先輩はおしまい!   作:朋也

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 注意! この話は都合上、どうしても原作コミックの5巻。49・50話「まひろとプール授業」のネタバレが含まれます。ネタバレがダメな方は、原作をご購読してから読んで頂く事を推奨いたします。

 そもそも、僕の小説より原作の方が一億倍面白いので、これを読んでいる暇があるなら少しでも原作を買って読んでする方が遥かに有意義な時間を過ごせますのでマジでオススメです!! これはガチです!!

 今回の話のタイトルなのですが、原作では「未知との遭遇」というタイトルがあるので紛らわしいですよね。すみません…。僕の頭ではこのタイトル以外思いつきませんでした。

 一応、前後編なのでモヤっとしたらごめんなさい。頑張って続き書きます!







まひろと既知との遭遇

 七月。まだ肌寒さも少し残る頃合いの中、今日からプールの授業が始まる。

 

「……とうとうこの日が来てしまった」

 

 授業終了のチャイムが鳴る。十分の休憩時間を挟むと、次の授業は体育。クラスメイトが次々と教室を出ていく。

 

「まひろちゃ~ん。早く行こ~」

 

「……うん」

 

 もみじの誘いに乗り気でない。かといって動かない訳にはいかず、重たい身体を動かす。

 プールの授業。とうとう着るのか? スク水を……。人前で……。

 今まで女の子としての服装は色々着せられてきた。最初は抵抗があったブラジャーまでも付けているが、どうしてもスク水は踏み越えてはいけない一線な気がする。

 

「はぁ、本当にいいのか、オレは……ん? 何してんだ? あきな?」

 

 頭を抱えていると、ふと後ろの席のあきなが目に入る。正確には、あきなの机の上の様子が見えた。

 

「写経」

 

「……え?」

 

 思わず聞き返してしまう。今、何て言った?

 

「写経」

 

「しゃきょう……?」

 

 しゃきょうってなんだっけ? 漢字は写経で合ってるかな。お経を写すみたいな意味かな?

 黙々と漢字をノートに書いているあきなの様子から、多分写経で合っていると思う。

 

「なんで、そんな事してるの?」

 

「……」

 

 返答はない。淡々と、ただひたすらに写経をするあきな。

 

「まひろちゃん、早く行こ?」

 

「え? う、うん」

 

 もみじに促され、その場を後にする。教室を出る前に振り返ると、変わらず漢字を書き写すあきながいた。

 

 

 

 

 

「まさか、そんなタイミングで薬の効果が切れるなんてね~」

 

「笑い事じゃないぞ!?」

 

 はははと笑うみはり。冗談冗談と手をひらひらさせるが、当事者のオレからすればたまったもんじゃない。

 

 プールの授業中、薬の効果が弱まり『アレ』が生えてきてしまった。授業は途中で退席できたが、万が一を考えて学校も早退し帰って来るや否や薬を飲んで今に至る。また暫く男に戻る事は無くなったが、緊急事態により仕方なしと判断。決して女の子の身体の方がいいという訳ではない。決して。

 

「これからは何か違和感とか、変な事があったら直ぐに教えてね」

 

 今後は少しの変化も報告した方が良さそうだ。今回は大事には至らなかったが、プールの授業中に完全に男に戻る事があったら、冗談無しに人生の終わり。想像するだけで今は健在のアソコがヒュンと寒くなる。

 

「だったらプールの授業は全面見学とかの方がいいんじゃ?」

 

「授業をズル休みするのは良くないよ、お兄ちゃん」

 

「ズル参加してるくらいなんだけど……」

 

 とにかく、これからは些細な体調の変化もみはりに相談しよう。変な事があったら覚えておいて、報告を―――。

 

「……変な事」

 

「何か前兆があったの?」

 

「いや、オレじゃないんだけど……みはり、写経ってどんな時にするんだ?」

 

「え? 何、急に」

 

 小首を傾げるみはり。正直、オレも首を傾げたい案件だ。

 

「あきながプールの授業前にしてたんだよ。……そう言えば、終わった後に教室に居る時もしてたな」

 

 授業が終わって教室に戻ると、既に机に座って写経していた。話しかけても答えてくれないし、邪魔しちゃ悪いと思ってそっとしていたのだが……。思い返すと……思い返さずとも変な事をしていた。

 そう言えば、授業中プールサイドに体操着で座っていた。見学と言う事は、何処か体調が優れなかったのだろうか。

 

「私も詳しくないけど、確か心を落ち着かせる為に御経を書くみたい。精神安定法の一種かな? ストレス解消効果もあるとか聞いた事あるけど」

 

 紙に字を書き写す動作にそんな効果があるのか。それは分かったけど、どうしてあきなは写経を?

 

「アイツ……もしかしてストレスでも溜まってるのか」

 

「……あー、無きにしも非ずかも」

 

 確かにと言いたげなみはり。二人はオレの知らない所で交友があるらしい。何か知っているのか。

 

「人には人の苦労があるんだろうなぁ」

 

 誰しも抱え込んでいる苦労がある。それが必ずしも人に言える物とは限らず、自分の中でため込んでストレスとなる。オレも人には言えない苦労のせいで早退した訳だ。まぁ、オレにはみはりがいるけど、あきなには苦労を分かち合える人は居るのだろうか。

 

「……なら少しでも」

 

 あきなの力になってやりたい……なんて、お節介な事は言わないけど折角出来た男友達なんだ。最近までニートだったオレに出来た同性の友達。……同性だよな? 合ってるよな?

 友達に歩み寄る。その第一歩になるかも知れない。

 

「頑張ってね。お兄ちゃん」

 

「……まだ、何も言ってないぞ」

 

 優しく微笑むみはりの表情が、その全てを見透かしているみたいな目が少し腹立たしかった。

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 気が重い。どうしてもプールの授業は慣れない。こういう時は男の自我を消したい。

 

「まひろちゃん、次体育だから移動だよ」

 

 机で突っ伏しているオレの所にもみじがやってくる。次の授業は体育。つまりプールかぁ。

 

「見学じゃダメかなぁ」

 

「体調悪いの?」

 

「そうじゃないけど……」

 

 絶好調でも遠慮したいが、もみじに説明は難しい。……いっそ心も女の子なら、こんな気苦労は無くなるのか?

 

「……いやいや、それはおかしい!! 何を考えているだオレはぁ!!」

 

「元気そうだね」

 

 頭を抱えて身悶えるオレ。もみじはその様子を見て安堵している。

 

「……体調って言ったら、あきな君今日はお休みだね」

 

 オレの後ろの席を見ながら呟く。今日、あきなは欠席だ。ホームルームで先生が「体調不良の為」と説明していた。

 体調不良。少し前の事が思い出される。あきなが風邪で休み、お見舞いに行ったら道で倒れていた。体調不良だけでは判断できないが、また風邪を引いているのだろうか。

 

「心配だね」

 

「……そうだなぁ」

 

 もし、前みたいに道端で倒れていたら……。流石に本人も体調が優れない時に外出するのは懲りているだろうし、大丈夫だとは思うけど。

 

「なぁ、もみじ。放課後時間があるか?」

 

「え?」

 

「お見舞い。リベンジしないか?」

 

 前回は結局お見舞い出来ずじまいだった。今度こそ安静にしている様子を見に行きたい。

 

「それなら、皆で行かない?」

 

「大勢で押しかけたら迷惑かもだけど……まぁ、許してくれるか!」

 

 オレも風邪を引いた時、もみじ達が全員でお見舞いに来たことがあったし、大丈夫だろう。

 

(……それに、女の子が大勢家に来た時のアイツがどんな反応するか。ちょっと見てみたいし)

 

 普段すかしているあきなの狼狽する姿が楽しみだ。その時は思う存分揶揄ってやろう。

 

 

 

 

 

 放課後。もみじ、あさひ、みよ、なゆたんを含めた五人であきなの自宅に向かっていた。

 

「藤村くん、大丈夫かなぁ? 前は道で倒れてたんでしょ?」

 

「あの時は本当に焦ったよ~。お姉ちゃんが居なかったらどうなってたか」

 

「あきなの家かぁ! 料理はあるのか!?」

 

「体調が優れない藤村くんに料理をして貰うのは酷だと思うです」

 

 あきなの住んでいるアパートに到着する。相変わらず女性と二人で住んでいるのが心配になる古びたアパートだ。

 

「若い女の人が住むには危なっかしい気が……ん?」

 

 外観を眺めていると、アパートの前に一人の女性が立っているに気が付いた。

 別に女性が居るだけなら気に留めないのだが、女性に風貌にとても既視感を覚えたのだ。

 

 身長はオレと同じくらいで、ボサボサの髪。一人で歩いていたら補導されそうな見た目だが、服装が余りにも似つかわしくない。

 白衣。白衣を着ている。年齢に見合わない白衣の格好は、どうしてもみはりを想起させる。もしかして、みはりの関係者だろうか?

 

 遠巻きに見ていると、相手がこちらに気が付いて手を振りながら近づいてくる。

 

「お~い。まひろちゃ~ん」

 

「え? オレ?」

 

 名前を呼ばれてドキリとする。どうしてオレの名前を知っているのだろうか。面識はないはずだが。

 

「やぁ、大人数で何してるの?」

 

「……あのー、どちら様ですか?」

 

「ん? ……あぁ、ごめんごめん。面識なかったよね」

 

 そう言いながら片手を差し出して、女性は名前を告げる。

 

「私は藤村あかり。せんぱ……あきなのお姉さんだよ」

 

「あきなの……お姉さん!?」

 

 にかりと笑うあかりさん。お姉さんだと!? 何処からどう見ても妹なんだけど……。

 

「こんなナリじゃあ信じられないと思うけど、れっとした年上だよ? 中学生のあきなよりね?」

 

 胸を張るあかりさん。その様子は年上と言うより、子供が得意げに自慢している時の態度に見えて、寧ろ幼さを感じてしまう。しかし、突き出された胸部の膨らみ加減は、確かに大人の女性と言わざるを得ない程の立派な物をお持ちだ。

 

「……えっち」

 

「……はッ! いや、そんなつもりはッ!!」

 

 思わず凝視していた事を指摘され、思い切り顔を逸らす。女性に対して配慮が足りていない。

 

「まぁ、冗談はさておき。皆はあきなの友達かな?」

 

「え? あ、はい。一応……」

 

「ふーん……」

 

 オレ達を見渡す。まるで品定めする様な視線だった。姉としては、弟の友達に興味があるのだろう。オレもみはりの異性の友達に敏感になってしまっているので、同じ気持ちなのかもしれない。

 

「お。なゆたちゃん。久しぶり」

 

「お久しぶりです。あかりさん」

 

 なゆたんと顔を見合わせ挨拶を交わす。

 

「なゆたん、あきなのお姉さんと知り合いだったのか!?」

 

「……そうなのです。お姉さんと……です」

 

「ごめんね、なゆたちゃん。ありがとう」

 

 頭を掻くあかりさんに小さくお辞儀をするなゆたん。何がありがとうなのだろうか?

 

「―――皆はここで何してるのかな?」

 

 あかりさんがオレ達に問いかける。あさひが元気に「お見舞いに来たぞー!」と答える。

 

「成程。お見舞いねぇ……。なら、善は急げだね」

 

 そう言うと、あかりさんはアパートの階段を登っていく。

 

「藤村家に案内するよ。ついて来て」

 

 オレ達はあかりさんの後に続いた。二階の三号室があきなの部屋。その前に止まって、あかりさんはインターホンを押す。

 

「? どうしてインターホン?」

 

「……鍵を忘れて出ちゃってさ。中から開けて貰わないとなんだ」

 

 インターホンを鳴らして数秒で、玄関の扉が開く。中から現れたのは、ボサボサの髪にスエット姿のあきなだった。

 

「はーい、どちら様ですか……何だ、あかりじゃないか―――」

 

「ただいまー! お姉ちゃんが帰ってきたぞ!」

 

「……は?」

 

「お姉ちゃんだよ? ―――さぁさぁ、退いた退いた。お客さんが居るんだから」

 

「客って一体―――」

 

 あきなを押しのけて入っていくあかりさんの後ろ姿を眺めていたあきなが、正面を向きなおる。

 

「お、お邪魔しまーす……」

 

「なッ!! 何でまひろがここに……!」

 

「私達もいるよ~」

 

 扉に隠れていたもみじ達が一斉に出てくる。動揺するあきなを余所に、あかりさんが手招きしてくる。

 

「早く入って~。汚い所だけどごめんね?」

 

「「「「お邪魔しま~す!」」」」

 

 そう言ってオレを含めた全員が押し掛ける。玄関には呆然と立ち尽くすあきなだけが残されていた。

 

 

 

 

 

 部屋の中央に置かれたテーブルの前にオレを含めた五人が座る。テーブルは四角形なので、オレともみじが肩を寄せ合って座る形だ。

 八畳ほどの部屋は、一人暮らしなら丁度いいのだろうが、二人で暮らすには手狭に感じる。現に座る所のないあきなとあかりさん。あかりさんはベッドの上に座り、あきなはその正面の地べたに正座している。

 

「……で、何の用だ?」

 

 全員を見渡してあきなが問いかける。あきなの懐疑的な視線を受けて、あかりさんはにへらと笑う。

 

「お見舞いだよ」

 

「お見舞い?」

 

「あきながお休みしたから、同級生の方々が心配してお見舞いに来てくれたんだよ」

 

 あきなの視線がオレ達に向く。

 

「……そうなのか?」

 

「まぁ……そんな所」

 

 道端で倒れていた前科があるので、心配になって訪ねてきた事を伝える。

 

「それはその……ありがとう」

 

「前回来た時は空振りだったら、今回はってさ。あの時は私とまひろちゃんとなゆたちゃんだけだったけど」

 

「あさひも来たぞ!」

 

「私も少し心配だなって」

 

 もみじの説明に、あさひとみよが答える。あきなは後頭部を掻きながら恥ずかしそうに俯いている。

 

「藤村君、照れてるのですか?」

 

「は!? べ、別に照れてねーし! 別に来なくても良かったし!」

 

「典型的なツンデレ反応」

 

 あきなが顔を赤くして否定している。もしかしたら、嬉しさからくる反応かも知れない。オレも皆がお見舞いに来た時は嬉しかった。友達が自分の事を思ってくれる行動は、誰だって嬉しくなるものだ。

 

「良かったな。あきな」

 

「……何でまひろは他人事なんだ?」

 

 同じ男として、気持ちを理解できるのはオレだけだ。その羞恥心も、後で思い返してみれば嬉しかった記憶になる。人生の先輩からのメッセージが籠った言葉だが、伝わっては居ないだろうな。

 

「それにしても元気で良かったよ。どうして今日お休みしたの?」

 

「……それは」

 

 もみじの疑問に視線を逸らすあきな。確かに何か病魔に侵されている様には見えない。朝はお腹が痛くて、もう治ったとかそういう所かな?

 

「……」

 

「?」

 

 押し黙るあきなに小首を傾げるオレ達。どうしたのかと聞こうとした時、あかりさんが手をパンと叩く。

 

「元気だったんだから、それでいいよね! 私も心配だったんだ~」

 

「お姉さんは理由知らないんですか? 一緒に暮らしてるんですよね?」

 

 みよの問いかけに、あかりさんはいやーと申し訳なさそうにする。

 

「実はここ数日帰ってなくてね。ずっと研究室に籠っていたから、あきなの容態を把握していなくて」

 

「研究室……?」

 

 その単語に引っかかるオレ。あかりさんはサイズの大きい白衣の袖をひらひらとさせる。

 

「詳しくは言えないけど、この服装に準じた場所に居るの。最近忙しくて、まともに帰れてなかったのさ」

 

「研究者さん、とか?」

 

「まぁ、そんな所かな? 主に人体の研究をね」

 

 あかりの言葉に三人が「おー」とリアクションする。なゆたんだけは知っているのかうんうんと頷いている。

 研究室に人体の実験。白衣姿と容姿にそぐわない知能。……なんだか他人とは思えないくらいに既視感のある人だ。

 

「……あかりさんって、何歳ですか?」

 

「―――女性に年齢を聞くのは失礼だぞ。まひろ君?」

 

 口元に指を添えてしーっとするあかりさん。要は「秘密です」という事か。なんだかその反応も既視感がある。

 

「……何だか、お姉さんみたいな感じです」

 

 なゆたんがそう言いながらあかりさんを見ている。いや、お姉さんだぞ? なゆたんよ。

 

「……変なキャラ」

 

 ぼそっと何か呟いたあきな。その瞬間、あかりさんがあきなを鋭く睨む。

 

「あきな~。どうして休んだか言ってごら~ん?」

 

「……実は朝、腹が痛くて―――」

 

 目線を逸らしながら答えるあきな。相変わらず嘘が下手な彼。まぁ、流石に見え透いている事はあかりさんにも分かっているみたいだ。

 

「ふーん……。じゃあ、当ててみようか。真相を」

 

「……は?」

 

 意味深に微笑むあかりさん。その様子を訝しむあきな。

 

「お前、何言って―――」

 

「お姉ちゃん、でしょ? 流石に怪しいと思って調べたんですよ。少し苦労はしましたけど、目途は立ちました」

 

「……調べた?」

 

「―――収納の服を畳んで置いてある下に置かれた箱」

 

「……ッ!!」

 

 あかりさんの言葉に目を見開くあきな。膝立ちになってあかりさんを睨む。

 

「……まさかッ!!」

 

「この部屋の鍵は勿論持ってますよ。姉弟なんだから当然、ですよね?」

 

 その言葉を聞くや否や、あきなは勢いよく立ち上がり、クローゼットを開けて畳んであった服を退かし、下に置いてある箱の中をそっと覗き込む。

 数秒の後、元の場所に戻ってきたあきなは正座で座る。さっきと睨んでいたのとは打って変わって、俯いたまま顔を上げない。

 

「今度、一緒に買い物に行きませんか? 勿論、男の子ですからお姉ちゃんにプレゼント、ありますよね?」

 

「……」

 

「どうしますぅ? 皆は学校帰りですよぉ? 勿論、持ってますよねぇ? 今ここで―――」

 

「分かった。行こう」

 

 あかりさんの言葉を遮る様に、あきなが俯いたまま頷く。

 

「約束、ですよ? あきな」

 

「……お前」

 

「お姉ちゃん、ね?」

 

「………………はい」

 

 俯くあきなの表情は見えないが、膝の上に置いている手が震えている。

 何の事か、話に付いていけない。取りあえず震えるあきなに声を掛ける。

 

「お、おいあきな。どうした―――」

 

「いやー、弟が元気で良かったぁ。大事ないなら、もう帰ろうか!」

 

 再びパンと手を叩く。あかりさんがあっけらかんと笑っている。

 

「皆、あきなの為に来てくれてありがとう。私が皆を送っていくよ」

 

「え? でも……」

 

「大丈夫。ほら、この通りあきなは元気だから!」

 

 そう言いながら背中をバシバシ叩いている。まるで映りの悪いテレビを直すかの様だ。心なしか叩き慣れている様にも見える。

 

「そうだ。今度皆で何処か食べに行く? お姉さんが奢るぞ~!」

 

「おぉ! いいなぁ! それ!!」

 

 奢りという単語にあさひが食いつく。

 

「今日のお礼ね。お姉さんからの細やかな」

 

「いいんですか?」

 

「勿論」

 

 もみじにグッと親指を立てる。こうしてあかりさんとのお出掛けが決定した。

 

「だから、今日は帰ろう。後日、改めてお礼させてね」

 

 そうして皆を引き連れて部屋を後にする。出ていく前にあきなの方を振り向くと、夕日が差し込む窓の外を眺めていて、どんな表情をしていたか分からなかった。

 

 

 

 

 

 夕焼けが照らす帰り道を六人で歩く。傍から見れば全員同世代なのだが、完全に年上のオレと、疑惑のお姉さんが一人紛れている。

 暫く歩くと、あさひとみよとの分かれ道に差し掛かった。

 

「私達はこっちだから」

 

「またなー! みんなぁー!」

 

 小さく手を挙げるみよと、ブンブンと手を振るあさひ。二人に別れを告げると、あかりさんが「待って」と一言。

 

「一つだけ言いたい事があるんだけど、いいかな?」

 

「どうしました?」

 

 聞くと、あかりさんは一つ息を吐いてオレ達を見据える。

 

「あきなと友達になってくれてありがとう。あの人、結構人見知りだから心配だったんだけど、こんなにいい友達が出来て安心したよ。―――だから、これからも仲良くしてください」

 

 ぺこりと頭を下げるあかりさん。その態度にオレ達は動揺する。

 

「あ、頭上げてください! お礼言われる様な事はしてないですよ!」

 

「そうですよ! 寧ろ、あきなくんに良くして貰ってる所もあるんです!」

 

「藤村くんと漫画の話しできるの楽しいです!」

 

「まだ藤村の作ったご飯を食べる約束があるから大丈夫だぞ!」

 

「藤村くんのサポートもお任せください。困ったときはお互い様です」

 

 それぞれのフォローを聞いて、あかりさんは今日一番の笑顔を浮かべる。

 

「―――ありがとうッ!!」

 

 

 

 

 

「あーもしもし、先輩ですか? お疲れ様です。……え? 今すぐ家に来てくれないかって? 嫌ですよ。私まだ死にたくないので。……まぁ、調子に乗り過ぎた事は謝りますけど、先輩も悪いんですよ。最初から素直に言ってくれれば良かったのに。……ふふ、それはそうですね。配慮が足りませんでした。……当然です。約束ですから。もし破ったら、分かりますよね? ……私、お姉さんですから」




 次回は後編……というより「解答編」ですかね?認識としては。

 出来る限り三日に一話を守りますので、よろしくお願いします。




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