先輩はおしまい!   作:朋也

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 この作品って、原作を読んでいる前提の話とか展開が多いですよね。初見さんには申し訳ないです。しかし! 原作を読んでないなら読んでみてください。最高に面白いので!!

 この作品を読むより百億倍、有意義な時間を過ごせます。……あれ? 前にも言いましたっけ?







あきなと告白

「好きです。付き合ってください!」

 

 考えた事も無かった。自分が誰かから好かれるなんて。友情はあっても、恋愛感情を向けられるなんてもうないと思っていた。

 

 どう答えたらいいか分からなかった。正しい答えを見つけられず、同じ思考がグルグルと回る。

 

 どうして俺なんだろう。どうして好きになったのだろう。どうして―――。

 

 異性への理想的な返答を常に模索し、演じる事で他者とのコミュニケーションを取ってきた俺でも、純粋な恋心への対応が分からない。

 

 だから、俺はいつも同じ回答をする。当たり障りのない、無難な答え。

 

 でも、本当は分かっている。逃げているだけだって。過去に蓋をして、考えない様にしているだけの逃亡者。

 

 本当は誰かを好きになる事を知りたいのだ。そして、誰かを好きになりたい。

 

 また、昔みたいに……

 

 ――――――――――

 

 ――――――

 

 ―――

 

 ―。

 

 

 

 

 

「お前、昨日告白されたらしいな」

 

「なんだ、藪から棒に。……まぁ、事実だけどさ」

 

 朝会って、開口一番の台詞がそれか。

 

「学生のネットワークって爆速だな」

 

「相手は隣のクラスの奴なんだって?」

 

「バスケ部の子だっけ?」

 

 みなとも群がってくる。いつの間にか二人に尋問されている犯人の構図となる。

 

「どうして断ったんだ?」

 

「どうしてって……好きじゃないからだろ」

 

「他人事みたいに言うね」

 

「……確かに、自覚はないかも」

 

 言われてみればそうかもしれない。実際、告白された時も何処か上の空で、どうやって丸く収めるかを考えていた。

 思えば大学の頃からそうだった。たまに告白されていたが、最初から断る事を前提に話を進めていた。機械的に処理する様に。

 

「誰かを好きになるとか、よく分かんないんだよ」

 

「そうなのか? ちょっと意外だな」

 

「あきなってちょっと大人っぽい所あるか、そういうの慣れてると思ってたよ」

 

「ちょっとは余計だ」

 

 正真正銘の大人だ。……まぁ、でも恋愛に関しては中学生と大差ないのは事実だけど。

 

「あきなって、彼女とか居たことある?」

 

「……藪から棒に」

 

「いてもおかしくないかなぁって思ってたからさ」

 

「断った理由も、もう居るからって噂もあるよ」

 

「過大評価な噂が独り歩きしてるな……」

 

 大学時代を思い出す。あかり曰く、告白を断っていたのは大学外に彼女が居るからとか噂されていたとか。どっちも見当違いだ。本当の理由は情けなくてしょうもない。

 

「―――まぁ、彼女が居た事はある」

 

「マジ!?」

 

「やっぱり!?」

 

 ゆうたとみなとが予想以上に食いついてくる。

 

「前の学校の時か? でも、確か共学じゃないって言ってたよな?」

 

「まさか……男!?」

 

 二人揃って自身の身体を抱きながら後退する。勝手に盛り上がって勝手に引いて、騒がしい連中だ。

 

「……大学生の女の子」

 

「だ、大学生……! 本当かよ!?」

 

「それっていつの話?」

 

「中一の後半くらいだっけな。一緒に居るうちに何となく雰囲気でそうなって……」

 

 ごくりと生唾を飲む二人。俺も思い出しながら答えていく。

 

「……今にして思えば、遊ばれてただけなんだよな」

 

「どういう事だ?」

 

「遊ばれてた?」

 

「大した話じゃない。クソガキのイキり物語だよ」

 

「ますます意味わかんないんだが……?」

 

 小首を傾げる二人。正直、俺にも分からん。ただ、人に話す程楽しい内容じゃない事だけは確かだ。

 

「―――はいはい。この話は終わり!」

 

「なんでだよ!? もっと教えてくれよー!」

 

「人の恋愛事情に首ツッコんでも碌なことないぞ。それに、人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて地獄に落ちろってな」

 

「? 何それ?」

 

 ……今の子には通じないのかな? それとも趣味嗜好の違いかな?

 

「とにかく! 恋愛とか興味ねーし」

 

 とんだイキり中学生の発言だ。お前、どうして中学校に通っているのか忘れてしまったのか?

 ……よく考えたら、告白されたんだから付き合ってしまえば実験終了だったのでは? 折角のチャンスを逃したのでは?

 

(クソッ! 何やってんだ俺は!? 俺は実験が終われて、相手は好きな人と結ばれてウィンウィンじゃないか!)

 

 自分の馬鹿さ加減に頭を抱える。本当にオーケーを出していたかは定かじゃないが、その発想に至らなかった事は反省すべきだ。最近上手くいっていると勘違いしていたせいか、全体的にたるんでいる。

 気を引き締めろ。せめて、今度女の子との告白イベントを踏む機会があったら、慎重に事を運ぶんだ。……しかし、もしそういう展開があるとしたら、出来れば―――。

 

「あー、キミキミ」

 

「……うへぇ!?」

 

 突然聞こえてきたまひろの声に驚く。声の聞こえた方を見ると、まひろが手紙を手に持ち立っていた。

 

「なんだ? そのてが―――」

 

「ゆうた君」

 

 まひろに呼ばれたゆうたが、俺?と自分を指さしている。

 

「はい。これどうぞ」

 

 持っていた手紙をゆうたに差し出す。

 

「!?」

 

「じゃあ、渡したからね! ちゃんと読むんだぞ~」

 

 そう言い残して去っていく。暫く固まっている二人と、手紙を凝視する俺。

 見た目は所謂あれだ。女の子が好きな人に贈るという、都市伝説上の伝達手段である所の……ラブレター。

 

「………………は?」

 

「……!!!」

 

 みなとがゆうたを指さし、何か悟ったゆうたは口元が緩んでいる。その様子を眺めている俺は、頭が一つの文字で埋め尽くされていた。

 

 は?

 

 は?

 

 は?

 

 

 

 

 

 ………………………………は?

 

 

 

 

 

 放課後。そわそわしながら教室を出ていくゆうたとみなと。俺は黙々と帰り支度をしていた。

 

「……」

 

 教科書類をカバンにしまい、教室を出る。階段を降り、下駄箱に向かう。

 

「……」

 

 靴を履き、校舎を出る。後は校門を出て下校するだけなのだが、ここに来て足が止まる。

 

「……」

 

 どうする? まひろとゆうたの告白現場を見に行くか?

 手紙の内容は見ていないが、ゆうたの反応から容易に想像がつく。あれは紛れもないラブレターだ。古風だと思う反面、手紙をしたためている様子はとても奥ゆかしくて可愛らしい。とても普段のまひろから想像できないギャップがある。

 そして、ゆうたの反応からまひろに対する回答も容易に想像できる―――。

 

「……」

 

 ……どうする? やっぱり覗きに―――。

 

「いやいや! そんな事してなんの意味がある!?」

 

 頭を振り頬を叩く。一旦冷静に思考しよう。

 

 別に告白現場を覗き見した所で、状況が好転する訳でもなし結果が変わる訳でもない。そもそも、どういう結果になれば俺にとって最良なのだろう。

 まひろが誰と付き合おうと関係ないじゃないか。誰が好きかなんて、俺に関りはない。関係ない。関係―――。

 

「……」

 

 俺は踵を返す。目的地は体育館裏。

 別にまひろが誰と付き合おうと関係ないけど、ゆうたに彼女が出来るのは気に食わない。誰だって男友達に彼女が出来たら妬ましいだろ? 俺も例に埋もれず腹立たしい。

 決して、まひろがどうこうではない。決して。

 

 自分が告白されていた事実は棚に上げて、俺は友人の青春イベントを覗き見しに行く。

 

 

 

 

 

 体育館裏。到着すると、既にまひろとゆうたが対面していた。まひろの傍にはもみじが居て、少し離れた所にはみなとがいる。

 

 話し声は聞こえないが、何やら様子がおかしい。まひろは慌てた様子で動揺している。

 物陰に隠れながら様子を成行きを見守っていると、現状をぶち壊すかのように乱入する女の子が一人。

 

(あれは……高田さん?)

 

 高田さつき。クラスメイトで、よくゆうたに絡んでいる子だ。

 何かにつけてゆうたにちょっかいを掛けている。ゆうたもまんざらじゃない様子で、子供同士のじゃれ合いと思って見ていた。

 しかし、まひろのゆうたに対する告白現場に現れたこの状況はもしかして―――。

 

「修羅場ってやつか?」

 

 気になる子にちょっかいを掛ける。確かに中学生らしい可愛らしさだ。成程、そういう事だったのか。

 つまりこの状況は、ゆうたを巡った二人の女子の修羅場。……あの男、すげーモテんじゃん。ムカつく。

 

 恨みの念を飛ばしていると、ゆうたが高田さんに追われて逃げていった。どうやらキャットファイトにはならなかったみたいだ。

 

「結局、どうなったんだ?」

 

「ゆうた君はまひろからの告白と勘違いしていたみたいなのです」

 

「勘違い? てことは、あのラブレターは誰から―――って、うわ!?」

 

 突然聞こえてきた声に驚く。振り返ると、天川が背後に立っていた。

 

「いつからいたんだ?」

 

「覗き見を始めた時からです」

 

「最初からかよ……」

 

 全然気づかなかった。言ってくれよ。

 

「勘違いってどういう事だ? あれはまひろがゆうたに宛てた手紙じゃないのか?」

 

「違うです。あれは高田さんが書いたラブレターをまひろに渡してもらったのです」

 

「……つまり、えーっと」

 

 何となく話が見えてきた。つまり、高田さんが書いたラブレターをまひろに渡して、まひろがゆうたに渡した。それをまひろからのラブレターとゆうたが勘違いした。

 

「どうして勘違いを……?」

 

「名前が書いてなかったとかじゃないです?」

 

「あぁ、成程。だからまひろからと受け取った訳か」

 

 それなら辻褄が通る。それならゆうたが勘違いするのも仕方ないか。

 

「普段の二人の様子だと直接本人が渡すとグダグダになりそうだし、友人経由で渡すのはよくある手法か……」

 

 まひろはゆうたやみなととたまに話しているし、経由地点としては悪くないとの判断か。

 

「―――なぁんだ。まひろがゆうたに告白する訳じゃないのか。全く、心配して損した」

 

「心配、です?」

 

 胸を撫で下ろすと、天川が小首を傾げる。

 

「何を心配していたのですか?」

 

「え? それは……えっと……」

 

 言葉に詰まる。そうだよ。俺は何を心配していたのだろうか。

 ゆうたに彼女が出来る事か? 別に彼女がいたっていいだろう。確かに妬ましいけど、告白された自分を棚に上げて何を言っているって話だ。

 じゃあ、何だ? 何に対してこんなに気掛かりだったんだ?

 

「……」

 

「……もしかして」

 

 天川が、何てことのない様子で口にする。

 

 

 

 

 

 

「藤村君は、まひろの事が好きなのですか?」

 

 

 

 

 

 

「………………は?」

 

 

 

 

 

 

「まひろが好きだから、誰かと付き合ってしまう事に不安を感じていたのです?」

 

「………………いや」

 

「でも勘違いだったから安心したという事です?」

 

 真顔でズバズバと切り裂いてくる。反論したいのだが、どうも言葉が出てこない。

 

(……俺がまひろを好き? いや、そんな訳)

 

 ない……とはっきり言えばいいのだが、どうしても口にする事が出来ない。言葉を発する器官が失われた訳ではないのだから、言えばいいだけの話だ。でも、口にできない。

 心情は分からない。だけど、これだけは想像がつく。ここで好きじゃないと言っても感づかれる。

 

 俺は嘘が苦手なんだ。だから断定できない。その回答はきっと、嘘だから。

 

 

 

 

 

 休日は基本的に掃除をしているか勉強をしている。たまに息抜きでゲームもする。大学時代はバイトに明け暮れていたが、中学生になったこの身体ではバイトが出来ない。新聞配達のバイトとかはまだあるのだろうか。あるなら取り組みたい所だが。

 

 駅前でそんな事を考えながら時間を潰す。待ち合わせの時刻より三十分も早く付いたが、男ならこのくらいが普通だと聞いている。

 スマホの画面に反射する自分を確認する。中学生の身体に合わせた服装。昨日急遽ショッピングモールの服屋で店員に勧められた服装は、中学生には高すぎる値段と、少し背伸びをしたファッションセンスだ。今時の中学生は皆、こんなオシャレをして街に繰り出しているのだろうか。

 

 駅前の時計を見上げる。待ち合わせ十分前。そろそろ来てもおかしくない。

 そう思って辺りを見渡すと、向こうから歩いてくる人影を発見する。

 

 両サイドで結んだ髪に、夏らしい涼し気な服装と、普段の制服より短いスカートが可憐さと活発さを表している。

 ショルダーバッグの紐を握り締めながら歩いてくる女の子と目が合うと、その子はとてとてとこちらに小走りで近付いてくる。

 

「ごめ~ん。待ったぁ~?」

 

「……いや、今来たとこ」

 

 低い目線と向き合うと、その子は少し怒った様に。

 

「おい! デートみたいな返しやめろ!」

 

「丁寧なフリだったろ。そっちの責任だ」

 

 暫く睨み合い。俺が折れる事で終戦する。

 

「分かったって。悪かった悪かった。でも、男女が一緒に出掛けるのは、デートと言っても差し支えないけどな」

 

「それは……否定できない」

 

 ぐぬぬと押し黙る。最初から分かっていた事だが、今の俺達は傍から見れば間違いなくデート中のカップルだ。否定のしようがない。

 

「……ふふ。その服、似合ってるぞ」

 

「そっち方向に持っていくな。意識しちゃうだろ!」

 

「照れてるのか?」

 

「誰が照れて……!! なくもないけど……」

 

 恥ずかしそうに視線を逸らす。女の子として扱うといつもこんな感じだ。まぁ、それが可愛くてしている節もある。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「……その手は握らないぞ」

 

 差し出した手を叩かれる。紳士な振る舞いは不評だったみたいだ。無理もない。今日はそういう趣の会ではない。

 並んで二人で歩き出す。夏の日差しに目を細めながら、隣の子に歩幅を合わせて歩くさまはまさしくデートそのものだ。

 

 休日。駅前からショッピングモールに続く道を、俺とまひろは並んで歩いていた。









 じじじ次回ドキドキデート大作戦おたおたおたおたお楽しみに!!

 ……デート回ではないかもです。期待して頂いている方が居りましたら申し訳ありません。調整中です。
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