事ですか!?」

 

「おー、ユイノか。オレもツルギも無事だぞ」

 

 先頭にはユイノがいた。次期委員長が最前線まで来て良いのか?

 

「ほっ、無事で良かったです。ここに来るまでに、沢山の兵士が居たので心配してましたよ。まさか、たった二人で制圧するとは思いませんでしたが……」

 

 そして、ユイノが破壊された多脚型の大型兵器に気が付いた。

 

「こ、これは……」

 

「……保管庫に辿り着いた時点で、起動しててな。異様に硬くてかなり手こずったぞ」

 

「ミサさんがそこまで言うなんて、相当だったんですね。あとは任せて、休んでいてください」

 

「なら、お言葉に甘えさせて貰おうかな。あ、そうだ。あとで今回の所見を送っとくから」

 

「あはは、助かります」

 

 ツルギを委員会に帰し、オレは後を委員会に任せて帰ることにした。

 

 

 

 その日の晩。

 

 あの後、家に帰ったらおおよその顛末を聞いていたのか、ミカにすごく心配されたので、無傷なのをアピールすると、ようやく安心した。

 

 オレは、ミカのご機嫌取りに買ってきた新作バッグをミカに渡すと、すごく喜んでくれたので買って良かったと思った。無傷ではあるけど、疲れたので今日は甘めのえっちにしてもらおう。

 

 その後、ミカとお風呂に入ってると、スマホが鳴っているのに気づいて、脱衣所に出てスマホを取ると、画面にはユイノと表示されていた。オレは袋にスマホを入れると、スマホを持ってお風呂に戻る。

 

「―――もしもし?」

 

『あ、ミサさん?……もしかして、忙しかったですか?』

 

「ううん、お風呂に入ってるだけだよ。だからちょっと音こもってるけど気にしないで」

 

『あ、もしかしなくてもミカさんもいます?』

 

「そりゃ、ミカの家のお風呂なんだからミカもいるでしょ。……ミカに聞かれたくない話なら、後で掛け直すけど?」

 

 オレは横目で、この二年で伸びたオレの髪を嬉しそうに洗うミカを見る。

 

『いえ、ミカさんなら問題ないので大丈夫です。それで、今日の昼間の件なんですけども―――』

 

 オレは、保管室で交戦したあの兵器についての報告をユイノから聞いた。

 

「―――キヴォトスで造られた物じゃ無い?」

 

『えぇ、キヴォトスの外で造られた物であろう、ということです。現行のキヴォトスの技術では、あれほど巨大でかつ完全自立兵器を造るのは不可能だそうで』

 

「……なんで、そんなものが保管庫に」

 

『分かりません。外部の者が持ち込んだのは間違いないでしょうが。この件について、闇ブローカーを問い詰めましたが、やはり知らなかったそうです』

 

 ……外部の者、まさか工場に入る前に感じた視線は……。

 

「どうしたの、ミサちゃん。何か気になる事あるの?」

 

『そうなんですか?』

 

「んー……そうだね、一応二人に話しておこっか」

 

 オレは二人に廃工場に入る前に感じた視線について話した。ユイノは、ツルギと同じように信じられないというように聞いていたが、ミカは普通に信じて「そうだったんだ、危なかったね」と頭を撫でる。

 

「敵意は無かったし、多分だけど普通に戦っても負けないと思う……けど」

 

 確かに、敵意は無かった。だが、恐ろしいほど強い悪意に背筋がゾっとして、視線が切れるまでその場から動けなかった。

 

「蛇みたいに悪意がじっとりと纏わりつく感覚……思い出しただけでも寒気がする……」

 

 いつの間にか自分の身を守るように体を掻き抱いていたオレは、ミカにそっと抱き締められる。すると、感じていた寒気が嘘のように引いていく。やっぱり、ミカの近くが一番安心する。

 

「大丈夫だよ、ミサちゃん。ここにその悪い大人はいないから」

 

「……うん、ありがとうミカ」

 

「ちょっと体冷えちゃったのかもね。お湯に浸かろっか」

 

 そう言って、ミカに引っ張られながら広いお風呂に二人で浸かる。足を延ばしたミカの間にオレがすっぽりと納まる感じだ。

 

『……ミサさんがそこまで言うってことは、相当危険人物ですね』

 

「うん、姿まで見てないからコイツに会うなって言えないけど、少なくとも似たような感覚を覚えたならすぐに逃げた方がいい、絶対に」

 

 一度相対したが最後、その悪意に絡めとられてしまうだろう。

 

『分かりました、こちらでも追わないように注意喚起しておきますね』

 

「とりあえずはそれでいいと思う」

 

 そいつが兵器を持ち込んだとは決まった事では無いが、もしそうならやっぱり危険であることに変わりはない。

 

『あ、そういえばミサさんから頂いた今回の所見、読みましたよ』

 

「あ、ホント?どうだった?」

 

 思い出したように努めて明るく切り出したユイノに、オレはそれに乗っかった。暗い話題ばかりじゃ、気が滅入るからね。

 

『今回の件に対する別の視点から見た感じに、ツルギに関する事も分かりやすくまとめてくださったみたいですね。すごく助かります。特に、委員会の今回に関するミスの指摘は中々に心を抉りました……』

 

「い、一応正直に書いておいた方がいいかなーって」

 

『今後の課題という事で、重く受け止めておきます……』

 

 いや、もっと軽く受け止めて貰ってもいいんだけど。

 

「そ、そういえばユイノってツルギの事呼び捨てにしてるんだ?」

 

『……実は、次期副委員長にもうすぐ委員長になるのに後輩をさん付けするな、と怒られてしまいまして……。それで、とりあえずは委員会内だけでも後輩には呼び捨てにすることになったんです』

 

 副委員長こっわ。

 

『私もミサさんに聞いておきたいことがあるんですが、ミサさんから見てツルギはどうでした?』

 

「どう?って言われても」

 

 ちょっと質問がふんわりとしすぎてるから、もっと具体的に頼む。

 

『その、《正義実現委員会》としてこれからもやっていけるのかどうか……みたいな』

 

 あぁ、そういうことね。なんか、ユイノが親みたいな目線になってるなぁ。

 

「全然やっていけると思うよ」

 

『ほ、ホントですか?』

 

「嘘言ってどうするの。今回の所見にも書いたけど、確かに見た目のインパクトや奇声を発しながら戦ってるのは、味方からすれば怖いと思う。けど、逆に考えればそれって敵も怖がるほどってことだからね」

 

 実際、今回カイザーの連中ツルギにビビりまくってたし。

 

「ツルギも無秩序に暴れてるように見えて、ちゃんと命令を聞くし従ってくれる。知ってる?アイツ、カイザーの指揮車両制圧するとき、端末壊すなって言ったら器用に端末に弾当てずに戦い始めたからね。だから、委員会はツルギに方向性を与えてやるべきだと思う」

 

『方向性、ですか?』

 

「そう、まずは味方にツルギは味方って覚えさせる。具体的には、ツルギがちゃんと指示通りに動けば大きな声で褒めてやったり、味方が敵を倒したっていうのをもっとアピールする」

 

 そうすれば、敵にしたら恐ろしい相手だが、味方に居れば頼もしい人という評価を得られるだろう。

 

「そうした評価を積み重ねて、ツルギには前線で味方を鼓舞する指揮官になって貰う」

 

『ツ、ツルギが指揮官ですか?あまり想像できないような』

 

「別に、指示出しは出来なくてもいいと思う。ただいるだけで影響を及ぼすっていうタイプだからね。もし心配なら、指示の出来る補佐を付ければいいと思う。そうすれば、ツルギも気兼ねなく暴れられるだろうし」

 

『ま、待ってください!?ちょっとメモしますので!?……そ、そんなこと考えも付きませんでした。色々と勉強してきたつもりでしたが、やはり伝説の人には足元にも及ばないという事ですね。流石はシエルさんの弟子といったところでしょうか』

 

「あ、待ってミカの前でシエルさんの話題は私のお腹がねじ切れるように痛いぃ!?」

 

 オレの後ろで、ミカはオレのお腹に手を回しながら万力の様にお腹を締め上げていた。

 

「つーん」

 

『あ、あはは、そういえばそうでした、すみません。……ミサさん、以前から言おうと思っていた事ですが、《正義実現委員会》に入りませんか?』

 

 ユイノの言葉に、ミカの手がきゅっと動いて内臓が飛び出そうになる。しかし、ユイノはこっちの状況を知らぬまま言葉を続けていく。

 

『ミサさんの才能はやはり勿体無いと思います。強さもそうですが、何より相手や場を冷静に見極める能力に長けているように思えます。その上、人を適切に運用できるのは簡単な事では無いです。そんな強さを持っているのに、誠実さを損なうことなく、誰かの為に怒ったり、頭を下げたり、そういった面を見て評価する者や勘違いを改める者もいます。だから!』

 

「ユイノ、ユイノがそう思ってくれてるのは素直に嬉しい。けど、私はそんな大層な人じゃないよ。私はただのエゴイストだから」

 

『な……!ミサさんがエゴイストなわけないじゃないですか!?自分の利益度外視で動くミサさんのどこが』

 

「あー、ごめんもっとハッキリ言うべきだったね。ユイノ、私は《正義実現委員会》に入らない」

 

『……っ!ど、どうして』

 

「ごめんね、ユイノがどうとかっていう話じゃないの。これは私の問題で、私にとってとうの昔に通り過ぎた場所だから」

 

 何よりオレは、一度その可能性を自分の手で燃やした。だとすれば、オレに委員会に入る資格など無いのだろう。

 

『……分かりました』

 

 オレの意思は折れないと感じたのだろう。ユイノはあっさり身を引いた。たぶん、今日電話してきたのは、最初からオレを勧誘する為だろうなぁ。だって、さっき話したこと全部書いてあるし。

 

「……ユイノがそこまでして委員会に入れたい理由、当てようか?」

 

『え!?』

 

「最近になって、また各派閥が私を引き入れようとしてるからでしょ?」

 

『き、気付いて』

 

「そりゃ、気付くよ。嫌になるよね、私が暴れてた頃は碌に近づきもしなかった癖に、私が大人しくした途端これだもん。だから、ユイノはあれこれ理由を付けて委員会に入れようとしたんだよね。そういうのから私を守る為に」

 

『そ、それは……だって、あんまりじゃないですか。ミサさんは何も悪くないのに勝手に悪く言われて、なのにミサさんは何一つ否定しなくて』

 

「いや、人に怖がられるほど暴れたのは普通に悪いと思うけど」

 

 スマホ越しにユイノの泣きそうな声が聞こえてきたので、オレは茶化すように返す。オレは何も気にしてない、という意思表示をするために。

 

『私だって!ミサさんに会うまでミサさんの悪い噂を信じていました。自分で真実を確かめもせず、他の人と同じようにそうなんだと思考停止して、それが何よりも許せない。正義を掲げながら、ずっと正義に背いてきたんです。だから、ミサさんへのお詫びとしてそれぐらいしないと、釣り合わないじゃないですか!』

 

「別にいいよ、釣り合わなくたって」

 

『え?』

 

「天秤だって常に一定なわけないんだから、釣り合ってる方が珍しいでしょ。ユイノの正義だって同じ事。そういうものが、時間の流れでバランスが変わっただけの事。だから、釣り合わなくたっていい―――だって、それが友達ってものでしょ?」

 

『友達、私とミサさんが……』

 

「そりゃそうでしょ!シエルさんについてあれだけ語り合える人他に居ないもん。だから、またどこかの喫茶店でお茶しながら、シエルさんについて話そうよ。……あのミカさん、そろそろ内臓が飛び出るぅ!?」

 

『あ、あはは!私、もうすぐ委員長になるのに喫茶店でお茶する時間あるんでしょうか』

 

「うん、まぁあるんじゃない……」

 

 ぎりぎりと締め上げられるお腹に、必死でミカの腕にタップするオレ。

 

「まぁ、そういうわけだから、私は大丈夫だよ。だから、シエルさん仲間の友達としてまたお茶しようよ痛だだだだ!ミカ!いつまでシエルさんの事で怒ってるの!?」

 

「……だって、あの人は敵だもん」

 

「意味分からないってぇ!?」

 

『あははっ!そうですね、またお茶しましょう』

 

「うん、またねおやすみー」

 

 それを最後に通話が切れる。が、ミカのベアハッグが解けていないので絶賛ピンチだ。主にオレの内臓が。

 

「……ミカ、何に怒ってるの?」

 

「……ううん、怒ってないよ」

 

「うそ、怒ってる」

 

「怒ってないもん……」

 

「……」

 

「……」

 

 どちらも黙ると、何も音がしなくなるお風呂場。僅かに身じろぎするとちゃぷちゃぷと水音が響く。

 

「……ごめんね」

 

 ミカが何も言わないので、手でお湯をちゃぷちゃぷさせて遊んでたら、ミカが急にそんなことを言った。

 

「ミサちゃんに友達が増えたら嬉しいはずなのに、それを喜べない私がいる。ミサちゃんを取られちゃうんじゃないかって、嫌な女だよね……」

 

「……ミカが嫌な女でも傍に居るよ。だって、そういう約束だし」

 

「……そっか、そうだよね」

 

 その後、しばらくしてようやくミカの拘束が弱まり、お腹が解放された。ミカには、ああ言ったけど何故かもっと良い言葉があったような気がする。けど上手く言葉に出来なかった。他の人には、もっとスラスラ言葉が出てくるのに、ミカの時だけ言葉が出てこない気がする。どうしてなんだろう……。

 

 

 




光園ミサ
超手加減か超全力しか出せない女。きょ、極端すぎる。メスが出たりオスが出たりするので、真面目に二重人格疑われてる子。なお、あれが素の模様。他の子には恥ずかしげもなく恥ずかしいセリフを放つのに、ミカには恥ずかしくて出来ない。前世が大人であった為、大人の悪意には人一倍敏感である。しかし、今世では子供である為に大人の悪意に対抗できない。なので、大人相手は基本すこぶる相性が悪い。

聖園ミカ
以前は見られなかったが、ミサの考えを確認して寄り添うようになった。シエルに対してより辛辣になったのは、ミカが好きを自覚した後、シエルの行動を思い出してそういうことだった事に気が付いて以降、敵認定されてる。

多脚型完全自立兵器
キヴォトスの外で製造されたと思われる。大型ランチャー二門、大型機関銃六門を備えた巨大兵器。更に、本体が異様に硬く攻撃が通りにくい、先に脚を破壊することによって本体が一時的にパワーダウンし、本体にダメージが入るようになる。が、ミサのパワープレイにより、ギミックガン無視で破壊された。


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