先輩はおしまい!   作:朋也

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 普段より一時間程遅くなってしまいました。後、アニメが一話しかない事に絶望していたせいなのです。お許しを……

 二日連続投稿なので、多分土曜日には上がらないです。次の更新は日曜日の予定です。どうぞ良しなに。


あきなとヒミツの話

「明日からゴールデンウイークかぁ」

 

「どっか行くか?」

 

 テストも終わり、明日からの大型連休に放課後の教室に残っている生徒達は浮足立っていた。

 

「あきな予定とかあるか?」

 

「まぁ、一つくらいは……」

 

 俺の普段の休みのスケジュールは、掃除洗濯と勉強。偶にゲームと言った、比較的平均の男子大学生の私生活だ。でも、流石にゴールデンウイークともなれば、普段にはないイベントも控えている。

 

「旅行とか?」

 

「……友達と出掛ける」

 

「友達って、俺達じゃないのかよ」

 

 はははと笑うゆうた。大変嬉しい言葉なだけに、少しだけ後ろめたく感じる。

 

「クラスの人?」

 

「うん。まひろ達と」

 

「「え?」」

 

 ゆうたとみなとの声が重なる。二人は驚いた様子で後退る。

 

「まひろともみじに誘われてさ。河原でバーベキューするんだって」

 

 メンバーはまひろ達中学生組の五人と、みはりちゃんとかえでさんの二人を合わせた計七名。そこに俺がお邪魔する形だ。

 正直、俺はその会に居ていいのだろうか? 緒山や穂月姉妹とはそれなりに交友関係があるが、桜花、室崎、天川の三人とは殆ど話した事がない。仲良しグループの集いに、異分子たる俺が混ざるのは、気が引けるというのが正直な所なのだ。

 

「……」

 

「……? どうした?」

 

 俺が頭を悩ませていると、何やら神妙な面持ちで二人が俺を見ていた。

 

「なぁ、あきな。聞いてもいいか?」

 

「何?」

 

 只ならぬ雰囲気を纏っているゆうた。一体何を聞きたいのだろうか?

 

「ちょっと前から男子の中で噂があってさ」

 

「噂?」

 

「実は―――」

 

 そう言いながら、ゆうたが俺の耳元に近付いてきて、耳打ちをする。

 

「あきなと緒山が……付き合ってるんじゃないかって……」

 

「……へ?」

 

 ゆうたが耳元から離れて数秒経過するが、脳が理解をするのが余りに遅い。徐々に言葉の意味が分かるようになって、俺は慌てて頭と手を左右に振った。

 

「―――ッ!! ないないない!! 何だよそれ!」

 

「だって仲良さそうだし、いつの間にか名前で呼んでるし。後、放課後にクッキー渡してる所見たって奴もいて」

 

 証拠と言わんばかりに出てくる理由は、確かに俺とまひろが付き合っていても可笑しくない裏付けになっている。まさかそんな噂が蔓延していたとは……ッ!

 

「あれは違うんだよ! 別に男女の関係で渡したんじゃなくて、仲直りの証っつうか、何というか……」

 

 自分で言ってて恥ずかしくなってくる。今思えば、仲直りにクッキーを渡すのは、中学生男子的には恥ずかしい。大人になれば贈り物なんて当たり前にするが、子供の頃は恥ずかしくて出来なかった記憶がある。今、俺に芽生えている羞恥心は、身体だけでなく、心まで中学生に戻っているという証なのだろうか。

 

「―――とにかく! 付き合ってないって! それに、もみじも名前で呼んでるんだから、まひろだけが特別って訳じゃないだろ!? 誤解すんな!」

 

「お、おう。そうか。悪い」

 

 俺の剣幕に、ゆうたが引き気味に謝罪する。俺は俺で顔が熱くなっていた。

 

 今が放課後で、まひろ達が帰った後で良かった。こんな顔見られたら、間違いなく揶揄われていただろうな。

 

 

 

 

 

「……さぁ、どんどん焼いてくよ~」

 

 ゴールデンウイークの一日、俺はまひろ達一行と河原にバーベキューをしに来ていた。俺は飲物を片手にもみじに話しかける。

 

「本当に来て良かったのか?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、普段からのグループで楽しむのに、俺が居たら邪魔じゃないか?」

 

 女子は特に仲間意識が強そうなイメージがある。偏見かも知れないが、俺が居る事で、まひろともみじ以外の三人は、気分を悪くしては居ないだろうか?

 

「そんな事ないよ。こういうのは人が多い方が楽しいし、誰もあきな君が嫌なんていう子はいないよ」

 

 そう言いながらもみじが指さす方を見ると、かえでさんが焼いている肉の匂いに釣られてやってきた桜花を、かえでさんがステイさせ、その様子を室崎が笑って見ている。微笑ましいこの光景は、きっと俺がいるかいないかで変わったりはしないだろう。

 

「……それなら、いいんだけど」

 

 ふと、まひろにも目が向く。肉を見ながら瞳を輝かせているまひろの顔を見ていると、俺の悩みなんて、些細な事なのだと思い知らされる。

 

「まひろちゃん、楽しそうだね」

 

「……だな。なんか、まひろ見てたら馬鹿らしくなってきた」

 

「―――ん? 今、わたしの悪口言った?」

 

 敏感に波動を感じ取ったまひろがこちらを向く。俺は「言ってねぇよ」と返して、かえでさんの手伝いをする為に、眺めていた輪の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 一通り肉を焼き、皆がバーベキューを楽しんでいる。

 

「あきな君も食べな~」

 

 かえでさんが皿を渡してくれる。上には肉と野菜がバランスよく乗っていて、見ているだけで食欲をそそる。俺は有り難く頂き、食べ終わると同時に腕まくりをする。

 

「次は僕が焼きますよ」

 

「いいのぉ? じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 かえでさんから調理の権利を譲り受ける。暫く肉や野菜を焼いていると、皿を持ったまひろが近付てくる。

 

「あきな~。肉くれ~」

 

「もっと慎みを持った言い方をしろよな」

 

 口に食べかすを付けながら肉をせがむまひろ。俺は焼けた肉と野菜を仰せのままに乗せてやる。

 

「へへぇ、ありがとう」

 

「……おう」

 

 ひへらと笑うまひろ。その表情に思わず見惚れる。最近、不意に女子に見惚れる事が多い気がする。自覚すると恥ずかしい限りだが、女性恐怖症の克服という観点からは、進歩とっていいのだろうか。

 

「……みはり、野菜あげる」

 

「こら! お肉だけじゃなくて、野菜も食べなさい!」

 

 ぼんやりとそんな事を考えていると、俺が乗せた野菜を、みはりちゃんの皿に乗せ換えているまひろが目に入る。

 

「何やってんだぁ? アイツは……なら、こうすれば食べるか?」

 

 まひろの様子を見て、俺は予め準備してきた物を取り出す。網を鉄板に変え、十分に温まった所で、肉と野菜、そして麺を焼く。

 

「焼きそばー!」

 

 桜花の叫び声。クンクンと匂いを嗅ぎながら近づいてくる。

 

「せっかく鉄板を持ってきたんだから、使わなきゃ損だよな」

 

 ソースの香りが漂い出すと、皆が焼きそばの周りに集まってくる。

 

「お、あきな君お手製の焼きそば、楽しみ~」

 

「―――待っててください。それなりの物にはしますので」

 

 素早く焼き上げ、貰いに来た皆に均等に分ける。

 

「野菜、これで食えるよな?」

 

「……最高!」

 

 グッと親指を立て合う。完成した焼きそばを皆が美味しそうに食べている。その光景を見れただけでも、今日来た甲斐があったというものだ。

 

 

 

 

 

「食った後に水遊びかぁ。元気だねぇ」

 

 川ではしゃぐまひろ達を眺めながら、バーベキューの後片付けをする。

 

「藤村君も行ってきていいよ」

 

 一緒に片づけをしていたみはりちゃんに促されるが、流石にJCと一緒に水の掛け合いは気が引ける。二十歳過ぎの大人が、どんな顔でするのか見てみたいものだ。

 

「……僕は見てる方が好きなので」

 

「分かる~」

 

 はははと苦笑いしながら答えると、いつの間にか隣にいた室崎が同意する。彼女の目線の先では、まひろ達が水を掛け合って楽しんでいる。それをグルグルとした瞳で見つめている。

 

「それに、片付けもしなきゃですし」

 

「それは私達に任せていいんだよ?」

 

 かえでさんが余った食材をカバンに詰めている。その気持ちは嬉しいが、俺としては譲れない物もある。

 

「前回は洗い物が出来なかったので。料理は後片付けまでが料理です」

 

 帰るまでが遠足と同じ様に。料理も片付けまで終わらせるのが大事だ。

 

「本当にいい子だなぁ。お……まひろちゃんにも見習ってほしい所だけどねぇ」

 

 まひろを見ながら呟くみはりちゃん。まぁ、料理は出来るに越した事は無いけど、身近にみはりちゃん位何でも出来る人が居たら、俺だったら怠けてしまうかも知れない。どうしても自分しか出来る人間が居ない時、人は頑張れると思う。

 後片付けを終え、そろそろ一息つこうと思っていると、川から水を盛大に弾く音が聞こえてくる。

 

「んもー、何やってんの!」

 

「私の替えのシャツあるよー」

 

 何やら慌ただしい声が聞こえてくる。俺は何かあったのかと集まっている所に近付く。

 

「どうした?」

 

「まひろちゃんが転んじゃって」

 

「僕が悪いのです。力加減が分からずに……」

 

 もみじが状況を説明してくれる。どうやら川の中で転んでびしょ濡れになったらしい。天川が申し訳なさそうにしている。

 着替えはかえでさんが持っているらしいし、川に来るのだから、それなりの準備はしているだろう。俺が出る幕はなさそうだ。

 

「俺、暫く外すわ」

 

「何処行くの?」

 

「その辺。ほら、まひろ濡れてるし、その、物陰とかにはなるんだろうけど、着替えるんだろ?」

 

「……あ、そうだね」

 

 遅れて理解してくれたもみじ。俺は適当に歩き出す。

 

「俺が居ない方が着替えやすいだろうから、終わったら呼んでくれ」

 

 それだけ言い残し、その場を後にする。堂々とこの場で着替える訳ではないだろうが、男が近くにいると抵抗があるやも知れない。なら、出来るだけ遠くで時間を潰すのが最善と見た。

 

 女性恐怖症は特に関係ないが、中学生の女の子の裸を見てしまったら、色々ヤバい気がするので、その可能性は潰す方がいいだろう。

 

 

 

 

 

 離れた場所で川を眺めていると、天川が俺を呼びにやってきた。てっきりもみじが来るのかと思っていた俺は、少し驚いた。

 

「藤村さん、戻ってきて大丈夫なのです」

 

 何だかモジモジしながら歩いてきた天川に、俺はお礼を告げる。

 

「あぁ、ありがとう。えっと……」

 

「天川なゆたです。よろしくです。藤村さん」

 

「藤村あきな。よろしく」

 

 改めて自己紹介。天川とまともに喋ったのは、これが初めてだった。被っている黒い耳付きの帽子と、何処となくぼんやりとしたイメージが合わさって、猫を連想する女の子だ。

 天川を目の前にして、俺の心は正常だった。良かった。彼女には恐怖しない。やはり慣れが重要だったと言う事か。それに天川も、もみじくらいの発育で安心―――。

 

「……もみじ達は?」

 

「川で遊んでいるのです」

 

「まだ水遊びしてんのかよ。懲りないなぁ」

 

 はははと笑いながら自身の思考を誤魔化す。二人で戻ってみると、確かに川で遊んでいた。何だったら、みはりちゃんやかえでさんも川に入っている。

 

「……」

 

「天川は行かなくていいのか?」

 

 椅子に座る天川。水遊びする様子を眺めている。

 

「僕は、今はちょっと……」

 

 そう言いながら下を向く。もしかして、まひろを転ばせた事を気にしているのだろうか。

 

「別に気にする必要ないと思うぞ。友達同士のじゃれ合い何だし、まひろも怒ってないって」

 

 それに、転んだのはまひろが悪いと付け足す。天川は「まひろは怒ってなかったです」と、俺の意見を肯定する。

 

「うーん……。でも、気にはなるです」

 

「そうかぁ? こんなのよくある事だと思うぞ」

 

「よくあるのですか?」

 

「まぁ、男は特にね。友達なら気にしないレベルだよ」

 

 大学で友達が殆どいなかった俺が言うのは説得力に欠けるが、高校での記憶からすれば、そんな事もあったと笑い話になるくらいの話だと、俺は思う。

 

「後で思い返すと、何であんな事気にしてたんだろうって、どうでもいい事で拘ってたなぁってさ。だから、迷ったら行動するのが大切だって……悪い。変な事言ってるよな。俺」

 

 はははと情けなく笑って見せる。無駄に年長者の意識が出て、余計な話をしてしまった。だが、言った事には嘘は無い。

 

(ほんと、どの口が言ってんだか)

 

 人様に説法できる人間じゃないくせに、何を偉そうにしているのやら。

 自分の発言に後悔していると、天川が「そんな事ないです」と言ってくれる。

 

「とても参考になるのです。やっぱり、人生経験が豊富な人は違うのです。言葉に重みがあります」

 

 目を輝かせている天川。人生経験豊富とは、中々鋭い着眼点だ。

 

「でも、やっぱり心許ないです。スース―するのです」

 

「そりゃ、スース―する時もあるけど、今のスース―は明日には忘れてたり……ん? スース―する?」

 

 何だが、話が噛み合っていない気がする。スース―とは、どんな擬音の現れだ?

 

「何がスース―するの?」

 

「えっと、それは―――」

 

 天川は恥ずかしそうに俺に耳打ちする。スース―とは、スカスカみたいなもので、主に隙間風に近しい寒さを感じる時に使うらしい。

 例えば、ズボンではなく、下が開いているスカートタイプで、下着などを履いていない時に、用いる表現技法だとか―――。

 

「―――ッ!! は!? なん、え!?」

 

 説明を聞いて驚く。聞いた内容をありのまま話すと、まひろの下着が濡れて穿けなくなったから、自分の穿いていた下着を渡した。だから今、何も下に穿いていないと―――。

 

「……それはお前、凄いな」

 

「凄いのですか? 褒められてるです?」

 

 目を輝かせている天川。こんな事で褒められて嬉しいのか?

 

「ある意味称賛に値するけど、発想はヤバいな」

 

 想像の斜め上とはこの事だろう。どうしたら濡れた下着の代わりに自分のを差し出す展開になるのだろうか。女子中学生の考えは分からない。

 取りあえず、目の前の少女は下着を穿いていないと。だから俺を呼びに来た時モジモジしていて、今も下を気にしているのか。気になるってそっちか。俺のいい話返せ。

 

「……一応、俺も着替え持って来てるから、貸そうか?」

 

「いいのですか?」

 

「あぁ。ズボン穿けば、スカートよりマシだろ」

 

 河原で遊ぶと聞いていたので、上下とパンツの一式は準備してきた。使わないとは思っていたのだが、まさか役に立つ事になろうとは。

 俺は持ってきた荷物からズボンを取り出し、天川に渡す。

 

「ありがとうなのです」

 

「別にいいって。困った時はお互い様だろ?」

 

「お互い様……成程」

 

 ズボンを穿きながら、何かを閃いたと言った様子の天川。

 

「何だか、防御力が上がった気がするのです」

 

「そりゃ良かったな」

 

 ジャージ生地のズボンで、濡れてもいい用として持ってきた。サイズは若干大きいが、大きな差は無い。中学生の俺がちんちくりんで助かった。

 

「困った時はお互い様。藤村さんも何か困ったことがあったら、僕に相談して欲しいです」

 

「……おう、頼りにするよ」

 

 ふんと鼻を鳴らす天川。気合十分と言った様子だが、俺が彼女に何か頼み事をするイメージが湧かない。まぁ、気持ちだけ有り難く受け取って―――。

 

「一人暮らしの中学校生活は大変そうなのです。もし、何か不便な事があったら、僕に言って欲しいです。おねーさんに相談すれば、サポートできるのです」

 

「そりゃ、助かるな―――ん? 今、一人暮らしって……」

 

 何気なく言った天川の一言。それは、天川が知るはずのない情報。というか、俺の身元を知る関係者以外知らない情報のはず……。

 

「はいなのです。実験で中学校に通う事になった藤村さんを僕もこれからサポートして―――」

 

「ちょっと待て! 今、実験って? てか、おねーさん? はい?」

 

 出てきた重要単語だけを抜き取る。リスニングテストなら確実に回答になる単語が、俺の頭で繋がっていく。

 

 一人暮らし。実験。おねーさん。サポート。これらの事柄が結びつく時、結論は一つ。

 

「……もしかして、俺が大学生だって―――」

 

「はいなのです。おねーさんと同じ大学の八神あきなさん」

 

 当然と言わんばかりの顔に、俺は愕然とする。

 

「―――マジかよ」

 

 今までは少し天然が入っている愛らしい女の子くらいに見ていたのに、急に胡散臭い研究者に見えてきてしまうのだった。




 かえでの一人称が、原作では「私」と「あたし」の両方があります。何となくですが「あたし」の方がギャルっぽいですが、この小説内では「私」に統一致します。まひろが濡れる件で違和感を持った読者の方が居ましたら、申し訳ありません。

 他のキャラでも一人称の表記違いがあったりしますが、小説内では出来るだけ統一致します。(普通に誤字っている時もありますが……)なので、原作との違いがありましたら、申し訳ありませんが、ここではそのまま行きます。ご了承ください。
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