仮免試験の結果発表を始めるアナウンス。それによって静かになる
『皆様お疲れ様でした。結果を発表する前に採点方式について話させてください。今回の試験では我々ヒーロー公安委員会とHucの皆さんによる二重の減点方式であなた方を見させてもらいました。つまり危機的状況でどれだけ間違いのない行動を取れたかを審査しています』
原作と同じだなと思っているとスクリーンが映る。そこにはズラリと名前が並んでいた。
『合格の方は五十音順で名前が載っています。今の言葉を踏まえた上で、ご確認ください』
映りだされたのは合格者の名前のようで、その中には自分の名前が映っていた。ほっと息をつく。他の奴等は合格したか確認しようとすると隣の刃渡が騒ぎ出す。
「うお!俺の名前あったぞ毒島!同姓同名じゃないよな!?」
「しっかり、お前の名前だから落ち着け」
周りに目もくれず、はしゃぎまくる刃渡。まぁ合格出来るか一番不安がっていたから当然だろう。ていうかヒロアカの世界で同姓同名より珍しい物はないだろ。
「俺の名前もあったわ!ていうかクラス全員合格やな!」
「そうだね!良かったよ~!」
どうやら全員合格したようだ。これも俺の作戦のおかげだな。
「いや二次試験の作戦はどうかと思うぞ」
「ナチュラルに心を読むな刃渡」
さっきまで騒いでいたのに急に落ち着きやがって。すると再びアナウンスが流れる。
『続いてプリントを配ります。採点内容が詳しく記載されてますのでしっかり目を通しておいて下さい』
すると数名の公安委員の方がプリントを配り始める。自分にも配られ点数を見ると98点だった。減点理由の欄を見るとヴィラン退治に向かう際に足を止めた事が記載されており、一瞬、何の事だと思ったが刃渡と合流したことだと思い出す。
「えっ!?毒島98点!?むしろ何して減点されたの?」
「お前が石山君を置いて行って足止めくらった所」
「...ちょっと他の奴の点数、見に行ってくるわ!」
そう言って刃渡はそそくさと立ち去る。逃げやがって...しかも点数言ったせいでめっちゃ目立っちまったじゃねぇか。視線が集まって落ち着かねぇ...
「うわ!ほんまに98点や!」
「凄いね~!」
話を聞きつけた二人が俺のプリントを覗き込んでくる。俺はプリントは鑑賞物じゃないだが。
「勝手に見るな。見るならお前らの点数教えろ」
「83点や。トリアージの時の判断が遅かったとかやったわ」
「僕は88点だよ。戦闘面での事と刃渡くんのやつ」
二人とも十分高得点だ。指原も俺と同じ被害者か。この感じだと石山君も減点されてそうだな。本当に申し訳ない。そんなことを考えていたら、また話が始まる。
『合格した皆さんはこれから緊急時に限りヒーローと同等の権利を行使できる立場となります。すなわち、それは皆さんの行動に社会的責任が生じるという事でもあります。今回はあくまで仮のヒーロー活動認可資格免許。半人前程度に考え各々の学舎で更なる精進に励んで頂きたい』
目良さんの言う通りだ。今までは色んな人に支えられてきた。これから先の活動は責任が生じる。自分の立場を自覚して行動しなくてはならない。そのことをしっかりと心に刻み仮免試験は終了した。
▽▽▽
別室で仮免許証を受け取り、それを眺めながら刃渡が口を開く。
「俺達、合格したんだなぁ...」
「まだ仮免だけどな」
「もう!一言多い!少しは感傷に浸らせろ!」
「そんな暇ないぞ。これから先はインターンとか進路とか色々やること多いからな」
「ストイック過ぎるって!今日ぐらい良いじゃんかー」
刃渡が項垂れるようにそう言うと、賛同するように豊満も続く。
「せやで操助!急ぎ過ぎてもしゃーないやん!息抜きも大事やで!」
「...それもそうだな。少し焦ってたかもしれん」
それを聞くと刃渡はさっきとは打って変わり明るい笑顔で肩を組んでくる。
「そうそう息抜きは大事だぜ!毒島く~ん❤」
「死ね」
「ストレート過ぎる!?」
そんな風に雑談をしていると、豊満が何かを思い出したかのように「あっ!」っと声を上げる。急に声を上げるものだから俺も含め近くにいた人達も驚いてしまう。
「急にどうした?大きな声出して?」
「忘れとったんやけど、エンデヴァーの話の続きどうなったん?」
試験結果に夢中になっていて俺もすっかり忘れていた。約束のことを知らない刃渡は気になったのか約束について聞いてくる。
「何の話?エンデヴァーと何かあったの?」
「そっか~刃渡は居なかったもんね~」
「エンデヴァーの顔面ぶん殴る約束の話やで」
「そんな物騒な約束してたの!?」
思っていた以上にぶっ飛んだ話だったので刃渡は口を大きく開けて驚いていた。冷静に考えると結構ヤバい約束をしたなとは思う。
「結局どうなったん?」
「一発も当たらなかったよ。あとちょっとでぶん殴れたけど」
「流石、No2ヒーローやなぁ」
本当にもうちょっとだった。終了のアナウンスが無ければエンデヴァーの顔面に俺の拳は当たっていた。正直、攻撃が当たるとは思っていなかったし、かすり傷を付けられれば御の字だった。だが今思い返すと悔しい思いでいっぱいだった。
「救助者を助けるのが遅かったら、エンデヴァーぶん殴れたのに...」
「その発言はヒーローとしてアウトやろ」
「免許返納してこい」
「冗談だ。ただ悔しいなって思っただけ」
その言葉で一瞬だけ沈黙が流れるが豊満が話し出す。
「ほんまに負けず嫌いやなぁ。なら次会ったら殴ればええんや」
「次ってなんだよ。今回は試験だったから戦えただけだぞ」
「それはこう...会った瞬間に殴りかかるんや!」
「ヴィランじゃねぇか」
「お前も返納してこい」
そんなこんなで騒ぎながら進んでいると少し先の角から人が出てくる。その人を見て足を止める。出てきた人にぶつからないように止まった訳ではない。その人が先程話していたエンデヴァーだったからだ。殴る云々の話を聞かれていないか全員冷や汗を流した。すると豊満が小声で話しかけてくる。
「操助、今や!」
「何言ってんだ馬鹿!」
急に変なことを言い出すのでエンデヴァーに聞こえないように小声で罵倒する。エンデヴァーは俺達に気付くとこちらに向かってくる。
「毒島...俺達の会話、聞かれたのかな...」
「分からん...進行方向がこっちなだけかもしれん...」
そんな願いも虚しくエンデヴァーは俺達の前で立ち止まった。
「毒島操助くんだね?」
「はい...そうですが...」
エンデヴァーは俺だと確認すると豊満達にも話しかける。
「申し訳ないが、彼と二人で話がしたい。少し借りてもいいかね?」
「全然、大丈夫でしゅ!あっ、その、帰りのバスが五時なんで、それまでにお願いします!」
「ああ、すまないね」
「とんでもないです!毒島!俺達は先に行くから!」
「待ってるよ~!」
「遅れへんようにな!」
そう言うと三人はそそくさと離れていく。薄情者共め!覚えておけよ!てか、なんで俺だけなんだ!殴ろうとしたの根に持ってんのか?
「すまない。君と話がしたくてね」
「いえ、お気になさらず...」
「君の今回の活躍は素晴らしかった。もしも試験が続いていれば俺は負けていただろう」
「いやいや、ご謙遜を」
絶対!殴ろうとした事を言いに来たって~!根に持ちすぎだろ~!
「そんな事はない。試験でも98点とトップで合格した君はとても優秀だ」
「ありがとうございます。エンデヴァーさんのような人にそう言ってもらえると嬉しいです」
本当に何なんだ?めっちゃ褒めてくれるけど裏がありそうで怖い。早くここから離れたい。
「ところで仮免を取ればインターンを行える事は知ってるかね?」
「もちろんです。その為に取ったみたいなものですし...」
とは言ったものの、どこ行くか決まってないんだよなぁ。職場体験先だったマーキュリーさんの所ってインターンやってんのかな?
「知ってるなら話が早い。俺の元でインターンをする気はないか?」
「...はえ?」
多分、人生の中で一番まぬけな声が出た。
非ログインでも感想を書けるようにしました。
私のモチベが凄く上がるので良かったら書いてください。