My Hero Academia If ヒロアカ妄想色々 作:思込激子
「おはよう緑谷。今朝も聞いたけど体調はどう?」
「うん。バッチリ!」
「群れるんじゃねぇ雑魚ども。邪魔だ!!」
「あ、かっちゃん!! おはよう!」
一般入試実技試験当日。
期せずして合流した三人。
そのうちの二人が十ヵ月前の『ヘドロ』のニュースで見た顔だと周囲の目が集まる。
「ちッ! てめェのせいで見られてるじゃねえか!」
「多分爆豪は普通にしてても目立つと思うぞ」
「どぉ言う意味だゴラァッ!」
「……さぁね。でも試験前に
「たりめーだ。俺が目指してんのは完膚なきまでのトップだぞ。下なんぞ興味ねェわ」
「かっちゃん……」
強者としての自負。プロヒーローを目指すものとしての信念。
未熟ながらも研鑽によって完成の影が見え始めたその言葉に聞いていた二人は気を引き締め直す。
回していたエンジンを空ぶかしで温めるように。
「二人とも準備は大丈夫か?」
「う、うん! 大変だったけどバッチリ!」
「決まってんだろうが!」
「俺もだ。……多分それぞれ別々の場所だろうから競う実感はあんまないけど、ぜってー負けねーぞ」
離れた席に座る人使。
二人も同じ出身校ゆえに並んで座り、説明を待つ。
「今日は俺のライヴにようこそー!!! エヴィバディセイヘイ!!!」
だが気にせず暖簾に腕押しを続けるプレゼント・マイク。
「入試要項通り! リスナーにはこの後! 10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!! 持ち込みは自由! プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」
「僕ら会場違うね」
「ちッ、やっぱてめェらを潰せねえか……」
「ぶ、物騒……」
説明を聞きながら並行してプリントを熟読する。
様々書かれているが目立つのはプリント中央から下に掛けて描かれている四種の
他校の生徒が質問しているのもそれに関すること。
示された基本方針は『お邪魔である0ポイント
「――俺からは以上だ!! 最後にリスナーに我が校“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! 『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!! “
「広っ」
圧倒的な広さを誇る雄英高校。
そこに建てられた演習会場は事実『街』を思うほどに広大だった。
(あぁああ……皆色んな装備してる。やっぱり皆強そうだ! やっぱ僕なんかじゃ無理だぁ……)
今更になって緊張し、体調が悪くなった気さえしていた。視界すら揺れている気がしていた。
実際には緊張から歯がガチガチとぶつかっているだけなのだが、気づかない。
(もっと良いサポートアイテムがあったら……でも僕のお小遣い程度じゃ何も買えないし……)
「ハイ。スタートー!」
「――ん゙っ!?」
精神統一の最中。開始の合図がスピーカーから響く。
咄嗟ながら反応できたのは普段二人と訓練して常に周囲に意識を向ける癖が少しではあるが身についていたからだろう。
転びかけて前のめりになりながらも出久は真っ先にと駆けていた。
「ッ! あのモサモサ!」
試験開始。出久が既に出ていることに気づいた他の受験生たちが一斉に飛び出す。
(いた! 落ち着け、落ち着け、きっとできるはずだ! 二人より決心は遅かったけど僕だって頑張ってきたんだ!!)
「標的補足!! ブッ殺――」
「しぇい!!」
足元を狙った素早い一撃を避け、飛び蹴りで一機を破壊する。
粉砕は出来ないがそれでも破壊には成功し、一点を獲得した。
そして先頭の有利を生かして一点、三点、二点、また一点と着実に点数を稼いでいった。
(ッッ――! 倒せなくはないけど身体への負担がデカい! このままじゃ無理が祟って……)
機械を蹴り、殴るという行為は未熟な肉体には反動が強く一度また一度と回を重ねるごとに全身の違和感が蓄積する。
「
「――ッ! 大丈夫ですか!?」
短髪を後頭部で束ねた少女の微かな声。
疲労の溜まったところを狙われてしまい、直撃は防いだものの攻撃を腕に受けてしまい追撃をモロに受けそうになっていたところをすんでのところで守る。
落ちていた
「怪我は?!」
「左腕をちょっと……」
「骨折はしてないですね?」
「う、うん」
「よ、良かった。こういうのもなんだけどもしダメそうなら棄権してください! けど出来れば最後まで頑張ろう!」
励まし、去る。
ヒーローとしての理想像をなぞりながら着実に
「45
そんな最中に近くにいた受験生の声が聞こえた。
特殊な脚から白煙を発し、超スピードで駆け抜ける彼の得点は出久の四倍以上。
その他周囲の受験生たちとも三倍以上の差がついていたりと、わかっていたことだが“無個性”というのは圧倒的に不利だ。
(まだ9
持ち込んでいた捕縛布を手ごろな装甲に括りつけてモーニングスターのように振り回す。
所持している捕縛布は予備含めて三本。うち一本が右手の装甲付き、もう一本は左手に握られ
「あと五分~」
残るは半分。
そしてそれまでいなかったDの
周囲のビル群を上回る体高。圧倒的破壊力による甚大な被害と轟く地響き。
「はぅわぁあああッ!!?」
(流石に無理だ! シャレにならん!)
遠くから響く地揺れが間近に、その姿が見えた時想像以上のサイズに足が竦む。
出久同様に逃げ惑う受験生たち。“無個性”ゆえに人一倍恐怖が強く尻餅をついた出久の横を通り過ぎる。
「ただでさえ
二人との訓練で出久もそれなりに戦うことが出来る。が、それゆえに実力を隠さない機械の
逃げは当然。立ち向かうことが絶対ではないのはわかっている。この場の者たちはヒーローを目指していて、自分の対処は“自分とは違って”自分で出来る。自分が守れるものは何も無――
「いったぁ…」
「――」
か細い声。地響きに掻き消されるほどの。
倒れた茶髪ショートボブの少女。脚に瓦礫を受けたのか立とうとするも立てずに、また腕で身体を起こそうにも試験で体力を使ってそれすらも出来ない。
「ッッ――」
(怖い――怖い怖いッ。けどやらなきゃダメだ!! ヒーローになるって二人に言ったんだ! ここであの子を見捨てたらヒーローじゃない!!)
落下以上の速度で降りかかる鉄の巨腕。
圧倒的質量差。防ぐことなど不可能。
だが、だからと諦めることはない。
「わぁああああああッッ!!」
心を、恐怖を打ち砕く虚飾の絶叫。
周囲の目が一手に引かれる。
「なんっ――」
負けを確信できるであろう相手に何故立ち向かうのか、何故助けるのか。少女の声。
しかしその言葉は少女のみならず、目を向けた周囲からも漏れていた。
「こんっ――のぉッッ!」
出久は少女を庇うため前へ出て、装甲を構える。
筋力も、耐久力も、質量も、何もかもが足りない。けれど守ると覚悟を固めて巨大な影を睨んだ。
――。
衝撃。音は出久の耳から消えていた。
圧倒的威力が全身を伝播。感覚がいくつも消失、異常を起こす。聴覚は瞬間的に失われ、視覚は彩度を下げる。そして腕の感覚もない。
「ッッ――」
骨折。
位置の関係上左へ受け流し、左腕の骨が砕けていた。
けれどもその痛みに負けて叫びはしない。痛みに負けてやるべきことを見失いはしない。冷静を心掛け、ダメージは甚大だが折れはしていない右腕で少女を引き寄せて全力で逃げる。守ることが優先されて脚を竦ませる恐怖は忘れ去っていた。
「あ、ありがとう……」
「大丈夫?」
「う、うん。……けど走るのはちょっと難しい」
少女に肩を貸しながら走る。少女は明らかに脚に異常を抱えているとわかるような引きずり方で走っていた。咄嗟に少女を抱き抱えて走ろうとし、諦める。
攻撃を受け流した時。威力は脚にも影響を与えており、瞬間的に圧倒的重量を受けた状態になっていた足首は捻挫したようなダメージを負っていた。
「お前やるな。ヒーローの心構えを忘れていた」
「! 君に頼みがある!」
逃げる最中、口元をマスクで隠した多腕の少年が声を掛けてくる。
出久はその少なからず目を引く姿を試験中何度か見ており、詳細は不明だが多少の実力は把握していため頼みをすることに決めた。
「この子を安全な場所まで逃がしてあげて!」
「構わないが。お前はどうするつもりだ?」
「……他の人たちがまだ逃げられてないだろうから逃げる時間を稼ぐ。出来れば怪我した人の救助をお願いしたいんだけど……ダメかな?」
「それはお前が戦うということか?」
「うん」
「……」
走りながら少女を受け取った多腕少年。出久は周囲を見渡し人のいない方向、つまり他の人を巻き込まない方向を見つけながら逃げる。
「そういうことなら俺も混ぜてもらおう」
「!? 君は?!」
「俺の名は
「ヒーローの本質、か。そういうことなら俺もこの子を避難させた後に参加させてもらう」
新たな乱入者。黒い鳥のような風貌ながら首から下は人間と変わらない。
「なら、私もやる」
「それはダメだ。君は怪我を――」
「確かに戦うには戦力不足かもしれないけど――」
少女は握りしめていた掌を開き、そこから現れた石ころをフワリと浮かせる。
「“
「よろしく! 僕は緑谷出久!」
「私は
「俺は
端的な自己紹介を終えた四人。出久はある程度離れた位置で反転し、三人はそれに合わせて反転する。
「ちょっと待ったぁっ! それにぼ、俺も入れてくれないか!」
再度乱入者。それは入試説明の時に質問をしていたいかにも『真面目』な眼鏡の少年であり、途中段階で45
「ぼ、俺は
「!! 一つ作戦が思いついた。飯田くん、脚の速さは具体的には?」
「ム?! 100メートルで6秒は切れるのは確実だが正確な数値は……」
「麗日さん! どれくらいの重さなら――二人分とあそこの
「う、うん」
「常闇くんっ! 空は?!」
「俺の“
「障子くんッ! 腕力に自信は?!」
「一般人の十倍くらいならできる」
「――ッ!!」
情報を得るたび表情が変化し、最後には称賛の笑みが浮かぶ。
全ての情報が出揃っているワケではないし、情報の整理力も未熟なため確実ではない作戦。だが可能性が出たという事実が出久を勇気づけていた。
「信じ切ることは出来ないかもしれないけどそれでも付き合って欲しい! 作戦は――」
「! 正気ではないな」
「情報の解像度が低すぎるうえそこに希望的観測も含まれている」
「確かに信じ切ることは出来ないな」
「けど。無茶はヒーローに付きものだよね!」
四人は出久の作戦に驚愕しつつも賛同し、説明の通りにことを進める。
出久は捕縛布の両端に
踏陰は天哉の背にしがみつきつつ無重力状態の残骸を持ち、天哉は最大速度を出せる程度に距離を取った。
「あと三分~」
そして作戦が始まる。
急激な加速。天哉は質量ゼロとなった踏陰と残骸を背に全力で疾走し、お茶子の近くへと辿り着く。
出久に肩を借りながら立つお茶子は天哉の疾走直線状付近に手を真っすぐ伸ばして固定。
天哉はお茶子の隣を通り過ぎる瞬間にその手に触れ、お茶子はその数瞬後に天哉に“
横方向の速度は坂という発射台によって縦方向に変換。圧倒的速度のまま二人と二つは空を舞い、そうして踏陰は掴んでいた二つの残骸を巨大
それは直接当てるのではなく、巨大
「やったっ!」
通常。超質量の物体を動かすにはそれ相応のエネルギーが必要になる。
だが“
そして最後に“
「障子くんッ!」
「任せろ!」
そして最後に隠れていた障子。
仰け反った、重心が崩れている状態。その状態で障子は巨大
「うおおおおおッ!!」
仰け反りによって踏みつけは行われない。行われているのは質量と腕力の純粋な勝負。
だがビルを超える巨大な金属塊は“個性”があっても人一人の力では動かない。
「
「アイヨッ!」
加勢を、と考えた踏陰は空中で軌道を調整し巨大
そのまま
「ッ! トルクオーバー・レシプロバーストッッ!!」
それに感化されるように天哉も緊急技を発動。足場がないため普段のような動きは出来ないが、それでもふくらはぎの“エンジン”によって多少のスピードアップは出来る。また、装甲に辿り着ければ適しはしないが足場となるため一瞬ではあるが加速も出来る。
「倒れろ!」
出久も微力ながら力になろうとお茶子と連携して二本四対の残骸を追加した。
「――ッッ! やったぁッ!!」
その甲斐あって巨大
「――ふぅ……って、そうだ! 怪我した人を助けないと!!」
「はは、緑谷くんは元気そうだなぁ」
実際のところ、かなり無茶をしていたお茶子。
試験での本来の使用に加え、今の戦闘で許容重量ギリギリまで“個性”を使用していたため肉体に絶大な負荷が掛かっていた。
不安定に襲い掛かる吐き気。それが副次的負荷として眩暈を引き起こし、脚の怪我と合わせてお茶子はその場に座り込む。
「大丈夫かい? 麗日さん」
「飯田くん……私は大丈夫。それより飯田くんはどうしたの?」
「……さっき使った技の反動でね、一分ほど脚のエンジンが使えないんだ」
「それにしても。ボロボロなのに他の人助けて。まさにヒーローって感じだよね」
「ああ。それに途中経過的にあまり
SST5:実技の結果(自作順位・原作順位/自作ヴィランポイント・原作VP/自作レスキューポイント・原作RP)
出久圏外・7/9・0/49・60(一撃で倒した原作と異なり協力したためRP低下。作戦立案やその他の要所で大きく加点)
勝己1・1/89・77/3・0(幼少期の変化で強化。救助はあまりしないがギリギリの受験生は助ける程度には意識を割くため3RP)
人使7・圏外/22・不明/43・不明(ずっと戦闘訓練をしていたため討伐数それなり。通常の救助に加えて取り乱した相手に『落ち着け』と洗脳し助ける)
お茶子3・3/29・28・52・45(協力によってRP増)
踏陰8・9/49・47/17・10(同上)
天哉6・6/51・52/16・9(同上)
障子圏外・圏外/33・不明/23・不明(同上)
原作で持ち込み可能という言及や『“個性”に合わせた装備』という点から出久にも装備を持ち込ませました。とはいえ強力な装備は単純に金額的に買えなさそうという点や、加えて武器のため所持制限があるだろうとして子どもの小遣いで所持できそうな『捕縛布』としました。
ちなみに相澤先生の『捕縛布』とは異なります。詳しい設定は知りませんがプロ仕様の装備ですしそれを買うには金がないでしょうからその下位互換の製品を、と
出久との関わりがこれ以前ではないためバタフライエフェクトとして処理して欲しい自作設定として『踏陰は
ちなみに、お茶子の“個性”によって質量ゼロ状態なら