今回は繋ぎの話のため短め。
全力で足を引っ張り合う百合尊い、尊くない?
あれから何事も無く時間は過ぎた。表面上は。
セイアは対外的に「療養の為、しばらく入院することになった」ということにした。
セイアが担当していた業務はナギサが引継ぎ、オレも一部を担当することになった。ミカ?気が向いたら偶に手伝ってくれるよ。やさしいよね。ただ、あの日から仕事を雑に投げてくることが多くなった。その上、所構わずえっちなことをしてくるようになった。……なんで??
◇
「あ!ミサちゃーん!丁度いい所に!」
「あ、ミカ……様、どうされましたか?」
その日は資料をまとめてナギサの所へ持っていく途中だった。ミカはオレを見つけると笑顔で手を振りながら駆け寄ってくる。オレはいつものように返事をしようとして、人目があるのに気付き敬語に直す。
「ちょっとえっちしよ?」
「え」
一瞬何を言われたのか分からず、フリーズする。そんなオレに構わず、ミカはオレを物陰に引っ張り込む。
「ちょ、ちょっと待って!」
「待たなーい☆」
そのまま壁に手を付けさせられると、制服のスカートがめくられる。
「まっ、後ろからはやだ!」
「ダメだよ。ミサちゃんに拒否権は無いんだからね。私の言う事はなんでも聞く奴隷だもんね?」
それは中等部の時に交わした約束ではあったが、ミカの要求に理不尽なものは無かったから特に拒否したりという事も無かったし、本当にオレが嫌だと思う事はミカが察してしてこなかったので、ほとんど形骸化してるような約束だった。とはいえ、特に期限も回数も設けていないので約束を持ち出されたら従う他無い。
「ま、まだ仕事があるから出来れば早めに……」
「それはミサちゃん次第だ、よ!」
「んああっ!」
またある時は廊下を歩いていると無言で物陰に引き摺り込まれ、コロンと仰向けに転がされ。
「ミ、ミカ!?急に何を―――んぃぃ!」
「……」
またある時は……。
「ナギサ様、次のお茶会での資料なのですが―――」
「これは確か……あとでミサさんに確認をお願いしておきますね」
廊下をフィリウス分派の一団が歩いている時だった。ナギサが柱の陰にいるオレに気が付き、声を掛けてくる。
「あら?ミサさん、こんな所でどうしたんですか?」
「っぁ、ちょ、ちょっと休憩、ん……!」
「そうですか?それはともかく、丁度良い所に。実は次のお茶会で使う資料についてなんですが―――」
「あっ、そ、それだったら部屋にあるから、んっ……ひあ、あとで持ってイくっ、イくからぁ!」
「そ、そうですか。では、お願いしますね……?」
ナギサ達が去り、見えなくなったところで力が抜け崩れ落ちる。
「―――いやぁ、まさかナギちゃん達が通るとは思わなかったね」
ひょこっと柱の陰、オレの後ろから出てきたミカはそんなことを言っていた。
「あ、ミサちゃん執務室にまた書類置いてあるからよろしくね~☆」
「は……はひ……」
出すもの出してスッキリしたのか、歌いだしそうなほど上機嫌にミカはどこかへ去っていく。放置されたオレが動けるようになったのは、その15分後の事だった。
◇
そんな生活が続いたある日。今日もミカの相手をしてからサンクトゥス分派に顔を出して、その後ナギサに頼まれた資料を渡す為にフィリウスの校舎に赴いた時の事。
―――コンコンコン。
ドアをノックして待つこと数秒。中から「どうぞ」という声が聞こえたので入室すると、そこにはナギサの他にヒフミが来ていた。
「ヒフミ、来てたんだ」
「あ、ミサ様!おはようございます!」
「おはよう、一般生徒なんだからあんまり遊びに来ちゃだめだよ?」
「あ、あはは……」
一応形だけの注意を促す。ヒフミが勝手に遊びに来ているわけじゃなく、ここの主が招いているので、本当に形だけだ。ちなみにナギサにも同じことを言ったが『いえ!これは必要なことなのです!』と断固として譲らなかったので諦めた。
形だけの注意を続けているのは、派閥間争いに巻き込まないようにする為だ。"桐藤ナギサのお気に入り"を使えば……なんて考える輩もいるかもしれないので、オレと関わりがあると含みを持たせることによって、他の派閥に牽制してる。
「あの!今回はお茶しに来たわけでは無くて!」
聞けばアビドス高校を支援する為の部隊を貸して欲しいらしい。しかも、相手はあのカイザー。どうやらなんらかの不正を行っていたようだが……。
「そういうわけですので、ミサさんの意見も聞かせて頂ければと」
ナギサを見ると、その表情には迷いが出ていた。なるほど、義理や人情という面で考えれば手助けはプラス。特に、トリニティはカイザーと全面的に敵対しているから、カイザーを攻撃したところでおよそ問題は無い。それはトリニティにカイザーの関連企業が一つも無いことから良く分かる。
問題があるとすれば、トリニティ自治区外、他校の管轄であることか。基本的に自治区を跨いでの部隊展開は出来ない。いわゆる違法行為と云う奴だ。そうでなくとも侵略行為だと取られてもおかしくはない。だからこそ、あの"
セイア襲撃事件後、戻ってきたハスミからキヴォトスの外から"先生"が来たことと、《シャーレ》が発足したことを聞いて、ホッとした。シャーレの先生が来たのなら、最悪の場合オレがいなくなってもミカは救えると思ったからだ。
そんなシャーレの先生は今アビドスにいるようだ。ヒフミの話では危ない所を助けて貰ったから何か手助けしたいそうで……。
「ところで、ヒフミはどうしてアビドスに?」
アビドスは現在砂に覆われ、自治区としてほとんど機能してないのは周知の事実。アビドス高校に通っていた生徒も、一般人もアビドスから去っていく者も多く、街としてもほとんど機能していない。なにしにそんな場所へ?というのは当然の疑問。
「え、え~っと……」
痛い所を突かれたのか目が泳ぎ出す。ちなみに、ブラックマーケットに通ってるのは知ってる。うちの生徒がブラックマーケットに出入りしてると諜報部隊から報告があり、調べたらヒフミだった。あの場所の出入りが禁止されてるのは、危ないのはもちろんの事。何かあった時にトリニティの法で守れないからだ。
目の前の少女は重々承知の上だろう。なまじ実力がそこそこあるせいで、「弱いからダメ」とは言えない。ただ、他の生徒が真似するから行くなとは言わないけど出来るだけ控えて欲しい。
「か、観光です」
砂しかないけど?絞り出すように発された苦し紛れの言い訳に、ふーんと返す。ナギサは真面目にアビドスの観光名所について考えていた。
「まぁ、いいけど」
ところで、と一呼吸おいてナギサに話しかける。
「兵站部から古くなった砲弾の処理を頼まれているのですが、確か次の砲撃演習の場所まだ決まっていませんでしたよね?」
途中まで何が言いたいのか分かっていない様子だったが、砲撃演習でようやく得心がいったようだ。
「そうですね、やはり何も無くて広い場所が良いと思うのですが、なかなか決まらなくて」
「そういえば、アビドス自治区の近くに広い演習場がありましたよね。あちらはいかがでしょう?」
「あ~いいですねぇ~」
「えっと……?」
まだよく分かっていないヒフミの為に、もっと分かりやすい言葉を使ってあげた。
「まぁ?偶々、偶然、流れ弾がカイザーの基地に着弾することもままありますよね?」
それを聞いたヒフミの顔がぱぁっと明るくなる。
「ミサ様……!」
このやり取りに意味はあるのかと問われたら、あると答えよう。やることは明確でも、やはり建前というものは必要なのだ。政治は建前で動かすのが常だ。
「では、私は部隊の編成をしておきますので、指揮する者はナギサ様の方で決めて頂いてもよろしいですか?」
「分かりました、そちらはお願いします」
ぺこりと頭を下げて退室しながら砲撃部隊の隊長に連絡を入れる。相手がカイザーだと知れば嬉々として撃ちに行くだろう。カイザーの不正を知って鬼の首を取ったかのように責めてる別部署もそうだが、昔カイザーに嫌な事でもされたのだろうか。
普段は派閥争いだったり、仲違いしてるような者でも"敵"が定まると一致団結してまとまるのは、トリニティの恐ろしい所なのかもしれない。……その熱意を魔女叩きじゃなく別に向けてくれたらなぁ。オレだってこんなに悩まなかったのに。
「……」
今、シャーレの先生はアビドスで小鳥遊ホシノを取り戻すために行動している。この話は確かアビドス編の終盤辺りだったはずだ。つまり、遂に来るのだろうあの話が、遂に―――。
上がってきた気温が、夏の到来を知らせに来ていた。
◇
『まもなくートリニティ総合学園駅ートリニティ総合学園駅ー。お忘れ物の無いようご注意ください』
D.U.から遥々列車に乗ってやってきたレディースのスーツに身を包んだ女性。肩にかかる栗色の髪を靡かせながら両手を上げて叫ぶ。
「―――遂に来たぞ!エデン条約編ー!!」
波乱の幕開けは、もうすぐそこまで―――。
光園ミサ
ミカの代わりに魔女になるからミカの邪魔しよ。
聖園ミカ
何をする気か知らないけどミサの邪魔しよ。
夢の中から見てるセイアちゃん
えぇ……。
またしても何も知らない桐藤ナギサ
アビドスの観光地がどんなだったかあとでヒフミに聞こ。
栗色の髪の女性
イオリの足を全力で舐めて、ついでにヒナの頭も吸って来た。世界の為だ、致し方ない。
次章よりようやくエデン条約編開幕!の前にちょこっとだけ番外編書くのじゃ。
感想返しってしたほうがいい?
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