先輩はおしまい!   作:朋也

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 とんでもない寝坊かまして、朝に上げられませんでした。まぁ、この作品は一ヶ月に一回、話数が溜まったくらいで見るのが良い気がするので、思い出した時に読んで頂ければ幸いと思います。

 しかし、毎話毎話追ってくれている方が居るのは感謝しかありません。ありがとうございます。







あきなと初めての感覚

「今更だけど、何で俺は水着でプールにいる? めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど」

 

「本当に今更だな」

 

 場所は自宅から少し離れた、繁華街よりの場所に今年オープンしたプール施設。数多くのプールにウォータースライダーと、アミューズメント施設として申し分ない作りになっている。

 俺達は、午前の遊び疲れを癒す為に、施設内に併設された飲食店。主に軽食類を販売しているエリアで昼食を取っていた。

 

「何でこんなにも女の子の水着は心許なく感じるんだ?」

 

 ひらひらとしたスカート状の水着を摘んで、防御力の低さをアピールする。俺の水着は子供が着るような布が無駄に多くあしらってあるタイプの水着で、ビキニの様な大胆な物ではない。それに比べればマシなはずなのだが、どうしても恥ずかしさが拭えない。

 正直、女性物の水着で人前にいる時点で羞恥は最大級なのだが、考えない様にしてここまで来たのが、今になって恥ずかしくなってきた。

 

 そもそも、前から思ってたけど、下着と水着って何が違うんだ? 布面積殆ど同じだろ。

 

「こんな格好で人前に出るなんて、恥ずかしくないのか……?」

 

「その言葉、自虐ネタと取っていいのか?」

 

 思わず本音が漏れてしまう。まひろの言う様に、その恥ずかしい恰好で公衆の面前を闊歩している俺が言えた台詞ではない。

 

「まぁ、気持ちは分かるよ。最初はオレもそう思ってたし」

 

「そうなのか?」

 

「水着って、下着と何が違うんだよって」

 

 そう言いながらちゅーちゅーとバナナ味のシェイクを吸う。

 

「それは俺も激しく同意。こんな薄っぺらい布だけなのはなぁ」

 

「心許ないよなぁ」

 

 なーっと二人で声がハモる。やはりまひろとは価値観が合う。最近では、同性の友達と思い込みたくなるくらいだ。

 二人で布地の重要さを語っていると、チュロスらしき食べ物を片手にみはりちゃんが近付いてくる。

 

「まひろちゃ~ん、かえでがウォータースライダー行こうってさ~」

 

「元気だなぁ、かえでちゃんは」

 

「あきな君も呼ばれてたよ」

 

「……」

 

「あきな君?」

 

 俺が押し黙っていると、不思議そうに小首を傾げるみはりちゃん。まひろも俺を不思議そうに見つめている。

 

「………………分かった」

 

「随分溜めたな。どうした?」

 

「いや、何でも……」

 

 そっぽを向いて白を切るが、背中には滝の様な汗が流れていた。

 

 俺は高所恐怖症なのだ。恐怖症何個あるんだよとツッコミたくなるが、こればっかりはしょうがない。あまり高い所に行く機会が無いから今に至るまで誰にも言った事は無いが、子供の頃から高い場所が苦手なのだ。

 ウォータースライダーの方を見ると、建物にニ、三回程の高度を有していた。見ているだけで足腰が震える高さである。

 

 これからあそこに行くのか……。正直に高い所が苦手だと言ってしまうか? ―――いや、しかし、何となく男としてプライドが、逃げる気持ちを躊躇わせる。

 

「……余裕だし! 全然余裕だし!!」

 

「何が!?」

 

 気持ちを落ち着かせる為に、飲んでいたソーダを一気に飲み干し、空気が口から出そうになるのを堪える。冷えた飲物を一気に飲んだせいか、ぶるりと身体が震える。

 

「行くぞぉ!!」

 

「今から戦地に赴くみたいな勢いねぇ……」

 

 ドスドスと力強い足取りでウォータースライダーの方へ歩く。その後ろをまひろとみはりちゃんが後を追う様に続く。

 ぶるりと再び身体が震える。これが恐怖から来る震えなのか、はたまた武者震いなのかは分からないが、とにかく両腕を抱く事で震えを堪える。

 

 プールに来て、泳げないばかりかウォータースライダーにも乗れないなんて、男としてダサくて言えたもんじゃない。男としてね!

 

 

 

 

 

(こ、こえぇ~……!!)

 

 まひろの腕に掴まって、ガクガク震える足で階段を登る。後数名の客が流れた、いよいよ俺の番になってします。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「……余裕。よゆう~、よ……ゆ……」

 

「顔、青いけど」

 

 どんどん血の気が引いていく。階段を登り切って最上階に付くと、視界が開けて高所の景色が広がっていく。

 

 たっかぁ~、こっわぁ~、ヤバい、吐きそう。

 

 口元を押さえ、込み上がってくる物を飲み込む。身体がぶるりと震えるのがさっきから止まらないのだが、これは一体……。

 

(……おしっこでそう)

 

 ウォータースライダーに来る前からの震えの正体に、ここまで来て気が付く。迫る恐怖を前に何処か冷静になって発見する答え。

 

 まさか尿意だったとは。マズいぞ。このまま滑って大丈夫か? 最悪の未来しか見えない。

 

 徐々に迫っていく自分の順番。流石に尿意なら言い訳としていいか? 致し方なく滑らない理由になるよな?

 まひろに言おうと決心した時と、自分の番が回ってくるのは同じだった。

 

「先行っていいぞ~。早く降りたいだろ?」

 

 前を歩いていたまひろの温かい気遣いにより、スライダーの前に立たされた。あぁ、間に合わなかった。

 従業員の掛け声とともに、まひろに背中を押されて滑り始める。「ちょっとま―――」と制止の声を出せないまま、俺はスライダーで眼下のプールまでスタートした。

 

「―――!?!?!?」

 

 真っ直ぐだったり曲がったり、ジェットコースターの様に身体を振り回されながら、下のプールに降下していく。その間、一切声を出せずに、身体を石の様に硬化させる。

 数秒、の筈なのに永遠にも感じる一瞬が終わり、水しぶきを上げながらプールに着水する。

 

「―――ぷはぁ! し、死ぬ……」

 

 水面から飛び上がり、酸素を求めて金魚の様に口をぱくぱくさせる。今日、もみじから泳ぎを教わっていなかったら、このまま溺れて終わっていた可能性すらある。

 

「はぁ、怖かったぁ。マジで死ぬって、これは」

 

 改めてウォータースライダーを見上げる。こんな高い所から滑ってきたのか。もう一度やれと言われても絶対に断る。

 無事、生還できた事に感謝する。終わってみると、清々しい気分である。こういうのが癖になるのだろう。俺は絶対にやらないが。

 

「―――そうだ。早くトイレに……ん?」

 

 クールダウンした脳によぎる、滑る前の尿意。絶対漏らすと思ったが、何とか我慢できた。早々にトイレに駆け込みたいとプールサイドを目指そうと思ったのだが、何だか違和感がある。

 先程までの尿意がない。……どういう事だ? もしかして出ちゃった? 気付かずに?

 

「そんなはずは―――」

 

 尿意はない。しかし、何だか股の辺りに違和感がある。反射的に手を動かし触ってみるとおかしな、でも確実に身に覚えのある感触がある。

 

「え?」

 

 一瞬、時間が止まる。思考が、世界が、止まる。

 それはほんの数秒、しかし永遠に感じる一瞬。短い間隔で二度も体験する事があるとは思わなかった。

 

 手に触れる、感じる、馴染む感触は―――。

 

「あきな~、大丈夫か~?」

 

「おひょい!?!?」

 

 突然後ろから話しかけられて、心臓が飛び出そうな程ビックリする。慌てて振る向くと、キョトンとしたまひろが少し動揺した様子で固まっていた。

 

「だ、大丈夫……か?」

 

「……大丈夫じゃない」

 

「え!? 何処か怪我したのか? 誰か呼んで―――」

 

「待って!!」

 

 プールを出ようとするまひろの腕を掴む。振り向いたまひろに、俺はどう言葉を紡げばいいか迷う。

 

「あの……最初に断っておくが、これはセクハラではない。断じて」

 

「あ、うん?」

 

「だから、起こった事実として、結果として受け止めてくれ。本当に他意はない。誓う」

 

「何があった?」

 

「……生えてきた」

 

「は?」

 

「アソコが」

 

「アソコって……」

 

「息子が」

 

 俯きながらそう言うと、まひろが「……マジ?」と間を置いて聞いてくる。俺はそれにこくりと頷く。

 二人は顔を見合わせる。まさかこんな事になるとは、予想も出来なかった。

 

 そして俺は、身体の変化で気が付く。もしかして、さっきまでのは尿意じゃなくて、こうなる前兆だったのか? 出る物違いだったのか?

 

 ―――だからあれほど言ったじゃないか。女の子の水着は布面積が少なすぎるって。

 

 実際に視認してはいないけど、多分、感覚的にははみ出してる気がする……。









 おにまい下巻が届きましたぁ!! やったー、待ってたぞぉ!!

 二つ届いたので、一つは保存用。一つは観賞用ですねー。

 ……はて? 何で二つ?
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