忙しくて二週間に一話になりそう。
時は遡り一ヶ月前、ヒーロー公安委員会本部にて仮免試験の会議が行なわれていた。だが、今回の会議はいつもと違う。トップヒーローと呼ばれるヒーロー達がこの場に集められていた。
「学生の成長の為にプロヒーローが敵となる。まぁ理解できる。だが、それは他のヒーローでいいだろう。俺が出る必要はない」
「エンデヴァー、あなたの意見はごもっともです。ですが有象無象のヒーローでは意味がない。超える壁が高ければ高いほど人は成長できると思っています。。どうか参加していただけないでしょうか」
公安委員会の男がエンデヴァーにそう言うと、エンデヴァーはギロリと睨み付け口を開く。
「じゃあ、なぜ奴がいない。高い壁が必要なのだろう?」
「奴?...ああ、オールマイトですか。彼は多忙ですので私の部下が事務所に向かっています」
「何だと?...」
まるで自分が忙しくないという物言いに更に目が吊り上がる。それ見て急いで弁明する。
「いや失礼、皆さんを比較して言ったわけではありません。彼は事件が起こると現場に急行してしまうので予定が合わないのです」
それを聞いてほとんどの人が彼らしいと納得したが、エンデヴァーだけは眉をひそめ「ふんっ」と言って背もたれに寄りかかる。不満はあるが納得した様子だった。そして公安の男は口を開く。
「話を戻しますが、決定権は皆さんにあるので参加は自由です。これからの社会のためにも良い返事を期待しています」
▽▽▽
そして現在、No2を前にして叫びながら飛び出す男が一人いた。
「タイマンだああああ!!」
ガス噴射で空を飛び、エンデヴァーに突っ込んでいく。それを見た多くの者が自棄になったのかと思ったがその考えは一瞬で消えた。その瞬間にコンクリートの波と弾丸の雨が全員を襲う。
(シンプルなゴリ押し、並大抵のヴィランだったらやられるだろう...だが!)
その瞬間、エンデヴァーを中心に熱波が広がる。その勢いは彼に襲い掛かったコンクリートと弾丸を押しのける勢いだった。その熱波の中、エンデヴァーに突っ込んで来る者がいた。それは液体の塊で中に毒島の姿があった。
(膜を張り熱を遮断したのか...しかし、その状態では呼吸も視界もままならないだろう!)
エンデヴァーは彼に炎を放とうとするが、それより先に毒島が毒ガスを放つ。すぐに口を塞ぐが、これが煙幕だと気付く。それが分かるとサイドキックを巻き込まない程度に全体に炎を出す。
「あぶねっ!?」
背後から声がした。振り向けば毒島がおり2メートル程の棒を握っていた。バレたと気付くとまた煙幕を出して身を隠す。もう一度、煙幕を振り払おうとするが背後から気配がする。振り向けば毒島が突きの構えをとっていた。気付かれたことにも動じず突きを放つ。それを避けて反撃しようとするも煙幕で身を隠される。隠れたと思えば死角から攻撃がくる。
(攻めているが慎重だ。一定の距離を保ち、俺の動きを窺っている)
毒島の攻撃を避けながらエンデヴァーはそう思った。そして反撃しようとすると再び煙幕で身を隠される。
(長期戦を狙っているな。俺はハンデとして腕に拘束用プロテクターを付け、個性で熱がこもり続けている。早期に決着しなければ)
そうと決めたら、すぐに行動を起こす。毒島が身を隠した瞬間に熱波を放つ。煙幕は吹き飛び毒島の姿が露わになる。熱波で怯んだ隙を狙って腹に一撃を与えようとするが、
「む?...」
エンデヴァーの拳は当たることはなかった。いや正確には当てる直前にある事に気付き当てなかった。動きが止まったエンデヴァーに毒島は薙ぎ払いを当てようとするが紙一重で躱される。
「どうかしましたか?ビビっちゃいましたか?」
「ふんっ、安い挑発だ」
「流石No2ですね。気付かれると思ってませんでした」
毒島は服をめくり腹を見せる。そこには毒で膜が張られており細かくではあるが棘が生えていた。もしもあのまま拳が当たれば毒で動けなくなったであろう。
「...当たる箇所の膜を厚くしただろう。腹に妙な膨らみができていた」
「ご指摘ありがとうございます。ここから先は関係ないので」
そう言うと毒島の体から毒が溢れ出る。それは毒島を包み込み鎧のような形になった。
「じゃあ、よろしくお願いします!!」
毒の鎧を纏いエンデヴァーに突っ込んでいく。エンデヴァーは向かって来る毒島に炎を放つが気にすることなく進んでいく。そして炎の中から棒による突きが襲い掛かる。それを避けながらエンデヴァーは疑問を覚える。
(なぜこんなにも動ける?熱を遮断するのにも限度があるだろう)
熱を鎧で遮断したとはいえ、熱伝導で中に熱は伝わっていくはずなのだ。だが、毒島に熱が伝わった様子はない。むしろ触れられないことをいいことに攻撃を続けている。そしてあることに気付く。鎧の一部が焼け落ちたと思えばその下から鎧が出てきたのだ。
(熱が伝わる前に内側から鎧を作り続けているのか!なら、追いつけない程の炎を出すだけだ!)
炎を放とうとするが、また煙幕を出される。その反応の早さにエンデヴァーは驚く。
(反応が早いが関係ない!次の攻撃にカウンターを決めるだけだ!)
毒島を捉えようと様子を窺う。すると煙幕からこちらに向かって来る影が見えた。毒島だと思い火を放つが、当たった瞬間にドロリと溶けた。当たったのは毒で作られた人形だった。
「人形だと!?本物は何処だ!!」
そう言って振り向くと同時に毒島が飛び出してくる。毒島は握り締めた拳をエンデヴァーの顔面に放つ。それをエンデヴァーは躱そうとするがプロテクターと体勢のせいで動きが遅れた。毒島の拳はエンデヴァーの顔面を捉えた。その筈だったが大きなブザーの音が響き渡り拳を止める。
『只今を持ちまして、配置された全てのHucが危険区域より救助されました。まことに勝手ではございますが、これにて仮免試験全行程、終了となります。集計の後、この場で合否の発表を行いますので着替えてしばし待機でお願いします』
それは終了を伝えるアナウンスだった。毒島はアナウンスを聞くと鎧が泥のようになって垂れていく。その後、服装を正して「失礼します」と言ってその場を離れる。それを見送るとサイドキックが話しかける。
「すいませんエンデヴァーさん...煙幕と他の受験生の邪魔でサポートできなくて...」
「気にするな。むしろ一人の方がやりやすかった」
「そうですか...でも、流石ですね!ハンデがあっても無傷だなんて!」
(いや、プロテクターと体勢のせいではあったが試験が続けば当たっていた。それに拳ではなく棒の攻撃のままだったら...毒島 操助か...)
▽▽▽
試験終了後、結果が出るまでみんなと話して時間を潰していた。
「作戦聞いた時はビビったぜ!エンデヴァーとタイマンするなんて」
「だよね~!チャレンジ精神も程々にしろ~って思ったよ~」
わざわざ俺を挟んで会話する二人。俺のことをチラッと見てくるのから察して文句が言いたいのだろう。このまま無視を決め込むのいいが二人の視線が痛いので口を開く。
「悪かったよ。でも成功したし良かっただろ?」
「こっちは心配で仕方がなかったわ!煙幕で見えなかったし!」
「そうだよ~!なんでこんな無茶な作戦にしたのさ~!」
「指原の言う通りだ!このすっとこどっこい!」
「このバトルジャンキー!」
マシンガンのように繰り出される二人の文句。それを見て豊満は爆笑している。
「何笑ってんだ豊満」
「すまんすまん!無茶したみたいやな操助」
「まぁな、てか、お前の約束のためだぞ」
豊満はきょとんとした顔をしたと思うとまた笑い始める。本当にやるとは思わなかったようだ。
「操助!あれ!やろうとしてたんか!最高やな!」
「まぁな」
「で、どうやった?三発いったんか?」
「それなんだg『お待たせしました。これより結果発表を行います』すまん、後でな」
その質問に答えようとするが公安委員の放送で遮られる。遂に結果が出たようだ。やることはやったし、どんな結果でも受け入れるつもりだが少し不安はある。全員合格してるといいな。