TS剣闘士は異世界で何を見るか。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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38:引きちぎっちゃった

 

気絶しているところを縛られた盗賊、それを引きずりながら運んでいくお爺ちゃんと師匠を見送る。

 

私が深く、従者としての礼をすればビクトリア様は軽く微笑みながら手を振ってくれる。どんどんと離れていく背中、でも私にとってその大きさは変わらない。その大きさをずっと頼りにさせてもらっているけど、時たま自身の小ささを強く実感してしまう時もある。

 

 

「……。」

 

 

私ができる事なんて知れている。正直さっきの戦闘なんて私の射撃なんかいらなかったし、そもそも帝都での生活すらそうだ。私ができる手伝いなんか誰でもできる。師匠が堅苦しい態度が苦手、ってだけで私も馴れ馴れしく会話をさせてもらっているが、本当は村のみんなに見せているように従者として、いや奴隷として振舞わないといけないぐらいの関係。……まぁ師匠にそんなこと言ったら泣かれるだろうから言わないし、やらないけど。

 

今自分が持っているもの、着ているもの。それにこの命だって師匠が買ったものだ。それなのに私は自由にさせてもらっている、だからこそ私はすべてをかけてこの恩を返さないといけないし、これ以上望むなんておこがましいにもほどがあった。だけど……。

 

私は、頼んでしまった。

 

あの人は私にあぁ言ったが、多分何をしてでも聞きだしてくれるだろう。ビクトリア様、いや"ジナ"という人はそういう方だ。とんでもなく強くて、とんでもなくお人好し。少しおかしなところもあるが、私が知る限りあんな人はそうそういないと思う。師匠は自分の事をよく『人殺しの人でなし』というが、本当にそうであればそんなことは言わない。現実というものを理解しながら、自身が殺した人のことをずっと背負い続ける人。

 

普通は、忘れる。忘れていくものだと聞いた。剣闘士だった頃、師匠が何かとよく狙われていたことからよく一緒にいたが、常に一緒だったわけではない。同じオーナーに買われた剣闘士の人たちに話を聞く機会は、何回かあった。剣闘士だって人間で、人を殺せばそれなりに精神が参ってしまう。それを毎日重ねれば心は病んでいき、最終的に壊れてしまう。だからこそ戦う人たちはそのダメージを最低限にするために、忘れていく。

 

何かしらの区切りをつけ、忘れる。最初からなかったことにする、礼を尽くすことで自身を納得させる。師匠の中で聖人扱いされているタクパルさんも、その一人だった。区切りを付けず、ずっと背に背負い続けているのは師匠だけ。このあたりの、私が知る価値観とは違う考え方を持つ人。

 

 

 

ゆっくりと、自分の手を見つめる。何もない、普通の手。瞬きしても、そこには何もない。

 

 

 

確かに、精神的な疲れはある。こんないつもは考えないようなことを考えているのがその理由だ。だけど、最初から"敵"だと、アレは私の父を、故郷の人々を殺した張本人だと。そう、理解していたからか。心は比較的落ち着いている。燃えた私たちの家を見た時に溢れ出しそうになっていたあの黒い感情は、未だ燻っているが、おとなしくなってしまっている。

 

何回か、師匠が零した言葉。『背に骸が積み上がっていく感覚』、『瞬きすれば血塗られた手が見える』。普段の師の口からは発しないようなその言葉、弱々しい声は鮮明に憶えている。アレが師匠の抱えるもので、私にはどうしようもできないもの。師匠は私が同じ状態になることを危惧し、知らなくてもいい"殺し"を経験させぬようにしてくれた。

 

 

(でも……。)

 

 

私はその思いを怒りと憎しみに駆られ踏みにじってしまったし、遠距離からとは言えその命を奪っても骸が重なることも、手が血塗られることもなかった。確かに直接その命を奪ったわけではない、この手で命を奪う感覚を感じたわけではない。

 

師匠の隣で、ずっとあの試合を見ていた。当時の私は、いずれ自身もあの場所に立たなければいけないと考えていた。だからこそ、最初は死の恐怖に耐え切れず戻してしまうこともあったが、ずっと見ていた。師がどうやって敵を殺すのか、人はどうやれば死ぬのか、そして人の命がどれだけ軽いのか。

 

師匠みたいにずっと肌で感じていたわけではない、けれど私も。少しは、理解してしまっていたようだ。

 

 

「私は……。」

 

 

何もない、何もないはずがない手を。弦を引き絞り、放ったはずの手を開いたり閉じたりしながら、自身の考えを纏めていく。

 

まだ、私の心の奥底には黒い感情が蠢いている。父が何故殺されなければならなかったのか、何故姉や妹が連れ去られなければならなかったのか、何故私の故郷は焼かれなければいけなかったのか。どうしようもない、行き場を失った感情は真っ黒に染まり、怒りや恨みに変っていく。

 

きっと、目の前に奴らがいれば。師匠がいなければ何も考えずに捌け口にしたと思う。私が勝てるか、負けるか、そんなこと御構い無しに剣を抜いてしまっていた。師匠に完封されてしまったせいで奴らの力量がどれほどかは解らないが、多分囲まれればおしまいだろう。魔力の練り方も解らない私にお似合いの結末が待っているはずだ。

 

……姉と妹。ルモ姉さんは私より大きくて、もうそろそろお相手を見つけていてもおかしくない年だった。妹も、ヘスも私が売られた時ぐらいの大きさになっているだろう。さすがに妹は大丈夫だと思いたいが……、姉さんは……。

 

 

「考えたくもない。」

 

 

盗賊に捕まった、連れ去られた女の行く末なんか私でもわかる。魔物の孕み袋にされるのと同じくらい酷い。売られるなんてまだいい方で、散々遊ばれた後に邪魔になったから殺される。最悪だけど、ありふれた話でもある。だからこそ力がないなりに私たち、村人たちは防壁を作ったり、貴族の庇護を受ける。

 

けれど、今は違う。襲撃からすでに5日ほど経っていて、襲われた後に生き残った人が領主に助けを求めに行ったらしいけど、まだその人は帰ってきていない。つまりもうこの世にはいないか、領主様の方でも何か起きているということになる。師匠に連れていかれたあの盗賊の話が正しければ、頼みの綱であった領主様すらもうこの世にはいない。

 

 

「私たち……。いや、この村の人たちが生き残る方法は二つ、逃げるか、懇願するか。」

 

 

ララクラに戻る私たちに付いて行き、受け入れてくれるかどうかすら解らないあの町で生きていく。もしくは師匠に懇願して、全ての元凶を取り除いてもらうか。逃げる方は別にどこでもいいのでもっと選択肢は増えるだろうが、大きく分ければこの二つだ。

 

おそらく、いや確実にだろうけど。村の人たちは後者を望んでいる。

 

 

そして、私もその一人ではある。

 

 

師匠と共に戦えば、師匠が望んでいなかったとしても私に順番が回ってくるかもしれない。自身の手で、父を殺した盗賊に罰を与えられるかもしれない。師匠に止められても、あの盗賊たちが全て師に片付けられるところを傍で見れば、この心に巣食う感情も消えてくれるかもしれない。

 

けれどこれは、師匠が望んでいないことだって理解している。師匠は私に人殺しなんかさせたくなかったし、危険がある場所にも連れて行きたくない。師匠の傍が一番安全だから連れて行ってもらっているだけで、それは師の本意ではない。

 

 

 

 

「……何か、手伝えること。」

 

 

 

思考を纏めるはずだったのに、どんどん考えが深くなっていってしまう。ずっとこの場所に突っ立っているわけにはいかないし、何か手を動かして気を紛らわせることにしよう。そう考えながらあたりを見渡し、死体の処理をしていた人たちの方を見るともう大方の仕事は終わっているようだった。なら、母の方に行こう。何か話せば、少しは気分が良くなるかもしれないし。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ママ。」

 

「……アル、お仕事の方は大丈夫なの?」

 

「うん。」

 

 

まだ幼い子供たちの面倒を見ながら遺品の整理をしていた母に声をかける。焼けてしまった家の跡地でもまだ使えそうなものが残っていることもある。それを子供たちに探してもらいながら、使えそうなものはまとめておく、そんな作業を彼女はしていた。

 

母の手伝いをしようとするが、手で止められる。

 

 

「アル、貴方が村を出た後のこと。教えてくれる?」

 

「……うん。」

 

 

少し迷った結果、全部本当のことを話すことにした。師匠みたいに即興で話を作れるほど私に学はない、それにいずれバレる事だろうし師匠も種明かしをできるだけ早くやりたいような雰囲気を出していた。それに、私が経験したことをそのまま母に話したかった。小さな出来事を省きながら、母に一つ一つ話していく。

 

 

村を出た後はララクラに行ったこと。

その後帝都まで運ばれて、そこで師匠と出会ったこと。

はじめて会った時は私も騎士様なのかと思ってたけど、剣闘士だったこと。

そこから剣闘士で、多くのファンを抱えるビクトリア様の従者として振舞うようになったこと。

師匠に剣を教えてもらいながら、演技の指導も受けたこと。

師匠の仕事からいろんな貴族様と会うことになったこと。

その中のひとりであるヘンリエッタ様のこと。

 

そして、剣神祭のことと、そこから市民になったこと。

 

 

色々大変だったけど、どれも大切な思い出。ママやお爺ちゃん、そのほかの人たちが騎士様って勘違いしちゃって、それを否定しても身分を隠してるって思われてるからそのまま放置してしまっていること、騙すような形になってしまったことを謝罪して、話を締めくくる。

 

 

「そう、だったのね。」

 

「騙すみたいになっちゃってごめん。」

 

「ううん、いいの。あの方が私たちを守ってくれたのは事実だし、アルの話を聞いている限り多分騎士様よりも……、すごい方よね?」

 

「うん、ほんとに。」

 

 

師匠は爵位、騎士爵などは持っていないただの市民ではあるが、同時にヘンリエッタ様の食客に近い立場である。正直ただの騎士様よりもヤバい存在だ。単純な戦闘能力、魔法無しの近接戦で頂点に立った人だし、最近何故か適性がないと言われていた魔術も使い始めている。あの人の強さがどれほどのものなのかはわからないが、絶対上から数えた方が早い。

 

 

「……良い方に、お世話になってるのね。」

 

「ちょっと変なとこもあるけどね。」

 

 

さっきよりもずっと気分が楽になっていることを自覚しながら、話を続ける。私でも知っている様な常識を知らなかったりするし、急に私を抱えて空の旅とか始めちゃうし、未だにあの膨れ上がったお腹が一瞬にしてスラっとする理由は理解できないし。でも私の知らないこととか、生き抜く方法とかはちゃんと教えてくれるし、何より私のことを考えてくれている。

 

剣闘士から市民になって、剣闘士の時の師匠は何か無理をしていたんだなってことをようやく理解した。市民になってからはずっと笑顔の回数が増えたし、ずっと何かを楽しんでいるように見える。それを見て、私も楽しい気分になってしまうほどに。

 

 

「私も、お父さんも、ずっと心配していたの。……後悔も、たくさん。せめて、せめていい人に買われてくれればと祈ることしかできなかった。」

 

「気にしなくていいよ。……私は、帰ってこれたし。」

 

「……そうね。」

 

 

私が奴隷にならなければこの家は終わっていた、売られる前に父からも母からも、姉妹たちからも言葉を貰った。だから、その選択に恨みなんかない。……だけど、あれが今生の別れになるなんて受け入れられるはずがない。奴隷のまま一生を終えるって思ってた、だからあれが最後だと思ってた。でも、私より先に父が死ぬなんて、会えると思ってたのに。声が聞こえると思ってたのに。

 

 

「アル、お願いだから……、ッ。」

 

 

母が何かを私に言おうとしたとき、全身にとてつもなく重い物が伸し掛かるような感覚に陥る。これは……、殺気。師匠の、ガチの奴だ。この場所からかなり離れているはずなのに、ここまで届いている。

 

生物が生きることを諦める圧力、私はまだ闘技場や解放後に何度か軽いものを受けているおかげで耐性があったが、母はそうではない。全身から力が抜け、倒れそうになってしまう。

 

 

「ママ!」

 

 

何とか支えることはできたが、母の目は明らかに恐慌状態に陥っていて、口からは声にならない悲鳴のようなものが漏れ出ている。師匠、何があったのかは知らないですけどちょっとガチで怒り過ぎです。比較的慣れている私でも正直足が震えている、師匠の殺気のせいで全滅という笑えない状況を回避するために文句を言いに行こうと思ったが、師匠も自身がしたことにようやく気が付いてくれたのか、ふっと殺気が消えてなくなる。さっきまでと同じ、何もなかったように。

 

 

「大丈夫、大丈夫。さっきのは師匠で、敵じゃありませんから。」

 

 

解放された安心からか、膝を地面におろしながら何とか息を整える母。何とか落ち着かせようと背をさするけど、ちょっと時間が掛かりそう。

 

 

「な、何。今のは……。」

 

「多分ですけど、師匠の殺気というか、プレッシャーみたいなものだと思います。」

 

「……本当にあの方は人間?」

 

「…………どうなんだろ?」

 

 

正直、そこのところはよくわかりませんがこの世にはもっとヤバい人間がいることも知っているので多分人間です。師匠に頭部どころか首の根っこまで全部吹き飛ばされたはずなのに、普通にヘンリエッタ様のところでお抱え兵士してる人もいるので……。世界は広いなぁ、と。いやまぁ確かにママのいう通り、あの人の隣が世界一安全ですよ、うん。強くなるために色々教えてくれますし、最高の師匠です。……まぁおかしなところも多いですけど、師匠の名誉のために口を噤みます。

 

 

「……アル。」

 

「はい。」

 

 

ようやく落ち着いた母が、さっきまで紡ごうとしていた言葉をもう一度私に伝えようとする。

 

 

 

 

「貴方のことを、売ってしまった私に親として振舞える資格なんかない。でも私は、貴方の無事を、ずっと祈ってる。私たちのことを覚えているのも、忘れて自分の人生を生きるのも、全部自由よ。だけど、もし貴方が許してくれるのなら。」

 

 

「何があったとしても。無事なあなたの顔をもう一度見せに来て、アル。」

 

 

 

 

「……うん、ママ。」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~、終わり終わりこの地は尾張。っと、付き合わせて悪いねお爺さん。」

 

「オワリ? ……いえいえ、構いませんとも。ただ先ほどの殺気の様な行為はやめて頂けるとありがたいです。」

 

「それはマジでゴメン。」

 

 

血で汚れちゃった手を水で洗いながら、付き合ってくれたお爺ちゃんと話す。正直汚いので石鹸とか使いたいが、コピアの背に乗っけたままだし色々苦労している村人たちの目の前で贅沢品を使うのは気が引ける。水洗いと布で拭く程度で我慢しておこう。

 

いや~、にしても初めての尋問。まぁ聞きたいことは聞けたし案外うまく行ったんじゃない? しかも教材が『どうせ殺すからどれだけ壊してもいい』というのもあってとっても良かった。見た目とかはグロかったけど、今更そういうのでワーキャーするような人間でもないしねぇ。

 

 

「あ、お爺さん。火種いる?」

 

 

そう言いながら火のルーンを刻み、指先に小さな炎を生成する。死体の処理とかに必要だからね、わざわざ火を起こすのも重労働でしょ?

 

 

「ありがとうございますですじゃ。」

 

 

彼に"盗賊だったもの"の処理を任せ、一人村の中を歩く。昼も十分に過ぎたころで、そろそろ夕方に成りかけているというところ。村自体が綺麗に残っていれば、この風景も楽しめたんだろうけど……。

 

 

さて、尋問の詳細だが最初はちょっと難航した。水で叩き起こしたまでは良かったんだけど、私もお爺ちゃんも尋問なんかしたことがない。とりあえず痛めつけて、その苦痛から解放されるために情報を吐く、っていうプロセスは知ってたからとりあえず色々やってみたんだけどね? まぁ何も吐かない。

 

 

『どうせ殺されるんなら話すわけないだろうが。』

 

 

って感じでねぇ。普通の盗賊、正確に言えば盗賊に身を落とすような人間がそんな思考になるとは思えなかったんだけど、目の前にいた奴はそうだった。彼らの頭がよっぽどカリスマに溢れてたか、人質とかそういうのがあるのかと思ったけど、どうやら違うらしい。私としては彼らを操る裏の存在を聞きたかったんだけど、まぁ押しても引いても何も出てこない。

 

埒が明かないってことで、話題を変えたのは良かったんだけど……。聞いた内容が悪かった。

 

アルから頼まれていたこともあったし、連れ去られた女性たちはどこにやったのかっていうのを聞いたの。

 

……まぁ聞かない方が良かったよね、ほんと。まぁ簡単に言うと慰みものにされて、ある程度使ったら奴隷として売るって感じだった。いや~、彼が本当に楽しそうに詳細を語ってくれるもんだからさ。ついブチギレちゃったよ、彼は人を怒らせる才能があったわけだ。まぁこっちはTS勢だし、前世の経験というか出回ってる特殊性癖のおかげで? まぁ耐性はあったが知人の姉妹がその目にあっているとなると話は変わってくる。

 

 

ついついガチの殺気を解放しちゃって、奴の腕を引きちぎっちゃった。てへぺろ☆

 

 

 

いや~、すごくグロテスクだったよね。握ってたとこ完全につぶれてたし、人間って千切れるときあんな音なるんだぁ、って思っちゃった。血とか悲鳴とかすごかったもん。

 

ま、結果的に今焼かれている子は完全にそれでビビっちゃって、聞いてないことも全部吐いてくれた。もう早く楽に殺してくれ、って懇願しながら。私もキレてはいたけど、まだ冷静な部分もあったおかげか、話の軌道修正をしながらなんとか聞きたいことを聞き終えることができた。ちょっと色々失敗したことはあったが……、結果は出たので最終的に大成功、ってことで。

 

 

「敵の戦力と、本拠地にしてる洞窟。あとかなり金払いがいいバックに、そのバックから派遣されてきたお頭、ね。」

 

 

この村を襲ってきたのと同じ程度の奴が後300程度、それよりちょっと強いのが10弱。ここから森を抜けて一日ぐらいの場所に魔物が使っていた洞窟があって、そこを再利用している。……まぁ数は多いがこれぐらいなら普通に処理可能なレベルだ。さすがに4桁はためらっただろうけどね。

 

んで、あの盗賊も詳細は知らなかったけど、こいつらにいるバック。武器や防具の支援に、食料の支援や捕まえた人間の販売までやってくれる後ろ盾。支援した分だけの見返りはちゃんともらってるみたいで、お頭を通じて攻める場所やタイミング、伝令の潰し方などとまぁ色々手を加えていらっしゃるようだ。

 

 

「……攻めるとすればこちらの存在に気が付かれる前に。多分だけどそのお頭ってのを捕まえて吐かせれば全貌が見えるはず。」

 

 

手の上で魔道具、周囲の人間が持つ魔力を乱すことで魔法の使用を不可能にする魔道具を転がしながら、そんなことを考える。正直300の数を養えている時点で、バックの階級が貴族かかなりの大商人であることが見えてきた。魔道具はまだ、国の監視下にない工房で作ることは可能だし、闘技場に裏があったように仕入れにも裏が存在することは理解している。だからやろうと思えばある程度力のある商人でもできるのだが……。

 

 

「身分としては盗賊だろうけど、傭兵300を雇って何かしようとしていることには変わりがない。それができる経済力があるってことは、ね?」

 

 

ちょっとややこしいことにはなりそうだ。ヘンリエッタ様にまた頼み込むことになりそう。……ま、それでも無理だった時はその時に。

 

 

「よしッ! いっちょやったりますか!」

 

 

幸いと言っていいのかはわからないが、まだこの村から連れていかれた人間は売られていないらしい。一度市場に流れてしまえば追えるものも追えなくなる。どっちにしろ、やるならば早い方がいい。

 

後は……。

 

 

 

「あ、師匠!」

 

 

 

彼女を、どうするかってこと。……たぶん、連れていくことになってしまうんだろうけどね。

 

アルの声を、ちゃんと聞いてからにしないと。

 







次回は攻め込みに行きます。




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