ブルアカにTS転生してメス堕ちする話   作:アウロラの魔王

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遅くなりました。ゴメンナサイ。

結局長くなりすぎて三年生編をさらに分割しました……。おかしいな……半分で分けたつもりだったんだけど。

今回は、かなりきつい描写入れたので注意です。書いてて私のメンタルが逝きそうでした。

感想くれた人ありがとうございます!

というわけで、ブラッディアーカイブはじまります!(ヤケクソ)


3年生の話・うしろ

 

 突き付けられたショットガン。咄嗟に体が動いたのは、訓練の賜物か、あるいは運が良かっただけかもしれない。放たれた散弾が、体の横を通り過ぎたことを感じながら、全力で距離を取る。

 

「ほう?」

 

 距離にして20m。その間、何もしてこなかったのは不気味だが、改めてしっかりとその姿を確認する。……間違いない。

 

「黒野、サユリ」

 

「なんだ、知ってたのか。アタシのほうから名乗る手間が省けたが、ふむ」

 

 黒野サユリは、ヘルメットに手を当て、なにやら考え込む素振りを見せる。だが、その手のショットガンはしっかりとオレに照準を合わせている。

 

 あの形状、M870……しかも取り付けてあるのはロングチョークか。まずい、だとすれば、この距離でも安心できない。

 

「オレに何の用だ」

 

 なにかあったら、即座に動けるように最大限警戒した上で、問い掛ける。

 

「ふふふ、気になるか?テロリストが、一介の小学生でしかないお前に会いに来たということが」

 

「当たり前だろ。子供一人を執拗に追い回してるお前らの方が、異常だからな?」

 

「まあ、確かにな。教えてやりたいのは山々なんだが、アタシらも知らん」

 

「はぁ?」

 

「アタシらが、クライアントから受けたのは一つ。光園ミサ、お前が"器"に値するかどうか"力"を見たい。ただ、それだけだ」

 

 なんだそれ?もっと意味が分からないんだが。……とにかく、今の状況はまずい。

 

『次からはちゃんと連絡してね?』

 

 ……また迷惑を掛けてしまうかもしれないけど、一度シエルさんに連絡を取ろう。

 

 あの女からは見えないように、体と銃で隠しながら右手で携帯を操作する。―――瞬間。衝撃が右手を襲い、携帯が弾き飛ばされる。

 

「悪いな、今あの委員長に来られると困るんでね。ようやく、委員会のマークが外れたんだ。この機会を逃すわけにいかないな」

 

 一瞬、何が起きたか分からなかったが、黒野サユリがあの距離からショットガンでオレの携帯を弾き飛ばしたらしい。2年前といい、曲芸染みたことしやがって……逃げなきゃ……。

 

 痛む右手を抑えながら、反転し駆け出す。その際、弾き飛ばされた携帯も回収した。

 

「おいおい、ここで逃げるのか。大方、あの委員長の入れ知恵だろうが。随分と入れ込んでるじゃないか、まさかアイツが幼女趣味だったとは知らなかったが、なっ!」

 

「―――ッ!」

 

 また、発砲音。同時に背中に熱と衝撃を感じて、倒れこみそうになりながら、近くの路地に逃げ込む。

 

「はは、2年前同様、いい根性してる。お前ら!半分はアイツを追え!もう半分は別の路地から挟み込みな!」

 

「イエス!マム!」

 

「さあ、狩りを始めようか」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

「はぁ……!はぁ……!……ぐぅっ!」

 

 入り組んだ路地の奥で、痛む右手と背中を抑え、座り込む。

 

 ―――痛い。訓練用の模擬弾なんかとは比べ物にならない痛さだ。命を脅かす痛みがそこにあった。……死にたくない。

 

「……ダメだ。電源が付かない。さっきの衝撃で壊れたか……」

 

 震える手で、ヒビの入った携帯を触っていたが、電源が入らなかった。ショットガンで弾き飛ばされたときに壊れたんだろう。シエルさんに連絡を取ることが出来ない。孤立無援だ。

 

 ははっ……オレ、神様に何か嫌われるようなことでもしたかな。

 

『こっちにはいない、向こうを探せ!』

 

 近く、聞こえた声に体がビクついて怯える。……戦うしかない、一人でも。そのために、今まで訓練してきたんだ。震える身体を抑え、立ち上がる。大丈夫。怖くない。戦える。

 

『おい、こっちに足跡が残っている!まだ新しい、近くに居るぞ!』

 

 重機関銃を抱え直し、こっちに来ようとしている連中に向かって引き金を引いた。

 

 

 

 次から次へと現れるヘルメット団を、一人ずつ確実に倒していたがキリがなかった。

 

 くそっ、もう20人くらい倒したぞ。一体、どこからこんな数湧いてんだよ。

 

 現れるヘルメット団を倒しながら、路地の中をを疾駆する。……!出口だ!走っている内に路地の出口まで来たようだ。ヘルメット団も撒いたのか、近くには誰もいない。よし、このまま脱出して、学園に逃げ込めれば―――。

 

「よぉ、遅かったな」

 

 路地を出たすぐそこには、黒野サユリがいた。

 

「なっ!?―――ごふッ!?」

 

 腹に鋭い痛みが走る。それが黒野サユリの足の仕業だと認識するのに、時間が掛かった。浮き上がったオレの身体に、黒野サユリはショットガンを突き付けていて……!?待て、それは洒落にならない!?

 

 痛みに悶えながら、咄嗟に重機関銃を盾にし、だがショットガンから吐き出された弾丸は目の前で爆発し、オレの小さな体を容易に吹き飛ばす。2発、3発、4発、続けて放たれ、その弾丸も爆発した。壁に叩きつけられたオレは、壁ごと吹き飛ばされ、どこかの建物の中まで飛ばされた。

 

「―――!!?」

 

 あまりの痛みに、声が出ない。息が詰まって、苦しい。爆発で耳がイカレてるのに、足音だけはやけにはっきりと聞こえて。まずい、逃げないと……。バッグから取り出したグレネードを転がし、痛む体を引きずり、身を隠す。

 

「ふむ?砂埃にしては多いと思ったが、なるほど煙幕か」

 

 建物に入ってきた黒野サユリは、周囲を見渡しながら笑っていた。

 

 どうやらこの建物、今は使われてない立体駐車場のようだ。廃車なのか、至る所に車が放置されている。オレはいくつかある柱の後ろに身を隠していた。

 

「……フーッ……フーッ……」

 

 撃たれた所が熱を持っていて、苦しい。どうする、この狭い駐車場内じゃ、どこにいても黒野サユリの射程圏内だ。無策で出て行けば、その瞬間ハチの巣だ。

 

「さて、どうする?光園ミサ。そちらが来ないなら、こちらから行くぞ」

 

 再び、足音を響かせ近づいてくる。この状況で、悠長に策を考える余裕なんてない!傍に転がっていたコブシ大の石を掴み、最初に左に投げる。間髪入れずに右にも投げて、最初に投げた左側から飛び出す。右に投げた石がショットガンで粉々になった。

 

「!?」

 

「喰らえええええええッ!!!」

 

「ははっ!2回目が本命と見せかけて、最初のカモフラージュが本命とはな!悪いが、その銃の直撃を貰ってやるわけにはいかないなっ!」

 

 黒野サユリは、後ろに下がりながらショットガンを撃ってくるが、元々明かりの少ない駐車場に加えて、転がしたスモークグレネードで視界は最悪だ。黒野サユリが撃った弾は、明後日の方へ外れる。

 

「……くっ!これを見越してのスモークか。まったく、同年代を相手にしてる気分だ、な!」

 

 オレは声や音を頼りに、重機関銃を撃ちながらジグザグに動き、距離を詰めていく。じきにスモークは晴れる、そのとき距離があれば射程が変わらない分、こちらが不利だ。それを避けるには、リスクは高いが相手の懐に入り込むしかない!オレはジグザグに動きながら、少しずつ相手の側面、銃の持ち手と反対方向へと回る。

 

「……!そこだッ!―――何ッ!?」

 

 銃の持ち手とは反対側に居たこと、スモークで視界が悪かったことで距離を見誤ったのだろう。銃弾はオレの顔のすぐ横を通り過ぎていく。M870は一発撃つごとにスライドアクションがいるポンプ銃。今しかチャンスはない!スモークの中から黒野サユリの前へ躍り出る。

 

「近いッ!?」

 

「おおおおおおおおおッ!!」

 

 銃を撃ちながら、一気に接近する。距離が近すぎるためか、黒野サユリもこちらが放った銃弾のすべてを回避できず、少しずつ弾が掠り始めている。

 

「ちぃっ!」

 

 もう距離は5mもない。黒野サユリは、ショットガンを構えこちらを撃とうとしている。この距離ならもう一度撃つ時間があるだろう。この女は確実に当ててくる。どう避ければいい―――。

 

『狙いが正確ってことは、それだけ避けやすいってことだよ!相手の銃をよく見て!』

 

 ―――!相手の銃を……!この距離で確実に相手をダウンさせられる場所は―――胴体ッ!

 

 ヘルメットのバイザーの奥で、奴の目が驚きに見開いてるのが分かった。避け切れず、掠った弾丸が脇腹を焼いていたが、どうやら思った通りだったらしい。

 

 残り1mを切った。もう目と鼻の先だ!このまま全弾ぶち込んで《カチンッ!》―――ッ!?ここで弾切れ!?リロード……だめだ間に合わない!武器!他に武器になるもの……は……。

 

「ッ!ああああああああぁぁぁーーーッ!!」

 

 咄嗟の判断だった。弾切れで、他に武器になるものを探した時、自分の抱えてる銃が目に入った。考えてる時間は無かった。オレは"それ"を大きく振りかぶり、黒野サユリの身体に叩きつけた。

 

 黒野サユリは叩きつけられた勢いのまま、駐車場の奥へ消えて行った。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

 勝った……のか……?約30kgの金属で殴ったんだ。無事でも、そう簡単に起き上がれないだろ。とりあえず、ここを出てシエルさんになんとか連絡を取らなきゃな。

 

「……つぅッ!」

 

 緊張が解けてきたからか、全身が痛みだしてきた。やっぱり、重機関銃抱えて弾避けるのきつすぎだな。いっそのこと避けなくてもいいように、重機関銃に盾でも付けるか?そっちのほうがいい気がしてきたな。それは帰ってからゆっくり考えればいいか。

 

 そう思い、奴が開けた穴から出ようと足を踏み出した時だった。

 

 ―――《ダァンッ!!》

 

「―――えっ?」

 

 脇腹に走る激痛と凄まじい衝撃。気が付けば目の前に地面があった。あまりの痛みに一瞬意識が飛んでたらしい、先程の場所から数m動いていた。近くに落ちていたショットシェル、ショットガンの弾を見て驚愕する。―――スラグ弾!?長距離カスタムなのはこの弾を使うためか……!

 

「ゴホッ!ガフッ!」

 

 ―――コツ……コツ……。

 

 痛みに霞む視界で、奴がゆっくりとこちらに歩いて来てるのが見えた。まずい……!逃げないと、なのに!なんで、体が動かない!?くそっ、動け!動け!!

 

「直撃させたのに、まだ意識があるのか。くくっ、よく睨むじゃねえか。好きだぜお前のそういうところ」

 

「……ぐぅっ!」

 

 黒野サユリはそう言いながら、倒れてるオレの身体を踏みつける。

 

「アタシに手傷を負わせたのは久しぶりだ。褒美と言っては何だが、コイツを受け取ってくれ」

 

 ―――《ダァンッ!》

 

「~~~ッ!!」

 

 奴はオレを踏みつけたまま、オレの身体にショットガンを撃ち込む。どうにか悲鳴を上げまいと歯を食いしばって耐えた。

 

「へぇ?耐えたか。ならもう一発」

 

 ―――《ダァンッ!!》

 

「ぐうぅぅぅぅぅッ!!?」

 

 ずっと背中に溶けた鉄を流し込まれてるようだった。ひどい激痛に意識が飛びそうになる。

 

「ん?おいおい、ここでお寝んねとか寂しいじゃねえか―――もっと楽しませてくれよ」

 

 ―――《ダァンッ!!!》

 

「―――ああああああああああぁぁぁッッッ!!!??」

 

 飛びそうになった意識を、無理やり覚醒させられる。視界がチカチカと明滅していた。今はただ、この地獄が終わることだけを願っていた。

 

「ハハハッ!いい声で鳴くなよ、愛おしくなっちまうだろ!」

 

 その後も意識が飛びかけては、無理やり起こされてを繰り返した。何度も。何度も……。

 

 

 

「―――ふぅ……反応が薄くなってきたな。いや、お前は誇っていいぜ。こんなに長く持ったのはお前が初めてだ。いっそのこと、このまま連れ帰ってもいいかもしれないな。依頼内容にも反していないし。なあミサ、お前はどう思う?」

 

 オレの身体はすでに感覚がマヒしており、痛みをほとんど感じてなかった。もはや、自分が寝ているのかも、立っているのかもさえ分からない。

 

「返事が無いってことは、いいってことだな」

 

 気が付けば、黒野サユリの顔、というかヘルメットが目の前にあった。何を言ってるのか分からないが、胸倉を掴みあげられているらしい。

 

「そういえば、昔お前みたいに小さいのイジメたことあったなぁ。ソイツは全く鳴いてくれなかったから、すぐ飽きたんだけど」

 

 ……その、小さい、のって……。

 

『―――亡くなったよ。ヘイローを壊されてね……』

 

『先輩は、最後にあの女と戦って、死んだ。殺されたんだよ』

 

 やっぱり、こいつが……。こいつのせいで、シエルさん、が。一発ぶん殴ってやりたいのに、体が、動かない……。

 

「ん?どうしたミサ?泣いてるのか?アタシと一緒に居れるのがそんなにうれしいのか」

 

 なんでもいい。たった一発でいいんだ。こいつのスカしたヘルメットを、飛ばすだけでもいい。だれか……。神様……!

 

 その願いが通じたのか、右手に抱えたままだった。弾の入ってない金属の塊に、熱がこもる。……撃てるのか?……違う、撃つ。

 

「持って帰る前に、もう一発撃っとくか。良い声を聞かせてくれよ。愛してるぜ、ミサ」

 

「―――」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「……くた、ばれ……って言った、んだ……くそ女っ……!」

 

「……ッ!?ちぃッ!」

 

 黒野サユリもオレの持つ銃の異様に気が付いた。掴み上げていたオレを放り投げながら、ショットガンで吹き飛ばす。

 

「ぐっ、ああああああぁぁぁッ!?」

 

 痛みに悲鳴を上げながらも、最後の力を振り絞ってトリガーを押し込む。弾が入ってないはずの銃から、光の弾丸が放たれ、それは寸分違わずヘルメットに直撃し、衝撃でヘルメットを弾き飛ばした後、天井をぶち破りながら、空へ消えて行った。

 

 姿勢制御も反動制御もあったもんじゃない、無茶苦茶な空中撃ちで体中が悲鳴を上げている。これが今のオレに撃てる特大パンチだ。シエルさん、褒めて、くれるかな……?それとも、また無茶なことしてって、怒られるのかな……。オレは自らが作った血溜まりに落ち、その体を赤く染める。

 

「―――ふぅ、ふふふ……。ハハハハハハハハハッ!!」

 

 高笑いをしている女がいた。ヘルメットが無くて一瞬分からなかったが、あいつが黒野サユリなんだろう。黒髪が腰まで伸びていて、金のインナーカラーと赤のメッシュが入っている。その目は赤紫色をしていて劇毒のようだった。そして側頭部からは、折れた……ツノ?二本の角のうち、片方だけ折れていた。

 

「いいッ!いいぞ!光園ミサッ!アタシのメットを取ったのはお前で二人目だッ!最初の一人目もトリニティの生徒だった。《正義実現委員会》の前委員長!奴も強かった!欠点を挙げるとすれば、一切鳴いてくれなかったことだけだ。だがその点、ミサお前は最高だ!ああ……!欲しい!お前が欲しい!クライアントも見たいものは見れただろう。なら"これ"はアタシが貰ってもいいはずだ!」

 

 そう言って笑い続ける黒野サユリ。常軌を逸している。

 

「……くる、ってる……」

 

「そうか?そうかもしれないな。だが、アタシからすればお前も十分狂って見えるぞ」

 

 オレは別に狂ってなんか……。

 

「その顔は、自分は狂ってないとでも言いたげだな。だが、今ここにお前がいるのが異常の証明だと思わないか?」

 

「……な、にを」

 

「アタシと戦って、まだ命も意識も保っている。小学3年生が、だ。これが異常じゃなくて何だとする。しかもアタシに血まで流させた。まるで―――戦うために生まれたみたいじゃないか!」

 

「……ちが……ぐぅ!?」

 

「違わないさ!自ら、戦いに赴こうとするのは何故だ?他の手段を用いず、仕方ないと割り切って戦うのは何故だ?―――それは、お前が戦いたいからだ。戦うために生まれたお前が、戦いを求めるのはなにも間違いじゃない」

 

「ちがう……ちがう……オレは、ただ……」

 

 本当に違うのか?別に戦わなくてもよかったはずだ。それでも戦う手段を選んだのは、オレが戦いたかったから?戦うために生まれたから?ちがう、ちがう違う!!

 

「―――大丈夫だ。誰もお前を理解できなくとも、アタシはお前を理解してやれる。お前を愛してやれる。狂った者同士、お似合いじゃないか、なあ?―――ミサ」

 

「あ……あ……」

 

 黒野サユリの言葉が、ジワジワと心に染み込んでくる。心を、体を、明け渡してしまいたくなる。

 

「オ、オレ……は……」

 

 

「―――黒野、サユリィィィィィィッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

「―――以上が、自治区内における先月の犯罪発生率の推移です。続きまして今月の巡回ルートですが、先程の犯罪発生場所から―――」

 

 壇上で話す副委員長を眺め、手元のスマホに目を落とす。

 

 さっき、ミサちゃんから電話が来てたけど何かあったのかな。すぐに掛け直したけど、繋がらなかったし、心配だな……。一応、お守り代わりになればと、銀時計をプレゼントしたけど、効果あるといいなぁ。

 

「―――ちょう。委員長!」

 

「はぁい!?え?なになに?」

 

「ハァ……しっかりしてちょうだい。まったく、最近貴女を慕ってる初等部の子が、普段のぽやっとしている貴女を見たらなんて言うのかしらね?」

 

「ちょっ、しー!しー!もう、せっかく私が頼れる先輩に見えるように頑張ってるのに!」

 

「そこは否定しなさいよ……」

 

 副委員長には困ったものだ。幼馴染だからといって、言って良いことと悪いことの区別も付かないのだろうか。

 

「ロリコンの貴女にだけは、言われたくはないわね」

 

「あれ?私口に出してた?」

 

「いいえ?でも、貴女が考えてそうなことくらい、手に取るように分かるわよ」

 

 幼馴染特権ずるい。というか私はロリコンではない。好きになった子が偶々小さかっただけだ。それはそれとして、特に他意は無いけど、ミサちゃんは是非あの小さいまま成長してほしい。

 

「それより、仕事してちょうだい。あなたの口から説明が必要な件もあるって伝えたでしょ」

 

「はぁーい。もうちょっと融通利かせればいいのに―――」

 

 ―――ガラッ!

 

 私が資料を持って壇上に向かう途中、突如開いたドアに室内の視線がそこに釘付けになる。そこに居た子がミサちゃんに見えて一瞬ドキッとしてしまった。でも、髪が長いしよく見たら違う。こんなに似ている子がいるんだ、とぼんやり思ってると副委員長がその子に話しかけていた。

 

「ごめんね、今は大事な会議中だから、用があるなら会議が終わるまでちょっと外で待っていてもらえる?」

 

 驚いた。副委員長はこんなやさしい声で話すことが出来たんだ。どうして私にもやさしく話してくれないんだろう?と副委員長がこっちを睨んでる。

 

 件の少女は息を切らせており、室内を見渡して、私と目が合った。

 

「いた!」

 

 え?私?

 

「お願い!ミサちゃんを助けて!ミサちゃんが危ないの!」

 

 聞き逃せない単語があった。でも要領を得ない。副委員長を下がらせて詳しく聞く。

 

「ミサちゃんがどうしたの?ゆっくりでいいから」

 

「ゆっくりなんてダメッ!!!」

 

 急な大声で私の声を遮る。よっぽど切羽詰まってるらしい。……なんだか嫌な予感がする。

 

「ミサちゃん、ヘルメットを被った変な集団に追い掛けられてたの!あの人たち、悪い人たちなんでしょ!?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、愛銃を引っ掴んで外へ飛び出した。外はすでに雨が降っていた。後ろから、副委員長の静止の声が聞こえたが、止まってなんていられない。

 

 ヘルメット団、なんで今!いや、今だからこそか。委員会が会議で招集され手薄になった今こそが。失態だ。どうして、そうまでしてミサちゃんを狙ったの?あーもう!守るなら何が何でも傍に置いとくべきだった……!

 

 きっとミサちゃんは私に連絡をくれようとしていた。あのすぐ切れた通話、もしそうなら……私は……!

 

 通い慣れたミサちゃんの通学路を逆走していく。途中で真新しい弾痕を見つけた。集弾性の高いショットガンの弾痕……まさか、あの女が来ている!?まずい……!弾痕を追い、通学路から外れ、郊外の方に向かっていく。助けを呼べないように、人気の少ない方へ誘導したんだ。

 

 脳裏に浮かぶ血だらけで倒れる先輩の姿。そういえば、あの日も雨が降っていた。もしも、ミサちゃんも同じように……いやだ!あの日の絶望も、あの日の無力感も、もう二度と繰り返さないって決めたんだ!お願い、無事でいて……!

 

 近くで、銃声とともに光の弾丸が空へ消えていくのが見えた。あっちか!

 

 そこは今はもう使われていない、立体駐車場だった。私は直ぐ様突入する。

 

 中に入った私が見たのは、全身ボロボロで血溜まりに沈む―――ミサちゃんの姿だった。

 

 私の中でナニかが切れる音がした―――。

 

 

 

 

 

 

 

「―――黒野、サユリィィィィィィッッッ!!!!」

 

 飛び掛かるように現れたのはシエルさんだった。その表情は、今までに見たことないような鬼気迫るもので、本気を怒っているのが分かった。

 

「ちっ羽佐間シエルか。毎度、良いところで邪魔をしてくれるッ」

 

「ふざけるなよッ!!私から先輩だけでなくミサちゃんまで奪う気か!?さっさと私のミサちゃんから離れろおおおおおおおッ!!」

 

 放たれた銃弾の的になる気はないらしく、素直にオレから離れて行った。

 

「ミサちゃん、遅くなってごめん!応援は呼んでるから、もう少しの辛抱だよっ」

 

「おいおい、ミサ今の見たか。この女、お前ごと撃って来たぞ」

 

「ミサちゃんに当たらないように撃ってるに決まってるでしょっ!それより、なにミサちゃんの名前を気安く呼んでるのよッ!?」

 

「いいだろ?今日からミサはアタシのもんだからな」

 

「はぁッ!?誰が誰のものですって!?というかミサちゃんを物扱いすんな!」

 

「大丈夫だからな、ミサ。アタシはコイツと違って物は大切に扱うんだ。やさしいだろ?」

 

「―――ぶっ殺してやる」

 

 ひどい問答をしながらも、恐ろしくハイレベルな銃撃戦をする二人。遮蔽に隠れず、お互いノーガードで撃ち合っていた。確実に避けるシエルさんと、多少の被弾をものともせず正確に狙ってくる黒野サユリ。

 

「ッ流石にミサに撃たれた分のダメージが残っているから、厳しいな」

 

 先に音を上げ始めたのは、黒野サユリだった。当然、その隙を見逃すシエルさんではない。

 

「そこだああぁぁッ!!」

 

「ちぃッ!?」

 

 シエルさんの猛攻に、ついには膝を突く。

 

「黒野サユリ、諸々の罪で貴女を逮捕します」

 

「ふっ」

 

「……?なにがおかしいの―――え!?」

 

 ヘリのモーター音。頭上に空いた穴から大きな輸送ヘリが見えていた。

 

 そして、一瞬視線を外した隙に、黒野サユリは懐から取り出したワイヤー銃をヘリに向けて撃った。

 

「ッ待ちなさい!黒野サユリ!」

 

「本当はミサも連れて行きたかったが、仕方ない。それは次の機会にしよう」

 

「まだそんな世迷言を!」

 

「ミサ。さっきアタシが言ったことは全部本気だからな?アタシだけがお前を理解してやることが出来る。それを忘れるな。それと、そのヘルメットはお前の戦利品だ。部屋にでも飾るといい」

 

 それだけを言うと、黒野サユリはワイヤーで上へ上がっていき、そのままヘリとともに去っていった。

 

「クソッ。今度こそ捕まえられると思ったのに!」

 

 もし、オレが動けていたら、ヘリなんて墜とせたのに。その後、シエルさんはすぐにこちらに駆け寄ってきてくれた。

 

「ミサちゃんっ!―――ッ!ひどい傷……」

 

「……シエル、さん」

 

「ミサちゃんっ、あまりしゃべっちゃダメ!」

 

「……助けに、来てくれて……ありがとう……それと、ごめんなさい」

 

「ミサちゃん……」

 

「助け、呼ぼうと思ったんですけど……携帯、こわれちゃって……」

 

「そんな、そんなこと……!謝るのは私の方だよ!すぐに異常に気が付いていれば、ミサちゃんがこんな目に遭うことなんて……」

 

 ぽたぽたと雫が、オレの顔に落ちてくる。

 

「……泣かないで、ください。泣かれると、どうしていいか……いつもみたいに、叱ってください……」

 

「グスッ……うん、ごめんね。もう、ミサちゃん無茶しないって約束したのにっ。こんな、こんなにボロボロになって!」

 

 泣いてるのか、怒ってるのかよくわからない顔に思わず、クスッっと笑ってしまった。

 

「な、なに笑ってるの!」

 

「……すみません、つい……」

 

「もう、傷に響くからしゃべっちゃダメって言ってるのに、こんなにしゃべっちゃって……」

 

「……それが、不思議と……痛くないんです……」

 

「え?」

 

「……おかしい、ですよね……こんなの……」

 

 やっぱり、黒野サユリが言ってたように、オレは狂ってるのかもしれない。

 

「そんなこと……もしかして、黒野サユリになにか変なことでも吹き込まれた?」

 

「……それは……っ!ゲホッ!ゲホッ!」

 

「ミサちゃん!?」

 

「ゲホッ!ゲホッ!―――ゴフッ」

 

 ビシャっと赤いモノが辺りに広がる。

 

「うそ―――……っミサちゃん!しっかりして!ミサちゃん!?」

 

「―――」

 

 オレは大丈夫、そう口にしようとしたのに、声が出なかった。なんでだろう、別に痛くもなんともないのに……。

 

「っ!副委員長!まだなの!?」

 

『今向かってますっ!』

 

「もっと早く急いで!?じゃないと……ミサちゃんが死んじゃう!!急に血が、血が止まらないの!?」

 

『ッ!10秒で着きます!出来るだけ彼女の意識を繋ぎとめて!』

 

「ミサちゃん!?聞こえる!?聞こえるならお願い私の手を握って!?」

 

 そう言われ、シエルさんの手を握ろうと手に力を込めたが、ピクリとも動かない。あれ?おかしいな、さっきまでは普通に動きそうだったんだけど。

 

「ミサちゃんっミサちゃんっ、いや……いやよ……。お願い、神様……!なんでもします、だから……だから、ミサちゃんをたすけて……おねがいします……!」

 

 今すぐにでも、大丈夫って言ってあげたいのに声が出なくて、体もどんどん重くなる。

 

「―――!?―――!?」

 

 あれ、シエルさんの声が遠い、姿が見えないし、どこか行ったのかな。一人は、いやだな。寂しいし。誰でもいいから、そばにいてくれないかな。誰でもいいから、がんばったねって褒めて欲しいな。だれでも、いいから……オレを―――

 

 ――――――――――――(弱いオレをみつけて)

 

 

 




光園ミサ
小学3年生ながらに、経験豊富なテロリストに戦闘において肉迫し、傷をつけた。結果、完全に目を付けられ、ヘイローが壊れる寸前まで痛めつけられた。依存体質なので、黒野サユリの勧誘に心が揺らいだ。

羽佐間シエル
ミサの前以外ではわりとぼんやりしてる人。ミサの前では頑張って出来る女になってる。偶々ミサを見かけたミサ似の女の子が、ヘルメット団のことを知らせたことにより、ミサの状況を知った。黒野サユリに対し、ミサと先輩を重ねて、本気で切れた。ミサが血を吐いた後、ピクリとも動かなくなり、死ぬかもしれないと恐怖した。今回の件で、自分を責め続けている。

黒野サユリ
……ちゃんと最初にやべー女って書いたもん!私悪くないもん!相手を痛めつけるのが好きな生粋のサド。片角でクソ強い悪魔なので、書きながらモンハンのマ王思い出してた。あれはきっとみんなのトラウマ。ついでに作中でもトラウマを撒き散らした。脱げたヘルメットはミサにプレゼントした。当たり前だが、ヘルメットを脱いだ方が強い。ミサのことは今回で『おもしれー女』から『愛しい女』にランクアップした。


今回の話だけで3つぐらいBADEND分岐考えちゃって泣きたくなった。あと、ミサをイジメ過ぎて私のメンタルないなった。痛めつける話書くの苦手なんじゃ。イチャイチャ書きたい。ミカどこ?ここ?

3年生編はもうちょっと続く。出会いがあれば、別れがあるからね……。

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