先輩はおしまい!   作:朋也

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 あきなの見た目設定を置いておきます。簡易的な物なので、もしかしたら物語の展開的に変わるかも知れませんが、基本はこれです。興味があればどうぞ。見なくても支障はありませんので。



 藤村あきな(♀)

 身長138㎝ 黒髪(腰くらいまで)前髪で片目が隠れてる。
 胸は大きい(明確にサイズは決まってない)みよちゃんよりちょっと小さいくらい。



 あきな君の好みの女の子に近い風貌になってます。ロリ巨乳な所とか……ね?







あきなとまひろと同性の壁

「あふぅ……みはりおはよ~」

 

 欠伸をしながら階段を降りる。台所で何やら慌てた様子のみはりに朝の挨拶をする。

 

「あ、お兄ちゃん。おはよ~」

 

「どうしたんだ? 冷蔵庫全開で……」

 

 見ると、冷蔵庫に入っている物を出して、奥を覗き込む様にして頭を突っ込んでいた。

 

「ん~。おかしいなぁ」

 

「何が?」

 

「ないのよ」

 

「……何が?」

 

「薬」

 

「へ?」

 

 思わず変な声が出てしまう。薬ってもしかして……。

 

「女の子になる薬」

 

「ないって……大丈夫なのか!?」

 

 うーんと悩まし気なみはりの様子からは大した事ではない風だが、俺からすれば非常事態だ。

 偶に薬の効果が切れ掛けて、その度に飲んでいるのに、いざという時の備蓄が無くなったら完全に男に戻ってしまう。そうなったら―――あれ? それはそれでいいのでは? 一体オレは何を危惧してるのだろうか。

 

「男に戻りたくないのか? ……いやいや! そうじゃない。……でも、突然居なくなったらもみじ達が悲しむかもだし……」

 

「苦悩してる所悪いんだけど、お兄ちゃんには関係ないよ」

 

「へ?」

 

「もしもの為に置いといたやつなんだけど、そろそろ消費期限切れだったから処分しようと思ってたのが入ってたはずなんだけど……」

 

「消費期限とかあるのか……?」

 

 女の子になる薬に?

 

「厳密には違うんだけど、品質管理の観点で長くは置いておけなくてね。定期的に色とか匂いとか確認して判断してるの。置いてあったのは未開封だけど一年以上冷蔵庫に入ってたから、流石にだなぁと思って」

 

「そんな劇物を冷蔵庫に入れておくなよ。間違って飲んだらどうするんだ」

 

「だから捨てようと思ってたんだけど……あれぇ? 私、もう捨てたっけ?」

 

 冷蔵庫を見ながら小首を傾げるみはり。どうやら捨てる予定だった薬が冷蔵庫から消えているらしい。

 

「……もしかして、間違って飲んじゃったんじゃ?」

 

「うーん。私は有り得ないし、見た目は栄養ドリンクみたいな形状だから、お兄ちゃん飲まないでしょ?」

 

「うん。オレはジュースしか……」

 

 オレもみはりも飲んでいないのに無くなっている。みはりの勘違いで既に捨てている可能性もあるが、そうでないなら迷宮入りだ。

 

「―――そう言えば、あきなは?」

 

「まだ起きてきてないよ。昨日遅くまで勉強してたみたい」

 

「……マジ?」

 

 昨日の午後。ゲームに誘う前は勉強するとか言ってたが、まさか本当だったとは。

 

「お兄ちゃんも、同じ大人の男として見習わなくちゃね~」

 

「うるさい! 言われなくても分かってるけど、アイツみたいにストイックに成れないよ」

 

 成れたら引き籠りなんかになってないし。

 

「だいたい、オレの方が大人だから! いつの間に等身大の中学生レベルになったんだオレは!?」

 

「お兄ちゃんって元は二十歳でしょ? 同い年だよ」

 

「元とか言うな! 全然同じじゃないだろ!」

 

 二十歳のオレと中学生が同い年とは、流石に舐めすぎだ。……まぁ、昨日ゲームしてた時は同い年なんじゃないかと思う程親近感を抱いたが。

 

「夜通し勉強して寝坊なんて、オレには真似できない……」

 

「大丈夫。これから身に着けていけばお兄ちゃんにも……ん?」

 

「どうした。みはり?」

 

「……昨日あきな君が飲んでたのってもしかして―――」

 

「うわぁあああ!?!?」

 

 突然叫び声が聞こえてくる。何事かと思い聞こえた方を向くと、二階に続く階段。どうやら二階から聞こえた来たみたいだ。

 

「何だ何だ!?」

 

「今の声……誰?」

 

 聞き慣れない声。女の子の悲鳴みたいだった。

 

「とにかく二階から聞こえたし、行くしかないか……!」

 

 オレは急いで階段を駆け上がる。遅れてみはりも付いてくる。

 二階には部屋が三つあり、オレの部屋とみはりの部屋。後は両親が使っていた主寝室。昨日からあきなに貸し出されている部屋だ。

 

「消去法的にここだけど……」

 

 オレの部屋はさっきまでいたし、みはりの部屋から聞こえてきてた可能性より、今中に人がいるはずの主寝室の方が可能性は高い。それに、取りあえずあきなの無事も確認したい。聞こえた来たのは悲鳴だし、万が一という可能性も考慮する。

 

「叫び声が聞こえたけど大丈夫……か」

 

 出来るだけ平常心を保ち、何てことない風を装って部屋に入る。だが、目の前には全く平常ではない光景が広がっていた。

 

 

 

 見知らぬ女の子が居た。長い黒髪にぶかぶかの服を着た少女が呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 

 少女と目が合う。思わず言葉を失って見詰め合う。

 一体誰だ? この子は……。さっきの悲鳴はこの子か? どうして家に女の子が―――。

 俺の疑問は、後から入ってきたみはりの言葉で解決する。

 

「あきな……君?」

 

「……あきな?」

 

 あきな? 今みはりはあきなと言ったか? 目の前の少女に向かって。

 呼びかけられた少女から返事はない。ただただこちらを見つめて立ち尽くしているだけだ。でも、目の前の少女があきなと言われると、数々の疑問に合点がいく。

 少女の着ている服は、昨日あきなが着ていたい服と似ている。多分同じ物だろう。下には脱げたスエットのズボンもあり、それもあきなが履いていた物と同じ。

 

 そして、これはもしかしたらオレにしか分からないポイントかも知れない。世界でただ一人、オレだけがデジャヴを感じる光景。

 サイズの合わない服。脱ぎ捨てられたズボン。自分でも何が起こっているのか分からないみたいな顔。呆然と立ち尽くす姿。何もかもに身に覚えがある。そして、そこまで考えが至った所でさっきのみはりとの会話を思い出す。

 

 女の子になる薬が行方不明。冷蔵庫に入れていたドリンクが一本無くなっていて、オレもみはりも知らない。それらの事実で目の前の少女の存在を説明できてしまう。

 

「あきな……なのか?」

 

 問いかける。少女は自分の両掌を交互に見て、伸びている長い髪を掻き分け、その場で軽くジャンプして、最後に後頭部を掻きながら情けなく笑う。

 

「ははは。そうみたい……」

 

「……マジか」

 

 内面でも外面でも、あきなには驚かされるばかりだ。まだ一日は始まったばかりだぞ。

 

 

 

 

 

 有り得ない……なんて事は有り得ない。昔読んだ漫画にそんな事が書いてあった。当時は面白い言葉遊びだな程度にしか思わなかったが、今は骨身に染みる程あの言葉が深く心に刻まれていた。

 

 時は今年の三月。大学の後輩で怪しい研究をしている十六歳の飛び級天才少女、藤村あかりの開発した『子供に戻る薬』という名探偵もビックリの劇薬によって、俺は中学生くらいの身体にされてしまった。

 とんでもない話ではあるが、現実に起こった事なので認めざるを得ず、それ以来俺は中学生として生活を送ってきた。急に身体が縮んだ事と、二十歳で再び中学校に通う大変さはあったが、身体が縮んでからの約五ヵ月。何だかんだ生き抜いてきた。この身体での生活にもそれなりに慣れてきた頃合いで、まさかこんな事になろうとは……。

 

 一階の洗面所。鏡に映る少女は、何とも言えない複雑な表情をしている。俺もそれに合わせて口元を歪めると、一緒になって歪む。鏡なので当たり前なのだが、見慣れない女の子の顔が俺の意識と連動していると考えると、全く当たり前だと思えない。

 

「本当に……女の子に……?」

 

 頬を抓ると、目の前の少女も頬を抓る。痛みと共に発せられる感情の変化も同じ。その場で一回転したり、頭を振ってみたり。何をしても俺と同じ動きをする少女はまさしく、俺自身なのだ。

 

 本当に女の子になってしまったみたいだ。もう認めるしかない。鏡に映る幼い少女は、紛れもなく俺なのだと。

 

「どうしてこんな事に……」

 

 デジャヴを感じる。身体が縮んだ時もこんな事を思ったし、中学校に入学した時の自己紹介でも思っていた気がする。あの時は現状を回避する術はないかと、原因が分かっているからこそ思っていた訳だが、今回は話が違う。

 俺はどうして女の子になったんだ? 目が覚めたら姿が変わるのが今時は流行っているのか?

 

「……」

 

 顎に手を当てて思案する。何か原因があるはずだ。出なければ在り得ない。原因があっても在り得ないと叫びたい所だが、今はグッと我慢する。正直、思い当たる節はあるが、出来る限り他の線を先に考える。

 最近変わった事は無かったか。これは間違いなくあかり絡みだ。アイツが関与している事件や物はあったか?

 

「……」

 

 ……ない。俺が最後にあかりにあったのは、みはりちゃんやかえでさんと買い物に行った一昨日だが、その時にあかりに何かされた記憶はない。

 

「……じゃあ、もう確定だな」

 

 俺がこうなった原因は一つ。昨日飲んだ『栄養ドリンク』だろう。それ以外ない。

 あかりがよく飲んでいるドリンクと聞いているが、本当は全く別の何かだったというのが正解だろう。もしかしたら俺が飲んだ子供になる薬と併用して飲むと変化が生じるとかかも知れないが、あかりに直接聞くまでは断定できない。

 それより今気になるのは、あの栄養ドリンクをみはりちゃんも昨日飲んでいたという事だ。それなのに、みはりちゃんには変化がない様に見える。俺が気付いていないだけで、何か変わっているのだろうか……。

 

「うーん……」

 

 色々可能性を考えてみるが、どうしても情報が少なく確かな根拠にはならない。正直、考えるだけ無駄だと思っている。

 正解がどうあれ、今の俺に何か出来る事があるとは思えないし、真実を知った所でこの身体が直ぐに元に戻るとも思えない。それは、これまでの中学生生活で嫌と言う程理解している。

 それよりも今考えなければならないのは、この女の子の身体で暫く生活しなくてはならないかも知れないという事だ。確か子供になる薬の効力は一年だったはず。この姿にも近しい効力があるのだとしたら……。

 

「……最悪だ」

 

 膝を付いて崩れ落ちる。身体が縮むだけでも大変だったのに、更に幼く、性別まで変わって本当に生きていけるのか? 一人で?

 改めて鏡で自分の姿を見る。身長的には小学生程か。背丈はまひろやあかりよりも低い。これが一人で暮らしているのは育児放棄を疑われるレベルだ。

 クリっとした愛くるしい瞳に、綺麗で長い黒髪。幼気な少女が過ぎる見た目とは裏腹に、胸は大人の女性でも通じそうなくらいには主張がある。普段男として生きている時には感じなかった重量が両肩に伸し掛かっている。

 

「……結構可愛いな」

 

 ぽろりと口にしてハッとする。俺は今、自分の顔を見て可愛いと言ったのか!? マズイマズイ。幾ら性別が変わって別人の様になっているからと言って、自分で自分を可愛いなんて反吐が出る発言を……。

 

「……でも」

 

 その場で一回転。鏡を覗き込む様に前屈み。逆に身体を仰け反らせて左右の膨らみを主張するポーズ。……うん、可愛い。

 

「なんか、俺……」

 

 鏡の前で色んなポーズを取る度に、どんどん思考が麻痺していく。最初は嫌悪感を抱いていたのに、今はどんな可愛い姿を映すかしか頭にない。

 

「……え、えへぇ~。ふ、藤村あきなで~す」

 

 にやけながらピースで自己紹介をしていると、映っている鏡の端に後ろから俺を覗き込んでいるまひろと目が合った。

 

「……」

 

「……」

 

 身体が固まったまま数秒間停止。その後小刻みに震える身体で後ろを振り向く。

 

「……これは、その……」

 

「……まぁ、気持ちは分かるよ」

 

 そう言い残し去っていくまひろの背中に手を伸ばす。

 

「違うんだぁ~!! 待ってくれぇ~!!」

 

 そのまま泣き崩れて再び床に跪く俺。それから暫くその体制のまま動けなかった。

 

 

 

 

 

「一応、体調に変化がないか検査したいから、布団から出てきて」

 

 ゆさゆさと身体を揺さぶられる。俺は芋虫の様に這い出て、俯き気味にベッドの上に座る。

 

「何処か痛い所とか、気掛かりな所とかないですか?」

 

「……死にたい」

 

「極端!」

 

 両手で顔を覆う。みはりちゃんはまだしも、隣にいるまひろの顔は見れない。見せる事も出来ない。

 

「大丈夫だよあきな。誰だって最初はああなるから」

 

「誰もでも最初があってたまるかぁ!」

 

 こんな恥ずかしい経験してるのは、世界広しと言えども俺だけだろ! ある日突然身体が女の子になって、鏡の前で可愛い子ぶる奴が他に居る訳ないだろ!

 

「死にたい……」

 

「大丈夫だって。当たり前の事なんだよ。な?」

 

 俺の隣に腰を下ろし、頭を撫でてくるまひろ。どうしてこんなにも冷静なのか分からないが、不思議な包容力があった。

 暫くシクシクと泣いた後、みはりちゃんから手渡されたティッシュで鼻をかむ。

 

「落ち着いた? それなら健康診断の続きね。ほら、お腹出して」

 

 そう言いながら、何故か聴診器を装着している。どうして家に聴診器があるの?

 

「……いや、ちょっとそういうプレイは」

 

「凄いデジャヴ」

 

 後退りする。何故かまひろがあーと反応しているが、まひろにも経験があるのだろうか。

 

 観念して服を捲し上げると、まひろがうわっと言いながら目を逸らし、みはりちゃんがえ?っと言いながら固まる。

 

「……ん? どうしたの二人共?」

 

「お、お前! 捲り過ぎだぁ!」

 

「……私より大きいッ!」

 

「は? 何が―――」

 

 そこでようやく気が付く。ぶかぶかで大きい服なので、なるべく見やすい様にいっぱいに服を捲し上げた。医者に行った時も同じ要領でやっているので当たり前に捲ったが、今は身体が女の子になっていて、更に胸に何も付けていない事を失念していた。しかも、この身体はどうしてか左右の膨らみがそれなりにある。そんな胸を全開で見せてしまっている。

 

「―――ッ!! ひゃん!?」

 

 思わず変な声を上げて、胸を隠す様に後退る。その後、ハッと我に返り今の反応の審議が脳内で始まる。

 

(何だ今の声は!? 俺、どうして……)

 

 よく考えろ。今は女の子の身体なんだし、別に女の子に見られたっていいじゃないか。……いや、心は男なのだから、異性に恥部を見られるのはそれなりに恥ずかしい所もあるので、今の反応で合ってるのか? でも、上半身を見られたからって恥ずかしいと思う程俺は乙女だったか? 確かに相手が男なら恥ずかしいかも知れないが……待て、男相手に恥ずかしいのか? 俺は男なのに? あれ???

 

 頭から煙が出そうになる。自分で自分が分からない。俺は男なのか、女なのか。いや、間違いなく男だろ! そう思う時点で何かがずれ始めている気がする。

 数秒間頭を抱え、落ち着いた所で掛布団を手繰り寄せ、カタツムリの様に布団に包る。

 

「死にたい」

 

「これは、重症かも……」

 

 みはりちゃんがお手上げといった様子で両手を小さく上げている。そして俺の様子を複雑そうな表情でまひろが見ているのであった。









 長くなったので切ります。またしても適当に書いてたら一万超えてたので。

 前回のお話が好評だったのか、閲覧数ばーっと伸びててビビりました。多くの方に見て貰えるのは大変嬉しいのですが、ご期待に添える内容かは保証できません。それでもいいよと言ってくれる奇特な方はお付き合い頂ければと!

 次回はあきなとまひろの絡みの予定なので、今しばらくお待ちください。
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