先輩はおしまい!   作:朋也

15 / 49
 何とか間に合いました。そろそろストックも無くなってきたので、死に物狂いで書かなくてはいけませんね。

 多分、四月からは三日に一話になりそうです。精神と時の部屋があれば、誰か教えてください。三年ほど籠ります。


あきなと真相と真実

 目が覚めると、真っ暗だった。

 視界に広がる漆黒。目を凝らすと、目線の先に丸型カバーの電気がある。

 暫くじっとしていると、段々と夜目に慣れていき、辺りが見えるようになっていく。

 知らない様な、知っている様な部屋だ。取りあえず電気を付けよう。慎重に立ち上がり、壁のスイッチを押す。

 

「……見た事ある様な部屋だな」

 

 光に照らされた室内を見渡す。壁には二次元の女性が描かれたポスターが貼られていて、漫画本が置かれた本棚や、パソコン。ゲーム機も置かれている。

 如何にも男子部屋といった内装だ。見覚えがあるのだが、何処でだっただろうか。実家の俺の部屋も似たような感じだし、それでだろうか。

 部屋の中を一通り確認し、俺は敷かれた布団の上に座り、今の状況を考える。

 

「何処だ? ここは……」

 

 目が覚めたら見知らぬ部屋で寝ていた。今からデスゲームでも始まりそうな導入だ。壁一面が真っ白とかだったら完璧だったのだが。

 冷静に状況を整理する。まずは確認だ。目を覚ます前。つまり意識が無くなる瞬間、俺は何処で何をしていた?

 

「確か、朝から熱があって。学校休んで。また寝て。起きたら夕方で。買い物に出て。それで……」

 

 買い物に出た所までは覚えている。薬と、特売の食材を買う為に外に出た。そこからどうしたか―――。

 

「―――何か、自動販売機があって、そこで何したっけ?」

 

 思い出そうと頭を捻るが、そこで記憶が飛んでいる。もう少しで思い出せそうなのだが、どうにも靄が掛かったみたいに出てこない。

 暫く悩んでいると、頭がぐらっと揺れる感覚に襲われる。額を触ると少し熱い。まだ熱があるみたいだ。枕元に、俺の頭に乗っていたと思しきタオルが落ちていた。

 

 状況から考えて、どうやら俺は看病されているみたいだ。布団の周りには、ペットボトルの水や体温計。風邪薬も置いてある。

 

「……もしかして、道で倒れて、発見した誰かに助けられたのか?」

 

 そう考えれば辻褄が合う。出先の途中で記憶が飛び、起きたら見知らぬ部屋で寝ていた。道で倒れていた俺を 誰かが見つけて自宅に運び、看病してくれたのなら、今の状況も説明がつく。

 

「……」

 

 もしそうなら、情けない話だ。自己管理不足で風邪を引いた挙句、高熱のまま家を出てぶっ倒れ、見知らぬ誰かに助けられる始末。買い物何てあかりに頼むでも良かったのに、意地張って一人でやろうとして、このざまだ。

 最初から誰かを頼っていれば、こんな事にはならなかったのに。どうにも最近の俺は、意固地になっていた気がする。

 

「困ったときはお互い様……ねぇ」

 

 天川に言った言葉が、ブーメランになって突き刺さる。人には偉そうに言っておいて、肝心の自分は誰かに頼りたくないと、頑なになっていた。

 何とも恥ずかしい。大人として子供にアドバイスしたつもりだったが、そもそも大人である俺が実践できていないじゃないか。

 悪い癖だ。何でも一人でやろうとするのは。今はもう、誰かに頼っていいだろう。それを俺は学んだはずだ。

 

「……本当に、しょうもない奴だなぁ」

 

 反省の意思として、両の頬を叩く。衝撃が脳まで伝わり、熱と相まって頭がクラクラするが、このくらいが丁度いい。

 気合を入れ直し、これからどうするか考える。色々確認したい事はあるが、まずはこの家の主にお礼を言いたい所だ。

 枕元に置いてあった時計は、夜中の一時を示している。もう夜遅くだし、家の方も寝ているか。

 一縷の望みを抱いて、部屋を出る。廊下も暗いが、奥の方に階段がある。ここは二階らしい。

 

「下の階でまだ起きてたりしないかなぁ……」

 

 静かに階段を降りる。見えてくる一階も電気は付いていない。

 

「流石にこんな時間に起きては―――あれ?」

 

 一階に到着する。暗くて見ずらいが、起きたばかりの時より夜目に慣れていた俺の瞳には、薄っすらだが一階の全貌が見える。

 見覚えがある。また同じことを言っているが、今回は、確実に覚えている。この家ってもしかして―――。

 

「―――緒山さん宅じゃね?」

 

 電気を付けると、見たことある風景が広がっていた。間違いない。前に来た緒山宅そのものだった。

 つまり、俺は道で倒れている所をまひろかみはりちゃんに拾われて、看病されていたという事なのか?

 

「……マジか。でも、そうなるよな」

 

 経緯は分からないが、そういう事なのだろう。申し訳ないと思う反面、知人で良かったとも思ってしまう。

 とにかく、助けてくれた相手が分かったのは有り難い。取りあえず今日は寝て、明日感謝伝えよう。

 そう思い至った俺は、階段を登る。暗い階段をそろりそろりと登っていると、突然、視界が明るくなる。見上げると、階段の電気を付けた人と目が合う。

 

「み……お姉さん」

 

「……目が覚めたんですね。体調はどうですか?」

 

 労わる様な口調で聞いてくるみはりちゃん。俺は「大分マシになりました」と告げる。

 

「それは良かったです。もぉ、焦りましたよ。かえでが運んで来た時はどうしようかと……」

 

「かえでさんが?」

 

「そうなんです。かえでが―――」

 

 言いかけて、途中で言葉を切る。不自然な動作に首を傾げる。

 

「―――藤村君。ちょっと話があるんですけど、いいですか?」

 

「……? はい。いいですけど」

 

「ありがとうございます。じゃあ、リビングで話しましょうか」

 

 そう言いながら、みはりちゃんが降りてくる。俺もみはりちゃんに押される様に階段を降りた。

 

 

 

 

 

「何か飲みますか?」

 

「……じゃあ、冷たい飲み物を」

 

 台所に消えるみはりちゃん。ソファーに座って待つ俺は、居心地の悪さを感じていた。

 みはりちゃんの様子がおかしい。何故、敬語なのだろうか。それに、何処となく緊張感がある様な。

 

「どうぞ」

 

「……ありがとう、ございます」

 

 出された麦茶を飲む。向かいに座るみはりちゃんも同じく麦茶を飲んでいる。

 

「……」

 

「……」

 

「……あの」

 

 無言に耐えられなくなり、俺から話を切り出す。

 

「お話とは、一体……?」

 

「……藤村君。最初に謝らせて下さい。―――ごめんなさい」

 

 そういいながら深々と頭を下げる。何が何だか分からず動揺する俺に、頭を上げたみはりちゃんが、パジャマのポケットからある物を取り出し、テーブルに置く。

 

「……これ、俺の財布?」

 

 そう言えば、出かける時に持って出た。買い物に行く予定だったので当たり前だが、今まで忘れていた。

 

「―――ごめんなさい。私、勝手に財布の中身を見てしまいました」

 

 伏し目がちに告白する。財布の中身を勝手に見た。確かに良い行いではない。謝罪するのは当然だろう。

 

「……別に何か取ったとかじゃないんですよね?」

 

「勿論」

 

「なら、別にいいですよ。怒る程の事じゃないですし……」

 

 中身を取ったのでないなら、見られて恥ずかしいものが入ってる訳でもないし、みはりちゃんが何か悪さするとも思えない。隠蔽するならまだしも、本人から白状しているし、咎める必要もないと判断する。

 しかし、そうなると疑問が残る。

 

「どうして、財布の中を?」

 

 他人の財布の中を見る理由とは何だ? 盗む目的なら金銭を確認するが、そうでないのなら―――。

 例えば、落し物の財布があったとして、交番に届けた時、警察官が身元を確認する為に中に入っているであろう情報源を確認するとかか? 免許証とか? ……ん?

 俺の財布には、車の免許証が入っている。大学一年生の時に取った免許証だ。今の俺には利用する事の出来ない身元確認証だが、わざわざ財布から出していなかった。

 

「……中を見たのは、確認する為です」

 

 目を伏せていたみはりちゃんが、真っ直ぐにこちらを向く。その視線に、俺は冷や汗が止まらなかった。

 身体が危険信号を発している。風邪のせいではない。もっと直接的に、目の前の脅威に反応している。

 

「単刀直入にお聞きします」

 

「……」

 

「藤村あきな君。君はもしかして―――」

 

「……」

 

「八神あきなさん、ですか?」

 

 みはりちゃんの視線から、目が離せない。今まで、堂々と真正面から、正体を聞かれる事がなかった。だからだろうか。

 よく分からない感情が渦巻いていた。まるで、秘密の悪戯が先生にバレた時の様な。罪悪感と、後悔と、これから叱責される恐怖に怯える。そんな感じだ。

 

「……ナンノコトダカ、ワカラナイナー」

 

「あきなさんって、嘘、下手ですよねぇ……」

 

 呆れた様に溜息を吐く。俺自身でも分かってはいるが、今回ばかりは、誤魔化せると思って言っていない。

 

 緒山みはり。同じ大学の同期で、あかりと同じく飛び級で大学に入学した才女。一年の時から、同期の好とちとせ先生の繋がりで知り合いになった。身体が中学生になってから、一時期は同じ研究室のみはりちゃんも共犯ではないかと疑っていた。ちょっと前に疑惑は晴れて、安堵してたはずなのに。まさか、俺側からバレる事になろうとは……。

 

「……流石は天才少女。俺の正体を見破るなんて」

 

「正直、たまたまですけどね。お……まひろちゃんの証言で疑惑になって、免許証を見て確信に変わったって感じです」

 

「まひろの証言?」

 

「部屋で看病してる時、あきなさんが目を覚まして、少しの間お話してたんですよね? その時『私が同じ大学の同期』って言ってたらしいですよ。まひろちゃんは、あきなさんの寝言だと思ってるみたいですけど」

 

 みはりちゃんからの説明を受け、ぼんやりと思い出す。そう言えば、まひろと話した気がする。そんな危険な事を言っていたのか。風邪で思考力が低下していたとはいえ、迂闊にも程がある。

 でも変だな。まひろと話したのは夢の中だったと思うのだが、どうして現実のまひろがその話を?

 

「あれは夢だったはず……」

 

 あの時は夢と判断したが、頭も冷えた今、冷静にあの時の事を思い返す。

 パジャマ姿で髪を下したまひろに、彼女に不釣り合いな内装の部屋。熱が出ている時に見る夢としてはおかしくないはずだ。

 しかし、目が覚めている今の俺も、男性の部屋っぽい所にいたよな? というか、さっきまでいた部屋って、夢の中の部屋と同じじゃないのか?

 

「……みはりちゃん、つかぬ事を伺うんですが、俺が居た部屋って、誰の部屋ですか?」

 

「まひろちゃんの部屋です」

 

「あんまり女の子の部屋には見えませんでしたが?」

 

「あぁ、それは、えっと―――そう! お兄ちゃんの部屋なんですよ! 私、お兄ちゃんが居るって言った事ありますよね。その部屋をまひろちゃんが使ってるんですよ!」

 

 成程。それならあの内装も理解できる。あの部屋は流石に女子中学生の部屋とは思えないし。

 そうなると、俺が夢と判断した、まひろと不釣り合いな部屋の存在は、現実でもあり得ると証明された訳だ。つまり、あの一時は夢じゃない可能性が高い。というか、みはりちゃんの言い分を信じるなら、現実だったという事になる。

 俺、何してたっけ? 確か……そうだな。

 

 まひろの事を可愛いとか、髪が綺麗とか、手を握って、安心するとか言った様な―――。

 

「―――ッ!!! うぎゃあああ!!!」

 

 とんでもない事口走ってんじゃん!! しかも、普段言えないとか思ってたし!! 俺、普段からそんな事思ってたのか!? いや、でも、そんな訳ない。中学生の女の子を、大学生の大人が可愛いとか、そんな事は―――。

 

「ど、どうしましたか!?」

 

 頭を抱えて叫び出す俺の様子に驚くみはりちゃん。

 

「―――な、何でもない。忘れてくれ。俺も忘れる」

 

「忘れる訳ないですよ。大丈夫ですか? まだ熱あると思うので、安静にしてください」

 

 俺の身体を労わってくれる。その気持ちに涙を流しながら、俺は自分の言動に涙を禁じえなかった。

 頭の中は、まひろへの言い訳でいっぱいだった。明日、どんな顔して会えばいいのか。

 

「部屋に戻りましょう。話は明日、ゆっくり聞きますから」

 

「―――あぁ、そうするよ」

 

 フラフラと立ち上がった俺を支えてくれる。みはりちゃんの誘導でまひろの部屋まで戻り、置いてあった風邪薬を飲む。

 

「それじゃあ、私は部屋に戻ります。何かあったら声掛けてください」

 

「―――みはりちゃん」

 

「何ですか?」

 

「聞かなくていいのか? どうして、こんな身体なのか、とか」

 

「……そうですね。気にはなりますが、今は風邪を治すのが先決です。それに―――」

 

「それに?」

 

「私にも、無関係じゃないですから」

 

「?」

 

「おやすみなさい。あきなさん」

 

 そう言い残し、部屋を去っていく。最後の言葉の真意は分からないが、みはりちゃんの中では、ある程度話が繋がっているのかも知れない。

 人一人を中学生にしてしまうなんて、あの大学では、あの研究室の住人以外有り得ない。その事は、俺以上に知っていそうだ。

 

「―――やっぱり、悪の組織なんじゃないか? あの研究室は」




 次回は木曜日ですね。アニメ十三話が楽しみですね!!

 なゆたんが出てくるのかな? ワクワクが止まりませんよね!?

 いやー、楽しみだなぁ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。