最近ちょっとバタバタして遅れました。完結まで書くつもりですので、これからもよろしくお願いします。
スタートの合図で一目散に飛び出す。まずは簡易的な救護所、その後に道と救助ヘリの離着陸場を作るのが優先だ。そのためには...
「犬の個性の君!」
「えっ!?は、はい!」
犬の顔をしたその少年は話しかけられて驚いてしまう。急に他校の生徒に話しかけられたのだから驚いて当然だろう。この場で必要な探知系個性だ。悪いが手伝ってもらう。
「ここら一帯で被害者の匂いや声はあるか?」
「いや、ここには匂いや声はしない」
「分かった!ありがとう」
ここに被害者がいないなら好きに個性を使える。彼女の個性で吸い込んでもらい簡易的な救護所を作ろう。
「黒瀬さん!簡易的な救護所を作るから瓦礫を吸い込んでください!」
「了解です!任せてください!」
「広めにお願いします!救助ヘリの離着陸場にしたい!指原と豊満!俺と一緒に救助者のトリアージと手当てを頼む!他の人は救助に向かって下さい!被害範囲はとても広い!各場所で救護所を作ってそれを中心に活動をお願いします!」
「「「了解!」」」
そう言って散開する受験者達。俺も次の準備をしないと無駄は一切許されない。最善の手を選び続けるんだ。
▽▽▽
「やっぱり凄いな」
会場の観客席、公安委員会が受験者達を採点している。その場の一人がぼそりと呟く。
「毒島くんか?」
「ああ、多少荒削りな所はあるが行動も指示も的確だ。そんじょそこらのプロヒーローより優秀だ」
「確かに今すぐプロヒーローになっても通用する実力だな」
そう言って彼の資料を見る。毒島操助、東京出身なのに雄英ではなくわざわざ士傑高校に進学し主席で合格、本人は校風が好きだからという理由で士傑を選んだらしい。だとしたら凄い行動力だ。余程士傑高校に思い入れがあるのだろう。
「だが問題はここからだな」
「ああ、今回は特別な試験だからな」
ヒーローの質を上げる為に今回の仮免試験は特別仕様だ。こんなに厳しくする必要があるのかと意見もあったが試験的に導入した。どのような結果になるか分からないが頑張ってくれよ受験者達。
▽▽▽
「擦り傷だけで脈拍も異常なし。消毒するから腕出してね」
そう言ってスプレーのように指先から消毒液を噴き出す。毒を以て毒を制すとはこのことだろう。そして傷口に絆創膏を張る。
「これで大丈夫だよ。このお兄さんとあっちに行ってね」
救助者を安全な場所に誘導し、他の救助者の手当てを始める。今のところ異常はない。このまま行けば合格は間違いないのだが、ある言葉が引っかかっていた。
「気にしすぎたか...」
「何がや?」
「放送の時に『ヴィランによる』って言ってたのが気になってたんだ。お前らを残したのは救助者を守る役割の方がでかい」
「気にしすぎやろ。流石に仮免でそこまでやらんて」
豊満がそう言った時だった。大きい爆発音が鳴り火柱が上がる。急いで瓦礫の山を登りその方向を見ると煙の中からぞろぞろとヴィランを模した格好の人が出てくる。中でも一人の男に釘付けになった。その男は筋骨隆々で自身の体の一部に炎を纏っていた。間違えようがないフレイムヒーローエンデヴァーだ。
『ヴィランが姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生はヴィランを制圧しつつ救助を続行して下さい!』
ヴィランが現れたというアナウンスで会場は少しパニックになる。どうすべきかと慌てる人や不安な顔を見せる人と様々だ。俺は落ち着かせるために声を上げた。
「落ち着け!ヒーローが不安な顔をしてどうする!一番不安なのは救助者だぞ!」
その言葉で落ち着いた人もいるが、中には狼狽える人もいる。
「そうは言ったってどうするんだよ!!」
「大丈夫!作戦はある!ヴィランが現れたのは東側だ。西側の救護所に逃げろ!指原は俺と来てヴィランの足止めだ!」
受験者達は急いで避難の準備をする。俺もエンデヴァーの元へ向かおうとするが豊満が話しかけてくる。
「操助!俺も行くで!」
「いや、お前は救助者を避難させてくれ。相手はエンデヴァーとサイドキックの人達だ。炎の個性が多いからお前と相性が悪い。それにあくまでも救助が優先だから戦力を片寄せたくない」
「...分かったわ。その代わりエンデヴァーの顔面に重いの一発決めたれ!」
豊満は納得した様な顔を見せたと思えばニヤリと笑って言い放つ。何言ってんだこいつは、おそらく手加減はしてくれるだろうが相手はヒーロービルボードチャートで二位のヒーローだ。かすり傷を付けるので精一杯だろう。だから豊満にこう言ってやった。
「安心しろ!三発は決めてやるよ!」
そして豊満と別れ、指原と一緒にヴィランの元へ向かう。しばらく走り、豊満の姿が見えなくなると指原が口を開く。
「さっきはああ言ってたけど、本音はどうなの?」
「無理だろうな。かすり傷を付けられたらラッキーって感じ」
「ぶっちゃけるね~」
指原は苦笑いで返答する。威勢のいいこと言っていた男があっさりと手のひらを返したのだから仕方ない。だが毒島の言う事も理解できる。エンデヴァーが本気を出せば自分等など赤子の手をひねる様に撃退できるだろう。
「無理だと思うけど挑戦はするよ。せっかく来てくれたんだからな」
「チャレンジャーだね~」
指原が少し呆れた様にそう言うと遠くから声が聞こえてきた。一瞬、救助者かと思ったが馴染みのある声だったので視線を向けてみると刃渡がおり、手を振りながらこちらに近づいていた。
「お前らもヴィラン退治か!」
「ああ、そっちは大丈夫なのか?」
「おう!手が空いたから俺ともう一人でヴィラン退治に来たわけよ!」
刃渡の方も順調そうだ。ん?もう一人?
「もう一人はどこだ?お前しか見渡らないが」
「え?...あっ!?お前ら見つけたから置いてっちゃった!?」
「何やってんだお前」
刃渡は慌てて周りを見渡す。すると四角い頭の男が向かってくる。雄英生の石山君だった。
「勝手に行かないで下さいよ」
「すまん石山!友達が居たからつい...」
頭をかきながら謝る刃渡。仲良くなったのか話し方はフランクだ。石山君が来てくれたのは正直助かった。指原も合わせて広範囲に攻撃できるから俺の作戦が上手くいきそうだ。
「悪いが談笑してる暇はない。作戦があるから移動しながら聞いてくれ」
▽▽▽
そして俺は作戦内容をみんなに話した。反応は渋々といったところだ。
「毒島さん、流石にそれは危険過ぎるんじゃないでしょうか?」
「石山の言う通りだ!少しでもミスったらアウトだぜ!」
「あくまでも足止めだから自分の安全優先で行動するから大丈夫だよ」
「作戦が全然、安全優先じゃないんですが!?」
俺の言葉に刃渡がツッコむ。リスクが高いことは承知しているがこの作戦の方が色々都合がいいのだ。
「エンデヴァー達が見えてきた。作戦通りに頼むぞ」
「「了解」」
「マジでやんの...まぁ、やるならベストを尽くすけどさぁ...」
そうしてエンデヴァー達を迎え撃つ準備をする。緊張で心臓の音がうるさい。だが、やらねばならない。胸を張ってヒーローをやるために。