相変わらず遅筆ですまぬ。短く文を切れたらいいんだけど、切れそうなところが見つからなくて……。
感想、評価いつもありがとうございます!
あれから、また年が明け3年生になった。春の陽気に誘われ、みんなが眠い目を擦りながら談笑している中、オレは銃弾の雨を避けていた。
「相手が撃ってから動かない!相手が撃つ前に動きなさい!」
「はい!」
「狙いが甘い!相手の動きに狙いを合わせるんじゃなく、自分の動きに相手を誘導するの!」
「はいっ!」
オレの使ってる重機関銃を、片手で撃てるようになってから、訓練は本格化した。
止まっている状態での射撃は安定した。じゃあ、次は動きながらやろうか。つまりはそういうこと。
射撃訓練場から移動して、演習場で実戦形式での訓練を行うことになった。
お相手は《ミレニアムサイエンススクール》という科学が発展している学区から買い付けた、人型ロボット。よくお店とかにいるロボット店員ではなく、あらかじめ打ち込まれたプログラムで動く、機械人形の方だ。
機械だけあって狙いが正確で、さっきから何発も体に撃ち込まれている。泣きたくなるくらい痛い。
「狙いが正確ってことは、それだけ避けやすいってことだよ!相手の銃をよく見て!」
オレしってる。それできるやつ人間じゃない。だが、教えて貰ってる立場で拒否できるはずもないので頷くしかない。
「は、はいィィっ!」
「ぜぇーっ……ぜぇーっ……」
全身で息しながら、演習場の真ん中でぶっ倒れる。
「ミサちゃん、お疲れ様。ってこら!女の子がはしたない!」
シエルさんが顔を赤くしている。なんだろうと思ったら、スカートが捲れ上がってパンツが見えてるだけだった。
「見たいなら見てもいいですよ?」
別に減るもんじゃないし。スカートをヒラヒラさせながら言うと余計怒られた。なんでぇ?うーん、ただの無地の綿パンだ。こんなのに興奮する奴なんているのか?
「全く……訓練のことだけど、だいぶ動きが良くなって来たね。でも、もう少し被弾減らすように動こうね」
「はーい。でも実際問題、どうやって被弾を減らせばいいのか分からないんですけど?」
オレの疑問に、ふむ、と顎に手を当ててしばし考えこむ。
「とりあえず、さっきの訓練を例にしようか。相手が複数人いる場合だけど、射線を通し過ぎたらダメ。射線を通せば、それだけ撃たれやすくなるから」
「でも、こちらから射線を通せば自動的に相手も射線通りますよね?」
「うーん、通る場合と通らない場合があるけど、それはややこしいからまた今度話すね」
そうなの……?うーん、わからん。
「まず、例えば相手が一人、前にいます。その後ろにもう一人います。っていう状況だった時、当然二人は連携を取ってくるでしょう?」
「ふむふむ」
「そうなったとき、後ろの相手は前の味方と射線が被らないように動くわけ、味方に弾当てるわけにはいかないからね。それを利用して、常にこちら側が前の相手と後ろの相手の射線が被るように動くの」
「あ、なるほど。後ろの相手が撃てない状況であれば、二人いても実質1対1」
「そう!いかに自分に有利を作れるか、っていうのは戦いにおいて基本だからね」
はぇー、戦いって奥が深いなぁ。ただ撃ち合うだけじゃなく、こんなに色んなこと考えながら戦うのか。
「それじゃあ次からは、そこを意識して立ち回ってみようね」
「はい!」
それから、訓練によって時間が過ぎて行った。
「ミサちゃん!これ、プレゼント!」
「……」
月が替わって少ししたある日、シエルさんは唐突に綺麗に包装されたそれを差し出してきた。
「……オレにですか?」
「もちろん!っていうかここにミサちゃんしかいないでしょ」
それはそうだけど。何に対するプレゼントなのか。
「いや、今日!5月8日はミサちゃんの誕生日だよね!?」
「ああ~!」
「去年、誕生日聞いたら『もう過ぎた』って言ったから、来年はちゃんと渡すって言ったのに……」
そういえば、そんな話をしたような気がする。確か、いつ誕生日か聞かれて、オレも知らないなと思って学生証見たら、もう過ぎてたんだっけ。
「……本当にオレが貰ってもいいんですか?」
「だから、そう言ってるでしょ?改めて、ミサちゃん誕生日おめでとう!」
「あ、ありがとうございます……」
どうしよう、すごい嬉しい。
「あのっ、開けてもいいですか?」
「もちろん、いいよ」
受け取ったプレゼントを、丁寧に開けていく。中には、オシャレな銀の腕時計が入っていた。
「これ、時計……?」
「そうだよ。ミサちゃん、訓練に夢中になって時間を気にしないこと多いでしょ。なので、時間を気にして動けるように時計にしてみました!」
確かに、集中しすぎて数時間経ってること多い。手に取ってみて、ズシリとした重さがあるのに気が付いた。これ、メッキじゃない!?
「もしかして純銀?しかもすごい綺麗な細工入ってる。こ、これすごく高かったんじゃ……」
「あはは!銀は金に比べたら全然、すごく安いよ。まあ、細工の方と時計自体が高かったけど」
銀はそこまでしないのかよかった。
「銀にしたのは、ほら昔から銀には魔除けの力があるって言われてきたでしょ?そこで魔除けの力を高める特殊な細工をしてもらったの」
「へぇ、そんな細工あるんだ。……ん?『してもらった』?」
「ふふん、もちろんオーダーメイドだよ!材料に細工に、時計のパーツに至るまで全部指定した、世界に一つだけの時計だから、大事にしてね!」
か、完全オーダーメイド……。手の中の時計が別の意味で重くなった気がする。
「……今着けてみても、いいですか?」
「うん!今着けてるところ見たい!」
右と左で迷って、右は銃持ってるし、左に着けよう。左腕に巻いて、チェーン同士を繋げて留める。
「わぁっ……!」
時計を着けた左腕を空にかざすと、銀が光を反射してキラキラと輝いていた。
「ふふっ、どう気に入ってくれた?」
「はいっ、この時計大事にしますね!」
「気に入ってもらえてよかったー。時計、よく似合ってるよ」
腕を動かすたびに、チャリチャリと音を立てるのがかわいい。
「実はね、銀にしたのはもう一つ理由があるんだけどね……」
「理由?それってなんですか?」
「うーん……ふふっ、なーいしょっ」
「えー!なんでですか!気になるんですけど!?」
「恥ずかしいから秘密っ。ほら、今日の訓練始めるよ!」
結局はぐらかされて、今日の訓練が始まった。
「―――はい!今日の訓練はおしまいっ!」
「え?もうですか?」
貰ったばかりの時計を見れば、いつもの半分くらいしか時間が経ってない。
「うん、このあと委員会の会議があるし、天気も崩れそうだしね」
空を見れば、確かに今にも降り出しそうな曇り空だった。
「ホントだ。今日、雨の予報出てなかったのに……」
「最近、予報外れること多いし、早めに切り上げるに越したことは無いかなって」
「むー、もう少し訓練したかった」
口を尖らせていると、シエルさんはそっと頭に手を乗せて撫でてくれた。
「そんなに焦らなくても大丈夫だよ。今日の訓練見てて思ったけど、この短期間でメキメキと腕を上げてる。もしかしたら、最初から私の指導なんて無くても……」
「そんなことない!シエルさんがいたから強くなれたんです!シエルさんは尊敬できる先輩です!」
「―――ぷっ、あははははは!」
「ど、どうして笑うんですか!?オレは真面目に……」
「あはは!ごめんね、ミサちゃんのことを笑ったわけじゃないの。ただ、昔私も先輩に同じこと言ったなぁって思って」
そう言って、シエルさんは懐かしむように空を見上げた。
「―――そういえば、あの日もこんな空だったなぁ……」
「シエルさんの、先輩……」
空を見上げるシエルさんの横顔は、オレの知らない憂いを帯びたもので、知らないシエルさんがいるということに、なぜか胸の奥がチクッとした。
「……?」
「あれ?気になった?私と先輩の話」
「まあ、気にならないと言えば嘘になりますが」
「あはは、あんまり聞かせて面白い話じゃないけどね。……その先輩っていうのはね、私の前の《正義実現委員会》の委員長だった人なんだ」
シエルさんの前に委員長してた人。じゃあ、シエルさんを委員長に選んだのはその人?
「先輩はね、ミサちゃんみたいにちっちゃくて可愛い人だったよ」
「かわいいより、かっこいいって言われたいです」
「あはは!そうだね、先輩もそんな人だったかもしれない。ちっちゃくて、かわいくて、かっこいい人だった……」
「……好き、だったんですか?」
「……好き、か。そうだね、好きだったかも。でも、憧れの方が強かったかもしれない。ミサちゃんと違って、すごくいい加減な性格でね。すぐ委員会の仕事をサボろうとして、色んな人に迷惑掛けてた。でも、戦ってる時はかっこよくてね。ちっちゃい背中なのに、とても大きく見えたんだ」
『先輩』のことを語るシエルさんは嬉しそうなのに、どこか寂しそうで。
「強かったんですか?」
「私なんて目じゃないくらい強かったよ!強くて、かっこよくて、みんなの憧れで、私の目標だった。いつか私も先輩みたいに、誰かに憧れられるかっこいい人になるんだってね」
「そうだったんですね」
「他人事みたいに言うけど、私の夢を叶えてくれたのはミサちゃんなんだよ?」
へ?オレ?
「初めて会った日のこと、覚えてる?私のことかっこいいって、私みたいになりたいってミサちゃんが言ってくれたんだよ?私、すごく嬉しかったんだから」
あのときはいっぱいいっぱいで、あんまり覚えてないけど、たしかに言った気がする。
「その先輩って、今は……」
「―――亡くなったよ。ヘイローを壊されてね……」
「あ……ご、ごめんなさい……」
「ううん、いいよ。もうだいぶ前のことだし、心の整理は付けたから。それに最期を看取ったのは私だしね」
「……そうなんですか?」
「うん、そのときにね次の委員長を任せられてね。最期までいい加減な先輩だった」
その時のことを思い出してるのか、シエルさんはずっと泣きそうな顔をしていた。オレはシエルさんがそんなことになってしまったら、冷静でいられる自信が無い。シエルさんって、やっぱり強いな。
「そういえば、その先輩のヘイローを壊したのって」
「……ミサちゃんも会ったことあるよ」
オレも……?
「黒野サユリ。ゲヘナ学園出身で、ヘルメットを被ったあの女だよ」
「………………え?」
「先輩は、最後にあの女と戦って、死んだ。殺されたんだよ。だから、私はあの女を絶対に捕まえてやるって決めたんだ」
「……」
シエルさんの目は、怒りや憎しみに囚われたものではなく、前へ進む確かな意志を感じ取れた。
「ね?聞いても気分のいい話じゃなかったでしょ?あ、この話は誰にもしちゃダメだからね。私を含めて、一部の上層部しか知らないから」
ゲヘナ生がトリニティ生を手に掛けたと広まれば、全面戦争待ったなしだろう。逆に、このことを知っている上層部がよく踏みとどまったなと思う。
「もう一つだけ、聞かせて貰ってもいいですか?」
「うん?」
「恨まなかったんですか?」
「何を?……なんて、言うまでもないよね。うん……全く恨まなかったって言ったら、嘘になるよ。私だって人だもん。尊敬する人を亡くしたら、恨みたくもなる。……でもね、ある日それが間違いだってことに気が付いた。私が本当になりたかったものを思い出せたんだ」
そう言ったシエルさんは、恨みを一切感じさせない穏やかな笑みを浮かべていた。
「やっぱり、シエルさんは尊敬できる人です」
大切なものを失ったとて、この人と同じことを言える人が一体何人いるのだろうか。
「シエルさんに会えてよかったです」
「あ、あはは、そう面と向かって言われるとやっぱり照れるなー。は、話し込み過ぎちゃったね。ほら!雨が降る前に帰ろ?」
「顔真っ赤ですよ?」
「こら!お姉さんをからかわない!ほら、片づけは私がしておいてあげるから!」
照れたシエルさんに押されるまま、演習場から出て行く。外へ出ると、さっきよりも薄暗くなった気がする。降り出す前に早く帰ったほうがよさそう。
「……私が欲しかった言葉をくれたのは、なりたい私を思い出させてくれたのは、ミサちゃんなんだよ?ミサちゃんも、いつか本当の自分を見つけられるように、祈るからね」
家までの道すがら、ふと立ち止まって左手を天にかざす。曇り空にあってもなお、銀の時計は輝いていた。初めて貰ったプレゼントが嬉しくて、何度も立ち止まり眺めていたら、後ろから影が差していることに気が付いた。
立ち止まりすぎて、通行の邪魔になってしまったらしい。謝りながら道を譲ろうと後ろを向いた。
「あ、すみませ―――え?」
そこに立っていたのは、ヘルメットを被った一団。その先頭に立つ、覚えのある出で立ち。
「直接会うのは久しぶりになるか、なあ?―――光園ミサ」
突き付けられたショットガンによって、視界を白く塗りつぶした―――。
光園ミサ
重機関銃を片手撃ちするゴリラになったので、本格訓練開始。シエルから初めてのプレゼントをもらった。ちなみに、銀は女性や月を象徴するモノで関連の深いものになってるそうです。たぶんミサの誕生日は、ミサのモチーフになった天使の最大のヒントかもしれない。
羽佐間シエル
唐突に重い過去が出てきた人。先輩は尊敬する人という意味で好き。ミサは恋愛的な意味で好き。ミサに初めて会ったとき、一目惚れ+欲しい言葉をくれた+自分を思い出させてくれた特別な人、というトリプルパンチを食らいべた惚れした。
先輩
シエルの前の委員長。体は小さかったが、態度はデカかった。シエルが小さい子好きになった原因の人。性格は良く言えば大ざっぱ、悪く言うならいい加減。後輩であるシエルを可愛がっていて、仕事をサボる度にシエルに怒られていた。ヘルメット女・黒野サユリと戦ったのち、ヘイローを破壊された。シエルに次の委員長を任せた後、そのまま息を引き取った。
黒野サユリ
ヘルメット女。元ゲヘナ生。高校4年生。札付きの超危険人物。ミサに出会い頭に挨拶ショットガンした
感想返しってしたほうがいい?
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いる
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いらない