ブルアカにTS転生してメス堕ちする話   作:アウロラの魔王

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ナギサ起床する話

 

 

 

「…………ここ、は」

 

 目を覚ますと、ベッドで寝かされていた。周囲を見渡すと、白い清潔感のある部屋だと言う事が分かった。

 

「私、は……」

 

 どうしてこんな所に寝かされているのだろう?自身が眠る前のことを思い出そうと、記憶を辿る。確か、調印式の準備を進めていて……。

 

「……………………―――ッ!」

 

 そうだ、気が付いたらミサイルが目の前まで迫っていて、まずい!と思った瞬間にそのミサイルが光に貫かれ爆発した。……残念ながら、自分の記憶はここで途切れてしまっている。おそらく、気絶したのだろう。

 体を起こし、そこでようやく自分が寝かされていたのが病室だと気が付いた。

 一体何が起きたのか、何も分からない。しかし、あの瞬間、ミサイルを貫いた光には見覚えがあった。

 

「ミサさん……」

 

 脳裏に浮かぶのは、幼馴染にそっくりな少女の姿。

 

「……こうしてはいられません。あれからどうなったのか、早く確認しなければ……!」

 

 ナギサはベッドから降りると、病室から出て人の集まっていそうな方へと向かった。

 

 

 

「―――これはゲヘナ学園の仕業よ!今すぐに奴らを倒すべきよ!」

 

「それよりも救出が最優先でしょ!?サクラコ様だっていまだ行方知れずなのに!」

 

「何悠長なことを言ってるのよ!?これは侵略なのよ!?そんなことをしている間にやられてしまったらあなた責任が取れるの!?」

 

「……これは、ひどいですね」

 

 病室を出て、すぐの所に居た部下を伴って、臨時の避難所兼作戦室になっているらしい大きな図書館にやってきたら、『これ』だ。

 

「な、ナギサ様!?目を覚まされたんですね!」

 

「これは、一体どういうことなのか説明をお願いしても?」

 

 入口付近でおろおろとしていた生徒が、ナギサの姿を見て顔を明るくさせて駆け寄ってくる。ちょうどいい、とナギサは一部始終を見ていたであろう、その少女に説明を求めた。

 

「え、ええと……その、各派閥で方針が違うとかで意見が食い違ってしまって……。そのうちに言い合いがヒートアップして、気が付いたらこんな感じに……」

 

「……」

 

 呆れて物も言えないとはこのことか。

 ……そういえば、いつだったか。指揮系統の分散化は、平時では負荷軽減に役立つが、非常時では混乱と対立を招きやすいのが欠点だと、ミサと話したことを思い出した。

 

(あのときは「うちに限ってまさかそんなHAHAHA」と紅茶を飲みながら涼しい顔で受け流してましたが、実際に目の当たりにするとあの時の私を引っ叩いてやりたくなりますね)

 

 確かあの後に、ミサが何かしらの対策を講じると言って何かしていた気がするが、何だっただろうか?……いや、今は思い出すより先に言い争いを止めるのが先決だ。

 

「お二方、そこまでです!」

 

「っ!?な、ナギサ様……」

 

「ぶ、無事にお目覚めになられたんですね」

 

「あまり無事とは言えないんですが……それより!下級生の模範となるべき上級生が、なんという体たらくですか!」

 

 ナギサの一喝に、言い争いをしていた生徒はバツが悪そうに目を逸らす。

 

「で、ですけど!《シスターフッド》があまりにも勝手だから私は《ティーパーティー》として注意を……!」

 

「は、はぁ!?勝手なのはどちらですか!?私は救出を優先すべきだと言ってるのに、頑なにゲヘナを倒すと言ってたのは貴女でしょう!?」

 

「な、なんですってぇ!?」

 

 無限ループとはこのことか。ナギサは辟易とした表情でもう一度叱咤しようと口を開く。

 

「あなた達、いい加減に―――「おや?先輩方、私が偵察に出ている間に楽しそうな話をなさっていますね?」え?」

 

 図書館の入り口から、何人かのシスターを伴って現れたシスターの少女を見て、先程まで言い争っていた《シスターフッド》の生徒は焦りを隠せないほど動揺していた。

 

「こ、これはシスターヒメコ、そういうわけでは……」

 

「ふふっ、でしたらどういうわけなのかご説明願えますか?シスターメイカ」

 

「うぅ……」

 

 女子としてはそこそこ高めな身長の少女が、平均より10cmは低いであろう少女に圧を掛けられて怯んでいる図というのは、中々に情けない絵面では無いだろうか。……身近にもっと凄まじい圧を放つ少女を思い出したナギサは、やや同情めいた気持ちを抱いた。

 

「ふふふっ……あら?」

 

 圧を感じさせる笑みを振りまいていた少女は、ナギサに気が付くと優雅な動きで近づく。

 

「ごきげんよう、ナギサ様。お噂はかねがね。私は《シスターフッド》の水都ヒメコと申します」

 

 ヒメコと名乗った少女は、これまた優雅なお辞儀を披露してくれた。ふわりと揺れる金糸のような編まれた金髪が宙に踊る。ナギサを真っ直ぐに見つめる瞳は、海のような深い知性を宿した碧眼だった。

 

「水都ヒメコ……」

 

 ナギサは彼女の名前に聞き覚えがあった。

 

「(……!思い出しました。彼女は《シスターフッド》の中でも、特に要注意だった生徒)」

 

 裏切り者探しの時、《シスターフッド》の介入で最も恐れたのは彼女が投入される事だった。実際には、《シスターフッド》の介入はあったものの、彼女は《シスターフッド》の拠点である教会の守りに入っており、そのようなことは無かったのだが。

 彼女、水都ヒメコは歌住サクラコの腹心だ。2年生ながらにサクラコが自身の補佐に彼女を選ぶほど。また、実力も非常に高く。彼女が手に持つ狙撃銃による()()()()()()()なんていう、フルオートで精密狙撃(スナイプ)可能な神業が如き腕を持っている。

 

「(その上、彼女は《シスターフッド》の実働部隊、暗部を束ねるリーダーでもある―――!)」

 

 サクラコが表のリーダーとするなら、ヒメコは裏のリーダー。あのサクラコが、ヒメコの居るところでは安心でふにゃふにゃになるほどの信頼を寄せている。

 

「(油断できる相手では、ありませんね……)」

 

「どうかされましたか?」

 

「んん……!いえ、なんでもありません」

 

「そうですか?」

 

 なお、外ではそういう風に見られている事を本人は知らない。ただサクラコが好きなだけの100%善意の少女である。

 

「ところで、ナギサ様におかれましては現状をどこまで把握されていますか?」

 

「……大変申し上げにくいのですが、先程目覚めたばかりであまり詳しくは知らないのです」

 

「それでしたら、僭越ながら私が説明いたしますね。まず、調印式の会場である古聖堂が襲撃されました。ナギサ様は直後のミサイルが爆発した余波で気絶しておられたので、襲撃者が誰かは存じ上げていませんよね?」

 

「え、ええ」

 

 ナギサの記憶に残っているのは自身に向かってくるミサイルと、それを撃墜した光のみ。

 

「(……アレを墜としたのはミサさん、ですよね)」

 

 思い返すは初等部の頃の記憶。家に遊びに来たミサが放った巨大な光線。今回、ミサイルを撃墜した光と同じものだった。

 

「(ですが、シャーレの先生に言われて牢を開けておいたことがこのようなことになるとは……まさか、先生はこうなると分かっていて……?)」

 

 ナギサの脳裏には、申し訳なさそうに手を合わせて何度も頭を下げてお願いする、シャーレの先生の姿を思い出していた。

 

「結論から申し上げますと、古聖堂を襲撃したのはアリウスです」

 

「アリウス……!」

 

 ミカが率いていたかの分校。何らかの目的があるとは予想していたが、まさか調印式当日に仕掛けてくるとは、あるいはこのタイミングだからかもしれない。ナギサは自身の至らなさに唇を噛み締めるも、ヒメコの前だったことを思い出しすぐさま表情を取り繕う。

 

「ミサイル着弾直後、街の各所から爆発が相次ぎました。恐らくは事前に爆発物を仕掛けられていたものと思われます。そして混乱に乗じてアリウスは街中で無差別に生徒を襲い始めました。その際、≪ユスティナ聖徒会≫と思しき勢力も確認されています」

 

「≪ユスティナ聖徒会≫?なぜユスティナが……?」

 

「それは分かりかねますが、こちらに銃を向けるなら紛れもなく"敵"でしょう。ここまでで何かご不明な点などはございますか?」

 

「……私は調印式のために古聖堂に居たはずですが、誰が私の救助を……?」

 

 ナギサはそれがすごく疑問だった。言い方は悪いが、こんな状況でも言い争っている者達が救助しに来たとは到底思えなかった。

 

「……そのことに関してですが」

 

 ヒメコは困ったように眉根を寄せ、一拍置いた。

 

「ナギサ様を救出されたのは、ミサ様でした」

 

「ミサさんが?」

 

「ナギサ様だけではありません。他にもミサ様に助けられたという者達が学園に避難してまして……。牢に繋がれているはずのミサ様が、どうして外に出て救助活動を行っているのか、という疑問はあります」

 

「……そう、ですか。申し訳ありません、ミサさんを牢から出したのは私の独断です。責を問うならば、この場で如何様にでも受け入れましょう」

 

 ナギサの独断ということに周囲はざわめくも、ナギサは毅然とした態度でヒメコの目をまっすぐと見返す。それに対し、ヒメコはまた困ったように笑い首を横に振った。

 

「いえ、結果としてナギサ様の判断で多くの者が助けられています。この件でミサ様を責める者もいないでしょう。それに、この場は責を問う場ではなく臨時の指揮所です。この状況を打破するためにも、ナギサ様には働いてもらわねばなりませんから」

 

「ヒメコさん……」

 

 噂で聞いていたよりも理知的な(会話ができる)ヒメコに対し、ナギサは大きな勘違いをしていたことに気が付いた。そういったことはミサで散々思い知ったはずだったのに、いつの間にか自らの眼が曇り切っていたことに気が付いてしまった。

 ナギサが心の内で反省していると、そこに割って入るように慌てたシスター服の生徒が駆け込んでくる。

 

「シスターヒメコ!」

 

「騒々しいですね……どうしました?」

 

「≪ユスティナ聖徒会≫が……あ、いえ!≪ユスティナ聖徒会≫と思しき勢力が!」

 

 何かを言いかけた生徒が、ヒメコに睨まれ慌てて言い直す。

 

「学園の第三防衛ラインを突破しましたっ!」

 

「っ!?」

 

「もうですか……」

 

 シスターの告げた言葉に図書館内に居た者たちに動揺が広がる。第三防衛ラインが突破されたということは、もうすでに目の前まで迫っているということだ。ナギサはシスターの言葉で、いまだ街が戦場であったことを思い出す。街が戦場であるということは、ミサもまだ戦い続けているということ。

 どうやらまだ寝惚けているらしい。ナギサは今一度目を覚ますために、強めに頬を叩く。頬がジンジンと熱くなり痛みを訴えかける。

 

 ナギサは静かに立ち上がると周囲の人間に聞こえるように声を張る。

 

「……わかりました。戦える人を集めてください。学園の前に最終防衛ラインを敷きます!私は全体指揮へ回るので、各部隊の指揮は水都ヒメコさん、あなたに任せます」

 

「ナギサ様、よろしいのですか?私は≪シスターフッド≫ですよ?」

 

「そ、そうです!どうして我らではなく、信用できない秘密主義の≪シスターフッド≫なんかに!」

 

 ナギサの采配に目を丸くするヒメコと異を唱える≪ティーパーティー≫の生徒。他の者も同様で困惑した視線がナギサに集まる。ナギサはそれに大きく溜息を吐いた。

 

「あなた達はこの期に及んで派閥争いをしたいのですか?実にくだらないですね。これはすでにトリニティ全体の問題。今こそ派閥の垣根を越えて、手を取り合うべきではないのですか?」

 

「そ、それは……!しかし……!」

 

 ここまで言ってなお理解しない相手に、ナギサは不機嫌を隠さず舌打ちをする。

 

「貴女が守りたいのは地位ですか?権力ですか?今こうしている間もトリニティで暮らす人々が危機に瀕しているのです。今こそ私達は"貴族の義務"を果たす時ではないのですか?そうでなければ私達貴族が存在する意義が無いも同然ではありませんか?」

 

「そ、その……」

 

「どうなのですか?答えてください」

 

「いや……」

 

「答えなさいと言ってるのです!!」

 

「も、申し訳ありませんでした……」

 

 ナギサの発する威圧感に少女はその身を縮こませながら謝罪を口にした。ナギサは心に溜まる激情を、溜息と共に吐き出し幾分か冷静さを取り戻す。

 

「……少々ナギサ様の事を誤解していたかもしれませんね」

 

「はい?」

 

「いえいえ、それよりどうして私に?他にも適任な方がいらっしゃると思います。もちろん、やらないというわけではありませんが」

 

「……まず第一に、お恥ずかしながら私は部隊運用のノウハウを持っていません。その上で、今この場で最も部隊での経験が豊富なのは、ヒメコさんだと判断いたしました。それが一つ目の理由です」

 

そこで区切るように息を吐く。

 

「一つ目?他にもあるのですか?」

 

「もう一つの理由……これは私個人の理由になりますが、貴方はミサさんに悪い感情を持っていないと分かったからです」

 

そう言って微笑むナギサに対し、思っても見ない言葉を投げ掛けられたからか目をパチクリとさせるヒメコ。

 

「……え?それだけですか?」

 

「私としてはこれだけでも十分な理由なんですが」

 

「いえいえ!さすがに私でもミサ様に全く思うところがない、という訳ではありませんよ!」

 

「そうですか……」

 

ヒメコのその言葉にションボリと肩を落とす。

 

「……確かに、あの方は私たちを裏切り、銃口を向けたかもしれません。ですが、あの方が今までトリニティを思い尽力してきた、その全てが嘘だとは思えません」

 

「ヒメコさん……!」

 

ヒメコの言葉に、沈んでいたナギサの顔が綻ぶ。

 

「こほん、私に限らずそう思う生徒は少なくはない、という話です。きっと何か事情がおありなのでしょう。そうでなければ今も最前線でその身を削って戦わぬはずですから」

 

「……やはり、前線指揮は貴方に任せた方が良さそうですね。ミサさんが以前言っていました。優秀な指揮官とは、戦局を覆しうる人間でも、大局がみれる人間でもない」

 

ナギサの脳裏には、タブレットを操作して仕事をしているミサの記憶が思い起こされる。

 

『優秀な指揮官っていうのは、決断できる人間のことを言うんだ』

 

「一刻を争うとき、正誤に拘わらず判断を素早く下せる者。それが正しいことかどうかなんて後の歴史家が勝手に決めるだろうさ、と」

 

「……戦場帰りの兵士か何かですかあの方は」

 

 ますますミサのことが分からなくなった気がするヒメコ。だが、ミサの言うことは最もだ。戦闘の最中では、一瞬の判断が命取りになる。それは、ヒメコも痛いほどよく知っている。部下を預かる身ならば尚の事。そういうことであれば。

 

「その任、謹んで拝命致します。ネズミ一匹、通さないことを誓いましょう」

 

 スカートを摘まんで、優雅に礼をする。ヒメコもまた、ナギサが信用するに値すると思ったが故だ。ナギサも礼に対し首肯し、周囲の面々を確認する。

 

「……反対意見は無いようですね。──これより、学園前に最終防衛線を構築!部隊を大きく分けて二つ作ります。一つは防衛線を維持する前線部隊。こちらは水都ヒメコさんの指示に従ってください。もう一つは、街に取り残された人の救出部隊です!こちらは私が指揮を取ります!以上、各々行動を開始してください!!」

 

『はっ!』

 

 指示を受けて、テキパキと動き始める生徒たちを見て、肺に溜まった息を吐き出す。普段、フィリウス派内で指示を出しているにもかかわらず、人に指示を出すというのは、こんなにも疲れることだったか。と、そんなことを思いながら椅子に腰を下ろす。

 

(このまま椅子に座っていたいですが、ミサさんが戦っているのに私だけ休むわけにもいきませんね。私も、私の戦いをしましょう)

 

 ミサの行動の理由は分からないことだらけだ。でも、今一つだけ分かることがある。それは、彼女が守るために戦っているということ。

 

(だから、ミサさん。この戦いが終わったら聞かせてもらいますからね)

 

 

 




久しぶりに書くか……とマイページ開いたら書きかけのがあった挙句、ちゃんとキリの良いところまで書いてあったのに、謎に一年寝かせてあった話をそのまま投稿する暴挙。

ごめん!!!!
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