転生したが世代が違った...   作:大徳寺 一

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16話 一次試験 後編

 

 あの攻撃の後、委員長と別れて別の建物に移動した。その建物からこっそりと雄英の様子を伺っている。

 

 「操助、流石にもう潮時やないか?雄英の人も警戒心マックスやで」

 「豊満の言う通りだぜ毒島!もう離れて適当な奴から取っちまうべきだ!」

 

 二人の言う通りだ。雄英に拘る必要はない。目的だったクラスメイトの通過はもうすでに達成している。雄英にバレた時用に逃亡の作戦は考えてあるが、さっさと離れて自分達も通過するのが一番いいだろう。

 

 「そうだな、あわよくば雄英生から奪ってやろうと思ってたんだがな」

 「毒島くん意外とチャレンジャーだよね」

 「人生は一度っきりだからな。できる内にやらないと」

 

 まぁ俺は二度目だけど。むしろ二度目だからこそ後悔したくと言えるのかもしれない。

 

 「さっさと通過して休憩しようか」

 「さんせ~い」

 

 そう言った瞬間だった。建物全体が揺れたと思うと壁が縦に裂けた。石山さんの仕業だろう。急な出来後に一瞬戸惑う。

 なんでバレた?気付いた素振りはなかったはずだ。・・・いや違うな。すでに気付いてた。不意打ちのために待っていたんだ。

 そのまま流動化したコンクリートが俺を捕まえようと襲い掛かる。目くらましのために色付きのガスを出す。だがそれを黒瀬さんは許さない。

 

 「させませんよ!」

 

 彼女はそう言って個性でガスを吸い込んでいく。こうなるから真正面からの戦闘は避けたかったんだよな。まぁいいだろう。こうなることも想定している。

 そうして俺はガスを思いっ切り噴き出して高く飛ぶ。合宿の新技だ。迫るコンクリートを避け、ブラックホールの範囲外に逃げる。

 

 「「飛んだ!?」」

 

 黒瀬さん達は急に飛んだ俺に驚いていた。まさか飛ぶとは思わないよな。悪いがその隙を突かせてもらう。

 

 「刃渡!」

 「あいよ!」

 

 刃渡はそう言って二人に向かってスモークグレネードを投げる。逃走用に持たせておいたのだ。

 だが、黒瀬さんは投げ込まれたそれをすぐさま吸い込む。流石、雄英生だ。対処が早い。まぁ...

 

 

 「本命は俺だけどね」

 

 

 その瞬間、爆発が起きた。いや正確には爆発ではない。毒島がガスを噴射しただけである。だがそれの範囲や勢いは爆発と間違えても不思議ではなかった。他のエリアにいる他校生達もそれに釘付けになっていた。そんな市街地エリアの一部を毒ガスの海にした張本人はというと、

 

 「やりすぎたな...」

 

 ガスの中心で毒島はポツリと呟いた。あいつら大丈夫かな。作戦としては機動力がある俺と刃渡で時間稼いで、豊満と指原はそのうちに逃げるという作戦だった。豊満達の方は離れてたから大丈夫だろうけど近くにいた刃渡が心配だ。

 グレネード投げたらすぐに逃げるように言ったが、あいつの事だから不幸体質のせいでガスマスク吹き飛んだとか色々あるかもしれない。全員で合格したいし探しに行くか。

 その時だった。微弱であるが吸い込まれる感覚がした。その方向を見ると宇宙服のようなものがぼんやりとだが浮かんできた。十中八九、黒瀬さんだろう。よし、バレないうちに逃げるか。

 刃渡、探しに行くと言ったが噓だ。俺は友を信じる男だ。お前ならやってくれると信じてるぜ。

 

 「ん?誰かいるんですか?」

 

 ヤバい!バレた!早く逃げなければ!そう思った瞬間にはもう走り出していた。後ろから「あっ!待て!」などと聞こえるが無視だ。正直もう相手にする余裕がない。二次試験のことを考えると、これ以上の毒の消費はご法度だ。適当に倒れてる奴からさっさと奪ってしまおうと思った。しかし、そうは問屋が卸さない。

 また何かに吸い込まれる感覚がまた毒島を襲う。振り向くと吸い込みながら追いかけてくる黒瀬の姿があった。なんで追っかけてくんの!?一人行動はリスキー過ぎるって!?そう思いつつもスピードは落とさない。必死に走ると目の前に倒れている受験者がいた。助かったと思ったが現実は残酷である。

 あと少しというところで自分の体が地面から浮いた。彼女の個性の射程内に入ってしまったのだ。毒島は仕方なくガスを噴射し地面に張り付く。そのまま這うように倒れる受験者に近づこうとするが、また悲劇が彼を襲う。

 自分が吸い込まれているという事は倒れてる彼もまた吸い込まれているという事だ。そう、倒れている彼が宙に浮き彼女の方に吸い込まれていった。

 

 「はああああああああ!?ふざけんな!!不幸キャラは刃渡だけで十分だっつーの!!」

 

 刃渡を見捨てた罰とでも言わんばかりの不運の連続にキャラを忘れて怒りだす毒島。滑稽である。

 どうする、彼を吸い込まない様にするために絶対に止める瞬間がくる。そのうちに逃げるのが最善の策だろう。だが心の何処かで嫌がる自分がいる。だってそれを選んでしまったら自分は彼女に負けたことになる。それは絶対に嫌だ!相手に出し抜いてやったと思われたくない!なら...

 

 「そいつは俺のもんだあああ!!!」

 

 毒島はそう言って飛び出す。ブラックホールの吸い込みとガスの噴射で速度はどんどん速くなる。そのおかげで彼との距離も近づきもう少しで手が届く。だがそれは彼女も同様である。毒島が後から行動した分、距離は彼女の方が短い。どっちが取っても不思議ではないそんな距離だった。目標まで1メートル、1センチ、1ミリと近づき遂に手が届く。

 

 

 『一次試験通過おめでとうございます。通過者は控え室に移動してください』

 

 

 無機質な音声がその場に響く。その音声は毒島の機材から出ており一人のエゴイストの勝利を祝っていた。それ聞いて毒島は勝利の雄叫びをあげることもなく逆に冷静になっていた。

 完全勝利!...ってわけじゃないな、黒瀬さんは彼じゃなくて俺のを狙ってた。考えてみれば俺が脱落すれば毒ガスが止まるわけだから単独行動したのも頷ける。実際は俺はもう毒ガスは出してなかったんだが、彼女からしたら知ったこっちゃないだろう。まぁ結果オーライだ。

 そして俺はむくりと立ち上がりその場を後にしようとする。

 

 「えっと、じゃあ俺はこれで...」

 「あっ、はい」

 

 なんか、めっちゃ気まずい雰囲気になってしまった。さっさと控え室に行こう。

 

 「...あれ?もしかして毒島さんですか?」

 「えっ!気付いてなかったの!」

 

 黒瀬さんの発言につい驚いてしまう。ガスマスクを着けてたから顔も分からなかっただろうし、個性も言ってないから、こういう反応されても仕方ないのかもしれない。

 

 「でも俺、目の前で喋ってなかったっけ?声で分からなかった?」

 「口調が荒々しかったので別人かと思って」

 「あーなるほど」

 

 彼女の言葉に納得する。確かに口調が荒々しかったかもしれない。あの時、ちょっとイライラしちゃったし分からなくて当然だな。そう思いつつ彼女に瓶を手渡す。その中には錠剤のようなものが沢山入っている。

 

 「これは?」

 「解毒剤だよ。ばら撒いた毒ガスは数十分くらいで中和されて無毒になるけど一応ね」

 「ええ!いいんですか?」

 「君たちを利用してたから、詫び賃ってことで貰ってよ」

 「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 彼女は申し訳なさそうにそう言った。別に蹴落としたい訳ではないからな。そういえば、一つ気になっていた事があった。

 

 「そういえば俺達の事どうやって気付いたの?」

 「あれは偶然気付いたんです。辺り一帯を警戒してたら、建物の中に士傑の帽子を被った銀髪の人が見えたので」

 

 銀髪...刃渡じゃねぇか。あいつの不幸体質に振り回された訳か、連れてくるのは失敗だったかもしれない。まぁ合格したし良いか。

 

 「じゃあ俺は失礼するよ。頑張ってね」

 「はい、解毒剤ありがとうございます」

 

▽▽▽

 

 彼女と別れ控え室に着く。扉を開けばクラスメイト全員が待っていた。豊満達も無事に合格したようだった。

 

 「毒島、大丈夫だったか?遅かったから心配したぜ」

 「心配どうも刃渡、お前こそ大丈夫だったか?あの時やりすぎたと思ったんだが」

 「それが聞いてくれよ!あの時吹き飛ばされたんだけど、飛ばされた先に偶然気絶してる人がいて、そのまま通過出来たんだよ!!珍しくでラッキーだった!ヤバくね!」

 「...そっか、良かったな」

 

 すごく喜んでいる刃渡を見ていると申し訳なくなった。見捨てようとしてごめんな...

 

 「今度、ご飯奢るわ」

 「どうした!?急に!?」

 「いや、うん、奢るよ」

 

 刃渡は俺の発言で何処か打ったのかと心配そうに見つめている。するとまた口を開く。

 

 「よく分かんないけど、午後の二次試験も頑張ろうな」

 「そうだな。午後も頑張ろう」

 

 刃渡の言う通り、午後から二次試験だ。これをクリアすれば仮免合格だ。気を引き締めていこう。

 

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