転生したが世代が違った...   作:大徳寺 一

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26話 喧嘩

 「来ないなぁ...」

 

 テストが終わり燈矢くんの特訓の為に瀬古杜岳に来たのだが、全然来る気配がない。何かあったのだろうか?そんな事を考えているとぽつぽつと雨が降ってきた。

 

 「今日はとりあえず帰るか」

 

 明日は家に行ってみよう。来ない理由が分かるかもしれない。

 

▽▽▽

 

 そう言う訳で俺は轟家にやって来た。相変わらず立派な日本家屋だなと思いながらインターホンを押す。「はーい」と返事が聞こえガラガラと扉が開く。そこに立っていたのは轟家の使用人だ。彼女は俺の顔を見ると驚いた表情を見せる。

 

 「あら、お久しぶり」

 「お久しぶりです。いきなりで悪いんですけど燈矢くんいます?」

 「燈矢くん?えっと...いるにはいるんだけど...」

 

 燈矢くんの名前を出したら急にしどろもどろになった。やっぱり何かあったみたいだな。すると奥から誰かがやってくる。

 

 「誰かと思えば毒島くんじゃないか」

 「どうも、エンデヴァーさん」

 「何かあったのかね?」

 

 多分、原因はこの人なんだろうけど、ぼかしとくか...

 

 「いや~ちょっと用がありまして...」

 「まぁ立ち話もなんだ、上がるといい」

 「すいません。お言葉に甘えてさせてもらいます」

 

 そうして俺は家に上がらせてもらう。ある程度、廊下を進むとエンデヴァーさんが話しかけてくる。

 

 「で、何の用なんだ?」

 「...それより子ども達は元気ですか?」

 「ん?何故だ?」

 「あれ以来、会ってませんから」

 「...ああ、仲良くやっている」

 「へぇー良かったです...燈矢くんは元気ですか?」

 「燈矢?」

 

 燈矢くんの名前を出した時、明らかにエンデヴァーさんの声色が変わった。

 

 「はい。燈矢くんと結構仲良いんでs」

 

 言い終わる前にエンデヴァーさんは俺の首を掴み、大きな音を立てながら壁に押さえつけた。

 

 「急になんですか?エンデヴァーさん」

 「とぼけるな!燈矢に妙な入れ知恵をしているのは貴様だな!」

 

 ここまで来たら、誤魔化すのは無理だと思い、俺は正直に話すことにした。

 

 「そうですよ。ヒーロー目指しているみたいなんで」

 「燈矢の体質を知ってやってるのか?」

 「もちろんです」

 

 エンデヴァーさんの握る力が強くなる。

 

 「貴様がやってる事は燈矢を死に追いやるだけだ」

 「どういう意味ですか?」

 

 そう質問するとドタドタと足音がする。やってきたのは冷さんと子ども達で、その中には燈矢くんもいた。燈矢くんは俺に気付くとバツが悪そうな顔をして俯く。

 

 「何なさっているんですか!」

 「冷は引っ込んでいろ!燈矢の個性は自分の体を焼いてしまう個性だ。もし自分より強いヴィランが現れたら戦闘にせよ逃亡にせよ、必ず身を亡ぼす事になる!」

 

 確かにその通りだ。自分より弱い相手だけと戦う訳ではない。いつか必ず自分より強い相手と対峙する時は来る。燈矢くんの個性は格上相手には不利だろう。

 

 

 

 「分かるだろう?燈矢はヒーローを目指すべきではない!」

 

 

 

 エンデヴァーさんの言う通りだ。ヒーローを目指すのは諦めた方が良いのかもしれない...

 

 

 

 けど、

 

 

 

 「それを決めるのは!お前じゃないだろ!」

 

 

 

 そう言ってエンデヴァーさんを思いっ切り蹴って引き剝がす。無理な体勢で蹴ったため、俺は思いっ切り背中を打ったが気にせず立ち上がる。

 

 「燈矢くんだって分かってるんだよ!それでもなりたいから頑張ってるんじゃないか!」

 「なったところで言った通りになるだけだ!」

 「なってもないのに何が分かるんだ!未来予知でもしてもらったか!」

 「減らず口を!俺は燈矢の将来のために言っているんだ!」

 「なら!今の燈矢くんを見ろよ!」

 

 エンデヴァーさんはたじろぐが、そんな事お構いなしに俺は言い続ける。

 

 「燈矢くんの事を思っているなら、燈矢くんと向き合えよ!さっきの話なんて誰にでも当てはまる事だ!あんたはそれを理由にただ逃げてるだけじゃないか!」

 

 俺の言葉にエンデヴァーさんは鋭い目つきで俺を睨みつける。だが俺は臆せず最後に言い放つ。

 

 

 

 「燈矢くんはヒーローになれる!」 

 

 

 

 その瞬間、エンデヴァーさんに強く胸倉を掴まれる。

 

 「無責任な事を!燈矢に何があったらどうするつもりだ!」

 「そんな事になんかさせません!」

 「何を根拠に!そんな事が言える!」

 

 そんな言い合いをしていると冷さんがこちらに向かってくる。エンデヴァーさんはそれに気付くと一蹴する。

 

 「引っ込んでいろと言っただろう!俺はこいt、ぐはッ!?」

 「はえ?」

 

 間抜けな声が廊下に響く。誰の声だろうか?もしかしたら自分自身の声かもしれない。それほど俺は困惑していた。なぜなら冷さんの平手打ちがエンデヴァーさんの頬に叩き込まれたのだから。

 

 「冷!?なっ何を!?」

 「私、考えてたんです。どうしたら燈矢にヒーローを諦めてもらえるか」

 

 突然のビンタに困惑しているエンデヴァーさんに、冷さんはぽつりぽつりと話始める。

 

 「でも燈矢は諦めなかった。ちゃんと自分の意志で決めたのなら、背中を押すだけです」

 「分かって言ってるのか?それは燈矢を危険な目に合わせる事になる!」

 「燈矢は賢い子です。そんな事になっても無茶をする子じゃありませんよ。それにちゃんと見てくれる人もいます」

 

 俺の事をチラリと見ながら冷さんはそう言った。少し照れ臭い。そして冷さんは再びエンデヴァーさんの方を向き直る。

 

 「認めてくれないなら、子ども達を連れて出ていきます」

 「なっ!?」

 「えっ!?」

 

 冷さんのとんでもない発言に俺も一緒に驚いてしまう。そんな事を気にも留めずに冷さんは俺に話しかける。

 

 「毒島くん背中大丈夫?ぶつけてたでしょう」

 「え?ああ!大丈夫です」

 「一応、手当しましょう。立てる?」

 「えっと、その、」

 

 俺はエンデヴァーの方を見る。さっきの話のせいで石の様に固まっている。俺の意図を汲み取ったのか笑顔で口を開く。

 

 「良いのよ、ほっといて」

 「え」

 「さぁ行きましょう」

 「は、はい...」

 

 母、強い...

 

▽▽▽

 

 なんやかんやで俺は冷さんに怪我がないか診てもらっている。冬美ちゃんや焦凍くんも一緒になって手伝っている。一生懸命に手伝う様子はとても可愛らしい。

 

 「大丈夫そうだけど、一応冷やしておきましょうか」

 「すみません、俺が勝手にぶつけただけなのに」

 「良いのよ。むしろ燈矢の事ありがとうね」

 「いや、なんか家族の問題に首突っ込んで、余計なお節介だったかなって」

 「そのお節介が燈矢を助けてくれたの。本当にありがとう」

 

 すると燈矢くんがこちらにやってくる。目元が赤い。いっぱい泣いたのだろう。

 

 「えっと...」

 「泣き虫直せよ。ヒーローになるんだったら」

 「なっ!泣いてねーし!」

 

 申し訳なさそうな顔から怒った顔に変わる。あんな顔は燈矢くんに似合わない。

 

 「目元、真っ赤なくせに何言ってんだ」

 「謝ろうとして損した!」

 

 そっぽを向く燈矢くんの頭をわしゃわしゃと撫でる。「やめろー!」と言いながら燈矢くんは離れていく。元の燈矢くんに戻ったみたいで良かった。だが、気になる事がある。

 

 「あの...冷さん、さっきの話って本気なんですか?」

 「ええ、本気よ。連れ出すって言ったって決めるのは子ども達だけど」

 

 そう冷さんが言うと焦凍くんが間髪を入れずに答える。

 

 「ぼく!おかあさんといっしょがいい!」

 

 そう言うと夏雄くんも冬美ちゃんも頷く。二人とも冷さんと一緒が良い様だ。残るは燈矢くんだが尻込みしているようなので助け舟を出す。

 

 「冷さん、あれは思春期で素直に言えないだけですので、もし出ていくことになったら気にせず連れ出してやってください」

 「うふふ、そうするわ」

 「うっせーな!黙ってろ!」

 

 燈矢くんは悪態をついてそっぽを向くが、冷さんが後ろから抱き寄せて頭を撫でる。

 

 「今更って思うかもしれないけど、お母さん応援するからね」

 「...ガキ扱いすんな」

 「ごめんなさい。でも、もう少しこうさせてちょうだい」

 

微笑ましい家族の光景。そんな中、俺はとあることを全く別の事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (明日のインターン、エンデヴァーさんと会うのクソ気まずいな)

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