感想、評価いつもありがとうございます!
次は早く上げられるように頑張るね!でも次は話が長くなりそう。がんばって書くから待っててください!
人気の少ない射撃訓練場。爆発音と聞き間違うような銃声が響いていた。
「そこまで、やめ!」
「ふぃ~」
満足気に声を出し、一息つく。その間に、黒髪の少女は的の確認をしていく。
「うん、いいね。狙いが正確になって来てる、ちゃんと指示された場所へ撃ててるよ」
「シエルさん、ホントですか?」
「もちろん、嘘を言ったってしょうがないでしょ」
羽佐間シエルさん。《正義実現委員会》の委員長さん。この1年の間に、いつまでも委員長さん呼びは余所余所しいから、と名前で呼ぶことになった。
そう、あれからちょうど1年。またクソ暑い夏がやってきた。
「それにしても、弾が綺麗に的から外れるミサちゃんがよくここまで、ううっ……」
「もう、大袈裟ですよ」
よよよ、とわざとらしく泣くシエルさん。
「……シエルさんに会ってもう1年になるんですね」
「そういえば、そうだね。なんか、ミサちゃんに会ってからあっという間過ぎて、1年経ったなんて信じられないよ」
「確かに、あっという間でしたね」
……あのヘルメット女に会ったのも1年前か。ホント、あっという間に感じるな。あの時は、何もできなかったけど、今なら一矢報いることは出来るかもしれない。
「シエルさんはこのあと委員会の仕事でしたよね」
「そーなんだよー!はぁ、もう少しミサちゃんと一緒に居たかったなぁ」
「あはは……そう言ってくれるのはうれしいですけど、仕事はちゃんとしてくださいね」
「ミサちゃんはこの後どうする?今日は終わりにしとく?」
この後か……。シエルさんがいないからな、射撃練習は出来ないがカバーの方は問題なくできるだろう。
「隣の演習場でカバーの練習しとこうかなって思います」
「真面目にカバーの練習する人初めて見たよ」
「そうですね、オレが行った時も人いないですし。でも、オレって結構な重量武器抱えてるんで、こういう基本の動きを早く動けるようにしておきたいんですよね」
「楽して強くなりたいって言いそうな性格なのに、訓練とかちゃんと段取り組んでから取り組んでる辺り、意外と真面目だよねミサちゃん」
「意外と、は余計です。楽して強くなれるならしたいですけど、そんな都合のいいモノは存在しませんから。それに、楽して強くなれたってどんな代償を要求されるか、分かったもんじゃないです。結局は、地道に努力を重ねるしかないんですよ」
都合のいい物語なんて存在しない。やれることは今のうちにやっておかなければ。それに、今のうちに鍛えておけば、安全も確保できるってもんよ。未来に、自分の平和と安心を担保出来るなら地味な訓練だって悪くない。
「なるほどね。っとと、じゃあ私はそろそろ行くね」
「はい、委員会がんばってください」
「ありがと~!」
シエルさんは笑顔で手を振りながら、その場から去った。ああいう、元気な人が居るとこっちも元気がもらえてうれしいよね。オレもさっさと片付けて、演習場に向かうか。
「―――ふっ!!」
カバーからカバーへ走りこみ、カバーから乗り出しマシンガンを向ける。マシンガンを向けた所にはタレットがあり、それが地面に吸い込まれるところだった。
今何やってるのかというと、ランダムにせり上がってくるスナイパータレットがあって、訓練用の模擬弾を撃ってくるのでかわしながら、カバーからカバーへ移動する、という訓練演習だ。タレットは銃口を向けるか一定時間で別の場所へ移動する。そうしたらまた別のカバーへ移動する、その繰り返し。ちなみに、移動せずに留まると、バリバリ射線が通ってるところに出現して撃たれる。すごく痛い。
最初の内は、タレットの出現と撃ってくるまでの時間が長いのだが、時間が経過するごとに、段々と出現と射撃の間隔が短くなっていく仕様だ。徐々に速くなっていくので、こちらの動作もより早く、より精密に、と最適化していかなければならない。
と、またタレットの動きが速くなった。まずい!と思い、スライディングでカバーに入る。すると、先程まで自分の頭があった付近を弾丸が通過していた。スライディングした勢いのまま、左足を軸に回転、カバーに張り付きながらマシンガンをタレットに向け……。
「あれ、いないっ!?―――あだっ!?」
既に移動していたタレットに別方向から撃たれ、終了した。
オレはズキズキと痛む頭を擦りながら、地面に転がる。
「さすがに20Levelオーバーは反応が人外染みてきやがる。いてて……」
なかなかにハードだが、持久力や足腰が鍛えられるし、重機関銃抱えながらなので筋力も鍛えられるという一石三鳥な訓練だ。
ふと、時間を見ると結構な時間が経っていた。もう5時間もやってたのか。そろそろ帰る準備するか。
学園を出た時には、時計の針が5を指していて黄昏時だった。
「もう夕方か。訓練に夢中になると時間を忘れてしまうな」
さて、直帰でもいいけど……。今日は普通にご飯作るか。じゃあ、いつものショッピングモール寄って帰ろうかな。
ふと、ある通りに差し掛かったとき、1年前の出来事を思い出した。
「ここでシエルさんに初めて会ったんだよな。……あのヘルメット女も」
苦い記憶だ。でも、オレもあの日のままじゃない。次会ったら必ず……。
そのままとことこ歩いて、モールにあるスーパーに到着した。もう1年もお世話になってる。いつもは、適当な惣菜で済ませるが、今日は普通に作ると決めたんだ。ガマンガマン。
うーん、とりあえずキャベツと豚バラと……ニンジン安いな。ニンジンも入れちゃお。雑調理でもおいしい、男の調理セットだ。お、しいたけも安い、買っとこ。
その後、家に帰りお腹を満たした後、なんとなしに寝転がりながら天井を見上げる。
「1年……1年かぁ。オレがこの世界に転生して、もう1年」
この1年やったことと言えば、射撃練習して、ピンクロリいなして、射撃練習して、ずっとその繰り返しだった気がする。2年のクラス替えでピンクロリと離れたので、ようやくやかましいヤツから解放された。
2年生分のBD予習はもう済ませてあるし、存分に訓練に時間を回せるな!明日からもがんばるかー。
あれからひと月が過ぎて、新学期が始まった。シエルさんとは、結局あれから練習できていない。連絡を取ると、やっぱり忙しいらしかった。そういえば、最後に練習した時もらしくなく慌てて出て行ったけど、あの後何かあったのかな。心配だけど、シエルさんが何も言わないなら大丈夫なのかな。
そんなことを考えながら、朝の通学路を歩いていたら、突然前を塞がれた。
「どーもどーも!君、トリニティの子?実は、いいモノがあるんだけど買っていかない?」
前を塞いだ人は急にそんなことを言って、思わず呆けてしまう。なにこれ、押し売り?
ってコイツ、ゲヘナ!?
制服の校章を見たら、そこには間違いなくゲヘナのマーク。なんでゲヘナ生がトリニティに。しかも、意味わからん押し売りで。
さすがに気味が悪いので距離を取ろうとしたが、後ろにも仲間がいたようで、壁際に追い詰められてしまった。
「あの、そういうのいいです。間に合ってるんで」
「まーまー!そんなこと言わずにさぁ!」
さすがに鬱陶しく思ってきたので、無理やり押し退けようか考えてたところ、《正義実現委員会》が駆けつけてきた。
「貴女達、そこまでです!相手を騙して、高額商品を売りつけるのは立派な詐欺ですよ!」
「ヤバッ!ズラかれッ!」
「こらっ!待ちなさい!」
ゲヘナ生たちは、素早い動きであちらこちらに散っていく。あれでは追うのは難しいだろう。そう委員会の人に伝えようと顔を見たら、シエルさんだった。
「はぁ……また逃げられた」
「シエルさん?」
「えっ?ミサちゃん!?あいつら、私のミサちゃんまで毒牙に掛けようとしてたのね!?」
「シエルさんのではないです」
それにしても、『また逃げられた』『オレまで』か。シエルさんが何か知っているのは間違いないだろう。聞いていいか迷ったが、巻き込まれた以上、聞いておくべきだと思った。
「シエルさん、ゲヘナ生がここに居る理由、知ってるんですよね?教えて貰っていいですか?」
「うっ、できれば隠しておきたかったけど、こうして被害に遭っちゃった以上、話さないわけにもいかないよね」
「実は最近、ゲヘナ生による詐欺や恐喝が横行しててね。高額な商品を売りつけたり、相手を脅しつけて無理やり金品を奪おうとしたり。それらすべてトリニティ生を狙った犯行でね……」
「ゲヘナ学園との対立問題ですか?」
「うん、そう。その関係もあって、周りには知らせず委員会で動くことになって学区内を見回ることになったんだけど」
「いまだ確保に至って無いってことですか……」
「うぅ……面目ない」
事件の発生規模に対して、委員会の人数が不足してるんだろう。追いきれないの仕方ない部分はある、が……。
「……シエルさん。ちょっと聞きたいんですけど、その犯人って複数組ですか?」
「ううん、今ミサちゃんが見た子たちしか見てないけど」
「……なら、ゲヘナ生以外が犯人グループに紛れ込んでる可能性は?」
「それもないよ。ゲヘナに知り合いがいてね、ちょこっと生徒名簿で確認取ってもらったから。それがどうかしたの?」
え?そんなことできたの?というかゲヘナに伝手があるって、すごいなこの先輩。
「いえ、妙に動きに無駄が無かったな、と思って。それに、ホームでトリニティの地理にも詳しい《正義実現委員会》が追いきれないぐらい、他校の生徒がトリニティに詳しいのも違和感が」
「言われてみれば、確かに。……っ!まさかトリニティ内に内通者?」
たしかに、内通者がいるならトリニティに詳しいのは納得できる。でも、逃走の仕方を考えると違う気がする。委員会が来たと見るや、全員が散り散りに逃げるなんて判断。あまりにも早すぎる。しかも、それをずっと続けてる。異常だ。
あの動きの無駄の無さと言い、委員会を振り切れる逃走ルート。なんだろう、オレは前にも同じものを見た気がする。もしかしたら……。
「シエルさん、もしかしたら……なんですけども、ヘルメット団のあの女が関わってる可能性は?」
その言葉を聞いた瞬間、シエルさんの顔が一気に険しくなった。
「……どうしてそう思ったの?」
「どうしてって、今の状況が1年前のあの時と重なったからですかね。その上で、この状況どう転んでもあの女に得しかないな、と」
「…………」
オレの言葉を聞いて、しばし長考する。可能性を考えてないわけでは無かったんだろう。だが、1ヶ月もの間動きが無かったことで、その可能性を無意識に排除しようとしてたのかも。しかし、それがあの女の狙いだとしたら、委員会が散らばって連携が取りにくいこの状況は、あの女が動くには十分すぎる好条件だ。他の学区でも、あの女が危険視されている理由が分かった気がする。
「ミサちゃん。今の話、誰にも話しちゃダメだよ」
「話さないです、というか話す相手がいません」
「そういうのはいいの!……絶対に、誰にも話しちゃダメ。それと今日は訓練せずにまっすぐ帰る事、わかった?」
「……訓練もダメなんですか?」
「ダメ、ちゃんと帰って。なんか嫌な予感がするの……」
「……わかりました」
しぶしぶ頷くと、シエルさんはよし!と笑った。
「じゃあ私は一度委員会に戻るけど、ミサちゃんは学校がんばってね!」
「はーい」
シエルさんはそのまま走り去ってしまった。オレもこのまま突っ立っていても仕方ないし、学校行くか。
今日はちゃんと教室に居たら、物珍しかったのかクラスメイトがこちらをチラチラと見ていた。オレだってちゃんと勉強ぐらいするわい!とはいえ、普段教室で勉強しないので何しに来たんだって思われても仕方ないかー。
教室に居たものの、仲いい人とかいないのでホントに時間を潰しただけだった。1年の頃は、よくピンクロリが突っかかって来たから、暇しなかったなぁ。懐かしい。
結局、終業の時間まで教室でボーっとしてた。みんながぞろぞろと教室を出る波に乗って、オレも外に出る。
さて、どうしようかな。って言っても直帰なんだが。シエルさんにもダメって言われたし、おとなしく帰ろう。ご飯は、確か昨日の惣菜の余りがあったから大丈夫。他に特にいるものは無いし、買い物しに行かなくても良さそう。空いた時間は筋トレに回すかー。
「なぁ、アレ……」
「……間違いない、朝のヤツだ」
なにやら声が聞こえたので、そちらを向くと朝に会ったゲヘナ生だった。
「いやー、どうも!今朝ぶり。ちょっとさぁ、付き合ってくんね?」
な、なんでこいつらがここに!?委員会が追ってるはずじゃあ……。
「い、いやです」
シエルさんに連絡を……。
「まーまー!そう言わずにさぁ。あっ、そうそう!そっちの自治組織の連中ならしばらく来れないから、おとなしくしたほうが身のため」
「来れない?お前ら一体何を!」
「ちょちょ、私らはなんもやってないって。まあ、今頃別の集団に襲われてる頃だと思うけど」
別の集団?っまさかヘルメット団?このタイミングで動いたのか!?でもなんで、動くなら同時に騒ぎを起こした方が動きやすいはず。
「お前らの目的が何かは知らないけど、委員会が動けないなら絶好の脱出タイミングだろ。オレに何の用だよ」
「それなんだけどさぁ。私らの目的は、最初から"君"なんだよね」
……え?
「詐欺や恐喝したのは、まあトリニティだしいっかなって。どうせお金いっぱいあるでしょ?いつも上から見下ろしてさ、ちょっとは痛い目見たらいいよ!」
……オレ?なんで?狙われていた?最初から?だれに?
「私たちがキミを狙うのは、トリニティの情報くれた人がちょっとキミをいじめて欲しいって依頼してきたんだ」
「アレ、ちょっとよくわかんない依頼だったねー。初等部の女の子を痛めつけろってさ。まぁ、お金貰っちゃったし、情報もくれたからやらないとね。そういうわけだから―――恨まないでね?」
なんで、どうしてっ!オレがこんな目に!!
「―――くそったれッ!!!」
とっさに近くにあった、店の看板を担いで投げつける。まずは、距離を取らなきゃ!この距離じゃ戦えないっ。
持っている銃は形状からして、ARが2人、SGが1人、SMGが1人。距離を取れば、相手も戦いにくいはずっ。
「うわっ!?」「あぶなっ」
「あの小さい身体でデカい看板投げてくるの反則じゃない?」
「ちょっと!喋ってないで、逃げられるよ!」
道にあった倒せそうなものは、ひたすら倒してあいつらの行く道を塞ぐ。さらに、もしかしたら使うかもと思って、持っていたグレネードも地面にバラまいておく。ちょっと脅かすだけの爆竹程度のものと、一つだけ混ぜた本物。そこまでしてようやく、距離を取れた。
「ごほっごほっ!ちょっとこれ、シャレにならないね」
「ホントにあの子初等部!?同年代相手にしてる気分なんだけど!」
固定させてる暇は無い。重機関銃の銃身部分を、カバーに使った石ブロックの上に乗せる。銃口を向けてから思う。ホントに人を撃つのか?
思わず目を瞑ってしまう。そうだ、見えなければ、何を撃ったか分からないなら……。
『次からは―――ちゃんと"敵"を見て撃つんだな』
瞼の裏に焼き付いた、あの日がフラッシュバックし、ハッと目を開ける。
「っ!?ちょ、それ、マジでシャレにならないって……!」
「ヤバッにげっ」
そうだ、"敵"だ。あいつらは"敵"なんだ。"敵"は、倒さないと……。
「―――ぶっとべっ」
重機関銃から無数の弾が吐き出される。
ぐっ!ちゃんと固定してないから反動がっ……!
制御しきれない弾が、壁を、地面を、窓を、周囲の物を破壊していく。それでも今回は、目を開けて、銃を撃ち続けた。
百発以上の弾を撃ち続け、弾切れになってようやく銃を撃つのをやめた。
「……はぁ……はぁ……」
自分でやっといてなんだが、周囲の惨状はひどいものだった。オレはゆっくりと、ゲヘナ生たちがいた場所に近づく。オレが倒したものをカバー代わりにしたんだろう。だが、さしたる障害にならなかったようで、無残に破壊されて倒れたようだ。
「う~ん……」
ゲヘナ生たちは目を回して気絶していた。その様子にホッとするのと同時に笑いが込み上げてきた。
「ははっ、ざまあみろ……」
オレが勝ったんだ。オレ一人で敵を倒したんだ。シエルさん、褒めてくれるかな。そうだ、こいつらも捕まえておこう。シエルさん、きっとびっくりするだろうな。
「―――ミサちゃんッ!!!」
「あっシエルさん!」
噂をすれば、シエルさんがちょうどこちらに走って来ていた。そして、走ってきた勢いのまま、オレを抱きしめる。
「ヘルメット団のあの女がいなかったから、もしかしてって思ったけど無事でよかった!」
シエルさんは、周囲を見渡しその惨状にギョッとする。
「これ、ミサちゃんがやったの?」
「ふふん、そうだよ。オレだってやればできるんだから」
「何バカなこと言ってるのっ!一歩間違えば、倒れてたのはミサちゃんかもしれないんだよ!」
え?え?
「で、でも、悪いのはこいつらで……」
「ミサちゃん。最初に約束したよね?『無茶しない』って。危ないと思ったら、逃げて。そして、私たちでもいいから、誰かに助けを求めて、ね?」
「でも……シエルさんたち忙しそうで。だから、少しでも役に立ちたくて……」
「そっか、心配してくれたんだね。ありがとう。でもね、悪い人から生徒を守る事、それが私たちの仕事なの。守る人の中にミサちゃんも入ってるんだから、もう無茶しちゃダメだよ?特に私は、ミサちゃんには傷ついてほしくないんだから」
「う……ごめんなさい……」
「うん」
ようやく笑顔になったシエルさんは、合流した他の委員会の人と一緒に事後処理を始めた。オレは当事者だったので、事情聴取がてらシエルさんの傍にいることになった。
「……なんでゲヘナの子たちミサちゃんを襲ったのかな。委員会の目を引きつけてる間に、逃げられたと思ったんだけど」
「そういえば、シエルさんたち委員会はヘルメット団の相手してたんですよね」
そう言うと、シエルさんは目を見開いて驚いていた。
「え?私、ヘルメット団と交戦してたって言ったっけ?」
「あ、そのゲヘナの人たちが、委員会は別の集団の相手してるから助けに来ないぞ、って言ってて。……やっぱりヘルメット団だったんですね」
シエルさんは、あ、という顔で固まっていた。
「ちょっと、カマ掛けるのは卑怯だよ!……待ってもしかして、助けに来ないって言われたから一人で戦おうって思ったの?」
「え、ま、まあ」
「うー、そうだったんなら先に言ってよー!そういう事情とは知らず先に怒ってゴメンねぇ!」
そう言いながら、オレを抱きしめてわしゃわしゃと頭を撫でる。
「あ、あのシエルさん!?」
「でも、そういう時でも私に連絡していいから!私一人抜けても大丈夫だから!」
「ええ……?委員長が抜けたら大幅な戦力ダウンですよね」
「大丈夫!うちの委員会はそんな軟弱集団じゃないから!だから、次からはちゃんと連絡頂戴ね」
「わ、わかりました」
結局押しに負けて、次からは連絡することを約束した。シエルさんは、抱き心地がいいのか、抱きしめたまま「うーん、よしよし」と頭を撫でている。恥ずかしいけど、こうしてるのはなんか嫌じゃない気がする。
「他に、ゲヘナの子たちは何か言ってなかった?」
「あ、その……最初からオレを襲うのが目的だったって」
「っ、なんでそれを先に言わないのっ!」
シエルさんのオレを抱きしめている腕に力が入る。その余りの痛さに思わず声を上げてしまう。
「ひぅ!シエルさん、い、痛いっ」
「あ、ご……ごめん、ごめんね。言ったのはそれだけ?」
「い、依頼者がいて、ソイツからオレを痛めつけるようにって。それとトリニティの情報もソイツから貰ったって」
シエルさんは、オレの話を聞くたびに腕に力がこもっていく。でも、さっきよりは痛くない。
「……あの変態ロリコンクソ女」
「シ、シエルさん?」
今なんかすごい単語が聞こえたような。
「……これは、話すか話さないかずっと迷ってたんだけど、こうして狙われた以上話した方がいいのかもね」
「シエルさん……?」
「ミサちゃん、今朝ここで会ったの覚えてる?」
……もしかして、バカにされてる?
「流石に数時間前の記憶が飛ぶような頭の作りはしてないです」
「あ、いやそういう意味で言ったわけじゃ……こほん、実はあそこで会ったのは偶然じゃないの」
偶然じゃない?もしかしてストーキングしてたとか?
「シエルさん、ストーカーだったんですか?」
「ち、違うから!誤解しないで!ってそうじゃなくて!話の腰を折らないで、ちゃんと聞いて」
だったら、できれば遠回しな言い方はやめて欲しい。何も伝わらないので。
「……実は、最近ミサちゃんの周囲が妙だったから、調べてたらヘルメット団の不良どもがミサちゃんの近くをうろうろしてたんだよ。それも一度や二度じゃなく、何度も」
「え?」
シエルさんは、もちろんそいつらは捕まえたから安心してね、と言ってたがオレは別の不安が湧き上がっていた。
「もしかして、あの女が……?」
「……私もそう思って動いてたんだけど、襲ってきたヘルメット団の中にも、ミサちゃんの方にもいなかったんなら、今回は直接手を下す予定じゃないんだろうね。目的が、報復なのか、別の目的があるのかよくわからない女だけど」
そう思うと、今回はホントに綱渡りだったかもしれないと、改めて思った。もし襲ってきたのがゲヘナ生たちでなく、ヘルメット女だったら、あるいは近くで見ていてゲヘナ生を倒した隙を狙われていたら、もしシエルさんが駆けつけてなかったら、倒れてたのはホントにオレだっただろう。そう思うと、全身が震えた。
抱きしめてるシエルさんには、その震えが伝わったのだろう。さっきよりも強く、抱きしめてくれた。
「大丈夫だよ、またしばらく委員会が護衛に付くから、安心して。でも、ホントによかった、ミサちゃんが無事で……」
その後の顛末として、捕まえたゲヘナ生たちを証拠にゲヘナ学園の生徒会を糾弾したが、ゲヘナの生徒会は自分たちに非は無いと、知らぬ存ぜぬを貫き通した。今回の一件は、結局内々で処理されることになり、表に出ることは無かった。
シエルさんは、まあそうなるよね、と笑っていたがあまりいい気持ちでは無いのだろう。でも、仕方の無いことなのかもしれない。トリニティとゲヘナの関係がただでさえ悪いのに、この事を表に曝せば、最悪全面戦争に発展するかもしれない。それを回避するためだろう。
しかし、人の口に戸は立てられぬ、とはよく言ったもので、噂として学園内に広まっていた。だが、噂と言っても信じる人はいるもので、結局ゲヘナに対して悪感情が高まることを防げなかった。
こうした積み重ねが、エデン条約編に繋がるのかもしれない。今回の件で、漠然とそう思った。
~いつもの解説~
光園ミサ
中心人物なのにずっと蚊帳の外だった。犯人捕まえたことを褒めてもらいたかったが、怒られてしょんぼり。戦闘センスが開花しつつある。シエルのことは好きだが、どちらかというと憧れの感情。抱きしめられるの好き。
羽佐間シエル
《正義実現委員会》の委員長さん。やっと名前が出た。ミサの周辺にきな臭さを感じて調べたのは本当だが、ミサをストーカーしてたのも本当。むしろ、ストーカーしてたから気付けたまである。だって心配だからね、仕方ないね。たった1年でミサが急激に強くなっていて驚いてる。ちなみに抱きしめているとき、こっそり匂いを嗅いでた。いい匂いだった。
例のヘルメット女
変態ロリコンクソ女(シエル談)。めっちゃ暗躍してる人。ゲヘナ生焚きつけたり、情報上げたり、ヘルメット団派遣して委員会誘導したりと、トリニティを荒らす。ミサを痛めつけろと依頼した、目的はよくわからない。
アンケートみんなミサをいじめた過ぎか?わかる、私もいじめたい。いりゃない言ってる人もいるし、健全版も書くかー。過酷(R-18)版が完全版になるけど、そこから描写とか諸々カットでギリギリストーリー分かる程度の健全版。実際にナニやってたかは完全版見てね!って言う感じで。
ちなみにだけど、ミサとシエルのモチーフになった天使はもう決めてあるんだよね。シエルは分かり易くしたつもりだけど、ミサはかなり分かりづらいかも?みんなも是非考察してってねー。
感想返しってしたほうがいい?
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いる
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いらない