今回の話の前にR-18のほうも更新してるので、良かったらどうぞ。
「ミサちゃーん!」
教室でいつも通りミカにくっついて授業を受けた後、休み時間中にミカが私の事を呼びながら引っ付いてきた。
「どうしたの、ミカ?」
「えへへ~、実はねー放課後ナギちゃんにお茶誘われてるから二人で行こうよ!」
「え、嫌だけど」
ミカはナギサにお茶に誘われたらしい。それを聞いた私は微妙な顔で断った。
「え!?どうして!?」
「いや、どうしても何も……。先日何したか、忘れたとは言わせないよ?」
「え、えー?なにかしたっけー?」
私の言葉に、ミカは目を泳がせる。私はむっと顔をしかめて机を叩く。
「この前《勉強部屋》行った時、私の事ナギサに売ったよね!?」
◇
―――数日前。
「ミサちゃん!今日は久しぶりにあの部屋に行こう!」
その日はやたらとテンションの高いミカに、行こう行こうと絡まれていた。
「むぅ、ミカにはテスト勉強に付き合って貰ったし、し、仕方ないなぁ……」
「やったー!」
テストが終わった直後で、特に予定が無かったのもあり、口では乗り気じゃ無さそうにしつつ、内心ウキウキで《勉強部屋》に向かった。
「ミサちゃん……いい?」
「ミカ……ん」
部屋に着くなり、ミカは私をベッドに押し倒し、キスの雨を降らせる。ミカはやさしい愛撫を繰り返し、互いの熱も高まった、という所でミカは言った。
「ねぇ、今日は縛ってやりたいんだけど、いい?」
「え?ま、まぁ、ミカがやりたいなら……し、仕方ないなぁ……」
「やったー!」
ミカは嬉しそうな顔でテキパキと流れるように私をベッドに縛りつけると、今度は……。
「今日はおもちゃ使おうと思うんだけど、いい?」
「え、し、仕方ないなぁ……」
「やったー!」
ミカは近くのテーブルに並べたおもちゃを、全て私に取り付けた。
「んん……!ミ、ミカ……そろそろ……」
「あ、ちょっと用事があるから待っててくれる?」
「え?」
「目隠ししてー、ヘッドホンもしておいてあげるね」
「え?え?」
「じゃ!」
バタン、と扉の締まる音がヘッドホンの向こうから聞こえた。
「……え?なんで?」
遠隔操作だったのか、ミカがいなくなってからヘッドホンから大音量で流れたそれは、いつ録音したのか、行為中に嬌声をあげてる私だった。
暗闇の中、おもちゃによる責めと謎の羞恥プレイを味わわせられながら、絶頂出来ない中途半端な快楽に耐えながら待っていると、誰かが部屋に入ってくる気配がした。
「ミサちゃん、おまたせー!ちゃんと待てが出来てえらいねー、よしよし」
「ミ、ミカぁ……どこに行ってたの……」
私からヘッドホンを取ると、泣く子をあやすように頭を撫でるミカ。そこで、私は何か違和感を覚え、目隠しされたままキョロキョロと周囲を見渡す。
「どうしたの?」
「他に誰かいるの?なんかいつもと違う気が……」
「えっ、そ、そんなことないと思うけど、気のせいじゃない?」
なんだ、気のせいか。ずっと、耳と目を塞がれてたから、感覚がおかしくなってたのかもしれない。
「ほら、そんなことよりミサちゃん、舌出してキスしよ」
「あ、う、うん……♡」
ミカは私の拘束を緩めたあと、ベッドに上がり正面から抱きかかえるように私をミカの上に座らせた。そのままミカと絡むようにキスを交わす。目隠しと腕は縛ったままなので、いつもより興奮しちゃう……。
「んぅ、ミカ……」
「あ、そういえばミサちゃんって、ナギちゃんの事どう思ってる?」
「へ……?」
ムードもへったくれもないその質問に、私は素っ頓狂な声を上げた。
「えっと……どうって言われても……」
困惑した私はそう返すしかなかった。しかし、ミカは続けざまに質問してくる。
「ほら、友達として好きー、とかさ」
「友達……?それは友達に失礼なのでは?」
「あ、そこ疑問に思っちゃうんだ」
「そりゃ、初等部の頃はミカと遊ぶ時によく一緒に居たけど、中等部からは疎遠になったし。なんだったら、最近はミネとかハスミとかツルギの方がよく話すくらいなんだけど。あとは、学年が違うユイノのことを友達としてどう?ってことなら分かるけど、ナギサは同じステージにすら立てて無くない?」
「あ、うん」
捲し立てるようにミカに言うと、ミカはなんのフォローも返さずに黙ってしまった。えっ、ホントに何の話だったの。
「ええっと、ミサちゃんにとってナギちゃんは友達じゃないの?」
「え?うーん……まぁ、友達じゃないんじゃない?」
「……」
ミカに言われて勢いで言ってしまったけど、確かに友達と言い難い。よく考えてみたら、ナギサから直接私と遊ぶって聞いたの、中等部の一回だけじゃん。他は、ミカがナギサと遊ぶから一緒にどう?って誘われて遊んだだけだったし。
それにしても、なんでこんな話してきたんだろう。あれかな、ミカにとって私にミカ以外に友達がいたら不安になるみたいな?それならそうと、言ってくれればいいのにー。私もミカがいればそれだけでいいし。
「あー……その、だってさナギちゃん」
「……え?ナギサ?」
ミカの言葉に、後ろからコトン、とテーブルに何かを置く音が聞こえた。ミカが目の前に居る以上、後ろに居るのはミカじゃない。つまり……。
「……薄々、そう思われてるんじゃないかと思ってましたが、直接聞くのは堪えますね……」
「な、なんでナギサがここに、どういうこと!?」
両腕を使って目隠しを外すと、そこには紛れもなくナギサの姿が。ナギサに、はしたない姿を見られてる事に気が付き暴れるが、ミカに押さえつけられてる為、足をバタバタと動かしただけだった。
「ま、待ってミカ!ナギサに、ナギサに見られてるから!」
「うん?見られてるだけじゃん、なんで暴れるの」
「だ、だってこんな格好じゃ私とミカのことが……」
「んー?あ、そっかミサちゃん知らないんだっけ?ナギちゃんも、私とミサちゃんがこの部屋で何してるか知ってるよ」
「え―――?」
頭が真っ白になった。ユイノに知られてる事も恥ずかしかったが、ユイノと出会ったのは女の子にされた後の事だった。でも、ナギサは女の子にされる前の私も知っている。今すぐここから消えたくなるくらい恥ずかしい。ナギサの前で女の子の様に振舞っている時も、何も言われないように出来るだけ話さないようにしてたのに、どうしてぇ……。
「い、いつから……」
「え、割と最初から?ミサちゃんと初めてシたときくらい?」
「一番最初じゃん……」
思わず泣きそうになるが、ぐっとこらえる。
「……当時、《ティーパーティー》の首長たちと交流する機会がありまして、その時に偶々知ったんですよ。そんなことより、"友達じゃない"とはどういうことでしょうか?」
「い、いや、それは……こ、言葉の綾というか……そういうつもりで言ったわけじゃなくてぇ……」
「そういうつもりじゃない?じゃあどういうつもりだったんです?」
ニッコリと笑いながら詰めてくるナギサに、私はしどろもどろになりミカに助けを求めた。
「た、助けてミカ……」
「うーん、私ね、これはチャンスだと思うんだ。ミサちゃんとナギちゃんが疎遠なままだから、仲直りさせたくてここにナギちゃん呼んだんだよね。だから……」
「……?」
ミカは私の腰を持ち上げて、ナギサに向ける。
「ナギちゃん、仲直りの印にミサちゃんのお尻使っていいよ!」
「……は?」
私はミカが何を言ってるのか分からなかった。
「なるほど、そういうことなら仕方ありませんね。私としては、前の方を頂きたいのですが」
「いくらナギちゃんでも前はダメ!こっちは私専用なんだから。それに、後ろだって私が毎日のように開発したんだから、腰が抜けちゃうくらい気持ち良いよ」
当然のように受け入れてるナギサに、まるで私の方がおかしいかのようだった。
「じゃあ、ナギちゃんどうぞ☆」
「ま、待ってよ!なんで、なんでなんで!?ミカは私が他の人に触られてもいいの!?」
「え、だってナギちゃんも幼馴染だし、大丈夫だよ?」
「意味分かんない!意味分かんないよ!?」
「……では、失礼します」
「ヒッ」
ナギサがガッシリと腰を掴んでくる。まるで童貞の様なねっとりとした目付きで見られて、思わず悲鳴が零れた。
「やだ、やだやだ!?ごめんなさい!?謝るから!?さっき友達じゃないって言ったの謝るからやめてよ!?やだ、やだああああああああああああ!!?」
◇
あの後、当然ミカとは暫く口を利かなかった。泣きながら、鼻水まで垂らしてミカは謝ってきたが、私はずっと無視した。私がミカを許して口を利いたのは、つい昨日の事だった。もう十分反省したと思ったし、せっかくの年に一度の誕生日を、ミカと喧嘩したまま迎えたくなかった、というのが主な理由ではあるのだが。
「うぅ……だからごめんってー。あの時はホントに、ミサちゃんとナギちゃんを仲直りさせるならこの手しかないって思ってたから……。まさか、ミサちゃんがあんなに大泣きするとは思わなかったの!ミサちゃんごめんー!」
ということもあって、仲直りから一夜明けた今でもこの事を責めると、ミカは泣きながら謝ってくる。そんなに後悔するなら、なんで実行に移すのか。話を聞く限りだと、私があんなに拒絶するとは思って無かったみたい。いや、普通に考えて他の人に触られるのは嫌でしょ。
「で、今更なんでナギサとお茶する話になってるのか、隠さず話して」
「そ、その……ナギちゃんがこの前の事謝りたいからって……」
「はぁ?一週間以上経ってるのに、今更?」
「ほ、ほら!ナギちゃんも《ティーパーティー》で忙しいから!」
それでも、合間にメッセージくらい飛ばせるじゃん。何でそれすらできないの。
「ミサちゃん、お願い!ナギちゃんにもう一回チャンスを上げて!」
「……」
「この前の事は、ナギちゃんにも隠して《勉強部屋》に連れて来た私が悪いの!だからお願い!ナギちゃんの事は許してあげて!」
いや、普通にケツに突っ込まれて酷い目に遭わされてるんだけど。ここでミカのお願いを突っぱねるのは簡単、だけど……。
「……はぁ、分かった。どうするかはナギサに会ってから決める。これが最後になるかは、ナギサ次第ってことで、それでいい?」
私がそう言うと、ミカはぱぁっと明るくなり抱き着いて来る。
「うん!ありがとうミサちゃん!!」
ミカを引き剥がしながら、溜め息を吐く。正直言って、碌に連絡もしない、交流も無い人を許しても私に何のメリットも無いんだけど。私って判断が甘いのかな……。
放課後、ミカを伴いナギサと待ち合わせしている校舎に向かっていた。この方向、《ティーパーティー》の校舎じゃん。派閥の勧誘が鬱陶しいから余り近寄りたくないんだけど……。
「―――ミサ、か」
不意に声を掛けられ、声の方を向く。そこには、見覚えのある《正義実現委員会》の黒いセーラー服を着た二人が立って居た。
「あれ、ツルギ……とハスミ。珍しい、二人がこんな所に居るなんて」
トリニティで一番近づきたくない場所だと思ってた。
「ミサさんも人の事言えないでしょう。むしろ、貴女が一番近づかない場所だと思ってたのですが」
お互いに酷い認識だ。一つ訂正しておくけど、オレは苦手意識があるから近づかないんじゃない。嫌いだから近づかないの。これは大きい違いだからね。
「……私達は委員長がこっちに来てるから、報告ついでに寄っただけだ。……ミサ」
ツルギは懐から綺麗にラッピングされた箱を取り出すと、私に手渡す。
「……今日はお前の誕生日と聞いた。お前に合うかは分からないが……」
首を傾げていたら、ツルギがそう補足した。
「そうなんだ、ありがとう!」
「ツルギ、今日は妙にソワソワしてると思ったらそういうことだったんですね。あ、ミサさん、私からはこれを。ミカさんにはこっちですね」
「私にも?いいの?」
「ええ、もちろん」
「わぁ、ありがとう!」
ツルギからはうさぎのぬいぐるみ、ハスミからは銀のティースプーンを貰った。
「……ん?ハスミ、何故ミカにもプレゼントを渡している……?」
「……え、ツルギお二人が誕生日一緒だったの知らなかったんですか?」
「……なん、だと」
ツルギの顔が崩れたタイミングで、暴れないように腕を掴んでおく。
「……く、くけえぇぇーーーッ!?」
「落ち着けって」
ツルギが奇声を上げ暴れそうになるが、腕を掴んでいたのですぐ鎮静化させる。なんか慣れちゃったなぁ。
「ミサさん、ありがとうございます。ツルギに暴れられると、抑えられるのミネか貴女ぐらいですから」
「いや、全然いいよ」
ミカが上がらないのは、余り戦闘しないからかな。
「……来年は必ず用意する……」
「あ、あはは、気持ちだけでも十分嬉しいよ!ね、ミサちゃん!」
「え?プレゼント貰えるなら、普通に欲しい」
「もう、ミサちゃん!」
ツルギとハスミは、まだ仕事があると言い別れ、途中ミネが捜してました、といいお祝いとプレゼントを残して風のように去って行った。他にも"偶然"外に出ていたウイに"偶然"持ってたプレゼントを渡されたり、見知らぬ生徒からプレゼントを渡されたり、ナギサの待つ執務室に着く頃には、プレゼントで両手が塞がっている状態だった。
「……なんで?」
「ミサちゃん、結構色んな人と知り合いなんだね」
「いや、知らない子からも貰ったんだけど」
「昔、ミサちゃんが助けた子とか?」
それはあるかもしれない。部屋の前で駄弁るのもそこそこに、扉をノックすると、返事が返って来たので入室すると、テーブルに着いたナギサがいつも通り紅茶を片手に座っていた。
「ミサさん、それとミカさんも、来て頂いてありがとうございます」
「……」
「う、うん!幼馴染だもん、遠慮しなくていいよ!ね、ミサちゃん!」
オレが何も言わないのを見て、焦ったミカが慌てて場を繋ぐ。
「……」
「み、ミサちゃん!」
「え、えっと本日は―――」
「社交辞令はいいよ。それより、用件があるならさっさと済ませて貰える?」
「……っ!で、ではまず席に着いて貰っていいですか?」
ナギサに鋭い視線を送ると、ナギサは一瞬怯んだもののすぐに気を取り直し椅子を目で示す。
「ほ、ほらミサちゃん!席に着こうよ!」
ミカにも促され、仕方ないと言わんばかりに溜め息を吐きながら席に着く。
「……」
「……」
「……」
誰も話さず、無言のままミカとナギサの紅茶を飲む音だけが響く。オレは、紅茶に手を付けずナギサを真っ直ぐに見ていた。やがて、沈黙に耐えきれなかったかナギサが重々しく口を開く。
「ミサさん、先日は申し訳ありませんでした。あの時は冷静では無かった、というか。言い訳に聞こえるかもしれませんが、いくら傷ついていたとはいえ、カッとなって許されない事をしたのは分かっています。許してもらおうとは思っていません。ですが、私に何か償えることがあれば言ってください。これでもフィリウス分派内でもいい立場に居るので、大抵の事は叶えられると思います」
オレはナギサの懺悔のような独白を最後まで聞いてから、オレは思っていた事をナギサに全て話すことにした。
「……まずは私からも、友達じゃないは言い過ぎました、ごめんなさい」
そう言ってオレはナギサに頭を深く下げる。ナギサの方から息を呑む音が聞こえる。頭を上げると、ミカが心配そうな目でこっちを見ていた。
「謝罪をした上で、許せない事が二つあります。まず一つ目、どうしてすぐに謝罪しなかったの?今まで、一つも謝罪を寄越さなかったのはどうして?」
「そ、それは……何度かメッセージを送ろうと思ったものの、拒絶されたらどうしようと思って……結局、直接謝ろうと思って」
「二つ目、どうしてミカも呼んだの?謝罪だって言うなら1対1で行うべきでしょう?私とナギサの問題って言うなら、特に」
「そ、その……」
「ま、待ってミサちゃん!私の方から無理矢理同席させて貰うように頼んだの!今回の発端は私だから、一緒に謝りたいと思って」
「ミカさん……」
乗り出すようにナギサを庇うミカを無視して、オレは言葉を続ける。
「
「―――っ!」
「ナギサって本当は私の事友達って思ってないでしょ」
「そ、そんなことありません!」
「あるよ。だったらどうして、私じゃなくてミカに連絡したの。それって、信用してないってことだよね。……私だって、二人きりで謝罪したいって話なら真剣に向き合ったよ。でも、こんな対応されて怒るなっていう方が無理だよ」
怒りを抑えるように、私はスカートの裾をぎゅっと握る。
「いや、それは、違うんです!」
「何が違うの。ナギサ、私に直接会うってメッセージ送ってきたの中等部の一回だけだよ?他はぜーんぶミカ越しに誘われただけ。つまり、私ってミカのおまけじゃん」
「それは偶然そうなって、信じてください!」
「……信じて?何を信じるの。信じられてない相手に、私は何を信じたらいいの!ふざけないでっ!バカにするのも大概にしてよ―――!!」
オレは怒りのままに振り上げた拳をテーブルに叩きつけようとした。
「―――はいはい、ストップですよミサさん」
しかし振り上げた拳は、闖入者の聞き覚えのある声によって止められた。オレの腕を掴んでる人物を見るとそこに居たのは、ユイノだった。
「ユイノ!?」
「ユイノさん!?どうしてここに」
「いやいやナギサ様、委員会の報告があるので今日伺いますねって連絡したじゃないですか。まぁ、許可も得ずに勝手に入ったのは申し訳ありませんでした。何度ノックしても返事が無かったもので、まさか入ったらあんな修羅場に遭遇するとは思いませんでしたが」
「あ、ああ報告……そういえば、そうでしたね」
「とりあえず、ミサさんはこれで涙拭いてください」
ユイノがポケットからだしたハンカチを見て、オレは今更ながら泣いてるのに気が付いた。慌ててユイノからハンカチを受け取り、涙を拭く。
「あー、何があったのか聞いても?」
「なるほど、そんなことが」
事情を聞いたユイノは神妙そうに何度も頷く。
「まず、言い訳の余地も無いほどにナギサ様が悪いです。何はともあれ、一度冷静になって落ち着くべきでした」
「うっ、仰る通りです」
「その後の対応も最悪です。冷静になるまで時間を置きたかったのは分かりますが、その旨は相手に伝えるべきですし、謝罪の一つも無く、しかも連絡が別の者経由は、誠意が足りないと思われても仕方の無いことだと思います」
「うぅ……」
ユイノの容赦の無い正論に、ナギサが圧し潰されていた。
「ミカさんは論外です。いくら恋人でも、相手の同意を得ずに恋人を他の人に触らせたらダメですよ」
「あ、ユイノ、ミカとは恋人じゃなくて友達だよ」
ユイノがよく分からない勘違いをしていたので、訂正した。
「そう、いくら友達でも―――え?友達?あんなことしてたのに?」
「何だユイノ、知らなかったの?今どきの女の子は友達同士でも、あんなことするんだよ」
オレはユイノにそう自慢気に話した。女の子同士じゃ恋人になれないから、その為なんだろう。
「いやいや、そんなわけ、えぇ……」
ハッとしたユイノは何か気付いたようにミカを見るが、ミカはサッと顔を逸らす。オレはそのやり取りに首を傾げる。
「……友達なら尚の事ダメですよ。まぁ、これ以上は当人同士の問題なので、深くは突っ込みませんけど」
え、友達だとダメなんだ。やっぱり、幼馴染くらい関係が深くないとダメってこと?
「ミサさん貴女も、友達じゃないは流石に誰でも傷付くと思います……」
「あ、謝ったもん!私だって流石に言い過ぎた自覚はあったから、あの時に何度も謝ったし、今日もちゃんと謝ったもん!なのに、うぅー……」
あの時の事を思い出し、また涙が溢れてくる。
「……そうなんですか?」
「ええっと、まぁ、うん。ナギちゃんは余り覚えてないだろうけど、その、泣きながら何度も」
「ミサさんの桃尻に気を取られてましたが、よくよく思い出してみればそうだった気が……」
「今無性にミサさんを連れてこの場から去りたくなりました……」
ユイノは頭痛を抑えるように、コメカミに指を当てている。頑張って、今場を収拾出来るのはユイノしかいないから。
「ミカさんは、ミサさんが泣いてるのにどうして止めなかったんですか?」
「だ、だって、ミサちゃんとナギちゃんを仲直りさせたくて、私とミサちゃんはああしたら仲直りできたから。でも、まさかあんなに泣くとは思わなくて……」
「……それで仲直りできるのは、ミサさんとミカさんだけですね。他の人では無理です」
「そうなの!?」
待って、それじゃあオレがミカに対してだけチョロく聞こえるんだけど。
「ナギサ様は、ミサさんに連絡しなかったのはどうしてなんですか?」
「その、中等部の頃からミサさんの当たりがきつくなって、どうにか仲を改善できないかと以前からミカさんに相談してまして、その流れで」
泣いたらお腹空いてきた。目の前にケーキあるし食べよ。あ、紅茶ぬるい。新しいの淹れよ。ついでにユイノの分も淹れてやるか。ナギサの事だから、部屋に茶葉を常備してるでしょ。
「それは相談する相手が悪かったとしか」
「私も今はそう思います……」
「ひどいよ!?」
「たぶん、ミカさんに相談するより、直接ミサさんに相談した方が良かったと思いますよ」
「……え、ミサさんの事をミサさんに相談するんですか?」
それは、相談されたオレが一番困るヤツでは。
「ええ、ミサさんも困惑するでしょうが、真剣に相談に乗ってくれると思いますよ。ですよね?」
「……まぁ、相談された以上は、するけど」
「委員会に遊びに来た時に、偶に委員の子の相談に乗ったりしてあげて、結構評判いいんですよ」
なんか、相談にくるやつ多いと思ったら、評判になってるのかよ。
「どこの部活にも入らないなら、相談室を開いて欲しいくらいです」
「開かないよ。個人でなら相談に乗るけど、そんなことしたら学園の規模を考えると、過労死しかねない」
初等部・中等部・高等部、合わせて何人いると思ってるんだ。毎日100人以上捌かなきゃいけないとか、絶対嫌だからな。
「行列のできる相談室、良いと思いますけど」
「い・や!」
「な、なるほど、で、ではミサさん相談に乗って欲しいんですが」
「えぇ……この流れで?」
「妙にミサさんの当たりがきつくて、何か改善策などは無いでしょうか?」
「えっと……それは……」
い、言えない。だってあれは……。
「あれ?ミサさん、あの事はまだ言ってないんですか?」
「いや、言う訳ないでしょ」
ユイノが何か言いたげにしてたので、言わないようにと先に牽制する。
「あの事?」
「はい、以前ミサさんにナギサ様に嫉妬で強く当たってしまうと逆相談されて」
「わあああああああああ!!なんで言うの!?誰にも言わないでって言ったよね!?」
慌ててユイノの口を塞ぎに行くも、時すでに遅し。
「すいません、口が滑りました」
「滑り止め付けてやろうか!?」
絶対確信犯でしょ!にやけてるし、言わないように睨みも利かせたよね!?
「し、嫉妬……?」
困惑してるのはナギサだった。ナギサには心当たりが無いのだから、当然だろう。
「もうここまで言ったんですから、全部言ってしまっては?」
「~~~っ!なんで私が暴露したみたいに言ってるの!言ったのユイノだよね!?」
「まぁ、相談内容を要約すると、『ナギサ様はミカさんの幼馴染でズルい』って話でしたね」
結局、ほとんどユイノが言ってるじゃん!
「ず、ズルい?え?どうして?」
ユイノの言葉に、ミカも困惑した。たぶん、ナギサに相談されてたミカもあれこれ頭を悩ませてたのかもしれない。それはちょっと申し訳ない気持ちになった。
「うっ……」
三人からの視線を集めて、オレはたじろぐ。これ以上、隠し通すのは無理だろう。というか、ユイノがほとんど言ったから隠すものが残ってない。
「だ、だって……ナギサが羨ましかったんだもん……」
「ミサさん、それじゃあ要領を得ませんよ」
「うぅ……だ、だから!ナギサはミカの幼馴染で、私はただの友達だから羨ましかったの!ミカの幼馴染は、唯一無二で特別だから、ナギサの事ズルいってなって、気が付いたら当たっちゃってて……ご、ごめんなさいぃ……!」
「……えっと、つまりミサちゃんはナギちゃんは私の幼馴染だから、強く当たってたってこと?」
ミカの言葉にコクリと頷く。
「……え、それだけですか?」
ナギサの言葉にコクリと頷く。ナギサは力が抜けたように椅子に崩れ落ちる。
「えぇ……何が原因かと頭を悩ませたあの時間は一体……」
「うぅ……だから言いたくなかったのにぃ……」
「いやいや、言わないと伝わらなかったでしょうし、言うしかなかったと思いますよ。まぁ、ミカさんの前では言い辛いでしょうから、ナギサ様は二人きりでミサさんと会うのが正解だったでしょうけど」
「え?私のせい?」
「結果論だけで語るなら、ですが」
「そ、そんなぁ……」
私、頑張ったのに。と沈むミカ。頑張る方向性がおかしい。
「……」
「……」
「……」
この部屋に来た時とは、別の意味で気まずい空気になって沈黙する。
「さて、これにて一件落着でしょうし、私はこれで……」
気まずい空気を察したのか、逃げようとするユイノの制服を握って止める。問題を解決してくれたのは感謝してるけど、散々掻き回しておいて、はいさよなら、はどうかと思うなぁ……!
「えっと、ミサさん?」
「まぁまぁ、せっかくユイノのお茶も淹れたし、一杯くらいは飲んで行ってよ」
絶対逃がさない。せめてこの気まずい空気も何とかして。
「あ、はい」
光園ミサ
小さい嫉妬から巡り巡って今回の件に繋がった。割と自業自得。察してオーラ全開のめんどくせー女になってる。文章そのままだと分かり辛いけど、幼馴染を特別に言い換えると『ナギサはミカの特別だから嫉妬した』。ミカの特別になりたいと言ってるようなもの、ほぼ告白。でも、ミサ含めてみんなそれどころじゃなかったので、誰も気付かない。
聖園ミカ
良かれと思って無断でミサのお尻を差し出した。ミサに怒られて口を利いて貰えなくなった。思い込みで動くと悪い方へ転がる女。結構自業自得。でも、善意でやってるつもりだからあまり強く言えないミサ。
桐藤ナギサ
ミサの桃尻の誘惑に勝てなかった女。普通に自業自得。次の機会がいつになるか分からなかったから、つい襲っちゃった。なお、その後の対応。それ以前、中等部でもひたすらバッドコミュニケーションを叩き出しまくってるので、察してちゃんになってるミサはキレた。
結目ユイノ
切れかけた縁を結ぶ救世主。正実に入ったハスミ、ツルギをミサに引き合わせ、ミネの件にも関わってと、これまでもミサに重要な縁を結んできた実績の持ち主。モチーフは八咫烏。黒羽だから天使関連と思わせて、カラス。
気が付いたら、評価すごい伸びててうれしい!評価0でも1でもわざわざ入れてってくれてる事実が嬉しすぎる。今回、長くなりそうだったから途中で切っちゃったけど、早く上げられるようにがんばるね!
感想返しってしたほうがいい?
-
いる
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いらない