先輩はおしまい!   作:朋也

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 おにまい最新話読みました! 最高に好みの話で悶え苦しみました!

 しかしながら、公式様がやってしまったら、この作品の存在意義が無くなってしまう事を危惧しております。余所は余所、家は家精神で程細と続けていきます。

 最新話のネタバレになるので詳しくは言えませんが、お話が一つ没になりました。南無三……。







あきなと想いの在処

「作戦会議のなのです」

 

 おーと意気込む天川だが、俺はちっとも乗り気になれない。

 

 アパートの自室にて。俺と天川はテーブルを挟んで向かい合っていた。

 

「どうして家に来たんだ?」

 

「作戦会議をする為です。やっぱり作戦は秘密裏に立てるものですから」

 

 ふんと鼻を鳴らす天川。俺はテーブルの麦茶を一気に飲み干し、一つ溜息を吐く。

 

「……作戦って、何の為の?」

 

「まひろとデートする作戦です」

 

「……なんで俺とまひろがデートするんだ?」

 

「……?」

 

「首傾げんなよ」

 

 どういう事?みたいな表情は止めろ。それは俺の台詞だ。

 

「好きな子をデートに誘うのが普通なのではないのですか?」

 

「間違ってないけど、間違ってんだよなぁ……」

 

 当然の様に言う天川。確かに恋愛の手段としては間違ってない。至って普通なのだが……。

 

「前提が間違ってる。俺はまひろが好きな訳じゃない」

 

「嫌い、です?」

 

「いや、友人としては好意的に思って……こんなベタベタなやり取りさせるな」

 

 別に好きじゃないんだからね!とか言わせたいのか? せめて本人の前でやらないとボケとして成立しないだろが。

 

「……いいか、天川。俺は別にまひろに恋心を抱いている訳でない。あの時心配したのは、ゆうたに彼女が出来る事に対してだ。決してまひろが取られるかもとか女々しい理由じゃない」

 

「ゆうた君に彼女が出来ると心配なのですか?」

 

「不安はない。ただ、ゆうたの癖に彼女が出来るのが気に食わないだけだ」

 

「……?」

 

 また小首を傾げる天川。これに関しては彼女には理解できないだろう。思春期、というか男子特有の嫉妬心という奴だ。

 

「とにかく! 俺はまひろが好きな訳じゃない。分かったか?」

 

「そうなのですか?」

 

「……あぁ」

 

「どうしてそっぽを向くのです?」

 

「……」

 

 天川から顔を逸らす。特に深い理由はない。何となく、表情から読まれたくなかっただけだ。俺がどんな顔しているか、俺にも分からないけど。

 

「……そうですか。でもそうなると、女性恐怖症克服とは言い難いです。実験の終了も遠のくです」

 

「確かに課題ではあるが焦ってどうにかなるもんじゃないのは俺がよく知ってるし、まだ中学校に通い始めてから三ヶ月だ。判断を下すのは早計……ん?」

 

 天川の口から発せられたワードは聞き流せない物ばかりだった。

 

「なんでお前が恐怖症の事を!?」

 

「おねーさんから聞いたのです」

 

「ちとせ先生? ……そう言えば、授業参観の時に―――」

 

 朧げな記憶を呼び覚ます。あの日は風邪をこじらせていて会話の内容をぼんやりとしか覚えていないが、確か天川が俺の正体を知っているのは、彼女がちとせ先生の手先だったからだ。

 

「……お前、何処まで把握してるんだ?」

 

「何がです?」

 

「実験の事だ。俺がどういう目的で中学校に通っているか、知ってそうじゃないか」

 

 俺が中学校に通っている理由。一つ目はあかりの人体実験。薬の効果時間等を観察、研究している……らしい。

 二つ目は俺個人の目的。女性恐怖症の克服。異性に慣れるための中学校に通うという冷静に考えれば無茶苦茶な理由。

 

 以上の理由を天川は何処まで把握しているのか。口ぶりからは殆ど把握していそうだが。

 

「藤村君が女性恐怖症克服の為に中学校に通っていると聞いてるのです」

 

「……それだけか?」

 

「はいです」

 

 曇りなき眼で答える天川。嘘は言っていない様だ。

 

「……まぁ、それならそれでいいか」

 

 人体実験の方は聞かされていないみたいだ。まぁ、中学生に聞かせる内容じゃないよな。

 

「何かあったら、僕に相談して欲しいです。困った時はお互い様です」

 

「……だな。そうするよ」

 

 肯定的に捉えれば、学校内に協力者が居るみたいなもんだ。これからは存分に頼らせてもらおう。

 

「と言っても、俺は大人なんだ。天川も何か頼みごとがあったら相談しろよ」

 

「はいです! よろしくお願いするです。藤村君」

 

 軽い握手を交わす。触った感覚は良好だ。身体に変化なし。……字面で見ると最悪だが、恐怖症が発症するかどうかは死活問題な為許して欲しい。

 

「じゃあ、早速なんだが聞いていいか?」

 

「何です?」

 

「大した事じゃないんだけどさ。天川って俺の事、さん付けで呼んでなかったっけ?」

 

 最初に話したバーベキュー会場ではさん付けだった気がするんだが、今は君付けだ。

 

「ごめんなさいです。失礼でした」

 

「いや、別にいいんだけどさ。何となく気になっただけで」

 

 申し訳ないと頭を下げる天川。逆に俺が申し訳ない気持ちになる。謝らせたくて聞いた訳ではないのだ。

 

「……そうだな。じゃあ、こうしないか? 俺は天川の事『なゆた』って呼ぶから、俺の事は『あきな』って呼ぶって事で」

 

「いいのですか?」

 

「友達だし名前でいいだろ」

 

 まひろにもみじ、最近はあさひの事も名前で呼んでいる。俺としても、年下の子達を呼ぶなら名前が一番しっくりくる。今度、室崎も名前で呼ぼうか。

 

「……じゃあ、あきな、です」

 

「おう、よろしくな。なゆた」

 

 改めて自己紹介。握手の代わりに笑顔を交わす。なゆたは照れくさそうに笑っていた。

 

「では改めて! まひろとのデート作戦を考えるのです!」

 

「結局そこに戻るのね……」

 

 ふんと鼻を鳴らすなゆた。さっきの説明を聞いていたのだろうか?

 

 別に俺はまひろに恋してるとかないって……。

 

 

 

 

 

「……デートって、なんだろうな」

 

 お菓子を食べながらふと、基本的な疑問が浮かぶ。

 

「男女が日時を決めて会う事です。また、その約束をそう呼ぶです」

 

 向かい側に座ってお菓子を食べるなゆたが、辞書で引いてきた様な説明をする。

 

「具体的には?」

 

「……それをこれから考えるです」

 

 誤魔化す様に麦茶を飲む。まぁ、分かってたら作戦会議なんてしないよな。

 

 基本に立ち返る。俺はデートをしたことがない。より正確には、自分でプランを決めてデートをしたことがない。

 何時に集合し、午前中はここ。食事はあそこ。午後はどこそこと、前もって筋立てて女の子を連れまわした事が人生で一度もない。

 デートとは何をする事なのだろうか。作戦も何も、まずはデートを知る所からではないだろうか。

 

 スマホを開き、検索エンジンに『デートとは?』と入力する。一番上には先程なゆたが説明してくれた文言が表示され、スクロールしていくとデートの定義やら、遊びとの違いやらがわんさか情報として出てくる。

 

「……難しく考えすぎか?」

 

 幾つか読んでみるが、男女が好意を持って出掛ける以上の理解は出来なかった。結局の所、個々人の認識が肝心という事だろう。デートだと思えばデートだし、そうじゃないと思えば違う。それくらい曖昧な定義なのだ。

 

「ただ遊びに行くだけでもデート、か……」

 

 要は俺の認識次第。相手にその気が無くて、デートは出来る。相手の感情に左右されず、こちらの想いを確認できる。

 

 本当にまひろが好きなのか。そうじゃないのか。デートする事で確認できるかもしれない。

 

「―――俺達だけじゃ埒が明かない。助っ人を呼ぼう」

 

「助っ人、です?」

 

「あぁ、デートとか、そういうの慣れてそうな人に意見を聞こう」

 

 スマホを操作し、思い当たる人物に連絡を取る。

 

「どうしたんです? 急にやる気になって」

 

「お前がそれを言うのか。……まぁ、デートしてもいいかなって思っただけだ」

 

「やっぱり好きです?」

 

「それを確認しようって話」

 

 メッセージを送って数分後、相手からの連絡が来る。どうやら呼び出しに応じてくれるそうだ。

 

「餅は餅屋。デートはギャルってね」

 

 

 

 

 

 部屋のインターホンが鳴り、来客を案内する。

 

「お邪魔しま~す」

 

 短めのスカートをたなびかせるのは穂月かえで。もみじの姉でみはりちゃんの親友。

 

「お、なゆたちゃん。やっほ~」

 

「やっほーです」

 

 ハイタッチをする二人。なんかすげー仲良くないか?

 

「あきな君から呼び出しなんて初めてだから、お姉さん急いで来ちゃったぞ~」

 

「本日はお呼び立てして申し訳ありません」

 

「どうしてそんなに他人行儀?」

 

 自分で呼んでおいてあれだが、かえでさんは女性恐怖症の最たる位置にいる女性だ。それが自室にいるのはとんでもなく緊張する。ちょっと吐きそうだ。

 

「かえでお姉さんが餅屋です?」

 

「餅屋?」

 

 小首を傾げるかえでさん。俺はお茶を一気に飲み干し、無理矢理すべてを胃に流し込む。

 

「かえでさん。実はご相談がありまして」

 

「なになに~。お姉さんで良ければ乗るよ~」

 

 どんとこいというかえでさんに、俺は生唾を飲んで切り出す。

 

「……デートって、何すればいいんでしょうか?」

 

「……え? デート?」

 

「あきなのデート大作戦です」

 

「おー! 遂にね! 成程成程~」

 

 腕を組んでうんうんと頷くかえでさん。その様子になゆたが小首を傾げる。

 

「かえでお姉さんは知ってるです?」

 

「そりゃね~。本人から聞いた訳じゃないけど」

 

 ニヤニヤと俺を見てくるかえでさん。どうして俺がデートをする事が遂になんだ?

 とうとう訪れたかみたいな言い回し。俺がデートをする事を予見していた? だとしたらどうして? 誰を想定している? それとも相手は知らないけど、俺がいつかデートすると思っていたという事だろうか。

 まぁ、中学生男子ならない話ではないし、かえでさんは俺の事を『モテる』とか言っていたし、俺にはいつか彼女が出来ると思っていたから遂にという事なのだろう。

 

「俺、デートって初めてで。女性側の意見を聞きたくてお呼びしました」

 

「それで私に白羽の矢が立ったって訳ね。そういう事なら任せなさい! と、言いたい所だけど……」

 

 申し訳なさそうに頭を掻くかえでさん。俺となゆたは顔を見合わせる。

 

「私、お付き合いとかした事無いから、あくまでも想像でしか話せないけど……いいかな?」

 

「え? そうなんですか?」

 

 たははと笑うかえでさん。それは想定外だった。

 

「てっきり男を引っ掛けまくってるかと思ってたのに……」

 

「ちょっとぉ!? どういうイメージだったのかなぁ!?」

 

 ぷんすか怒っている。確かに偏見ではあるが、男を手玉に取る様子が容易に想像できてしまう。

 

「かえでお姉さんは餅屋ではないですか?」

 

「そうみたいだな。これは無駄足だったか?」

 

「なんだか失礼なやり取りしている気がするけど、女の子が喜ぶデートスポットなら分かるよ!」

 

 そう言うと、何点か近くのデートスポットを教えてくれる。確かに俺一人では思いつかない場所もあったので、参考になりそうだ。

 

「―――つまり、デートとは何処に行くかじゃなくて、誰と行くかが問題であると」

 

 数十分のディスカッションの結果。恋愛初心者の三人が辿り着いた結論は、とてもありふれていて、それでいて重要な答えだった。

 

「そうだね~。好きな人となら何処に行っても楽しいし。デートプランとして考えるなら、オシャレとかセンスのある場所よりも相手の事を思いやった場所がいいって感じだよね」

 

「思いやる……難しいです」

 

 うんうんと唸るなゆた。相手の気持ちになって、相手が何処に行きたいかを考える必要があるという訳か。

 

「最低限、相手を不快にさせない事が重要で、尚且つ相手の興味を惹ける場所が望ましいか……」

 

 条件とは絞れば絞る程明確になっていいのだが、今回に関して言えば絞れば絞る程分からなくなってくる。

 

 まひろが不快にならず、尚且つ興味を持ってくれそうな場所か……。

 

「……少しだけ、固まってきました」

 

「思い当たる場所があるの?」

 

「確実ではないですけど、普段の態度からここら辺は良いかなって場所はあります」

 

 今まで接してきたまひろの言動から、まひろが好きそうな場所を幾つか頭の中でピックアップする。不快にはならないとは思うが、喜んでくれるかは断定できない。

 

「……」

 

「―――やっぱり、自分で悩んで思いつく事が大事、かな?」

 

 数分後。ある程度方向性が決まる。後は当日のタイムスケジュールを考えるだけだ。

 

「取りあえず、行く所は決まりました。こことか……ここら辺とか……」

 

 プランをスマホのメモに書いて見せる。するとかえでさんが難色を示す。

 

「あの子、ゲームとか好きだっけ?」

 

「? 好きだと思いますけど……」

 

 まひろはかなりゲーム好きだ。ロスクエの話をした時からそれは確信している。

 

「たまに姉妹でしてるのかな?」

 

「一人も好きそうなんですけどね」

 

 寧ろ一人でゲームするのが醍醐味だとか思っててもおかしくない熱量だったぞ?

 

 

 

 

 

 なんやかんやあったがひとまず、デートプランらしきものが完成した。

 

「初めてにしては上出来か? まぁ、成功してからか」

 

「当日は何かあるか分からないしね。予定通り行かないのもデートの醍醐味だよ!」

 

 確かにその通りだが、それだとプランを考えた意味が無くなってしまうから、出来れば想定通りに動きたい。

 

「この計画が無駄にならない事を祈るか」

 

「無駄にはならないよ。例え予定通りに行かなくてもね」

 

「それはどういう?」

 

 事なのだろうか、と聞くと、かえでさんが優しく微笑む。

 

「だって、女の子からしたら、私の為に考えてきてくれたことが嬉しいんだからさ」

 

 その微笑みに思わず見惚れてしまう。それは盲点だった。そんな考え方があったのか。

 確かに、自分に置き換えてみればそうかも知れない。結果がどうあれ、自分の為に準備してくれたことが嬉しい。その気持ちが、最大の成果だ。

 

「……ありがとうございます。少し自信がつきました」

 

「うんうん。頑張れ、男の子!」

 

 指をハートの形にして鼓舞してくれる。流石に苦笑いしてしまったが、気持ちは有り難く受け取る。

 

「じゃあ、私達は帰るね」

 

「お邪魔しましたです」

 

「はい。また今度」

 

 二人を玄関で見送る。部屋に残った俺は一人、先程のかえでさんの言葉を思い出す。

 

「私の為に、か。まひろがそんな事をいう姿は想像しがたいけどな」

 

 何となくだが、まひろがそんなしおらしい態度をすると思えない。何故だが分からないが、彼女からは異性というより、同性の友達みたいな雰囲気を感じている。まぁ、そんな事言ったら流石に失礼だから言わないが、その感覚こそがまひろの親しみやすさに繋がっている。

 そう。まひろは友達なのだ。中学校で初めてできた異性の友達。独特な雰囲気で安心できる彼女は、女性恐怖症の俺にとって有難い存在で、決して恋愛感情を抱いている訳ではない。

 

 拳を固く握りしめて決心する。それを確認する為にデートなのだ。俺がまひろに恋慕しているかはっきりさせる為に……。

 

 

 

 

 

「それにしても、あきな君はやっぱり大胆だねぇ。当日のみはりが楽しみだなぁ~」

 

「みはりお姉さんも来るのですか?」

 

「え? みはりとあきな君がデートするんでしょ?」

 

「? まひろとあきなですよ?」

 

「……」

 

「……?」

 

「えええぇ!?」









 話が動かざる事山の如し。……すみません。時間が無いから文章が長くなってしまうというやつです。勿論才能もありません。

 次回はやっとこさデートする……予定です。気長にお待ち頂ければ幸いです。
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