先輩はおしまい!   作:朋也

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 お休みの日のアップ時間はまちまちです。統一した方がいいですかね?
 起きたら午後だったのです。不思議ですねぇ……。


あきなと男の友情・・・と?

 放課後のチャイムが鳴る。明日からの休日に、教室内の空気は浮足立つ。

 カバンに教科書類をしまっていると、いつのも如くゆうたとみなとが集まってくる。

 

「あきな~、帰ろうぜ~」

 

 三人で教室を出て岐路に付く。俺達は明日からの休日の予定を話し合っていた。

 

「明日どっか行かね?」

 

「いいね。ゲーセンとか?」

 

「それもいいけど、金がなぁ……」

 

 貯金はあるが、バイトの出来ない中学生の身なので切り詰められるところは切り詰めている。ぱーっと遊びたい気もするが、今月は上手くやり繰りしたい。

 

「なら、家で遊ばねーか?」

 

 ゆうたが自分を呼び差す。確かに家で遊ぶのはリーズナブルに済む。

 

「最近新しいゲーム買ったんだけどさ。オンラインよりオフラインで皆と遊びたいんだよ」

 

「パーティーゲームみたいなやつ?」

 

「そうそう」

 

 小首を傾げるみなとに同意するゆうた。最近のパーティーゲームはオンラインでも楽しめる。一昔前はコントロールだけ持って友達の家に集まるのが定番だった。

 

「やっぱりゲームは顔を突き合わせてこそだよな」

 

 ゆうたの家で遊ぶのは大賛成だ。友達と駄弁りながらゲームするのは楽しいし、何より金が掛からない。

 

「じゃあ、明日の午後に家でいいか?」

 

「うん」

 

「……」

 

「……? あきなどうした?」

 

 押し黙る俺の態度を訝しむゆうた。みなとも俺の顔を不思議そうに見ている。

 

「……なぁ、もし良かったら何だけどさ」

 

「「?」」

 

「今日、家に泊まりに来ないか?」

 

 

 

 

 

「お邪魔しま~す」

 

「お邪魔します」

 

 ゆうたに続いてみなとが入ってくる。二人は一度家に帰り、身支度を整えてから家に来た。

 

「よぉ。適当に座ってくれ」

 

 部屋の中心に置かれたテーブルの前に座る二人。客人用のコップに注いだ麦茶を差し出す。

 

「さんきゅー」

 

「ありがとう」

 

 二人揃って麦茶を飲む。台所からお菓子を持って来て、適当に何個かテーブルに置く。

 

「俺もお菓子持ってきたぞ」

 

「僕も」

 

「皆で食べようぜ」

 

 お菓子の袋を何個か開けて、適当に食べる。まさしく友達の部屋での集会といった感じだ。

 暫くお菓子を食べながら談笑していると、ゆうたがソワソワし始める。

 

「どうした?」

 

「お姉さんはいつ帰ってくるんだ?」

 

「そう言えば、二人暮らしなんだよね」

 

「あぁ……それがな」

 

 またしても押し黙る俺を訝しむ二人。俺は少し息を吸って、呼吸を整えてから二人に正座で向き直る。

 今日二人を家に呼んだのは、これが目的だった。

 

「実は……姉は居ないんだ。姉弟は居るんだけど、一緒には暮らしてない」

 

「え? どういう事?」

 

「俺……一人暮らしなんだ」

 

「一人暮らし……?」

 

「このアパートの部屋で一人暮らししてるんだ。親が海外なのは本当なんだけど、姉は一緒には暮らしてない。中学生の一人暮らしって世間体が悪いから姉と二人暮らしって事にしてたんだけど、本当は俺、一人でここに住んでる」

 

 俺の告白を黙って聞いている二人。俺は膝の上の両手を握り締める。

 

「嘘ついてごめん。騙しててごめん。今まで自分に都合がいい言い訳してたんだ。本当にごめん」

 

「「……」」

 

 誠心誠意の謝罪をする。ほぼ土下座に近い体勢になる。

 

 正直、このまま嘘を吐き続けていた方が良かった。もしバレそうになったらその時暴露すれば良かった。でも、俺は嘘が下手だし嘘を吐き続ける事のしんどさを誰よりも知っている。今は何ともないけど、いつかため込んだ感情が爆発する気がする。これは一種のガス抜きなのだ。

 きっかけは、この前みはりちゃんに正体がバレた事。俺はみはりちゃんに真実が伝わると嫌われるんじゃないかと思っていた。でも、みはりちゃんはこんなどうしようもない俺を受け入れてくれた。友達の前で嘘を吐かなくていいと言われている気がした。

 だから……って訳でないけど、少しづつでも自分の中の偽りを無くしていこうと考えた。今日はそれの第一歩。友人二人に、今までの嘘を露呈し、謝罪する。

 

 俺と二人の間に沈黙が流れる。俺は下げた頭を上げられないでいた。

 二人がどんな顔をしているか分からない。みはりちゃんは認めてくれたけど、必ずしも同じとは限らない。騙していた人物を嫌いになるのは当たり前だ。二人に嫌われるのが……怖い。

 

「……あー、えっと。あきな? 取りあえず顔上げろよ」

 

「何かよく分かんないけど、別に謝る必要ないんじゃない?」

 

「……どうして?」

 

 恐る恐る顔を上げると、何とも言えない表情をしている二人。

 

「事情があったんだろ? 世間体って言ってたじゃん? 俺もなんとなく分かるよ。中学生が一人暮らしって信憑性ないもんな」

 

「他にも事情があるのかもだけど、それはあきなにとって都合が悪かったんでしょ? だったら仕方ない事じゃない?」

 

「……怒ってないのか?」

 

「何で?」

 

 キョトンと小首を傾げるゆうた。

 

「だって……騙してたし……」

 

「本当は一人暮らしだったって、怒る程の嘘か?」

 

「正直、そうなんだ~って感じだよね」

 

「それは……そうかもだけど」

 

 確かに怒る程ではないかも知れない。俺が本当に怯えていたのは、嘘を吐いていたという事実で、その事に不快感を示される事だ。

 

「嘘を吐いてた事……怒ってないのか?」

 

「別に? なぁ?」

 

「嘘の一つや二つ。誰にだってあるよね」

 

 顔を見合わせて笑う二人。その様子に俺の危惧は杞憂だった事を悟る。

 

「……そうだよな。そうかもな」

 

「そうそう。寧ろ、一人暮らしなんてすげーな。よくできるわ」

 

「何なら、今度からここを溜まり場にする?」

 

 感心すると言った様子のゆうたと、怪しげな笑みを浮かべるみなと。二人はいつも態度で俺に接してくれる。

 

「……まぁ、一人は慣れてるからな」

 

 そんな様子に、俺は安堵したのと同時に感謝を覚える。俺の人生、友達との交友が少なかったから分からなかったけど、友情とは嘘の一つや二つで壊れる事は無いらしい。最初から大袈裟だったみたいだ。

 

 何事も不慣れな俺にとって、この経験は貴重なものとなった。これからもずっと二人とは友達でいたい。心からそう思った。

 

 

 

 

 

「ご馳走様~」

 

 それぞれに夕食を食べ終わる。食器を洗っていると、みなとが手伝いってくれる。

 

「あきなの料理、本当に美味しいね」

 

「毎日作ってるからな」

 

「前に言ってた家事全般をしてるって、一人暮らしだからって事か」

 

 寝っ転がりながらスマホを見ているゆうた。みなとが「ゆうたも手伝いな」とお母さんみたいな指摘をすると、のそりと立ち上がって台所に向かってくる。

 

「三人は狭いから、ゆうた先に風呂入って来いよ」

 

「え? いいのか?」

 

「まぁ、確かに三人は無理か……」

 

 みなとが不満そうな表情を浮かべる。俺は手でゆうたを促すと、お先~と言い残して洗面所に消える。

 

「みなとも風呂行っていいぞ」

 

「泊めてもらうんだから洗い物くらいするよ。……というか、ゆうたと二人で入る訳ないじゃん」

 

「ふーん。じゃあ、俺行ってくるわ」

 

「え?」

 

「洗い物頼んだぞ」

 

 そう言い残し洗面所の向かう。みなとが何か言いたげだったが、一食一般の恩義を返してくれるなら任せてもいいだろう。

 服を脱いで洗濯カゴに入れる。家には洗濯機が無いので、後でコインランドリーに洗濯しに行かなくてはならない。昨日、三日分の洗濯をしたので今日の分は三日後か。洗濯機欲しいなぁ。

 

「おじゃましま~す」

 

「……うひゃあ!?」

 

 風呂場に入ると、湯船に浸かっているゆうたと目が合う。そのゆうたの視線が徐々に下方向に向かっていくのを見逃さない。

 

「エッチだねぇ」

 

「お前だろ!?」

 

 シャワーを浴びる。二人で入るには家の風呂は狭いので、ゆうたが出るのを座って待つ。

 

「何で入ってきたんだよ……」

 

「男同士だし、別にいいだろ」

 

「……まぁ、俺はいいけど」

 

「一度に数人で入った方が水道代節約になるんだよね」

 

 準繰りで入ると湯船も冷めるし、その都度追い焚きするのはガス代が勿体ない。

 

「一人暮らしの知恵ってやつ?」

 

「誰かと入るのは想定してないけどな。一人暮らしだし」

 

 暫く二人で風呂に入る。裸の付き合いは本音が出ると言うが、俺達は徹頭徹尾他愛のない会話をしていた。

 

 本当にただの雑談。でも、これくらいがリアルの中学生だよな。中身の嘘もいつか、告白できる日が来るだろうか。

 

 

 

 

 

 三人が風呂から上がり、後はもう寝るだけとなった所でゆうたが持ってきたゲームをプレイした。ゲームは予想以上に盛り上がり、日付を超えるまで続けていた。

 

「ふ~、疲れたなぁ。そろそろ止めるか」

 

 大の字になって寝っ転がる。やっぱり皆でゲームをするのは楽しい。基本は一人用のRPGばっかりなので、パーティーゲームは新鮮で楽しかった。

 

「夜はまだまだこれからだろ?」

 

「まぁ、疲れたのはそうだからゲームは止めようか」

 

 まだまだ元気一杯のゆうたに、休憩を促すみなと。コントローラーをテーブルに置き、大量のお菓子を食べながら休憩する。

 

「……友達とのお泊り会って、何すんだ?」

 

「お前、自分で誘っておいて何も考えてなかったのか?」

 

 唖然とするゆうた。正直、二人への告白を主な目的としていたので、達成して以降の時間は流れるままにお泊り会を楽しんでいた。もう何もやる事がない。

 

「漫画読んだりゲームしたり、今と変わらないよね。飽きたら寝るって感じで」

 

「そんなもんなのか?」

 

 男のお泊り会なんてそんなものか。例えばこれが女子会とかなら、恋バナとかするんだろうなぁ。漫画では定番だ。

 男同士の定番は何かないだろうか……。

 

「……そうだ。いいもんあるぞ」

 

「いいもの?」

 

 小首を傾げるゆうた。俺はノートパソコンを起動させ、収納スペースの服が畳まれて置いてある所の下にある箱から、ゲームのパッケージを取り出す。

 

「男の集まりといったら……エロだろ!」

 

「え?」

 

「エロゲやろうぜ!」

 

 堂々とR18のゲームを見せつける。二人はポカンとした表情で固まっている。

 

「これ、エロもいいけどシナリオも面白いんだよね。結構泣ける所もあるから好きでさ―――」

 

「ちょ、ちょっと待てよ!」

 

 起動の準備をする俺を制止するゆうた。見てみると、顔が若干赤くなっていた。

 

「何でそんなの持ってるんだ?」

 

「あー、えーと……昔買ったんだよね」

 

「俺達中二だぞ!? 昔っていつだよ!」

 

「これは二年前かなぁ? 発売日に買ったの懐かしいなぁ~」

 

「小学生!?」

 

 驚きの声を上げるゆうた。確かにゆうたの歳で換算すると小学校六年生か。俺の二年前は高校生だから、ギリギリセーフである。

 

「まぁまぁ、細かい事はいいだろ? 今、ここにあるんだから入手手段はどうでも」

 

「そういう問題なのか……?」

 

 納得いっていない様だが、詳細な説明を出来ないので力づくで話を進める。

 

「とにかくやろうぜ。夜はまだまだこれからだしな」

 

 

 

 

 

 テーブルにノートパソコンを置き、中心に俺、サイドにゆうたとみなとの布陣でエロゲーをプレイする。身体が縮んだ初日にライトな教材は没収されていたので、残っているのはハードなものばかり。このゲームはその中でも比較的初心者にも優しい物だ。

 

 暫く三人でプレイしていると、ゆうたが一人の女性キャラを指さす。

 

「この子……ちょっと緒山に似てないか?」

 

「え!? ……確かに」

 

「おいおい、何言ってんだゆうた。そんな訳……本当だ」

 

 三人で目を丸くする。確かにそこはかとなく似ている。既プレイの俺も言われて気が付いた。

 サブキャラでヒロインの妹。明るい性格で主人公に好意的だが、何処か陰のある二面性を持ち合わせたキャラクター。

 

「……おい、どうしてくれるんだ。まひろにしか見えなくなっただろ」

 

「悪い。でもサブキャラだし、そういう関係にはならないんだろ?」

 

 そういう関係とはつまり、エロゲー特有の関係だろう。所謂濡れ場はない。と、思っている様だが……。

 

「それが……ネタバレになるんだが、こいつは隠しキャラでルートがあるんだよね」

 

 メインヒロインを攻略した後で分岐できる隠しルート。このキャラも攻略対象であり、俺はそのシナリオを知っている。

 

「……どんな話なの?」

 

 みなとがおずおずと聞いてくる。俺は生唾を飲む。

 

「この子が主人公に好意的なのは理由があって、この子は本当は男なんだよ」

 

「「え!?」」

 

「見た目は可愛いけど、生えてるんだよなぁ……。本当は男だから、主人公に積極的なんだよねぇ」

 

 妹ではなく弟。俺も最初は驚いたもんだ。

 

「男なのにルートがあるの!?」

 

「そう。友情と愛情の間で揺れる主人公の心情がな……あぁ、思い出して泣けてきた」

 

 中々に感動するルートだった。出来れば二人にもプレイして欲しいが、もうそれも叶わない願いだ。

 

「……この子のルートは行かないぞ」

 

「……え? 何で?」

 

「同級生をエロゲのキャラに重ねるのは罪深すぎる」

 

 流石にその遊びは危険だ。十代の少年たちが覚えていい性癖ではない。一度歪んだ性癖は、二度と戻る事は無いのだから。

 そんなこんなで夜中までエロゲを三人で楽しんだ。笑ったり泣いたり、二人がトイレに駆け込んだりと、様々なハプニングを潜り抜けて俺達はより一層絆が深まった……気がする。

 

 エロの話は外さない。友情を育むのは下ネタなんだと認識できた。

 

 

 

 

 

 休み明け。月曜日特有の気怠さを感じならが登校する。

 自分の席に座っていると、まひろが遅れて登校してくる。

 

「おはよ~」

 

「おはよ」

 

 軽く挨拶を交わす。少し前まで何故かまひろを無駄に意識してまともな会話が出来なかったが、最近は慣れてきて普通に喋れるように戻ってきた。

 

「……」

 

「……なんだよ?」

 

 まひろの顔をじっと見る。俺の視線にまひろが身を引く。

 

「お前さ……実は男だったりしない?」

 

「え!? な、ななな何で!?!?」

 

 とんでもなく動揺しているまひろ。思っていた反応と違う。てっきり失礼だろ!と怒られるかと。分かっているなら言うなという話だが、思わず口から出てしまった。

 

「……いや、何でもない。忘れてくれ」

 

「どうしてそう思った!? きっかけある!?」

 

「きっかけ……ないっす」

 

「嘘だぁ!! お前嘘吐くの下手なんだよ!」

 

 窓の外を見て誤魔化すが、肩を掴んで揺らしてくる。どうしてそんなに必死なのか分からないが、理由は口が裂けても言えない。

 

 この休み中、エロゲをずっとプレイしていたのが原因とは、口が裂けても言えないよぁ。




 次回は12日にアップ予定です。平日なので多分朝に上がります。よろしくお願いします。

 裸の付き合いっていいですよね。あきな君は友情の飢えているのかも知れません。
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