遅くなったうえに今回短くて申し訳ない。
「……こんな所にもあった」
手の中にある爆薬をバッグの中に詰め込んでいく。街中に仕掛けられた爆薬と起爆装置、おそらくエデン条約の調印式で使われるものだろう。かなり前から仕掛けてあったのか、今日までで十ヵ所以上だ。仕事の合間を縫って探しに来てるが、全然見つけられていない。
「……もうこんな時間か、一度戻らないと」
腕の銀時計を確認すると、次の仕事の時間が迫っていた。とりあえず、今回見つけた分は起爆できないように解体しておこう。
オレは次の行動を頭の中で組み立てながら、学園に戻った。
離れた所から、ミカとアイツの密会を眺める。ミカは表情をコロコロと変えながら、アイツと話している。
アイツ、シャーレの先生とは昨日以来だが、相変わらずへにゃっとしたムカつく顔をしている。昨日はいきなり鼻血を出した挙句、吐血までして《救護騎士団》に担ぎ込まれたが、ケロッとした顔をしているという事は、特段命に関わる様な事でも無かったのだろう。
今は、ミカがアイツに《補習授業部》が発足された裏と、アズサの保護について話している所だ。ミカが照れたように顔を赤らめながら、先生に笑いかけてる。胸がズキリと痛んだ。ミカはあんな奴のどこが良いんだ。生徒の足を舐めるような奴だぞ。ミカがアイツに色んな表情を見せる度に胸がすごくモヤモヤする。
アイツの方を見ると、へにゃっとした顔になったり真面目な顔になったりしてた。ふざけてるのかコイツ……。アイツの顔を見てるとムカムカしてくる。時間を見ると、結構時間が経っていた。そろそろいいだろうと、オレは二人の方へ足を向ける。
「ミカ様、そろそろお時間です」
これ以上ここに居れば、他の派閥に見つかって面倒になる。ミカの立場を悪くさせるわけにはいかない。
「え、もう?うーん、残念。もう少し先生と話していたかったな」
ミカのそんな言葉に思わずムッとする。オレには一度もそんなこと言った事無いのに……!
「じゃあ、先生。そういうわけだから、あの子たちのことお願いね☆」
「もちろん、言われるまでもないよ」
「……。そっかぁ、先生のそういう所が生徒からも信頼される理由なのかな。それじゃあね、先生☆」
踵を返し、戻ろうとするミカの後ろに付いて行こうとすると、アイツに呼び止められる。
「ごめん、ミサだけちょっといいかな?少し、二人で話をしたい」
「はぁ?」
その言葉にミカも足を止めて、オレを見る。
「ミサちゃん、知り合いだったの?」
「昨日、ちょっと。でも、ホントにそれだけだから!」
「ふーん?じゃあ、そこで待ってるからね」
「え、別に私は」
話をするつもりは無い、という暇も無くミカは離れて、アイツと二人っきりにさせられてしまった。アイツは涎を垂らしそうな勢いでこっちを見ている。きもっ。
「……なに?」
「え?」
「だから、何の用かって言ってんの!」
そう言うとアイツは苦笑して話し出した。
「まずは、昨日はありがとね。急に倒れて迷惑掛けちゃったね」
「……別に気にしてない。……話はそれだけ?だったら」
「ああ、ごめん!実はミサに一つ質問したくて!」
アイツは慌てたように取り繕うが、原作にこんなシーンは存在しない。そもそも、光園ミサという生徒が存在しないのだから、当たり前だ。オレが存在する事で、原作とは違うことが起こっていることが怖い。そのことでミカの事を救えなくなるのが怖い。そんなことを誰にも悟らせないようにスカートの裾を握って耐える。
「それで、質問って?」
「うん、もし大切なものが二つあるとして、どちらかしか持てないってなったら、キミはどうする?片方を取ればもう片方は壊れる」
「はぁ?なにそれ、トロッコ問題?」
「んー、似たようなものかな」
トロッコの進む先に分かれ道があり、どちらかを取れば、もう片方は取れなくなる。よく例えとして上がるのは、一を救えば、九を救えない、みたいな話が多かったと思う。
「そんなの、一番大切なものを選ぶに決まって……」
「そっか、じゃあ二つともキミの大切なミカだったら、どちらも一番大切ならどうしようか?」
「……は?」
意味が分からない。どっちもミカ?ミカを取れば、ミカが壊れるってこと?いや、そもそも……。
「……こんなの、問題として成立するわけない」
「クイズじゃないからね、正解が欲しいわけじゃないんだ。……キミの答えはどう?」
「そんなの……」
選べるわけが無い。質問の意図は分からないけど、二つの大切なものがどちらもミカなら、オレには選べない。アイツは、いつもの体を舐め回すような目ではなく、オレの目を真っ直ぐに射抜いており、思わずたじろぐ。
「ごめん、意地悪しちゃったね。答えは今すぐじゃなくてもいいから、また次の機会があったら教えてくれる?」
「次?次の機会なんて……」
アイツは離れてたミカを手を振って呼ぶと、ミカはすぐこっちに寄ってきた。
「何の話してたの?」
「そんな大した話はしてないよ、ね?」
「……」
本当に大した話はしてない。昨日のお礼と、意味不明な質問を受けただけだ。
「ふーん?そうなんだ」
そのままアイツと別れ、ミカと戻った。オレの心に、モヤモヤしたものを残しながら……。
次の日、コツコツと廊下にヒールの音を響かせながら歩いていると、突如視界が塞がれる。
「だーれだ☆」
「ミカ……まだ仕事が残ってるからあとにして欲しいんだけど……」
視界を覆うミカの手を外して振り返ると、じっとオレを見つめるミカの姿。
「そんなに見つめてどうしたの?」
「……ミサちゃん、最近コソコソと動いてるみたいだけど、何してるの?」
一瞬、驚きで体が反応しかけるも、寸前で無反応を装う。
「え?何の話?」
オレがそう言うと、ミカの目がスッと細められる。
「ふーん……?あくまで知らんぷりなんだ?」
ミカの手が伸びてきて頬に触れる。大丈夫、ミカはカマを掛けているだけだ。頬を撫でていた手が下り、首筋を撫で、さらに下へ。
「―――あんっ……!」
ふにょんとオレの胸に触れる。思わず変な声が出て後ろに下がろうとして、後ろに壁がある事に気が付いた。
「……どうしたの?」
「あ、あの……」
ミカの手は止まらず、両手を使ってオレの胸を撫でる。
「ん……!」
優しく、全体を撫で回すようにミカの手は動くが、決してその頂点に触れてこようとはしない。もどかしくてつい私は自分の手を伸ばそうとするが、ミカにその手を取られ壁に押し付けられてしまう。さらに股の間に足を挟み、膝でアソコを擦り上げる。
「まっ、て……!ここじゃ誰かに―――んんんっ!」
言わせないと乱暴に唇を奪われる。目の前がチカチカして絶頂が近づくと、パッと体を離された。私は力が抜け、ズルズルと座り込む。
「あ……え……?な、なんで……?」
「別にいいじゃん?ミサちゃんは私の都合の良いお人形さんなんだから、どうしようとも私の勝手、でしょ?」
胸がズキッと痛んだ。
「……そう、だね」
「まぁ、どうしても続きをして欲しいなら、何をしてるか白状して欲しいな?」
「…………なにも……してない……」
「……そう。言う気になったらしてあげるから、じゃあね」
そう言うと、ミカは踵を返し離れていく。小さくなっていくその後ろ姿を見送り、気が付けば私はボロボロと涙を流してしまっていた。
「うっ……ぐす……どうして……」
苦しい。どうしてこんなことになってしまったのだろう。普通にミカと一緒にいるだけで良かったのに。
「……でも」
『ミサちゃんは私の都合の良いお人形さんなんだから』
……私はミカにとって、ミカの欲を満たす人形でしか無かったんだ。ズキリと痛む胸を押さえて、立ち上がる。
「……それでも、わたしは……!」
ミカを魔女になんかさせたりしない……!たとえ私がミカの人形でしかないとしても、それは私がミカを諦める理由にはならない!だって、私が今ここに居るのは……!
「だから、今度は私がミカを守る番なんだ」
試験最終日の前日、私がナギサを襲撃する。そして、《補習授業部》と戦う。本来、ミカが担うはずだった役割を、私が奪う。そこで負けて私が捕まれば全部終わりだ。ミカは……アイツがいればたぶん大丈夫だろう。
それでいい、それでいいはずなんだ。なのにどうして……。
どうして、こんなにも胸が苦しいの―――?
◇
ミサちゃんから離れた後、私は物陰で蹲る。
『うっ……ぐす……どうして……』
泣いていた。ミサちゃんが。悲しみが、困惑が、繋がりを通して私に伝わってくる。
「ミサちゃん……」
苦しい。胸が締め付けられる。でも、あの子を守る為にはこうするしかないと思った。大丈夫、もうすぐ、終わる。次の襲撃、きっと先生は私の思った通りに動いてくれる。渋るナギちゃんを説得して呼び寄せた、その甲斐はあったというもの。私が捕まっても、あの先生ならミサちゃんを悪いようにはしないだろう。
「ミサちゃん……ごめんね」
きつく握った手から、血が滴る。
私の手は血に塗れてしまったけれど、ミサちゃんだけは守るから―――。
光園ミサ
ミカの代わりに捕まろうとしている。ミカと先生が一緒に居るとモヤモヤする。
聖園ミカ
先生の行動を誘導して、次の襲撃で捕まろうとしてる。ミサの事を先生に任せようと思っているが、少し不安。ナギちゃん?自分がいなくなった弱みに付け込んでミサを誑し込むからダメじゃんね。
先生
苦しい。推し達の曇った顔を見るのが辛い。吐く。吐いた。それでもハッピーエンドの為に奔走する。
曇らせは心に悪いけど体にいいよ(適当)。今回の話は書く予定無かったけど、後々の話を考えると、入れた方が良いなってなったので入れました。曇らせになったのは陸八魔アルってやつのせいなんだ…()。
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